第 6 章 Cu 基材を用いた MgB 2 薄膜およびプローブコイルの 作製と評価
2. Cu線設置1. Cu 線形成・洗浄
i) コイル形状への成型
ii) アセトン中超音波洗浄 (5分間)
iii) HNO3水溶液洗浄
(20% HNO3水溶液, 1分間浸漬)
コイル径:φ8 mm
アセトン 20% HNO3水溶液 Cu線(線径:φ1mm)
ネジ留め
図6-11. Cu線上にMgB2薄膜を被覆するプローブコイルの作製工程
(a) (b)
Ct:同調用トリマコンデンサ Cm :整合用トリマコンデンサ Ct
Cm
測定治具 先端ステージ トリマ
コンデンサ プローブ
コイル試料
信号線
(a) (b)
Ct:同調用トリマコンデンサ Cm :整合用トリマコンデンサ Ct
Cm Ct
Cm
測定治具 先端ステージ トリマ
コンデンサ プローブ
コイル試料
信号線 φ8 mm
図6-12. Cu線上MgB2薄膜プローブコイルの (a)測定治具への実装写真、(b)等価回路
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000
200 300 400 500 600 f(MHz)
Q
MW-08 [600nm]
MW-05 [240nm]
MW-06 [240nm]
MW-09 [120nm]
Cu線
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000
0 200 400 600 800 校正膜厚(nm)
Q
(a)
(b)
温度:4.2K
共振周波数:500 MHz 温度:4.2K
MgB2膜厚(nm)
試料No [MgB2膜厚]
※MgB2膜厚:0 nmはCu線コイル
図6-13. 超伝導MgB2薄膜アンテナコイルのQ値
(a)各プローブコイル試料のQ値-周波数依存性、
(b)Q値のMgB2膜厚依存性(500MHz)
いてインピーダンスを 50 Ωに整合した共振波形(インピーダンスの周波数依存性)
から測定した値である。図6-13の測定結果より、MgB2薄膜の膜厚増大に伴いプロー ブコイル試料のQ値が向上する傾向が確認される。試作した中でMgB2薄膜の膜厚が 最大の試料(MW-08:膜厚600 nm)においてQ=10140(共振周波数:500 MHz)を得 た。この値は、Cu 線で作製した同形状の 4 ターンソレノイド型プローブコイル
(Q=3760, 共振周波数:500 MHz)と比較して2.5倍高い。従って以上の結果より、
Cu 線材上の MgB2薄膜を用いたプローブコイルが極低温動作の常伝導プローブコイ ルよりも低損失であることを実証した。
また、図6-13 (b)に示した、プローブコイル試料のQ値がMgB2薄膜の膜厚とと
もに向上する結果は、Cu基材表面におけるMgB2薄膜の被覆状態に関係すると推測さ れる。超伝導薄膜を被覆する金属線材プローブコイルとしては、高周波電流が流れる 線材表面を低抵抗化するために、金属線の表面全てを超伝導薄膜で被覆する構造が理 想的である。ただし、Cu線上の凹凸がある場合、被覆するMgB2薄膜が局所的に薄く なる、もしくは下地の凹凸の陰になってMgB2薄膜で被覆されない箇所が発生すると 予想される。図6-13(b)の結果において、MgB2の膜厚が薄い領域では、Cu線表面を完 全に MgB2で被覆できず、下地 Cu が表面に露出した箇所で抵抗が増大することによ ってQ値の低下を招いたと考えられる。
6.6. 第6章のまとめ
第6章では、金属基材上に形成したMgB2薄膜のNMRプローブコイルへの適用 検証を目的として、Cu基材上へのMgB2薄膜形成法の検討と超伝導特性の評価、およ び、Cu上MgB2薄膜を用いたプローブコイルの試作と共振特性の評価を行った。検討 の結果、以下の結論を得た。
(1)Cu基材上に形成したMgB2薄膜は30 K以上の臨界温度を示し、Al2O3基板上に 形成した薄膜と同様、c 軸に配向した柱状結晶粒が形成されることを XRD 分析 とTEMによる断面観察から明らかにした。
(2)Cu 基材上に形成した MgB2薄膜は、膜面と水平磁場中においては Al2O3基板上 の薄膜と同等の臨界電流密度Jc=5.9×104 A.cm2(磁場:12 T, 温度:4.2 K)を示
し、500 MHz、600 MHz NMRプローブコイルへの適用に充分な臨界電流を達成
できる見通しを得た。
(3)Cu基材上に形成したMgB2薄膜の臨界電流密度は、膜面と垂直磁場中ではAl2O3
基板上に比べ低下した。断面TEM観察と電子線回折による分析から、その要因 は柱状結晶粒の成長方向の不均一性が大きいためであると示唆される。
(4)Cu線上にMgB2薄膜を形成した4ターンソレノイド型プローブコイルにおいて Q>10000(周波数:500 MHz,温度:4.2K)を達成し、極低温動作の常伝導プロ ーブコイルと比べ低損失であることを実証した。
第6章の参考文献
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