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実橋RC床版の寿命予測との整合性

ドキュメント内 土木工学専攻 元 燦豪 (ページ 126-153)

6.1 はじめに

近年,地方公共団体では,道路橋を対象とした長寿命化修繕計画 6.1)が実施されてい る。これによると橋梁建設後 100 年間維持するための修繕計画が立案されている。RC 床版においては,疲労による損傷,疲労と塩害および疲労と塩害・凍害の複合劣化に 対する各種補修・補強対策が計画されている 6.2)。予防保全型維持管理計画では 100 年 間維持するために数回の補修・補強対策が提案され,余寿命の推定も行われている。

しかし,余寿命の推定においては,補修・補強法における再損傷が発生するまでの期 間,すなわち健全である期間の算定は,おおよその期間を設定し,サイクル補修・補 強法が計画され,LCC の算定が行われ,建設後 100 年を想定した予算の平準化を行っ ている。RC床版の疲労寿命の推定法には,1964年改訂の鋼道路橋示方書6.3)および1968 年暫定基準 6.4)により設計された RC 床版は,松井らが提案するS-N 曲線式6.5),1980 年 改訂以降の道示 6.6)で設計された RC 床版については阿部ら 6.7)が提案する S-N 曲線式が 提案され,破壊に至るまでの寿命が予想される。一方,補強床版においては破壊時,

あるいは再劣化が生じる時期の推定についての研究はあまり行われていないのが現状 である。

そこで第 6 章では,第 5 章で提案した RC 床版供試体および CFS 全面接着補強した RC 床版を用いて,輪荷重走行疲労実験を実施し,RC 床版および CFS 全面接着補強床 版が乾燥状態での S-N 曲線式を基本とし,通常の環境条件を考慮して湿潤状態の S-N 曲線式を解析した。さらに,LCC を算定するために再補修時期を想定した S-N 曲線式 についても解析した。よって,実橋 RC 床版に CFS 全面接着補強した場合の健全度を 評価する手法としての整合性を検証し,第 5 章で提案した S-N 曲線式の実用性を検証 する。

6.2 道路橋示方書の変遷に伴う床版厚さ6.8)

鋼道路橋 RC床版に関する設計基準の変遷は,第5 章 5.2項で示している。これによ ると 1926 年 6月に「道路構造に関する細則案(内務省土木局)」が定められ,2002 年 3 月の道示 6.9)に至るまで多くの改定が行われてきた。道路橋長寿命化修繕計画における 橋梁点検によると 1964 年改訂以前の設計基準と 1968 年暫定基準および 1973 年改訂の

道示6.10)で設計されたRC床版に損傷が多く見られ,老朽化が進行している。そこで,1964

年改訂の設計基準,1968 年の暫定基準,1973 年,1980 年,1994 年改訂の道示 6.11)で設 計されたRC床版の最小厚について検証する。

6.2.1 RC床版の設計条件

RC 床版の設計支間2.0m とした場合の連続版の床版厚を設計する。ここで,RC 床版 の形状および寸法を図-6.1に示す。

図-6.1 RC床版の形状および寸法 6.2.2 RC床版の設計厚

(1) 1964年改訂の道示以前の基準6.3)

1964 年改訂以前の道示では,有効高 d=11cm と規定(表- 5.1)されている。そこで,

かぶりd'を考慮すると床版厚tは式(6.1)として与えられる。

t = d+d’ (6.1)

ここで,d:有効厚(11cm),d':かぶり厚(cm)

そこで,かぶりd'を4cmとした場合の最小床版厚は,式(6.1)より算定される。

t = d+d’ = 11+4 = 15cm

よって,1964 年改訂以前の道示では床版支間長 L および大型車両の交通量に関係無 く,床版厚が決定される。よって,1964年改訂以前の道示の規定では150mm厚となる。

(2) 1968年暫定基準で設計6.4)

1968年の暫定基準による最小床版厚は式(6.2)と規定された。

t = 3L+9≧ 16cm (6.2)

ここで,L:床版設計支間(m)

そこで,床版支間Lを2.0mの場合の床版厚は

t = 3L+9 = 3×2.0+9 = 15.0cm≧ 16cm

よって,1968年暫定基準による床版厚は160mmとなる。

tft

L2000

(3) 1973年改訂の道示6.10)

1973年改訂の道示では,最小床版厚は式(6.3)と規定された。

t = 3L+11≧ 16cm (6.3)

ここで,L:床版設計支間(m)

そこで,床版支間Lを2.0mの場合の床版厚は,

t = 3L+11 = 3×2.0+11 = 17.0cm≧ 16cm よって,最小床版厚は170mmとなる。

(4) 1980年改訂の道示6.6)

1980 年改訂の道示では,1 日 1 方向当たりの大型車両の計画交通量や補修作業の難 易によって割り増し係数,床版を支持する桁の剛性が著しく異なるために生じる付加 曲げモーメント係数が設定された。よって,式(6.4)として規定される。

d0 = k1×k2×d0≧ 16cm (6.4) ここで,d:床版厚(cm),k1:大型車両の計画交通量や補修作業の難易によって割り 増し係数(1 日 1 方向当たりの大型車の計画交通量 2,000 台以上で補修作業が難易とし た場合=1.20),k2:床版を支持する桁の剛性が著しく異なるために生じる付加曲げモー メント係数(=1.0),d0:道示Ⅱの規定による連続版の最小厚さ(d0=(3L+11))

t = k1×k2×(3L+11) = 1.20×1.0×(3×2.0+11) = 20.4cm

よって,1 日1 方向当たりの大型車の計画交通量 2,000台以上で,補修作業が難易を 考慮した場合の連続版部の厚さは200mmとなる。

(5) 1994年改訂の道示6.11)

1994年改訂の道示では,設計荷重である活荷重(T荷重)は8tfから10tfに改訂された。

また,最小床版厚の算定は,基本的には1980年改訂の道示に準拠されている。そして,

2002 年改訂の道示から SI単位となり,活荷重(T 荷重)は100kN,床版厚もmm 単位で 算定され,1 日 1方向当たりの大型車両の計画交通量による割り増し係数も改訂されて いる。よって,1994 年改訂の道示以降の RC 床版の設計では,床版厚は式(6.5)として 規定された。

d = k1×k2×d0 ≧ 160mm (6.5) ここで,d:床版厚(mm),k1:大型車の交通量による係数(1 日 1 方向当たりの大型 車の計画交通量 2,000 台以上の場合=1.25),k2:床版を支持する桁の剛性が著しく異な るために生じる付加曲げモーメント係数(=1.0),d0:道示Ⅱの規定による最小厚さ(d0= (30L+110))

t = k1×k2×(30L+110) = 1.25×1.0×(30×2.0+110) = 212.5mm よって,連続版部の床版厚さを210mmとする。

RC 床版に関する設計基準の変遷は第 5章の表- 5.1に示すように,1964 年改訂の設 計基準では活荷重が 80kN であり,鉄筋には丸鋼が使用されている。主鉄筋方向の鉄筋 の許容応力度は180N/mm2である。配力筋方向の鉄筋量は主鉄筋の25%以上の配置とな っている。また,床版厚は有効高さ 110mm であることから最小厚(式(6.1))は 150mm である。次に,1968 年の暫定基準では,鉄筋には異形棒鋼が使用され,主鉄筋方向の 曲げモーメント式および許容応力度も現在の 140N/mm2に改訂され,配力筋は主鉄筋量 の70%以上の配置となっている。また,最小床版厚(式(6.2))は160mmである。

1973 年改訂の設計基準では,主鉄筋方向の曲げモーメント式の改定および配力筋方 向の曲げモーメント式が規定された。さらに,床版厚(式(6.3))は170mm となり,1964 年の設計基準よりも 20mm 厚くなっている。1980 年改訂の設計基準では交通量による 割り増し係数が適用され,さらに床版厚が厚くなり,耐疲労性の向上が図られている。

よって,1980 年改訂の道示においては最小床版は 200mm である。次に,1994 年改訂 の道示では,荷重が 80kN から 100kN に増大されるなど,床版の耐荷力性能の向上が 図られている。よって,最小床版厚は210mmとなり,1964年改訂道示に比して,60mm 厚くなっている。

以上のように,現在供用されている道路橋,1956 年改訂の設計基準から2002 年改定 の道示の基準で設計されている。特に,道路橋RC床版には,大型車両の過積載,交通 量の増大,床版厚さの不足,配力筋の不足,主鉄筋の曲上げ位置の不適正による鉄筋 量不足,コンクリートの品質不良,施工面からはコンクリートの締め固め不足等が考 えられるが,このような要因が複雑に作用し合って損傷が生じている。そこで,高度 経済成長期に建設された道路橋床版(1964 年改訂の設計基準,1968 年暫定基準)は,建 設後 50 年,すなわち老朽化した橋梁が増大し,建設後 100 年間維持するための予防保 全型維持管理計画が重要な課題となっている。

6.2.3 補修・補強法および対策区分と対策工法 (1) 補修・補強の定義および対策工法

補修とは,「基本的には建設時に構造物が保有していた耐荷力性能を回復させるため

の対策」である 6.2)。RC 床版の一般的な補修法には,橋面防水工,ひび割れ補修,断面 修復工などがある。

一方,補強とは,「基本的には RC 床版の耐荷力や耐疲労性などの力学的な性能を向 上させるための対策」である 6.2)。RC 床版の場合は耐疲労性の向上を目的とした補強方 法について,各研究機関や企業で開発が行われている。床版下面からの主な補強方法 としては,第 2 章 2.7 項に述べたように CFS を用いた下面接着補強やポリマーセメン トモルタル吹き付けによる下面増厚補強法がある。また,上面からの補強方法には接 着剤塗布型 SFRC 上面増厚補強がある。いずれの補強方法においても耐疲労性が評価 され,既に施工実績が多い工法である。

(2) 補修・補強法

RC床版の補修・補強方法においては設計された年代により,床版厚が異なっている。

そこで,道路管理者がどの時代の設計基準に準拠して補修・補強を施すかによって対 策が異なる。例えば,千葉県長寿命化修繕計画 6.1)では 1964 年基準で設計された RC 床 版は,鉄筋に丸鋼が使用されていることから,劣化過程が進展期でも大規模な補強が 必要となっている。また,鉄筋に異形棒鋼が使用された年代,すなわち 1968 年以降の 補修・補強方法で,床版厚が確保されている床版については,設計当時の耐荷力性能 が確保される対策が検討されている。また,1980 年以降の床版は活荷重が異なるもの の現状においては損傷が軽微な床版が多い。そこで,1980 年改訂の道示の厚さを有す る床版においては,予防保全型維持管理が可能となる。しかし,1973 年以前の床版に ついては,1980 年改訂の道示と比較すると床版厚,鉄筋量(主鉄筋および配力筋)が減 少していることから,耐荷力性能の向上を図る対策の検討が必要である。したがって,

1964年代の基準で設計されたRC床版の最小厚さは150mm,1968年基準では160mm,

1973 年基準では 180mm であることから床版厚不足に対する補強方法が必要となる。

1973 年基準の床版の耐荷力性能に準拠するためには 30mm~40mm の厚で SFRC による 上面増厚補強および吹き付けコンクリートによる下面増厚補強が必要となる。

また,交通量にもよるが 1973 年以降の道示で設計された床版は,異形棒鋼が使用され ていることから鉄筋量不足に伴う耐荷力性能およびひび割れ抑制効果を発揮させる CFS下面接着補強法が必要となる。これらの補強対策については第 2章2.7項に述べて いる。

6.3 RC床版およびCFS全面接着補強法における破壊等価走行回数の算定 6.3.1 RC床版の諸元

第 5章で提案された CFS 全面接着補強 RC 床版の S-N 曲線式を適用した場合の余寿 命の推定を検証する。そこで,設計基準に準拠して設計された RC 床版に CFS 全面接 着補強した場合の耐疲労性を評価する。コンクリートの設計基準強度は24N/mm2とし,

鉄筋には丸鋼φ16,異形棒鋼D16を用いる。

床版厚については,1964改訂の道示の床版厚は150mmであるが,これを耐疲労性の

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