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CFS全面接着補強RC床版の耐疲労性の評価および 各種劣化要因を適用したS-N曲線式

ドキュメント内 土木工学専攻 元 燦豪 (ページ 92-126)

5.1 はじめに

近年,地方公共団体では,道路橋を対象とした長寿命化修繕計画が実施されている5.1),

5.2)。これによると,橋梁の構成部材の中で最も損傷が著しいのはRC床版である。特に,

高度経済成長期に建設された RC 床版は,設計荷重,床版厚,鉄筋量など,2002 年改 訂の道示の基準と比較して著しく異なっている 5.3)~5.9)。したがって,高度経済成長期に 建設された RC 床版については,疲労寿命の低下に加え,1994 年改訂の道示 5.7)の活荷 重に対応させるための各種補強対策が検討されている5.10)

一方,長寿命化修繕計画におけるRC床版の補強に は,疲労寿命の向上を図るため に,軽量かつ施工性に優れている CFS を用いた下面接着補強法が計画されている 5.10),

5.11)。また,長寿命化修繕計画においては,建設後 100 年を想定した維持管理計画が立

案され,LCCが算定されており,道路橋RC床版の100年間維持管理をするためには,2 次補強対策の検討も含めた修繕計画が立案されている 5.1)。しかし,RC 床版の CFS 下 面接着補強法においては耐荷力性能および耐疲労性は評価 5.12)されているが,疲労寿命 を予測するS-N曲線式については提案されていないのが現状である。

そこで,第 5 章では,RC 床版の補強対策として,RC 床版の下面に CFS を全面に接 着補強した寸法の異なる 2 タイプの RC 床版供試体を用いて輪荷重走行疲労実験を行 い,耐疲労性を評価する。「第 4 章 CFS 全面接着・CFSS 格子接着補強した RC 床版 の耐疲労性の評価」では,3タイプのRC床版供試体とCFS全面接着および CFSS格子 接着補強した RC床版供試体を用いて輪荷重走行面を乾燥状態で輪荷重走行疲労実験を 行った。しかし,実橋では雨天時の影響で橋面は湿潤状態であることが多いことから,

第5章では3タイプの供試体の内,床版の寸法が異なる2タイプの供試体を用いてCFS 全面接着補強した後,実橋における環境条件が RC 床版に与える各種劣化要因 5.13)を適 用した補強等価走行回数を得て,乾燥状態,湿潤状態,さらには再補強時期を推定す るための,それぞれの S-N 曲線式を提案し,道路橋 RC 床版の予防保全型維持管理手 法の一助とする。

5.2 RC床版の設計法の変遷5.3)~5.9) 5.2.1 RC床版の設計基準の変遷

RC床版に関する設計基準は,1926年6月(大正15年)に「道路構造に関する細則案(内 務省土木局)」が定められ,2012年3月過程の道示5.9)に至るまで多くの改訂が繰り返さ れ,この規定に基づいて RC床版の設計が行われてきた。なお,道路橋の床版に関する 設計示方書,基準の変遷を表-5.1に示す。

表- 5.1 に示すように,RC 床版の設計基準は,1926 年 6 月(大正 15 年)の「道路構 造に関する細則案」では,橋の等級,設計自動車荷重が定められ,その荷重による設

計活荷重曲げモーメントおよび衝撃係数,鉄筋の許容応力度が規定され,それに基づ いて RC床版の設計基準が与えられた。そして,社会情勢による車両の大型化,交通量 の増大に伴い,1956年5月(昭和31年)の「鋼道路橋設計示方書(日本道路協会)」からRC 床版の設計基準の本格的な整備が行われ改訂された。特に,車両の大型化により設 計自動車荷重が 20tf(T-20)へと引き上げられ,さらに,床版の適用支間も 4.0m まで とした活荷重曲げモーメント式,および最小床版厚が規定された。また,材料,設計,製

表-5.1 道路橋示方書の変遷5.3)~5.8) (1) 橋の等級,車両荷重,曲げモーメント

車両荷重*1

道路の種類 自 動 車 主鉄筋方向 配力筋方向

大正15年6月(1926.6) 1等 橋 T-12,P=4.5 道路構造に関する規則案(内務省土木局) 国 2等 橋 T- 8,P=3.0

3等 橋 T- 6,P=2.25

昭和14年2月(1939.2) 1等 橋 T-13,P=5.2 鋼道路橋設計示方書(案)(内務省土木局) 府 2等 橋 T- 9,P=3.6 昭和31年5月(1956.5)

鋼道路橋設計示方書(日本道路協会)

主 要 地 方 道 ML(1+i)={0.4・P(L-1)}/{L+0.4(L+i)}

都 道 府 県 道 昭和39年6月(1964.6)

鋼道路橋設計示方書(日本道路協会) 昭和42年9月(1967.9)

昭和43年5月(1968.5) 2<L≦4.0m

鋼道路橋の床版設計に関する暫定基準 (日本道路協会(案)) 主 要 地 方 道 都 道 府 県 道 昭和46年3月(1971.3) 高 速 自 動 車 道

都 道 府 県 道 (9.6tf)

都 道 府 県 道 昭和48年2月(1973.2)

道路橋示方書(日本道路協会)

昭和48年4月(1973.4) 特定路線に架かる橋高架の道路等の技 [ 湾 岸 道 路 ] 術基準(建設省都市局長,道路局長) [高 速自 動車 道]

昭和53年4月(1978.4) 高 速 自 動 車 道 道路橋鉄筋コンクリート床版の設計,

施工について(道路局企画課長) 都 道 府 県 道 (9.6tf)

都 道 府 県 道 昭和55年4月(1980.4)

道路橋示方書(日本道路協会) 平成5年11月(1993.11)

橋、高架の道路等の技術基準について (2局長通達)

平成6年2月(1980.4)

道路橋示方書・同解説(日本道路協会) 平成6年2月(1994.2)

道路橋示方書・同解説(日本道路協会) 平成8年2月(1996.2)

道路橋示方書・同解説(日本道路協会)

平成14年2月(2002.3) T-25

道路橋示方書・同解説(日本道路協会) P=100kN

規定なし

ただし, i=20/(50+L)

T荷重において分布幅を考慮して曲げモーメントを算出 i=20/(60+L)≦0.3

ML(1+i)=P(L-1)/2×(1+i) 2輪載荷の場合

橋の等級 曲げモーメント式*2

2等 橋 T-14,P=5.6tf i=20/(50+L)

1等 橋 T-20,P=8.0tf 2<L≦4.0m

ML(1+i)={0.4・P(L-1)}/(L+0.4) 2等 橋 T-14,P=5.6tf

1等 橋 T-20,P=8.0tf

規定なし

ML(1+i)=0.8(0.12L+0.07)P ML(1+i)=0.8(0.10L+0.04)P

2等 橋 T-14,P=5.6tf

1等 橋 T-20,P=8.0tf

ML(1+i)=0.8(0.10L+0.04)P・K K:計画交通量による割増係数 (2000台以上;K=1.2)

2等 橋 T-14,P=5.6tf

1等 橋

1等 橋 TT-43,P=6.5tf

ML(1+i)=0.8(0.12L+0.07)P・K K:大型車両の計画交通量による 割増係数(2000台以上;K=1.2)

T-20,P=8.0tf

T-25,P=10.0tf

鋼道路一方向鉄筋コンクリート床版の 配力鉄筋量設計要項

(建設省道路局長通達)

鋼道路橋の鉄筋コンクリート床版の設 計について(建設省道路局長通達)

ML(1+i)=0.8(0.10L+0.04)P B活荷重

A活荷重 T-25,P=10.0tf ML(1+i)=0.8(0.12L+0.07)P・Kα Kα:割増係数*4

(2) 鉄筋の許容応力度,最小床版厚,配力鉄筋

作技術の進歩と高度経済成長期における橋梁建設の増加という経済的な要請から,1964 年 6 月(昭和 39 年)の「鋼道路橋設計示方書」5.3)においては,鉄筋の許容応力度が

1,800kgf/cm2 へと引き上げが行われた。しかし,この当時設計された RC 床版は,交通

量の増大,過積載などにより 1965 年頃からひび割れ損傷が多く見られ,RC 床版の疲 労損傷機構の解明に関する研究が開始された 5.14)~5.18)

。これらの研究成果により設計基準 も大幅に見直され,1968年5月(昭和43年)の「鋼道路橋の床版設計に関する暫定基準

大正156月(1926.6)

道路構造に関する規則案(内務省土木局) 昭和14年2月(1939.2)

鋼道路橋設計示方書(案)(内務省土木局) 昭和31年5月(1956.5)

鋼道路橋設計示方書(日本道路協会) 昭和396月(1964.6)

鋼道路橋設計示方書(日本道路協会) 昭和42年9月(1967.9)

昭和43年5月(1968.5)

鋼道路橋の床版設計に関する暫定基準 (日本道路協会(案))

昭和46年3月(1971.3)

鋼道路橋の鉄筋コンクリート床版の設計 について(建設省道路局長通達)

昭和48年2月(1973.2)

道路橋示方書(日本道路協会) 昭和484月(1973.4)

特定路線に架かる橋高架の道路等の技 術基準(建設省都市局長,道路局長)

昭和534月(1978.4) t =k1k2t0

道路橋鉄筋コンクリート床版の設計,施

工について(道路局企画課長) t0=3L+11

k1;交通量の係数 k2;付加モーメントの係数 昭和55年4月(1980.4)

道路橋示方書(日本道路協会) 平成511月(1993.11)

橋、高架の道路等の技術基準について (2局長通達)

平成6年2月(1994.2)

道路橋示方書・同解説(日本道路協会) 平成82月(1996.2)

道路橋示方書・同解説(日本道路協会)

平成142月(2002.3) t =k1k2t0

t0=30L+110 k1;交通量の係数 k2;付加モーメントの係数 平成24年3月(2012.3)

道路橋示方書・同解説(日本道路協会)

*1:大型車が1方向1,000/日以上の場合は後輪荷重を( )内に示す。

*2:連続版で車両進行方向の場合のみ。

*3:t;床版厚さ(cm) (少数第1位を四捨五入する。ただしt0を下まわらないこと)

t0;道路橋示方書に規定される床版の最小全厚(cm)(少数第2位を四捨五入し,少数第1位まで求める) k1;大型車両の11方向の計画交通量や施工の難易度による係数(表-8.2)。

k2;床版を支持する桁の剛性が著しく異なるために生じる付加曲げモーメントの係数でk2=0.9 M/M0≧1.00 として与えられる。

許容応力度140N/mm2

1.400 kgf/cm2 t0=3L+9≧16cm 主筋方向の70%以上

1.800 kgf/cm2

主筋断面の70%以上

鉄筋の許容応力

有効厚さ11cm

1.200 kgf/cm2 規定なし

t0=3L+1116cm 配力筋方向モーメン

ト式により計算

最小床版厚*3 配力筋量

主筋断面の25%以上

鋼道路一方向鉄筋コンクリート床版の配

力鉄筋量設計要項(建設省道路局長通達)

許容応力度1400 kgf/cm2

対して,200 kgf/cm2程度 余裕を持たせる

道路橋示方書・同解説(日本道路協会)

表-5.2 大型車両の計画交通量による割増係数

(日本道路協会(案))」5.4),1971 年3 月(昭和 46年)の「鋼道路橋の鉄筋コンクリート床 版の設計について(建設省道路局長通達)」において設計活荷重曲げモーメントの増強,

床版厚の増厚,鉄筋の許容応力度の引き下げ,配力鉄筋量の増加などがなされた。そ して,1973 年 2 月(昭和 48 年)道路橋示方書 5.5)が改訂された。1973 年頃から RC 床版 のひび割れ損傷に対して,各研究機関では輪荷重移動試験機を開発し,走行荷重によ る疲労試験が行われ,ひび割れ損傷の原因究明が精力的に行われた。これらの研究成

5.14)~5.18)により,1978 年 4 月(昭和 53年)「鋼道路橋の鉄筋コンクリート床版の設計・

施工について(道路局企画課長)」では,大型車両の1日1方向の計画交通量や施工の 難易度による最小床版厚が規定された(表- 5.2)。さらに,1993 年 11 月,政府の規制 緩和により,大型自動車総重量が引き上げられたことにより,1994 年 2 月(平成 6 年) の道示 5.7)では,設計活荷重が 20tf から 25tf へと引き上げられ,現在に至っている。な お,2002年改訂の道示では,SI単位に変更され2012年改訂の道示に至っている。

以上のように,現在供用されている道路橋の RC 床版は 1956 年改訂の鋼道路橋設計 示方書から現行示方書の改訂に至るまで,設計活荷重,床版厚,鉄筋量などが改訂さ れている。特に,1994 年改訂の道示においては設計荷重が 80kN から 100kN へ改訂さ れ,現在では最大荷重 245kN の大型車両が走行している。したがって,道路橋を予防 保全型維持管理する上では,現行示方書の規定に準拠した活荷重に対応する補強対策 を行うか,建設当時の基準に準拠した補強対策を行うかが重要となる。長寿命化修繕 計画においては,設計された当時の耐荷力性能を確保する修繕計画がなされ,交通量 の多い路線などは現行示方書の基準に準拠した補強法が計画されている。

5.3 実験方法 5.3.1 供試体概要

本実験に用いる供試体は,「第4章」で用いた寸法の異なる2タイプの供試体であり,

輪荷重走行疲労実験における CFS 全面接着補強後の劣化要因としてたわみと等価走行 回数の関係からの劣化曲線式および実橋における環境条件がRC床版に与える各種劣化

要因 5.12)を適用した補強等価走行回数を得て,乾燥状態,湿潤状態,さらには再補強時

期を推定するための,それぞれのS-N曲線式を提案する。よって,供試体は「第4章」

で示したように,道示 5.7)~5.9)の規定に基づいて設計し,本実験装置の輪荷重,すなわち

1993年11月~

非合成桁 合成桁 容易 1.00 1.05 難易

容易 難易 容易 難易 容易

難易 1.20 1.25 500台未満

500台以上1,000台未満 1,000台以上2,000台未満

2,000台以上

1978年4月~1993年11月 1日1方向当たりの大型車

両の計画交通量(台/日) 補修作業の 難易

係数k1

1.05 1.10

1.10 1.15

1.15 1.20

1.10 1.15 1.20 1.25 係数k1

ドキュメント内 土木工学専攻 元 燦豪 (ページ 92-126)