第 4 章 Hawking 輻射の反作用 43
4.2 CGHS モデル
2次元時空におけるEinstein-Hilbert作用R d2x√
−gRは、オイラー数であり時空のトポ ロジー的な性質のみで決まってしまう。そのため、Einstein-Hilbert作用では意味のある重力 理論にはならない。実際、2次元ではEinsteinテンソルは恒等的に0になってしまう。場と して計量gµνだけでは、2次元では自由度が−1になってしまうので、意味のある重力理論を 作るためにはほかに場を導入する必要がある。ここで考える2次元の重力モデルは、dilaton φを導入して、
SCGHS= 1 2π
Z d2x√
−g[e−2φ(R+ 4(∇φ)2+ 4λ2)−1 2
XN
i=1
(∇fi)2] (4.2.1) である。fiは物質場である。また、λはmass次元を持つパラメータである。このモデルは、
Callan, Gidding, Harvey, Stromingerによって調べられ、CGHSモデルと呼ばれる[31]。こ のdilaton gravityは、2.3.1節でも見たように、高次元のEinstein-Hilbert作用に球対称性 を課してdimensional reductionするとしばしば現れる。あとで量子化されたfiがHawking 輻射を生み出すことが分かるが、反作用の効果を見るためにまずfiを古典的に考えて、そ
の結果と量子的に考えた結果を比較することにする。この作用から導かれる運動方程式は、
2e−2φ(∇µ∇νφ−gµν∇2φ+gµν(∇φ)2−λ2gµν) +1
4gµν(∇fi)2−1
2∇µfi∇νfi= 0, (4.2.2)
R−4(∇φ)2+ 4∇2φ+ 4λ2= 0, (4.2.3)
∇2fi = 0 (4.2.4)
である。fiが2回出てくるタームはiについて和をとることを約束しておく。この運動方程 式における物質場が重力崩壊する解を求めよう。計量は一般座標変換を使って
ds2=−e2ρdx+dx− (4.2.5)
の形にとる(conformal gauge)。このゲージ固定では、まだx+→ x+0(x+),x− →x−0(x−) のゲージ自由度が残っている。なぜなら、この変換をしても
ds2 =−e2ρdx+ dx+0
dx−
dx−0dx+0dx−0
=−exp µ
2ρ+ ln dx+
dx+0 + ln dx− dx−0
¶
dx+0dx−0
(4.2.6)
となり、conformal gaugeの形が保たれるからである。この残ったゲージ自由度を用いれば、
ρ→ρ+ (x+のみの関数) + (x−のみの関数) (4.2.7) とできることも分かる。conformal gauge条件のもとでは、運動方程式は
e−2φ(4∂+ρ∂+φ−2∂+2φ) +1
2∂+fi∂+fi = 0, (4.2.8) e−2φ(4∂−ρ∂−φ−2∂−2φ) +1
2∂−fi∂−fi = 0, (4.2.9) e−2φ(2∂+∂−φ−4∂+φ∂−φ−λ2e2ρ) = 0, (4.2.10)
−4∂+∂−φ+ 4∂+φ∂−φ+ 2∂+∂−ρ+λ2e2ρ= 0, (4.2.11)
∂+∂−fi = 0 (4.2.12)
と書ける。式(4.2.10),(4.2.11)より、
∂+∂−(ρ−φ) = 0 (4.2.13)
が得られる。つまりρ=φ+ (x+のみの関数) + (x−のみの関数) であるので、残ったゲージ 自由度を用いて、
ρ=φ (4.2.14)
とする。まだ、x±を定数だけずらすゲージ自由度は残っていることに留意しておく。式 (4.2.14)を用いれば、式(4.2.10)は、
∂+∂−e−2φ=−λ2
⇒e−2φ=−λ2x+x−+A(x+) +B(x−) (4.2.15)
となる。物質場fiとしては、ingoing shock waveを考える。つまり、
∂+fi∂+fi = 2aδ(x+−x+0)
∂−fi = 0 (4.2.16)
とする。この仮定は式(4.2.12)とconsistentである。このとき、式(4.2.8)は、
∂+2e−2φ=−aδ(x+−x+0)
⇒A00(x+) =−aδ(x+−x+0) (∵(4.2.15))
⇒A(x+) =−a(x+−x+0)θ(x+−x+0) +c1x++c3,
(4.2.17)
式(4.2.9)は、
∂−2e−2φ= 0
⇒B00(x−) = 0 (∵(4.2.15))
⇒B(x−) =c2x−+c4,
(4.2.18)
となる。よって、
e−2φ=−a(x+−x+0)θ(x+−x+0)−λ2x+x−+c1x++c2x−+c (4.2.19) が得られる。さらに、x±を定数ずらす自由度を用いれば、c1 =c2 = 0とできる(このとき x+0 も再定義してやる必要がある)。これで、ゲージ自由度は完全に使い尽くしたことになる。
最終的に得られた解は、
e−2φ=e−2ρ=−a(x+−x+0)θ(x+−x+0)−λ2x+x−+c (4.2.20) である。c= 0のときを考えてみると、shock waveが入射する前x+< x+0 では、
ds2 =−dx+dx−
λ2x+x− =−dσ+dσ−
λx+ =eλσ+ λx− =−eλσ−
(4.2.21)
となり、平坦な時空であることが分かる。我々が考えたいのは、平坦な空間にshock wave か入射してきてブラックホールができるような状況であるのでc= 0とする。
次にこの計量
ds2= dx+dx−
−a(x+−x+0)θ(x+−x+0)−λ2x+x− (4.2.22) の時空構造を調べてみよう。x+> x+0 において、リッチスカラーを計算すると
R= 8e−2ρ∂+∂−ρ
= −4λ2ax+0 a(x+−x+0) +λ2x+x−
(4.2.23)
となる。この式から、曲線
x+(x−+ a
λ2) = ax+0
λ2 (4.2.24)
がcurvature singularityであることが分かる。よって、この時空構造は図4.1のようになる。
さらにconformal変換をしてPenrose図を描くと図4.2のようになる。
図 4.1: 平坦な時空にshock waveが入射してきたときの時空図(Hawking輻射なし)
図 4.2: CGHSモデルのPenrose図