第 3 章 正孔電子対消滅シミュレーションによる界面欠陥解析 〜 CMOS イメージ
3.5 Charge Pumping 界面準位抽出手法との比較
上述したCISのReadトランジスタ動作に伴う電子捕獲、正孔対消滅の描像は、Charge
Pumping(CP)手法を用いた界面準位抽出と非常に類似していると言える。図3.9に比較
した模式図を示す。Charge Pumpingはゲートに正と負の電圧をパルス状に印加し、正バ イアス印加で反転時に絶縁膜界面に捕獲した電子が負バイアス印加で蓄積された正孔と対 消滅される際に流れる基板電流(Icp)をモニターすることで界面準位密度を抽出する手法
である [15, 16]。この際、対消滅せずに単に放出された電子は基板電流に寄与しないため
に、界面準位にはカウントされない。一方、CISのReadトランジスタ動作でも同様にOn 時に電子が捕獲され、Off時に正孔対消滅が起きていると予想される。また、Off時に放 出されてFDに戻った電子は黒沈みには寄与しない。上記類似性から、Charge Pumping で測定される欠陥と黒沈みに寄与している欠陥が同様のものだと推測できる。
図 3.9: CP法と黒沈みシミュレーションの比較模式図。(a)CP法、(b)黒沈みシミュレー ション。
CP手法において立ち上げ、立下り時間依存性からトラップサイトのエネルギー分布を 見積もる手法が良く用いられる[16]。前述したように捕獲された電子が正孔対消滅せずに 放出した場合、Icpには寄与しない。そのため例えば立下り時間を遅くした場合、正孔が 蓄積する前に電子が放出されるとIcpは低下する。捕獲放出時間は界面からの距離が一定 であれば、欠陥のエネルギー準位で決まるため、立下げ、立ち上げ時間に応じたIcpを測 定することで界面欠陥密度のエネルギー分布が得られる。図3.10はそのようにしてCP法 で得られた界面欠陥密度のエネルギー分布である。およそ0.3eVから上のSi伝導帯近傍 において界面欠陥密度が増加している。
そこでシミュレーションにおいてもSi伝導体近傍(Et = 0.3−0.5eV)のみにトラップサ イトを分布させて計算を実施した。深さ方向にはSi/SiO2界面近傍1nmのみに一様に分 布させた。ここでCP法との比較のため、立下げ時間(Tf)10nsecと100nsecの2通りの場 合の挙動を調べた。図3.11にゲートOff後500nsec経過時のトラップサイトの状態分布を 示す。界面から0.5nm程度以内の界面極近傍において、Tf=10nsecの場合には正孔対消滅
図 3.10: CP法で求められた界面トラップ密度のエネルギー分布。nMOSFET [16]。
図 3.11: トラップサイト状態分布 左図Tf 10nsec 右図 Tf 100nsec(Off後500nsec経過後) トラップサイト準位分布 0.3eV 〜 0.5eV
がされているトラップサイトがTf=100nsecの場合には電子放出されている。CP法と同 様にTfが遅いために正孔が蓄積される前に電子放出が起きているためと考えられる。ま たいずれの場合もゲートOff後500nsec経過時には電子捕獲されているトラップサイトは ほとんど残っておらず、黒沈みに寄与しているのはほとんどが正孔対消滅されたトラップ サイトであることが分かる。
図3.12にトラップサイトの空間状態分布を示した。チャネル中央部のトラップサイト で主に正孔対消滅が起きている。より詳しく見るために図3.13にグラフを示す。黒沈み に寄与する正孔対消滅はドナー濃度が高く、かつOff時に正孔が生成されている領域で発 生している。これはドナー濃度が高い領域で電子捕獲が起き、Off時に正孔が生成された 領域で対消滅が起きているためである。
図 3.12: トラップサイト状態空間分布Tf 100nsec(Off後500nsec経過後) トラップサイト
準位分布 0.3eV 〜 0.5eV。基板中の不純物濃度分布も図示。
図 3.13: トラップサイト状態空間分布 左図:不純物密度との比較、右図:正孔密度との
比較。