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その他の取り組み

ドキュメント内 米国科学技術動向報告 (ページ 75-80)

5. Horizon2020 の個別の取り組み

5.4 その他の取り組み

5.4.1 欧州イノベーション・技術機構(EIT)

上述のとおり、EITとは知識・イノベーションコミュニティ(KICs:Knowledge and

Innovation Communities)と呼ばれるイシュー別の産学連携組織を束ねる仕組みであ

る。公募によりKICsへの資金配分を行い、資金配分を受けたKICsは、EITの看板の もと欧州の複数の大学に拠点を設け、産学が連携した形での教育・研究に取り組む。こ の取り組みは、これまではFP7の枠内には含まれていなかったが、Horizon 2020より 枠組みプログラムの一部となった。

KICへの応募の条件として以下のようなものがある。

・ 最低でも3つの国に存在する3つの独立した機関の参加が必要

・ 機関の過半数がEU内に存在すること

・ 最低1つの高等教育機関及び1つの企業の参加が必須

KICは2009年4月に第一次の募集が開始され、2009年8月に応募が締め切られ、

12月に3つのKICが選定された。

以下が選定されたKICのリストである。各研究テーマに一つのKICが選定された。

 気候変動対策と適応: Climate-KIC

 情報コミュニケーション社会の未来像: ICT Labs

 サステイナブルなエネルギー: KIC InnoEnergy

2014年1月現在では、気候変動、ICT、持続可能なエネルギーという3つのKICsが 活動するとともに、Horizon 2020下のプログラムとして新たなKICsの公募が行われて いる。EITから3つのKICsへのグラントは年間5,500万ユーロ程度であり、これはKICs の予算の21.5%に相当する。多くの金額が、各国のファンディング機関や企業からも投 じられている。一つのKICが実施される期間は7-15年であるため、かなり長期間のフ ァンディングとなる。

Horizon 2020の推進期間である2014~20年の間に、10,000人ずつのマスターとPhD

の育成を目標に掲げている。イノベーション力・起業家精神を重視した教育である点に 特徴がある。

EITの事例として、EIT ICT-labのベルリン拠点について触れる。この拠点は、ベル リン工科大学内に置かれ、欧州の他の6拠点と連携しつつ教育・研究に取り組んでいる。

ドイツテレコム、シーメンス、SAP、フラウンホーファー協会、ドイツ人工知能研究セ ンター(DFKI)、ベルリン工科大学というパートナーをもつ。

EIT ICT-labにおける修士プログラムでは、1年目と2年目で異なる国の拠点で学ぶ

機会が与えられる。入学時にどの拠点でそれぞれの年を過ごすかを決め、2 年間のプロ グラムが決められる。異なった国での幅広い学びの機会が得られるとともに、2 年間の 教育の継続性についても配慮されている。

また、ベルリン拠点特有のプログラムとして、Software Campusという教育プログラ ムが挙げられる。これは、若いITの専門家を次世代の IT 分野でのリーダーに育て上 げることを目的とした教育を展開し、修士・博士レベルの教育を行う仕組みである。ハ イレベルな科学的研究と、実践的な経営手法とを学ぶことができる。学生には、何らか の自身のITプロジェクトを推進することが求められ、この経験を通じマネジメントス キルを養うことになる。プロジェクト計画からファンドへの応募、チームマネジメント など、すべてのプロセスに取り組む必要がある。

Software Campusで推進されるITプロジェクトは、全てBMBFからの最大2年間

の資金援助を得ることができる。得られる資金の最大額は、10万ユーロである。

ベルリン拠点でのインタビューによると、EITの取り組みは、科学技術研究プログラ ムとMBAとの中間的な位置づけにあるとのことであった。すなわち、EITがなければ マネジメントの手法を学ぶことなく学業を終えるであろう科学技術研究分野の若手を 対象とし、マネジメントの能力に開眼させることを目的としているということである。

マネジメント知識のレベルとしてはMBAには及ばないものの、研究活動だけでは得ら れない知識を将来の研究者に付与することが意図されている。

5.4.2 共同研究センター(JRC)

共同研究センターとは、欧州員会の総局のうちの一つであり、研究・イノベーション・

科学担当委員の配下にある。欧州の研究開発・イノベーション政策に資する研究を行う。

①欧州委員会の各総局に対し、直接的な科学的支援を行うこと、②標準を開発し、欧州 の競争力を支援するための参照点を提供すること、③知識・技術移転の促進を手助けす ること、がそのミッションである。

ベルギーのブリュッセルに本部を置くとともに、欧州の各地に 7 つの研究所をもつ。

その一覧は下記のとおりである。

研究所名 所在地 概要 基 準 材 料 ・ 計 測 研 究 所

(IRMM)

ベルギー・

ヘール

先進的な計測手法を開発し、かつ計測・

標準に関する科学的なアドバイスを EU の 政策に対して行う。

エ ネ ル ギ ー ・ 輸 送 研 究 所

(IET)

オランダ・

ペッテン、

イタリア・

イスプラ

持続可能な輸送、再生可能エネルギー、

持続可能かつ安全な原子力エネルギー、

エネルギー/技術・経済アセスメント、バ イオエネルギー・バイオ燃料等の分野の研 究を行い、情報提供を行う。

超ウラン元素研究所(ITU) ドイツ・カ ールスルー エ、イタリ ア・イスプ ラ

欧州市民を、放射性物質を扱い蓄積する ことに関連するリスクから守るための科学 的な根拠 を与え ること をミッシ ョンと す る。アクチニド、原子燃料サイクル、放射 性核種の技術的・医療的応用などについて 研究・情報提供を行う。

市民保護・セキュリティ研 究所(IPSC)

イタリア・

イスプラ

世界の安定とセキュリティ、危機管理、

海洋・漁業政策、必須インフラの保護等の 分野の研究・情報提供を行う。工学、ICT、 衛星画像処理・分析、リスクアセスメント 等の分野での強みをもつ。

環 境 ・ 持 続 可 能 性 研 究 所

(IES)

イタリア・

イスプラ

人間と物理環境との相互作用、戦略資源

(水・土地・森・食料・ミネラル等)の持 続可能な管理の分野での研究・情報提供を 行う。分野横断的な研究を行うとともに、

観察結果などを共有するためのICTインフ ラの開発にも取り組む。

健 康 ・ 消 費 者 保 護 研 究 所

(IHCP)

イタリア・

イスプラ

食料品・消費者製品、公共医療、ナノテ ク、動物実験への代替案、遺伝子組み換え 等について研究・情報提供を行う。

将来技術調査研究所(IPTS) スペイン・

セビリア

政策オプション分析、政策影響評価、新 技術の社会・経済分析、技術-経済ツールや プラットフォームの開発、情報交換や合意 形成のマネジメント等の分野で研究・情報 提供に取り組む。

表 5-16 共同研究センター一覧 42

42 共同研究センターウェブサイト等をもとにCRDS作成

5.4.3 卓越性の普及と参加の拡大

このプログラムは、Horizon 2020と構造資金とのよりよい調整・連携・情報交換とを 目的としたものである。特にEUの中の途上国において、その国の研究者がEUのプロ グラムに参加することを促進する活動に取り組む。

具体的には以下のような取り組みがある。

プログラム 概要

チーム形成(Teaming action) 先進的な研究機関を、その他の研究機関・地域な どと組ませ、既存の拠点のレベルアップを図ること を目的としたプログラム。Horizon 2020にて新しく 導入された。

ツイニング(Twinning) ある特定の分野において、欧州内で先進的な役割 を果たす二つ以上の主体を連携させることで、更な る相乗効果を得ることを目的としたプログラム。

欧州研究圏議長(ERA Chairs) 大学や研究機関に対し、ハイレベルな人材を引き つけ、また持続可能な方法でエクセレンスを維持す るための構造改革を行うための支援を行うプログラ ム。

政 策 支 援 ( Policy Support Facility)

国家/地域の研究・イノベーション政策をデザイ ン・実施を改善するために、専門家のアドバイスを 受けることができるプログラム。国家/地域の公的 機関を対象とする。

COSTの一部 優秀な研究者やイノベーターで欧州や国際的なネ ットワークへのアクセスが十分でない者に対し、そ れらへのアクセス支援を行うプログラム。

ナショナルコンタクトポイント ナショナルコンタクトポイント同士の国をまたいだ ネットワークの運用を強化するプログラム。円滑な 情報交換を可能にするための、財政的・技術的援助 を行う。

表 5-17 卓越性の普及と参加の拡大プログラム一覧 43

5.4.4 社会とともにある・社会のための科学

このプログラムは、科学と社会との効果的な協力関係の構築を目的としたものである。

科学を(特に若い人たちにとって)より魅力的なものにすること、イノベーションに対 する社会の欲求を喚起すること、そして更なる研究・イノベーション活動を促進するこ とを進める。この活動により、社会的なアクター(研究者、市民、政策決定者、企業、

第三セクターなど)が研究・イノベーションのすべての過程において、欧州社会のニー ズや期待に沿うような活動を促進するための活動に取り組むことを可能にする。具体的

43 欧州委員会ウェブサイトをもとにCRDS作成

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