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Cu 基材上 MgB 2 薄膜の評価分析方法

第 6 章  Cu 基材を用いた MgB 2 薄膜およびプローブコイルの 作製と評価

6.1.  第 6 章の緒言

6.2.2.  Cu 基材上 MgB 2 薄膜の評価分析方法

Cu基材上に形成したMgB2薄膜について、以下の分析と特性評価を行った。

薄膜の結晶構造をXRDで分析した。また、TEMによる薄膜断面の微細構造観察 を行った。薄膜の臨界温度は、超伝導量子干渉素子 SQUID による磁力計を用い、磁 化の温度依存性から評価した。磁化測定から臨界温度を評価したのは、4 端子測定で は基材のCuにも電流が流れるため、MgB2薄膜の超伝導転移前でも試料抵抗が小さく、

超伝導転移点の判読が難しいためである。

磁場中で用いるNMRプローブコイルへの適用可否を検証するため、0〜12 Tの 磁場中で、Cu基材上に形成したMgB2薄膜の臨界電流および臨界電流密度を測定した。

測定評価した試料の名称と概略を表 6-1 にまとめる。第 4 章で示したように、MgB2 薄膜の臨界電流は磁場に対して異方性を有するため、本研究では印加する磁場の方向 を変えて臨界電流を評価した。図6-2に、薄膜の成膜方向と印加磁場方向との関係を 模式的に示す。本報告では、Mg と B 蒸気の供給方向(MgB2薄膜の成長方向)と垂 直な面を「膜面」として、膜面と水平に印加する磁場を「水平磁場」と定義する。そ れに対し、膜面と垂直方向に印加する磁場を「垂直磁場」と定義する。

表6-1. 臨界電流を評価したMgB2薄膜試料 試料No 基材 基材寸法 膜厚 備考

試料A Cu平板 2×20 mm2

厚さ0.5 mm

1700 nm

試料B Cu丸線 線径1 mm 2400 nm ・表裏2回成膜

試料C Al2O3基板 20×20 mm2 厚さ0.5 mm

350 nm ・比較基準の試料

・Ic測定時は幅0.20 mmの ブリッジパターンに加工

6.3.  Cu基材上MgB2薄膜の特性 6.3.1.  薄膜の結晶構造と臨界温度

はじめに、基材の違いによる薄膜の結晶構造への影響を調べるため、Cu 平板と Al2O3基板上へ同時に MgB2薄膜(膜厚 2 m)を成膜し、XRD 分析を行った。図 6-3 に、Cu平板上に形成したMgB2薄膜試料と、Al2O3(0001)基板上に形成したMgB2薄膜 試料のX線回折パターン(θ-2θスキャン)を示す。図6-3(a)、(b)において、いずれ

のMgB2薄膜でも MgB2(001)と(002)の回折ピークが観測され、それ以外の結晶軸に対

応する回折ピークは確認されない。したがって、Cu平板上に形成したMgB2薄膜でも、

Al2O3基板上のMgB2薄膜と同様に、c軸配向した結晶構造を有するとわかった。

丸線基材 平板基材

垂直磁場中測定 水平磁場中測定

成膜時

丸線基材 平板基材

垂直磁場中測定 水平磁場中測定

成膜時

MgB2

Mg, B供給方向

(片側成膜時)

磁場 電流

【断面図】

電流

MgB2

磁場 磁場

Mg, B供給方向 磁場

【断面図】

【断面図】

【断面図】

磁場 磁場 電流

電流

磁場

磁場

図6-2.  成膜方向と印加磁場方向

Cu 平板上に形成した MgB2薄膜の、より微細な結晶構造を明らかにするため、

TEMによる薄膜の断面観察を行った。図6-4に、Cu平板上MgB2薄膜の断面TEM像 を示す。まず、薄膜内に空孔等は観察されず、Cu基材上であっても稠密なMgB2薄膜 が形成されているとわかる。さらに、矢印と点線で代表的な箇所を示したように、薄 膜内全体で基材から垂直方向に伸びた結晶粒の粒界が確認できる。この構造は、Al2O3

基板上に形成したMgB2薄膜と同様であり、薄膜内に柱状の結晶粒が形成されている ことを示す(第 4 章参照)。 以上、XRD 分析とTEM 観察結果より、Cu 基材上に形 成したMgB2薄膜でも、Al2O3基板上のMgB2薄膜と同様に、c軸配向した柱状結晶粒 が成長することが判った。

続いて、Cu 基材上に形成した MgB2薄膜の臨界温度を評価した。図 6-5 に、Cu 丸線(線径:1 mm)表面にMgB2薄膜(膜厚:1.2 m)形成した試料の、外部磁場

10 Oeでの磁気モーメントの温度依存性を示す。図6-5の測定結果に示すように、温

度36Kを境に磁気モーメントの温度依存性が変化し、低温度側で磁気モーメントが 負側に増大している。これは超伝導体特有の磁化特性であり、本測定結果より Cu 線上に形成した MgB2薄膜において 36K での超伝導転移を確認できた。以上の結果 より、Cu基材上に形成したMgB2薄膜でも、Al2O3基板上のMgB2薄膜と同等の臨界 温度が得られることを実証した。

10

1

10

2

10

3

10

4

10

5

In te n s it y ( c p s )

80 70

60 50

40 30

20

10 (degree)

10

1

10

2

10

3

10

4

10

5

In te n s it y ( c p s )

80 70

60 50

40 30

20

10 (degree)

MgB2 (001) MgB2 (002)

★:Cu基材のピーク

(a)

MgB2 (001) MgB2 (002)

★:Al2O3基板 のピーク

(b)

図6-3.  MgB2薄膜のXRD回折パターン(θ-2θスキャン) 

(a)Cu平板上、(b)Al2O3基板上

Cu MgB

2

Cu MgB

2

図6-4. Cu平板上に形成したMgB2薄膜の断面TEM像

 

   

-3.E-04 -2.E-04 -1.E-04 0.E+00 1.E-04

0 5 10 15 20 25 30 35 40 T (K)

磁 気 モ ー メ ン ト   M  ( e m u)

外部磁場:10 Oe

36 K

図6-5.  Cu線上MgB2薄膜における磁気モーメントの温度依存性

(測定外部磁場:10 Oe)