残基に置換した株
0.25%軟寒天培地(pH 7.0)に最終濃度が 2%になるようにキシロースを添加し、
NaClが最終濃度5 mM、55 mM、105 mM、205 mMになるように添加した。37℃、
16時間の条件で静置培養を行った。
135
7.M3 株を用いた低 Na+濃度の中性環境下における運動性向上株(M3up)の取得 と解析
MotPの186番目のアスパラギン残基が中性環境における運動性復帰に関与し ていることが示唆された。M3株の運動性の向上はNa+の存在下でのみ観察され た。この結果は、M3株の変異MotP-N186DはNa+親和性ではなく、Na+の流入調 節に関与していることを示唆した。
本研究では、中性環境における低Na+濃度の条件下運動性向上株の取得を試み た。その結果、複数の運動性向上株(M3up)の取得に成功した(図 4-9)。取得した 運動性向上株の motPS 遺伝子配列をシークエンス解析により変異箇所の同定を 試みた。その結果、5箇所の変異を同定することが出来た。同定された変異は全 てmotS遺伝内で置換変異として同定された。MotSサブユニットの37番目のセ リン残基がスレオニン残基(MotS-S37T)、47番目のイソロイシン残基がスレオニ ン残基(MotS-I47T)、48番目のセリン残基がプロリン残基(MotS-S48P)、50番目の セリン残基がプロリン残基(MotS-S50P)、130 番目のバリン残基がアラニン残基
(MotS-V130A)にそれぞれ置換された変異を同定した。同定された変異がMotSサ
ブユニットのどの部位に位置するか検証した(図 4-10)。その結果、37 番目のセ リン残基は膜貫通領域、47番目のスレオニン、48番目のセリン、50番目のセリ ンは固定子がイオンチャネルとして不活性化している時に共役イオンの流入を 防ぐのに重要だと考えられている Plug 領域(62)、130 番目のバリンは MotS サブ ユニットの C 末端領域の基部体に固定子が組み込まれる時にペプチドグリカン と結合するために大きな構造変化を必要とすると考えられている領域(54)に存在 していた(図4-10)。
136
図4-9.M3を用いた低Na+濃度下における運動性向上株の運動性試験
○ : BSPS、枯草菌由来MotPS、□ : OFPS、B. pseudofirmus OF4由来MotPS、△:
ΔABΔPS、枯草菌固定子欠損株、▲ : M3、MotPの186番目のアスパラギン残基
がアスパラギン酸残基への置換変異のみを導入した株、♦ : M3up、M3を用いた 低Na+濃度下における運動性向上株
0.25%軟寒天培地(pH 7.0)に最終濃度が 2%になるようにキシロースを添加し、
NaClが最終濃度5 mM、10 mM,、5 mM、30 mM、55 mMになるように添加した。
37℃、16時間の条件で静置培養を行った。
137
図4-10.M3upから同定された変異のMotSサブユニットにおける部位推定
A : MotSサブユニットのアミノ酸配列を用いたアライメント結果。MotSサブユ
ニットの膜貫通領域を水色の四角で囲った。Plug領域は紫色の四角で囲った。
M3upから同定された変異箇所はMotS-S37T、MotS-I47T 、MotS-S48P、 MotS-S50P、各色で示した。
B : サルモネラ菌のMotBサブユニットのペプチドグリカンへの結合機構の模式 図(46)とMotBサブユニットのC末端領域の立体構造図。M3upから同定され たMotS-V130Aは赤色の丸(●)で示した。
A
B
138
8.低 Na+濃度の中性環境下における運動性向上株(M3up)の相補株の構築と運動 性試験
中性環境下における低Na+濃度の条件下で運動性向上株を取得した。取得した 運動性向上株(M3up)により変異箇所の解析を行った。運動性向上株で同定され た変異を導入した変異株(MotS-S37T株、MotS-I47T株、MotS-S48P 株、MotS-S50P株、MotS-V130A株)の構築を行った。構築した変異株の運動性試験の結 果、低Na+濃度下における運動性は親株であるM3株よりも向上していた。し かし、M3up株のような低Na+濃度における運動性の向上は観察できなかった
(図4-11)。この要因としては、M3up株は染色体上に固定子遺伝子以外の変異が
あり、その変異が運動性の向上に関与していることが考えられる。
139
図4-11.M3up株から同定された変異を導入した変異株を用いた低Na+濃度下に おける運動性向上株の運動性試験
○ : BSPS、枯草菌由来MotPS、□ : OFPS、B. pseudofirmus OF4由来MotPS、△:
ΔABΔPS、枯草菌固定子欠損株、▲ : M3、MotPの186番目のアスパラギン残基
がアスパラギン酸残基への置換変異のみを導入した株、♦ : M3up 相補株、MotP-N186Dと各同定した変異MotS-S37T、MotS-I47T 、MotSS48P、MotS-S50P、 MotS-V130Aを導入した相補株
0.25%軟寒天培地(pH 7.0)に最終濃度が 2%になるようにキシロースを添加し、
NaClが最終濃度5 mM、10 mM、5 mM、30 mM、55 mMになるように添加した。
37℃、16時間の条件で静置培養を行った。
140
9.B. pseudofirmus OF4と枯草菌の固定子遺伝子内のPlug領域置換変異株の運動 性試験
M3株から取得したM3up株のmotPS遺伝子配列から5箇所の変異を同定する ことが出来た。同定された 5 箇所のうち 3 箇所は、イオンチャネルとして不活 性化している時に共役イオンの流入を防ぐのに重要だと考えられているPlug 領 域(62)(図 4-10)であった。この結果は、固定子の Plug 領域が Na+の流入調節に関 与している可能性を示唆したため、好中性Bacillus属細菌である枯草菌と好アル カリ性Bacillus属細菌であるB. pseudofirmus OF4のMotSサブユニット内のPlug 領域を置換した変異株を構築し運動性試験を行った。その結果、枯草菌の固定子 に B. pseudofirmus OF4 の Plug 領域を導入した BS+OF-Plug 株は野生型である BSPS株と比較して運動性の低下を示した。B. pseudofirmus OF4の固定子に枯草 菌の Plug 領域を導入した OF+BS-Plug 株は野生型である OFPS 株と比較して 5 mM の NaCl を添加しても運動性の向上を観察することができなかったが、10 mM以上のNaClを添加すると運動性の向上を観察することができた(図 4-12)。
これらの結果は、固定子の Plug 領域が Na+の流入調節に関与している可能性を 示唆していた。
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図4-12.B. pseudofirmus OF4と枯草菌の固定子遺伝子内のPlug領域置換変異株 の運動性試験
○ : BSPS、枯草菌由来MotPS、□ : OFPS、B. pseudofirmus OF4由来MotPS、△:
ΔABΔPS、枯草菌固定子欠損株、◆ : BS+OF-Plug 株、枯草菌の固定子に B.
pseudofirmus OF4のPlug領域を導入した株、◆ : OF+BS-Plug株、B. pseudofirmus OF4の固定子に枯草菌のPlug領域を導入した株
オレンジ色の矢印はBSPS株と比較したBS+OF-Plug株の運動性の低下を示して いる。青緑の矢印はOFPS株と比較したOF+BS-Plug株の運動性の向上を示して いる。
0.25%軟寒天培地(pH 7.0)に最終濃度が 2%になるようにキシロースを添加し、
NaClが最終濃度5 mM、10 mM、5 mM、30 mM、55 mMになるように添加した。
37℃、16時間の条件で静置培養を行った。