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Bader 電荷密度解析

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LDA)

4.7 Bader 電荷密度解析

表4.4: HSO4 吸着グラフェン、PdHSO4吸着グラフェンの結合距離 Bond lengh [˚A]

S-O C-O S-C Pd-O H-O

HSO4/graphene

S-O(a):1.45 C-O(a):2.79 3.20 0.98

S-O(b):1.44 C-O(b):2.80 S-O(c):1.45 C-O(c):2.77 S-O(d):1.59

Pd&HSO4/graphene

S-O(a):1.42 C-O(a):3.10 3.62 Pd-O(a):3.51

S-O(b):1.48 C-O(b):4.56 Pd-O(b):2.08 0.98 S-O(c):1.42 C-O(c):3.04 Pd-O(d):2.22

S-O(d):1.69

4.7 Bader 電荷密度解析

グラフェン上の SO4 吸着、SO4 とPd の共吸着における電子の移動を解析する為に Bader法 [96–98]を使用して電荷数を計算した。グラフェン、SO4 吸着グラフェン、Pd

&SO4 吸着グラフェン、それぞれの電荷数をまとめたものを表4.5 に示す。グラフェ ンの C 原子の電荷数はそれぞれ+0.03 e と-0.03 e である。グラフェン上に SO4 を吸 着すると、SO4 が吸着しているC原子、C(Atom8), C(Atom14), C(Atom15)はそれぞ れ、+0.04 e, +0.09 e, +0.03 eとなりC原子からO原子O(a), O(b), O(c)へそれぞれ 電子が移動していることが分かる。グラフェン基板からSO4 へと0.63 eの電子の移動が 確認できた。さらに、 SO4 が吸着されたグラフェンへPdを吸着すると、O(a),O(b)原 子は+1.32 e, +1.30 eであり、C原子からの電子の移動はSO4 吸着グラフェンの場合よ り増加しているが、O(c), O(d)はそれぞれ、-1.05 e, -1.04 eとなり減少していることが 確認できる。さらに、グラフェン基板からSO4 とPd原子へ0.23 eの電子の移動が確認 できた。SO4 吸着グラフェンの場合と比較すると、基板からの電子の移動は少なくなって いる。

表4.5: グラフェン、SO4 吸着グラフェン、Pd&SO4吸着グラフェンのBader解析の比 較

Excess Charge

graphene SO4/graphene PdSO4/graphene

Atom 1 -0.03 +0.01 +0.06

Atom 2 -0.03 +0.08 +0.05

Atom 3 -0.03 +0.07 +0.06

Atom 4 +0.03 +0.12 -0.03

Atom 5 +0.03 -0.01 -0.04

Atom 6 +0.03 -0.02 -0.04

Atom 7 -0.03 +0.07 +0.06

Atom 8 -0.03 +0.04 +0.07

Atom 9 -0.03 +0.07 +0.06

Atom 10 +0.03 -0.01 -0.04

Atom 11 +0.03 -0.01 -0.02

Atom 12 +0.03 -0.01 -0.03

Atom 13 -0.03 +0.08 +0.06

Atom 14 -0.03 +0.09 +0.05

Atom 15 -0.03 +0.03 +0.07

Atom 16 +0.03 -0.01 -0.04

Atom 17 +0.03 -0.01 -0.04

Atom 18 +0.03 +0.06 -0.03

O(a) -1.15 -1.32

O(b) -1.15 -1.30

O(c) -1.15 -1.05

O(d) -1.06 -1.04

S +3.87 +3.75

Pd +0.74

4.8 まとめ 61

4.8 まとめ

グラフェンを金基板と同様にパラジウム触媒の担体として使用することが出来るかを 調査するために、第一原理計算を用いてグラフェン上のSO4吸着、さらにSO4 吸着グラ フェン上のPd吸着について、安定構造、吸着エネルギー、電子状態の変化、電荷密度解 析を行った。

はじめにグラフェン上へSO4 の吸着計算を実行し、以下の知見を得た。グラフェン上 のSO4 の最も安定な構造は構造 (C)である。グラフェン上のSO4 の安定な吸着サイト はC原子のon top siteであり、SO4の3つのO原子がC原子上にC3v 構造で安定とな る。S原子もC原子のon top siteに位置している。この場合のSO4 の吸着エネルギー は1.61 eVほどでグラフェンに吸着している。グラフェンのC原子のp軌道とSO4O 原子のp軌道に軌道混成が確認でき、グラフェン上へSO4 の吸着が確認できる。さらに 電荷密度解析を行うことで、グラフェン基板からSO4 0.63 eほど電子が移動している ことが確認できた。

次にSO4 吸着グラフェンの構造(C)上Pdの吸着計算を実行し、Pd存在下でグラフェ ン上の SO4 の構造が得られた。SO4 吸着グラフェンではSO4 B 原子の上で安定で あったが、Pdを吸着させる事でSO4bridge siteで安定し、さらにPdSO42 のO原子の間の位置で安定であった。PdはSO4 と結合する事でグラフェンとの吸着エ ネルギーが0.46 eVと小さくなり、基板から脱離しやすくなることが考えられる。

さらに、HSO4 としてグラフェン上に吸着する可能性を考慮し、安定構造を求め、Pd 存在下での吸着エネルギーを求めたところ、PdとHSO4 の共吸着ではSO4 よりも基板 から脱離しやすい事が分かった。

これらの結果、グラフェン基板にSO4 は十分に吸着することが出来ることが示され、

金基板同様にPdの放出量の制限やリリース&キャッチ機構を有することが出来るPd触 媒の基板として用いることが出来ることが考えられる。しかし、グラフェン上へのPdと SO4 の共吸着の場合、基板との吸着エネルギーの弱さがPdの過剰放出の可能性も考えら れる。

63

第 5

六方晶窒化ホウ素基板上への

SO 4 &Pd 吸着の第一原理計算

5.1 はじめに

ホウ素―窒素の化学は、ホウ素―窒素結合が炭素―炭素結合と等電子的であることから も注目されている。そのうえ、炭素の半径とその電気陰性度は、おおよそホウ素と窒素の 平均値になっている(ここで「半径」はおおよそ「共有結合半径」を意味している)。窒化ホ ウ素(BN)はカーボンと同様でダイヤモンド・グラフェン・グラファイト・ナノチューブ・

フラーレン構造を持つ事ができる物質である。六方晶のBN(h-BN)はグラフェンと同様 の六員環を形成し、面内はsp2 混成軌道を作り強く結合する。中田らの研究によりh-BN 上のPdは、結合エネルギーは強いがh-BN上の移動障壁エネルギーは小さく動きやす いという点が報告されている [131]。この結果、h-BN 上でPdのナノ粒子作成の可能性 が挙げられている。近年、数多くのナノ粒子が有用な触媒として研究され [132–134]、さ らに六方晶窒化ホウ素を用いたPt触媒 [135–137]Ru触媒 [138]Au触媒 [139, 140] Pd触媒 [141–145]への適用も報告されている。佐治木らによって開発されたh-BN基板 上Pd触媒は、末端アルキンからアルケンへの部分水素化などに使用されており、ろ過に よって分離可能であり、再利用が出来る。このBN基板上Pd触媒は環境にやさしい触媒 であり、新しい有機合成の経路を提供できるような、有機化学の開発に寄与する可能性を 秘めた触媒であることが報告されている [143–145]。また、h-BN基板はh-BNのような 不活性支持基板へ支援された金ナノ粒子の研究なども行われ、担体効果がない金属クラス ターの固有特性Au触媒 [146]を研究するために広く使用されている。

本研究では、比較的高価である金基板より安価な担体を模索することを目的とし、h-BN 上にSAPdと同様のPdナノ粒子の作成が可能かについて検討する。h-BNはフッ化水素

以外の水およびどんな無機酸にも影響されず、一般的に他の種類の化学攻撃に強いことが 報告されている [147]。これより、h-BNはピラニア処理に耐えうる物質であることが言 える。さらに、h-BN上のPdは移動障壁エネルギーが小さく動きやすい点より、ナノ粒 子作成基板として有望であるといえる。

はじめに、金表面と同様にピラニア処理によってSO4h-BN上に定着するかを第一 原理計算を用いて検証し、h-BNSO4 の相互作用について議論する。さらにSAPd 同様にh-BN基板上のPdSO4 の共吸着について安定構造を求め、吸着エネルギーを 算出する。図5.1はピラニア処理を行ったh-BN基板を用いたPd触媒の構造のイメージ 図である。ピラニア処理によって SO4 が基板に吸着することで金基板同様にPd微粒子 が形成されると考えられる。

図5.1: h-BN基板上Pd触媒のイメージ図

h-BN基板上にSO4 が吸着可能であるならば、SAPdと同様にして基板上にPd 微粒子形成が考えられる。

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