4. 新たな枠組プログラム Horizon2020 の概要
4.4 FP7 からの変化
4.4.1 プログラム構成の変化
このように、Horizon 2020では、一つの枠組プログラムの中でイノベーションを通じ た市場化に向けたシームレスなサポートをしようとする構成である点が特徴的である。
たとえば、基礎研究段階から技術開発段階までのファンディングルールの統一(評価項 目の統一+段階に応じた重みづけ、など)するという点で、柱間の隔たりを取り払って いる。また、一つの主体が研究の複数段階で支援を受けられる可能性を残し、優秀なア イデアを市場化へとつなげようとしている。たとえば、前述のとおり、卓越した科学の 基礎研究のプログラムにはその後のコンセプト実証のためのファンディングがある。
さらに、貸付や株式購入ベースでのイノベーション支援を行うという特徴もある。特 に、イノベーションに取り組む中小企業に対する資金・非資金両面からの援助が強化さ れている。
FP7とHorizon 2020の主要なプログラム構成上の変化は、以下の図のようになる。
まず、FP7時に存在した4つの主要プログラムは、概ね以下のような形でHorizon 2020 の 3つの柱に配分された。ボトムアップ型の Ideas と人材育成の People、共同研究の Cooperation の 一 部 が 、 基 礎 研 究 を 主 と し た 柱 で あ る 卓 越 し た 科 学 と な っ た 。
Cooperationとインフラ・地域振興のCapacities、さらにFP7時には独立したフレーム
ワークプログラムであった競争力・イノベーションフレームワークプログラムが、産業 リーダーシップと社会的課題への対応という、技術研究・イノベーションに関する2つ の柱に統合された。さらに、独立したプログラムであった欧州イノベーション技術機構
(EIT)もHorizon 2020に含まれることとなった。
このように、基礎研究から市場化前までの様々なプログラムが一つの枠組みプログラ ムの中に統合されるとともに、プログラムの構成も簡略化されている。
図 4-3 FP7とHorizon 2020のプログラム構成の比較 37
4.4.2 技術成熟度(Technology Readiness Level)の活用
以上の取り組みの位置づけにあたっては、NASAが開発した技術成熟度(Technology
Readiness Level)を活用している。Horizon 2020において用いられる技術成熟度とは
以下のようである。TRL1が基礎研究に近く、TRL9が市場化に近い。
TRL1 基礎的な原理の発見 TRL2 技術的なコンセプトの形成 TRL3 コンセプトの実験的な証明 TRL4 実験室での技術実証
TRL5 関連環境下での技術実証(主要実現技術においては産業に関連する環境)
TRL6 関連環境下でのデモンストレーション(主要実現技術においては産業に関連 する環境)
TRL7 実行環境下でのシステムプロトタイプのデモンストレーション TRL8 システムの完成および検証
TRL9 実行環境下での実際のシステムの証明(主要実現技術においては、競争段階 における製造)
Horizon 2020のプログラムは技術成熟度に応じて位置づけられ、その度合いとファン
ディング対象(国の機関か民間か)によりファンディングルール(直接経費の何パーセ ントが支払われるか)が決められている。なお、間接経費は一律25%が支払われる。
37 CRDS作成
4.4.3 域内外の参加促進策
Horizon 2020においては、FP7 に比べ、域内外の参加を促進する仕組みが整備され
ている。たとえば、Horizon 2020への参加者をサポートするナショナル・コンタクト・
ポイント(NCP)が以前よりも充実している。日本においても、2013年11月に日欧産 業協力センターが日本初のNCPに任命され、情報提供などのサービスを提供している。
なお、Horizon 2020への欧州域外国からの参加は、公募にて明示的に禁止されていな
い場合は、原則として可能である。ただし、日本のような先進国の候補者が応募する場 合、その者がもつ技術が特に欧州域外から調達される必要がある場合のような例外を除
き、Horizon 2020からの金銭的な援助を受けることはできない。
その他、メンバー国に対する国家の研究・イノベーション戦略の策定をサポートする
S3 Platformや、卓越した研究者をEU域内の途上国に派遣するERA Chairsなどの取
り組みが充実しつつある。
域内外からの活発な参加を促すために情報提供などの支援を行う NCP を充実させる 一方で、FP7時にあまり参加が活発でなかった域内国に関してその理由を分析したうえ
で、S3 PlatformやERA Chairsなどの対応策を打ち出している。