3. ブータン「地方電化事業」を事例とした既存配電網延伸による地方電化事業 CDM 新方法論
3.4. CDM 新方法論構築及び国連承認手続き
3.4.1. 国連小規模方法論パネルに提出された新方法論(SSC-NM0068)
調査団は、ブ国実施機関との協議の上、新方法論SSC-NM0068 「Rural electrification by extension of existing low carbon intensive electricity distribution network(既存の低炭素強度グリッド延伸によ る地方コミュニティの電化)」を作成し、2011年6月27日に国連に提出した。この新方法論は 小規模CDMワーキンググループ(SSC-WG)による審査を経て2012年3月に国連CDM理事会 により承認を受けた。国連による新方法論の評価プロセスを表3-4に整理した。
表3-4:国連による新方法論SSC-NM0068評価プロセス
2011年 6月 国連に新方法論承認申請提出、整理番号SSC-NM0068割当て。
2011年 8月 第33回SSC-WG会合におけるSSC-NM0068審査開始、予備勧告の提示。
2011年11月 予備勧告に対する回答・対応案(SSC-NM0068-rev)提出。
2012年 2月 第 35 回 SSC-WG 会合にて、SSC-NM0068-rev を承認する最終勧告提示。
SC-NM0068-revを基とする小規模CDM方法論AMS-III.AW “Electrification of rural communities by grid extension---Version 1.0” としてCDM理事会に提案。
2012年 3月 第 66 回 CDM 理事会会合において、AMS-III.AW “Electrification of rural communities by grid extension---Version 1.0”36承認。
国連に提出した新方法論承認申請書をAnnex Iとして添付する。
新方法論の構成要素について、以下に詳述する。
1) 適用条件
CDM 方法論では当該方法論を適用可能なプロジェクト活動のタイプを特定するための条件
(適用条件)を明示する必要がある。調査団は地方電化のための新方法論の適用条件について ブ国実施機関と協議の上、表3-5の通り整理し、方法論に組み込んだ。
表3-5:提案新方法論の適用条件
SSC-NM0068の適用条件 所見
1 プロジェクトはホスト国の既存の電力配電 網の拡張を行うものであり、新規の発電所/
ユニット設置を含まないこと。
タイプ I プロジェクトとの差別化を図るた めの条件。
36 http://cdm.unfccc.int/methodologies/DB/GRH88B4S68PO9H0YELQ8ZMVANO14JR
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SSC-NM0068の適用条件 所見
2 ホスト国内の既存の電力配電網に接続する 発電所/ユニットは主に再生可能エネルギ ー37によるものであること。
プロジェクトにより供給される電力が再生 可能電源であることを保証するもの。
3 プロジェクトにより供給される電力量が定 量可能であること、また、その定量化された 電力量をプロジェクト実施者が確認可能で あること。
排出削減量定量化の必要条件。
4 ホスト国の国家電源開発計画が公に利用可 能な場合、ホスト国の電源ミックスが将来も 引き続き主として再生可能エネルギー38に より構成されることを確認する。
プロジェクトにより供給される電力が再生 可能電源であることを保証するもの。
5 ホスト国が他国から調達した電力量が定量 可能であり、その電力量がプロジェクト実施 者によって確認可能であること。
ホスト国国内の消費電力量における輸入電 力の割合を決定するための必要情報。
6 ホスト国国内の年間の消費電力量が定量可 能であり、その電力量がプロジェクト実施者 によって確認可能であること。
ホスト国国内の消費電力量における輸入電 力の割合を決定するための必要情報。
7 プロジェクト活動が電力を供給する地理的 地域がPDDにて定義されること。
プロジェクトバウンダリー明確化のための 適用条件。
8 年間排出削減量が60ktCO2以下であること。 タイプIII小規模CDMプロジェクト閾値。
2) プロジェクトバウンダリー
プロジェクトバウンダリーには、プロジェクトに起因する主な人為的排出源が含まれる。本 調査で提案する新方法論では、以下の通り提案した。
プロジェクトによって延長される既存配電網。
プロジェクトによって延長される配電網により電化される地理的地域(プロジェクト地 域と定義)。
3) ベースライン及びプロジェクトシナリオ
ベースラインシナリオは、CDMプロジェクトが実施されなかった場合に起こりうる仮定のシ ナリオである。地方電化プロジェクトにおいては、プロジェクト実施以前に使用されているま
37 再生可能エネルギーの例:水力、太陽光、風力、再生可能バイオマスなどを含む。
38 再生可能エネルギーの例:水力、太陽光、風力、再生可能バイオマスなどを含む。
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たはプロジェクトが実施されなかった場合に採用されるであろう技術がプロジェクトと同じエ ネルギー量のサービスを提供するのに必要な化石燃料(ケロシン、ディーゼル燃料など)消費 がベースラインシナリオと考える。
一方で、プロジェクトシナリオはCDMにより実施されるプロジェクトを指す。地方電化プロ ジェクトにおいては、ホスト国内の既存の低炭素配電網の国内の未電化地域への延伸がプロジ ェクトシナリオに該当する。
4) 追加性の立証
提案された新方法論における追加性立証手順は既存のCDMガイドラインに従うものとした。
プロジェクト活動の規模などの条件によって、下記の小規模またはマイクロスケールプロジェ クトのための追加性に関するガイドラインいずれかの適用を前提とする。
・ 小規模CDMの追加性立証ガイドライン39
・ マイクロスケールCDMの追加性立証ガイドライン40
小規模CDMの追加性立証ガイドラインにおいては、プロジェクト参加者は、以下に定義され る「障壁」が最低一つ存在するため、CDMでなければ当該プロジェクトが実施されないことを 説明する必要がある。
投 資 障 壁 : 当該プロジェクトと比較して採算性がよく実現可能性が高い代 替シナリオが存在する。
技 術 的 障 壁 : 当該プロジェクトで採用する新技術のリスクを低減する代替シ ナリオが存在する。
一般的な慣行に伴う障壁: 一般的な慣行、既存の規制、政策的な必要性から採用される代替 案が存在する。
そ の 他 の 障 壁 : プロジェクト実施者が特定するその他の障壁によってプロジェ クトが実施されなかった場合に排出量が増大する。
マイクロスケールCDMの追加性立証ガイドラインにおいては、年間削減量20kt(CO2換算)
未満のプロジェクト(タイプIIIプロジェクト)について、下記の条件を満たすものは自動的に 追加的とみなされる。
1. プロジェクト実施場所が後発発展途上国(LDC)/小島嶼国(SIDS)あるいはホスト国
39 Guidelines on the demonstration of additionality of small-scale project activities , EB 68 Annex 27 http://cdm.unfccc.int/Reference/Guidclarif/meth/methSSC_guid05.pdf
40 Guidelines for demonstrating additionality of microscale project activities , EB68 Annex 26 http://cdm.unfccc.int/Reference/Guidclarif/ssc/methSSC_guid22.pdf
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が2010年5月28日以前に特定した特別未開発地域41であること。
2. 下記の二つの条件を満たす年間排出削減量20ktCO2e以下のタイプIIIプロジェクト 1) プロジェクト内の独立サブシステムの年間排出削減量が600tCO2e以下であること。
2) サブシステムのエンドユーザーが各家庭 / コミュニティ / 中小企業であること。
マイクロスケール CDM の追加性立証ガイドラインに基づいて追加性立証の免除を受けられ ない場合は、小規模CDMの追加性立証ガイドラインに沿ってプロジェクトの追加性を立証する 必要がある。
5)ベースライン排出量算出
本プロジェクトのエネルギーベースラインは配電網延伸対象地域における化石燃料の継続使 用に伴うエネルギー消費である。新方法論ではベースライン排出量算出手法として次の 2 つの オプションを提案することとした。
オプション 1: プロジェクトにより分配されるのと同じ電力量を化石燃料により発電した場 合の化石燃料使用量に基づきベースライン排出量を算出する。
BECO2,y = ∑i EDi,y * EFCO2
EBCO2,y y年におけるベースライン排出量, tCO2e/年
EFCO2 CO2 排出係数, tCO2e/MWh,
∑i プロジェクト地域の総和
EDi,y y年におけるプロジェクト地域iに供給される電力量, MWh/年
新方法論は、プロジェクトが独立系再生可能エネルギー発電(グリッド未接続の太陽光発電、
小規模水力発電など)からの電力を代替しないことが確認できる場合は、CO2排出係数に既定
値の0.8 tCO2e/MWh42 を使用することを可能としている。 また、プロジェクトがグリッドに接
続しない再生可能エネルギー発電からの電力を代替する場合、既定値を以下の手順で調整する ことで、新方法論が適用できるよう考慮した。
EFCO2,y = (1 - β) * 0.8 β = Erenewable / ∑i EDi,y
EFCO2,y CO2 排出係数, tCO2e/MWh
41 Special underdevelopment zone
42 新方法論では、承認済み小規模方法論AMS-I.A.のディーゼル発電を念頭においた既定値を採用する。なお、
方法論の簡素化の観点から、より排出係数の高い他の燃料がベースラインシナリオにて使用される場合もこの 既定値を使用することとしている。ベースラインシナリオにおける排出係数の変更には方法論の改訂申請を行 う必要がある。
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β プロジェクトにより分配される電力のうち、再生可能エネルギーによる 電力を代替する割合
Erenewable プロジェクト地域内で分配される再生可能エネルギーによる電力量、
MWh/年(この値は事前にホスト国の公開情報を用いて推定する。評価の 有効性は有効化審査時にDOEによって検証することとする。)
∑i プロジェクト地域の総和
EDi,y y年におけるプロジェクト地域iに供給される電力量、MWh/年
オプション2: プロジェクト地域における過去の燃料使用量と使用燃料の排出係数からベー スライン排出量を求める。
BECO2,y = ∑jFCj,baseline × NCVj × EFCO2,j
BECO2,y y年におけるベースライン排出量、tCO2e/年
FCj,baseline プロジェクト実施以前のベースラインとなる燃料jの消費量、t/年または
m3/年(この値は事前にサンプリング調査を実施し、固定される。サンプ
リング調査の有効性は有効化審査時にDOEが検証するものとする。)
NCVj 燃料jの真発熱量、GJ/tまたはGJ/m3
EFCO2,j 燃料jのCO2 排出係数、tCO2/GJ
j プロジェクト地域で使用された燃料タイプ
オプション2を採用する場合、排出係数にはIPCCの既定値の使用を認めることとした。また、
ベースラインにおける燃料消費量は「CDM活動及びプログラムCDM活動におけるサンプリン グと調査のためのガイドライン」43に則り行うサンプリング調査によって決定するものとした。
6) プロジェクト排出量算出
提案の新方法論では、ホスト国が国外から調達した電力の消費に起因するプロジェクト排出 を算定に含めることとした。ホスト国が国外から電力を調達する場合、プロジェクトにより供 給される電力量全量がホスト国内の再生可能エネルギーによる電力であることを示すことは難 しい。このため、一部は国外から調達された電力により供給されると考え、プロジェクト排出 の対象とみなすことにより、より保守的な方法論とすることが出来ると考えた。このため、新 方法論では、プロジェクトにより供給された電力量全量に、国内の年間電力消費量に占める国 外調達電力量の割合(α)を掛け合わせて得られる電力量をプロジェクト排出量の対象とした。
また、ホスト国外から調達された電力は全て化石燃料を燃料とする発電所のものとして扱い、
国外調達電力の排出係数には「電力消費によるベースライン排出量・プロジェクト排出量・リ
43 General guidelines for sampling and surveys for SSC project activities (version 02.0) , EB69 Annex 05 http://cdm.unfccc.int/Reference/Guidclarif/meth/meth_guid48.pdf