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EEG の計測 と解析手法

本 章 で は , は じ め に 脳 活 動 の 計 測 方 法 に つ い て い く つ か 取 り 上 げ そ の 長 所 や 短 所 を紹介する.次に次章 で行う実験 の根本とな る EEG の計測法につ いて述べ ,最後に 得られたデータから 電 流源を推定するための 解析方法について 言及 する .

3.1 脳活動の 計測 方法

ここでは脳活動の計測 法について述べる[16],[17].

脳 の 活 動 を 調 べ る 方 法 と し て , 大 き く 分 け る と 「 干 渉 法 」 と 「 計 測 法 」 の 二 つ に 分 け る こ と が で き る . 干 渉 法 と は 電 気 刺 激 や 磁 気 刺 激 な ど , 外 か ら 刺 激 を 加 え て 脳 の 電 気 活 動 に 干 渉 さ せ , 感 覚 や 行 動 の 変 化 を 調 べ る こ と で 刺 激 し た 場 所 の 機 能 を 推 測 す る 方 法 で あ る . 一 方 , 計 測 法 は , 感 覚 刺 激 が 与 え ら れ た り , 自 発 的 に 精 神 活 動 を 行 っ た り す る と き に , 脳 の 電 気 活 動 の 変 化 を 調 べ る こ と で , 変 化 の 起 こ っ た 場 所 の 機 能 を 推 測 す る 方 法 で あ る . 計 測 法 に は 電 気 生 理 的 な 手 法 と , 脳 機 能 イ メ ー ジ ン グの方法が広く用いら れている.

脳 活 動 の 計 測 法 に は , 大 き く 分 け て 侵 襲 的 な も の と , 非 侵 襲 的 な も の に 分 け る こ と が で き る . 侵 襲 と は , 外 科 手 術 な ど に よ っ て 脳 を 切 開 し た り , 脳 の 一 部 を 切 除 し た り セ ン サ ー を 埋 め 込 ん だ り す る 行 為 , ま た は 薬 剤 の 投 与 に よ っ て 生 体 内 に な ん ら か の 変 化 を も た ら す 行 為 の こ と で あ る . 侵 襲 的 な 計 測 法 と し て は , 脳 を 切 開 し , 皮 質 に 直 接 微 小 電 極 を 刺 し て 神 経 細 胞 の 発 火 現 象 を 直 接 計 測 す る 微 小 電 極 計 測

(micro-electrode measurement: MEM) が古くから行われてきた .このほかの侵襲

的 な 計 測 と し て , 膜 電 位 感 受 性 色 素 を 用 い て 神 経 活 動 を 光 学 的 に イ メ ー ジ す る 光 計 測 (optical recording: OR) などがある.

実 際 に は , 脳 の 高 次 機 能 の 同 定 に は 生 き て い る 人 間 を 非 侵 襲 的 に 測 定 す る こ と が 必 要と さ れ てい る . 近 年 では 非 侵 襲的 な 計 測 法 が進 展 し てお り , た と えば ,EEGの 方 法 , 脳 磁 図 (magnetoencephalography: MEG) の 方 法 , 近 赤 外 分 光 法 (near infrared spectroscopy: NIRS) などがあげられる.

EEGの 方 法 は, 脳 内 の 神経 活 動 に より 発 生 す る 電 位 を 頭 皮上 に 配 置 した 電 極 に よ っ て 計 測 す る も の で あ る . こ の 方 法 の 長 所 は 第 一 に , 技 術 的 要 求 が 比 較 的 尐 な く , 洗 練 さ れ た 方 法 で あ る こ と で あ る . そ の た め こ の 方 法 は 医 療 , 研 究 分 野 で 長 年 利 用 されているものである .第二に,EEG計測装置は比較的安価で,移 動が容易 であり,

かつ実用的である こと である .第三に,時間 分解能が非常に高いと いうことである.

刺激に対し て誘発 され る電位 を測 定する 場合 には,その 電位がmsのオーダー で変化

するので,時間分解能 の高いEEGの方法は有効である.

一 方,EEGの方 法 の 短 所は 第 一 に ,空 間 分 解 能が 高 く な いと い う こ とで あ る . 頭 蓋骨の伝導率はおよそ4.2×103S/mで,頭皮や脳の伝導率はおよ そ3.4×101S/mで あ る . 頭 蓋 骨 の 伝 導 率 の ほ う が 頭 皮 や 脳 の そ れ よ り は る か に 小 さ い た め , 電 位 分 布 に 広 が り を 生 じ て し ま う . ま た , 電 流 の 減 衰 と 電 圧 値 の 低 下 を 招 く . 第 二 に , ア ー チ フ ァ ク ト と よ ば れ る , 他 の 電 気 的 活 動 に よ る も の に よ る 影 響 を 受 け や す い こ と で あ る . そ の よ う な 電 気 的 活 動 の 典 型 的 な も の と し て は , 被 験 者 の 眼 球 運 動 や 瞬 目 な ど に よ る 眼 電 (electro-oculogram: EOG) や , 計 測 箇 所 に 近 い 部 位 に お け る 筋 電

(electromyogram: EMG) がある.また,生体 の電気的活動以外から も影響を受ける.

例えば,商用電源から のノイズがある.第三 に,EEGの計測準備に はMEGやMRI等 の 他の 計 測 法に 比 べ て 手 間が か か る こ と で あ る .EEGを 導出 す る た めの 計 測 用電 極 として,円盤型のAg-AgCl電極が一般的に用 いられ るが,十分な質 の信号を取得する

には,Ag-AgCl電極と 接触する部分の頭皮を ,特殊な研磨剤によっ て擦って頭皮上の

汚 れ を 落 と し て , イ ン ピ ー ダ ン ス を 下 げ る 必 要 が あ る . 電 極 に 高 入 力 イ ン ピ ー ダ ン ス の 計 装 ア ン プ を 内 蔵 し た ア ク テ ィ ブ 電 極 を 用 い れ ば , そ の 特 殊 な 研 磨 剤 で 擦 る こ と が 不 要 と な る が , 皮 膚 と 電 極 と の 間 を 電 気 的 に 接 続 さ せ る た め に 特 殊 な 導 電 性 の 電 極 ゲ ル 等 を 用 い る 必 要 が あ る . そ の た め に , 電 極 ゲ ル 等 が 乾 燥 す る た び に , 装 着 準備を行わなければな らない.また,電極数は数 個から100個を超えるものまである.

このことは,実用上に おけるEEGの方法の大きな短所である.

EEGの方法以外の非侵襲的な計測法につい て,その概略を述べる .MEGの方法は,

神 経 活 動 に よ り 発 生 す る 磁 場 を 頭 部 表 面 に 配 置 し た コ イ ル で 計 測 す る 手 法 で あ る . NIRSは,脳血管中の脳活動に伴うヘモグロ ビンの酸素化,脱酸素化時の近赤外領域 に お け る 分 光 吸 収 係 数 の 変 化 を 計 測 す る も の で あ る . こ の 他 に も , 脳 活 動 に 関 わ る 脱酸化ヘモグロビンの 減尐 (blood oxygenation level-dependent: BOLD) 信号の変 化 に つ い て 核 磁 気 共 鳴 現 象 を 利 用 し て 計 測 す る 機 能 的 磁 気 共 鳴 画 像 (functional magnetic resonance imaging: fMRI) や, グルコースに似た物質 に放射性のフッ素 (18F) を つ け た18F-フ ル オ ロ デ オ キ シ グ ル コ ー ス (18F-fluorodeoxy glucose:

18F-FDG) を体内に 投与して,その集積の程 度から神経伝達物質の 受容体分布,ブド

ウ 糖 消 費 量 , 局 所 血 流 量 , 酸 素 消 費 量 な ど の 生 理 学 的 機 能 情 報 を 定 量 的 に 画 像 と し て与える陽電子放出断 層撮影 (positron emission tomography: PET) などがある.

これらの計測に おける 実用上の 短所も それぞ れ持っている.MEG計測装置は巨大な 装置であり,非常に高価な装置であることが 短所としてあげられる .NIRSは計測方 法が確立していない部 分もあり,NIRS計測では空間分解能や時間 分解能が低いこと が短所である.fMRI計測では時間分解能が 低いことや,計測に数Tの強磁場を用い

表 3.1 脳信号の非侵 襲計測手法 の比較

EEG MEG NIRS fMRI PET

計測対象 脳活動 脳活動 脳血流 脳血流 脳血流

空間分解能 ×3~4cm △5~10mm ×2cm ○3~5mm ○1~10mm 時間分解能 ○1ms ◎0.1ms ×4~5s ×4~5s ×>30s

時間遅れ ◎ なし ◎なし ×4~5s ×4~5s ×>30s

侵襲性 ◎ なし ◎なし ◎なし ◎なし ○低

計測安定性 ○高 ○高 ○高 ○高 ×低

可搬性 ○良 ×なし ○良 ×なし ×なし

て お り , 人 体 に 与 え る 影 響 は 未 知 の 部 分 が あ る .PET計 測 で は 時 間 分 解 能 が 低 い こ と や ,18F–FDGが グ ル コ ー ス に 放 射 能 を 出 す 成 分 ( ポ ジ ト ロ ン 核 種 ) を 組 み 込 ん だ ものであるので放射性 薬剤が生体に何らかの 危害を加える可能性が ある.

こ の よ う に 脳 活 動 を 計 測 す る 方 法 と し て は い く つ か の 方 法 が あ る . 今 ま で 述 べ て き た よ う に , い ず れ の 方 法 に も 長 所 と 短 所 が あ る . 本 研 究 で は 脳 活 動 の 計 測 法 と し て技術的な問題から侵 襲計測手法は用いない .表 3.1 に脳信号のおもな非侵襲計測 手法についてまとめた .

こ の表 を 参 照 して も 分 か る通 り EEG の方 法 は安 価 で か つ高 い 時 間 分解 能 で 簡 易 に測定できるという利 点から最もよく用いら れている.本研究で も EEGの方法を用 いて脳活動の計測を行 う.

3.2 EEG の計測 手法

本節では EEG の計測手法について の一般論 と,本研究における EEG 計測につい て述べる.

3.2.1 EEG 計測手法の一般論

2.3節で述べたように ,多数の皮質神経細胞 の樹状突起における,同一極性でかつ 同期している EPSP の総和が EEG の発生源である.生きている人 間の頭部表面に 2 つの 電極 を 取り 付 ける と, その 間 に数 十 μV 程度 の電 圧 が生 じ る. この 頭 皮表 面 の 電位を数十~数百 の電 極を用いて測定する. 対象とされる EEG は約 0.5~60Hz の 範囲 で, 数 十μV 程 度の 微弱 な もの で ある ため に, こ れを 増 幅し ,記 録す る 高感 度 の増幅記録装置が必要 である.脳波計はその 微弱な EEG を増幅して計測する装置で ある.EEG を計測 するためには,電極に電 解ペーストをつけて 被 験者の 頭部に貼り 付け,その導出線を通 して電極箱に導き ,さ らに脳波計へと導いて 電位を測定する.

脳波計は,増幅器 (amplifier) と記録器 (recorder) からなっており ,脳に発生し ている微弱な電位変動 を ,増幅器によって 100 万~200 万倍に増幅 してから記録す る.また,EEGは頭皮上の各部位によって 波形や振幅が異なるこ とから ,その分布 を同時に測定する 必要 があり ,チャンネル数 も 16 や 21 チャンネルなど多チャンネ ルのものが一般的に用 いられている .

電極には,EEG を記録するために頭皮上に 装着する電極と ,頭皮 以外の部位に装 着 す る よ う に 工 夫 さ れ た 特 殊 電 極 と が あ る . 頭 皮 上 に 装 着 す る 電 極 に は 種 々 の 金 属 が 使 用 さ れ て い る が , 電 極 に 起 こ る 分 極 に よ る 電 流 成 分 が 生 じ な い よ う に , 銀 - 塩 化銀 (Ag-AgCl) 電極が最も分極が尐ないと されてよく用いられて いる .銀板を直径 1cm 以下の円形に切 り抜いたもので ,浅い くぼみをもった 皿状の ものを用いる .電 極 糊 を 皿 の 部 分 に 入 れ た り , 飽 和 食 塩 水 を 浸 し た ガ ー ゼ 片 を 巻 き 付 け た り し て , 頭 皮に装着する.

実際には電極を配置し た 電極キャップを被験 者に装着して実験を行 う .EEG は国 際 的 に 取 り 決 め ら れ た 電 極 位 置 に よ り 計 測 す る . そ の 国 際 的 な 基 準 の 一 つ と し て 国 際 臨 床 神 経 生 理 学 会 連 合 が 推 奨 す る 10-20 電 極 配 置 法 (ten-twenty

electrode-system) (以下国際 10-20 法と略す)がある[18].こ れは最も一般的な

電 極 配 置 法 で あ り , 図 3.1 の よ う に 配 置 さ れ て い る . 鼻 根 (nasion) か ら 後 頭 極 (inion) まで を 結 ぶ 矢 状 中央 線 を ひ き, そ の 中 点を 頭 頂 (vertex) と する . 矢 状 中 央 線の長さを 100%として,それ に対して 10%または 20%ごとに印をつける.次に,

鼻 根 , 左 右 の 耳 介 前 点 , 後 頭 極 を 通 る 頭 蓋 の 周 線 を 考 え , そ れ ぞ れ 両 側 の 周 線 の 長

さを 100%として,それに 10%または 20%ごとに印をつける.続 いて,頭頂を中心

平面図 矢状面

図 3.1 国際 10-20法にしたがった計測

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