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擬ポテンシャル

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LDA)

2.3 擬ポテンシャル

密度汎関数理論の範囲内では、ポテンシャルの形状に対する近似無しで内殻電子ま で含めた全電子の状態を計算する Full-potential Linearlized Augmented Plane Wavd

2.3 擬ポテンシャル 23

図2.1: PAW法の概念図

(FLAPW) [76–79]が原理的には最も精度のよい計算手法である。しかし、FLAPW

法は計算量が膨大であり簡単に解くことはできない。

物質の性質を担うのは多くの場合、原子の価電子である。例えば、周期律表の縦の列に 関して、アルカリ金属や希ガス、ハロゲンガスなどの性質ごとの分類がある。これは、縦 の列の原子の持っている価電子数が同じであるためである。そのため、計算の簡略化のた めに、原子の内殻電子(core-electron) は価電子に影響を与えず、その物質の性質の決定 にも寄与しないと仮定し、価電子のみからポテンシャルを作ったものである。

1970年代までは、実験結果に一致するようにした経験的な擬ポテンシャ ルが使われ ていた。しかしこの場合、擬ポテンシャルを使ったバンド計算では電荷密度分布が他の all-electron型のバンド計算(APW法など)と一致しないなど の問題があった。第一原 理(非経験的)擬ポテンシャルの作成は、Hamannら [80–82]が初めて行った。HSC型、

或いはBHS型と呼ばれ、長く用いられてきた。また、この擬ポテンシャルの拡張型とし てgeneralized擬ポテンシャル [83]がある。これらの擬ポテンシャルには、第二周期元素 や3d遷移金属などの比較的局在した価電子を伴う場合に多くの平面波基底が必要である という欠点がある。そこで、比較的少ない平面波でこれらの原子を扱えるようなソフトな (滑らかにすることによって基底関数を減らし計算コストを減らした)最適化擬ポテンシャ ルが提案され、広く用いられている。Troullier、Martinsによるもの(TM型) [84, 85]や Rapperらによるもの(RRKJ型) [86]がある。また、最近ではノルム保存条件を外して さらなるソフト化を達成するウルトラソフト(Ultrasoft)擬ポテンシャル [87, 88]も開発 されている。

2.3.1 ノルム保存型擬ポテンシャル

擬ポテンシャルに求められる条件として、まず、

1. 価電子状態のエネルギーレベルが再現されること

2. 節無し(ノードレス)の波動関数になること

がある。これらの条件だけでは、価電子状態と言っても、例えば同じC原子であっても、

それがダイヤモンド構造を取るときと、グラファイト構造を取るときでは異なっており、

それぞれについて擬ポテンシャルを作る必要がある。このことは大きな欠点であり、擬ポ テンシャルを使う立場からすると、例えば、C原子であればプロトタイプの原子状態の擬 ポテンシャルを作ったなら、ダイヤモンド構造であってもグラファイト構造であっても使 えるものであって欲しいと願うのは当然のことと思う。このような性質のポテンシャルは

transferableであるといわれる。このような観点から、エネルギーの一致だけではなく価

電子密度の一致にも注意が払われるようになった [89]。

ポテンシャルをtransferableなものとし、擬ポテンシャルを非経験的なものとしたの は、Hamannらによるノルム保存という考えかたである [80]。それは

1. 価電子状態の擬波動関数は、あるコア半径より外では真の波動関数と一致する 2. 波動関数のノルムは保存される

という条件である。

これらの条件を満たすように構築された擬ポテンシャルはノルム保存型擬ポテンシャル と呼ばれ、精度が高く効率のよい電子状態計算法を与えている。このことは、精度の高い 全エネルギー計算を可能にしたばかりでなく、精度の高いエネルギーの微分値や、特定の 原子の変位に対する全エネルギーの微分である原子に働く力の高精度計算を実現した。こ のことが、カー・パリネロ(Car-Parrinello)[90]に代表される第一原理分子動力学の発 展へと繋がった。また、さらに効率のよい擬ポテンシャルの改良、開発が行われている。

2.3.2 ウルトラソフト擬ポテンシャル

ノルム保存型擬ポテンシャルでは、ノルム保存条件を満たすためにd 軌道電子などが 絡む計算では、擬波動関数は真の波動関数の計算量とあまり変わらず、擬ポテンシャルも 滑らかに出来ない。そこで、1990Vanderbiltが考案した第一原理擬ポテンシャルが、

ウルトラソフト擬ポテンシャル [87, 88]である。ウルトラソフト擬ポテンシャルは、擬ポ テンシャルの収束性を向上させるためノルム保存という拘束を破棄する方法だが、それに

よる transferability の低下を回避するため、殻内の電子密度によりポテンシャル補正す

るものである。この殻内の電子密度による補正では、殻内電子密度と擬ポテンシャルは一 体のものとして、それぞれの環境下でセルフコンシステントに計算される。つまり、ノル ム保存型では、ポテンシャルを生成する部分とKS方程式を解く部分は分離できたが、ウ

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