第 2 章 IMRT 線量検証における 2 次元検出器間の精度比較
2.2 線量検証機器
2.2.1 電離箱線量計とフィルム測定
①電離箱線量計による投与線量の検証
電離箱による線量測定では,電離放射線によって生成した電離箱空洞の電荷をブラッ グレイの原理(30)に基づいて吸収線量に変換され,簡便かつ精度の高い測定を提供す る.構造は,2つの電極となる金属板によって挟まれ,空気(ガス)によって満たされ た容器からなる.電極間には電圧が印加されてはいるが,通常時に電流は流れない.電 離放射線がこの容器内に入ることでガスが電離され,電子が陽極に,陽イオンは陰極に 移動して電流が流れる.この電流は電位計によって測定される.
今回の検討では,0.016 cm3の容量のマイクロ型,A-14SL(Standard Imaging社製)(図
2-1)電離箱線量計とファーマ型(0.6 cm3)を用いた.このマイクロ型電離箱は,当院
のリファレンス線量計であるPTW-30013 0.6 cc(PTW社製)と相互校正を行っている.
また,当院のリファレンス線量計は,本邦の線量標準器と毎年校正されており,線量ト レーサビリティーが確立されている.
図2-1 電離箱線量計(左)と電離箱線量計を配置したファントム(右).
②フィルムによる測定
フィルム測定にはEDR2(Kodak社製)を用いた.測定はアイソセンタ面で行い,測 定深と同じ深さで校正用のフィルム濃度と線量の特性曲線を取得した.校正用の照射野
は6×6 cm2で,吸収線量は電離箱線量計で測定した.0~500 MUまで10ステップで行
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った.フィルムは,DD-システム(R-tech 社製)で解析を行った.測定の際は,フィ
ルムをsolid waterに密着し,ファントム間の隙間が生じないようにした(図2-2).
(a) (b)
(c)
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図2-2 (a)フィルム, (b, c)照射後に現像したフィルム, (d, e)フィルムを配置し
たファントム.
2.2.2 2次元検出器
2次元検出器には,検出器として電離箱(23, 24),半導体(25, 26),フラットパネ ル型半導体(27, 28)等を用いたものがあり,それぞれの有用性とその特徴が報告され ている.下記に今回の検討で用いた2次元検出器を示す.
① 透過型2次元電離箱検出器
電離箱を用いた2次元検出器にはCOMPASS(IBA社製)を用いた.COMPASSの仕 様を次に示す.図2-3はCOMAPSSをリニアックに装着した様子である.
COMPASS
検出器:透過型平行平板型電離箱 検出器サイズ:3.8 mmφ×2 mm
検出器間隔:6.5 mm(アイソセンタで1 cm)
検出器数:1600個
固有ビルドアップ:3.1 mm水等価
COMPASSを用いた線量検証は,リニアックの照射口にCOMPASSを装着して測定し
(d) (e)
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たIMRTフルエンス分布を用いて,フルエンス間での比較が可能である.さらに,フル エンスから線量分布を計算することができる.線量分布計算には,フルエンス分布から ファントム内の線量分布計算過程で,COMPASSのビームモデリングが必要となる.TPS とのフルエンス分布や線量分布の比較,ガンマ評価,DVH解析等を行うことが出来る.
COMPASSのワークフォローを図2-4に示す.
図2-3 COMPASS(IBA社製)をリニアック照射口に取り付けた様子.
リニアックの照射口のフルエンスを測定することによって線量検証を行う.フルエンス 間での比較,線量での比較が行える.
29 図2-4 COMPASSのワークフォロー.
TPSからDICOMでCT,PLAN,STRUCTURE,DOSEの情報をCOMPASSに転送する.
COMPASSで照射口のフルエンスが測定される.
② 半導体検出器を用いた2次元検出器
半導体検出器を用いた2次元検出器としては,MapCHECK(Sunnuclear社製)を用い
たMapCHECKでの測定の様子を図2-5に示す.また,図2-6にMapCHECKでの線量評
価の様子を示す.
MapCHECK
検出器:n型半導体検出器 検出器サイズ:0.8 cm3 検出器間隔:1 cm 検出器数:445個
固有ビルドアップ:2 cm水等価
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多点測定を行うことによって2次元の線量分布測定を行う.検出器は中心部10×10 cm 2 の領域は 1 cm 間隔で,それ以外は2 cm間隔で配置されている.最大22×22 cm 2 までの照射野が測定可能である.検出器の上部は水等価厚で2 cmで構成されており,
Solid waterを追加することで,任意の深さの線量が測定可能である.線量評価は,ガン
マ評価とdistance to agreement(DTA)評価が可能である.線量校正は,基準検出器に対
して絶対線量の値を持っており,その基準検出器と他の検出器は相対的な校正値を持っ ている.絶対線量での評価が可能である.
図2-5 MapCHECK(Sunnuclear社製).
445個の半導体が2次元に配置されていて,多点測定を行うことによって,線量分布を 測定する.
31 図2-6 MapCHECKでの線量分布比較.
上段左が測定値,右がTPS,中段がガンマ評価,下段が線量プロファイルである.
③ フラットパネル型半導体検出器を用いた2次元検出器
フラットパネル型半導体検出器としてelectronic portal imaging device(EPID, Varian社 製)を用いた.
検出器:a-Siフォトダイオード
検出器サイズ:0.392 mm(マトリックスサイズ)
検出器数:1024×768個(マトリック数)
固有ビルドアップ:銅板1 mm
EPIDは,銅板(1 mm),蛍光体(0.4 mm),aSi(amorphous silicon, 1.5 μm)フォト ダイオード,ガラス基板(1 mm)から構成されている.EPIDに入射したMeV-X線に よって銅板から散乱されたコンプトン電子が,蛍光体を発光させ,その光がa-Siフォト ダイオードで電気信号に変換されて画像データとして取得される.EPID 検出器の分解
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能は,マトリックスサイズに相当する0.392 mmで,検出器数はマトリックス数の1024
×768である.EPIDの構造を図2-7に示す.
EPID は,高い解像度と広いダイナミックレンジを有している.しかも,リニアック に装備されている機器であり,簡便にセットアップが可能である.データは線量データ ではなく,画像データであるため,線量では評価できない.この画像データは,フルエ ンスと呼ばれ,ビームの強弱を表し吸収線量とは異なる事が報告されている(27, 28). EPIDで測定されたフルエンス分布は,TPS で計算された患者治療計画のフルエンス分 布と比較・検証される.EPIDでの測定の様子を図2-8に示す.
図2-7 EPIDの構造.
④ 線量変換ソフト
EPIDose はMapCHECK に組み込まれているソフトウエアであり,EPID の画像デー
タ(フルエンス分布)は,測定された幾何学的情報,ビームデータ情報,MapCHECK に よる線量測定情報をもとに作成した散乱カーネルを用いて吸収線量に変換される.図 2-9 に,EPIDose によるフルエンスから吸収線量変換の概念図とその変換過程をそれぞ れ図2-10と図2-11に示す.
図2-8 EPID(Varian社製).
EPIDはリニアック付属の装置で,セットアップが容易 である.
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図2-9 EPIDoseによるフルエンスから吸収線量変換の概念図.
EPIDでのフルエンス分布を線量に変換し,TPSの線量と比較する.
図2-10 EPIDフルエンスを吸収線量に変換する過程.
幾何学的情報,出力線量比,カーネル,絶対線量情報を用いて変換する.
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表2-1に今回使用した2次元検出器の物理特性を示す.各2次元検出器間の解像度や 検出器数等で違いがある.フィルムに代わる2次元検出器としては,高解像度が必要で ある.MapCHECKやCOMPASS等の半導体や電離箱線量計では,解像度や検出器数に 限界がある.EPIDはフィルムと同等の高解像度である.しかし,EPIDはフルエンス測 定なので吸収線量に変換する必要がある.EPIDoseはEPIDのフルエンスを吸収線量に 変換するソフトウェアである.
表2-2に各2次元検出器の特徴を示す.検証時間は,フィルムが他の検出器に比べて 大幅に時間がかかり,EPID が最も簡便に行える.電離箱線量計と半導体検出器では,
検出器数に限界があり,フィルム,EPIDの解像度には及ばない.EPIDは吸収線量への 変換が必要なのを除けば,最も理想的な検出器である.
表2-2 各2次元検出器の特徴.
Method Efficiency Detector
resolution Detector density Measures dose
Film ×× ○ ○ ○
Ion chamber
array ○ × × ○
Diode array ○ ○ × ○
EPID ◎ ○ ○ ×
表2-1 2次元検出器の物理特性
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