第 4 章 強度変調放射線治療におけるフラットパネル検出器を用いた多断面線量分布
4.3 EPID 画像からの多断面の線量分布の取得
線量分布は本来3次元的な広がりを持っている.2次元検出器はその一断面を測定し ているにすぎない.3次元検出器も臨床使用されているが,価格や測定時間,精度の面 で問題がある.今回,最も測定時間で有利なEPIDを用いて,多断面の線量分布の測定 法を開発した.
まず,EPID ではフルエンス測定であるため,EPIDose を用いて線量に変換した.さ
らに,EPIDoseの線量変換アルゴリズム(beam modeling)をファントムの深さ毎に作成
することによって,深さ方向に変化させた線量分布を作成する.吸収線量変換への概念 図を図4-1に示す.
図4-1 EPIDoseを用いたフルエンスから線量への変換.
EPIDoseアルゴリズムを用いて線量に変換する.さらに,線量変換の際のbeam modeling
を変更することによって多断面の線量分布を取得する.
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EPIDoseの線量変換アルゴリズム(beam modeling)について,次の4段階(4 step)
で吸収線量へ変換した.
① 幾何学的情報の設定(Step 1)
EPIDでの測定とファントムでの測定での幾何学的な違いを調整する.EPIDでの測定 は source-imager-distance(SID)105 cm と し た . フ ァ ン ト ム で の 線 量 計 算 は source-surface-distance(SSD)90cm,source-axis-distance (SAD)100 cmである.図4-2 において幾何学的情報を入力する.入力項目は,MLCモデル,エネルギー,MLC透過 率,ファントムの測定深,EPID測定の幾何学的情報である.ソフトウエアでは5と10 cm測定深でアイソセンタ面の設定しかないため,設定にない測定深では10 cmを選択 した.均質ファントムの20 cm厚の中心10 cmをアイソセンタとし,軸外の線量プロフ ァイルをターゲット側に5 cm,カウチ方向に5 cmの10 cm幅で1 cm毎に線量分布を出 力するように作成した.放射線と物質の相互作用は複雑で,単なる幾何学的な情報のみ では測定出来ない.したがって,その他の調整はStep3で行った.
図4-2 幾何学的情報,MLCタイプ,MLC透過率の入力.
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② 出力線量比の入力(Step 2)
EIPD でのフルエンス測定と電離箱線量計の線量比では違いがあるため調整を行う.
図4-3にEIPDでのフルエンス測定と電離箱線量計での線量測定の違いを示す.EPIDと 電離箱線量計での値は,照射野10x10 cm2の値で正規化している.
さらに今回は,深さ方向別にモデリングを行うため,SAD 100 cmで深さ方向に測定 点を変化させて,出力線量比を測定し,その値でモデリングを行った.各測定深さの出 力線量比を図4-4に示す.
図4-3 EPIDと線量測定(電離箱線量計)での出力線量比の違い.
図4-4 測定深を変化させて測定した出力線量比.アイソセンタは一定で,線源―測定
面を変化させて測定.
0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1 1.2
0 5 10 15 20
Field size (cm)
Output factor
Depth 6 cm
Depth 8 cm
Depth 10 cm
Depth 12 cm
Depth 14 cm
Depth 16 cm
Depth 18 cm
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③ カーネルの作成(Step 3)
図4-5にカーネルを示す.1次線が入射すると物質内で相互作用が起こり,散乱線が 発生する.この線量寄与をカーネルでモデリングする.カーネルの作成では,実測の矩 形照射野との比較から繰り返してモデリングを行った.
図4-5 散乱カーネル.
④ 絶対線量の校正(Step4)
MapCHECKでの測定とEPIDでの測定値より絶対線量の調整を行った.
MU毎に測定を行った.25 MUから200 MUの範囲で行った.図4-6に校正の入力画面 を示す.この値も測定深で変化するため,測定深さ毎に測定を行った.
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図4-6 絶対線量の校正.25 MUから200 MUの範囲で測定.