第一節 ルイス酸による2一アリールシクロヘキセンの転位反応
第二章において・触媒的野斉合成によるキラルシントンの合成について述べた。そこで全合成計画におけ る次の鍵反応である・分子内カルボニルエン反応によるヒドロインドール骨格の構築を検討することとした。
まずcrinine型アルカロイドの全合成に先立ち、高い鏡像異性体過剰率で生成物を与えたジメトキシ体を用 いて(一〉一mesembrane合成中間体の合成を試みた。
アセタール(S>一1・49をアセトン溶媒中FeCI3・SiO,43により脱保護してアルデヒド183を得た後、最初の選 択としてルイス酸を用いた検討を行った(Scheme 34)。183に対して塩化メチレン中、ルイス酸として塩化 鉄、四塩化チタン、塩化ジメチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、MADを作用させたが、反応 は複雑な混合物を与えるのみであり、目的物は全く得られなかった。
Scheme 34 184
しかしルイス酸として塩化アルミニウムを用い、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を用いて反応を停止した 場合には・極性の高い化合物186が主成績体として得られた(Tabl・14).186はアセチル化によV*酸基を
2つ持つ事が判明した・またルイス酸触媒を用いたエン反応において S、形式的に生成物の2重結合に士葛化 水素が付加した化合物が得られる場合があることが知られている。そこで反応混合物をジイソブ。ピルエチ ルアミンで後処理したところ・先とis異なる低極性化合物185・が分離困難な185bとの混合物として得ら れ・また185のアセチル化は進行しなかった。
Table 14, Lewis acid−promoted rearrangement of 183.
ム
183一灘N稔噂N穐獄
185a 185b 186
Lewis AcidR2AICI complex mixture TiCS4, FeC13 comptex mixture
・IYiA.Q.......一.........一...一.....。鯉B....一................
AICI3;H20
3% 2% 50%
46
L露雑
Ittttttt
一方、四塩化スズを用いた場合には塩基処理した場合と同じ185が主成績体として得られ、更にその使 用量を100mol%から10 mol%へと減じた場合、驚くべき事に収率が向上して185aが単一成績体として
得られた(Scheme 35)。
つOMe s・Cl・
\
185a+185b Ts CH2CI2・・rt
グ N>CHO
lOO mol% 19%(2:1)
10moi% 89%(>20:1)
183
Scheme 35. Tin chloride・catalyzed rearrangement of 1 83.
低極性化合物について各種機器スペクトルを詳細に検討した結果、3 Me
Me 『←ウニNOESY 〈 一:HMBC
環性化合物185aであることが半1」明した(Fig・・e 29)・構造の帰属におい9一議
て特に重要であったのは・5・2PPmに・i・gl・tとして現れる核間プ・トン捌/、贈Pり一
をtp・ib t UたHMB びN・ESYの相関関係であった・
Figure 29.2D−NMR correlation.
予想される反応灘を以下に示した(S・h・m・36)・初めに183のカルボニル基C:・」レイス酸が配位し(187)、
次に環化が進行してビシクロ【3.3。1】骨格の形成とともにベンジルカチオン188が生成する。更にイミニウム カチオンの生成に伴う・鞭位へのWagner−Meerw・i・転位により、環拡大反応が進行してビシク・【4.3.。】
骨格を有する中間体189となる・この189が、後処理で水解されること こよってジオー・一一ル186が得られ、
また酸素の分子内三二攻撃で3環性化合物185が得られたと考えられる,,
187b 188b 18gb
47
発
、鋸騨
.購灘i灘.鑛鑛雛 朧
葦t ;『弼
rsRgiwww.yww
轡菊惑
距鍔p
2一アリールシクロヘキセン誘導体190の転位反応が、S61yomらにより報告されている(Scheme 37)。44 この場合においても酸性条件下で・ベンジルカチオンが生成した後に転位反応が進行していることから、目 的とする分子内カルボニルエン反応は・ルイス酸を用いた場合には進行しないことが、この報告からも示唆
された。
∴( Meso3H.Ar =p−chloropheny)嘉h爆
i f t
Scheme 37.
一方・超高圧条件下での反応も検討したが・やはり目的とする化合物 S得ることが出来なかった(S、h,me
38)o
Scheme 38.
萱1∵騰壽
F−t Ts
183 184
C・i・i・e型アル加イド合成に用・、る基質を用・、た場合においても、同様の転位反応が進行した。
&一〇
X.ksVfil., 20 mol e/o SnCI4
ミノグ鼠 ︒
(S)一141
CH2C12, rt, 2 h (860/o)
48
NTs
185c
㌧一∵事謙三巴﹁㌧・・二三.・
.・芝﹂駁ワ覗︑・︑r﹁.κ霧蒔盤一.︑﹃︑. ㌔蓋ン︐距.一r吋7︑・=﹂﹁匙.・い.・ ・.・・藁喝歩一 ︐.麟悪難
灘・ 蜻U購一一1山山灘.灘1白白二二灘懸v
弩ごへ7塁
、
第二節 分子内カルボニルエン反応によるヒドロインドール骨格の構築
前節において・crinine型アルカロイドの全合成における2つ目の鍵反応である、分子内カルボニルエン 反応は・ルイス酸を用いた場合には全く進行しないことを述べた。そこで次に、加熱条件下での反応を検討
することとした。
反応溶媒にトルエンを用い封管中で反応を行ったところ、粗生成物は複雑な混合物であったが、分子内カ ルボニルエン反応も同時に進行して5%の収率ながらも目的物184を得ることができた(Table 1 5, entry 2)。
反応温度を上昇させることで収率は向上したが・その際収率の再現性は全く得られなかった(entry 3,4)。反 応終了後、系内のpHは約6であったことから、分解物に由来する酸性化合物が先に述べた転位などの副反 応を促進している可能性があると考えた。そこで塩基性化合物を中心として種々の添加剤を検討した結果、
モレキュラーシーブス4Aの存在下で反応を行った場合に薄層クロマトグラフィー上の副生成物が激減して、
ほぼ一定の収率で目的物を得ることができた(entry 5,6)。★更に、高度真空下180.Cで乾燥したモレキュラ ーシーブス4Aと、FrP法を用いて脱気した反応溶媒を用いると収率が向上して、目的物を54・60%、
conversion yieldでは最高77%で得ることが出来た(entry 7,8)。
Table 15, lntramolecular carbonyl−ene reaction under thermal condition.
pmt C M−SL−4−A S M(o/.) yietd(o/.>a
1 110 48 no 一 0
2 180 15 no 一 〈5
3 200−230 3 no 一 O−26
___4一.●_.2」翻q。鰹qq._....」,9_..._.・09___...圃二_一_輌葡._β=〜6.口_偶5 230 O.8 yes 一 30−40
.. .6...一.一. .2.3.Q.一..一..一Q .5. .一...一yes. .... .3.6: il一一一39:33 .(.一一.6.D.
7 230 1,1 dry 一 54−60
mp8 230 08d 53
aThe number in parentheses shows conversion yield.苫.﹂
得られた184は、2重結合と水醜の除去により、短工程で(一〉一m,、emb,ane合成中間体に導くことカ、
出来る(S・heme 39)・初めにメタノール輌結晶すると、回収率82%で99.5%eeを持つ184を得ること
*副成物として・ S一トルイルトルエンチオスルホン酸エステルが同時1こ得られた。
49
鰻
﹁1垂垂 喜喜違慧礪麓霧譲響
;ktti
譲 磯撃 一
ttl 1
蟹■
が出来た。2重結合を接触還元して193を得た後にキサンチン酸エステル194とし、ラジカル条件下で還 元して得られた化合物195は・文献23記載の機器データと良い一致を示したことから、(一)一mesembrane(52)
の形式的全合成を短工程で達成することに成功した。・
︑..へ頃.−﹁重縁卑見!−
:一一N
内Ts
184880/o ee
>99e/o ee
MeOH, recryst. コ
(820/o rec.)
;一一一N
白Ts 193
Bu3SnH, cat. AIBN
;一NN
内Ts
194
toluene, reflux, 3 h
(120/o, 860/o based
on recoverd 193)
M
ref.23
塔︒玲締
晩
(一)一Mesembrane (52)
Scheme 39, Formal total synthesis of (一)一mesembrane.
澗条件下及びBH・一nB・、Pによる翫〃5を用いた場合にお・・て、フェニルチオ炭酸エステル196の還元反応 ;全く進行せ ず・アルP一ル体193のみが得られた.また193の酸性条件下、トリエチノレシランによるere的な翫、水醜の臭素 への変換・もしくはメタンスルホン酸エステル197のヒドリド翫礎行しなかった。更にケトン体198のCl。mmensen 還元またはWolff・Kishner還元を行った場合でも目的物195は全く得ることが出来なかった。
1琴6Ts
M唱eMs
1雪7Ts
50
1 sTs
一一 ?一一 195
三七欝 懲讐回
国
騰
静
ttiii」llllllllll灘
:、・』事
第三節 crinine型アルカロイドの全合成
前節までの検討により、光学活性なヒドロインドール骨格を得る方法論を確立することができた。そこで
著者は、キラルシントン(S)一1・50を用いてpretazettine(1)の全合成に着手した。
不斉アミノ化で得られた(S)一1 50をメタノール一再結晶したところ・得られた結晶はラセミ化合物であり・
母液中から99%eeを持つ(S)一150を得ることができた(Scheme 40)。続いてアセタールを脱保護し(141)・
第二節での条件下で分子降等ルボニルエン反応を行い・鍵化合物である光学活性なcis−3a一アリールオクタ ヒドロィンドール骨格139を得ることができた(Table 16)。
Scheme 40. Construction of cis−3a−aryloctahydroindole moiety.
\∠
ρ グ
k・鵬E,
( S)一1 50
(74010 ee)
recrystailization
from MeOH
crystal
illL一.zxl/
40/o ee
十
mother liquor
(7301e recovery)
1!︐Ill
−a,s一一b−
99e/o ee
HPLC conditions; Daicel Chiralpak AS Hex l iPrOH=9月。UV 235 nm
Feci3・sio2 acetone (O.Ol M)
rt, 50 min (830/o)
rt
l ミ
/ Ts
,f lvNv.CHo