0 0 .5 1 1 .5 2 2 .5 3
0 5 0 1 00 15 0 2 0 0 2 5 0 3 0 0
N-terminal Loop1
0 0 .5 1 1 .5 2 2 .5 3
0 5 0 1 00 15 0 2 0 0 2 5 0 3 0 0
N-terminal Loop1
Fig. 19. The rmsd between Acyl and native VIM-2(PDB code: 1KO3).
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
0 50 100 150 200 250 300
N-terminal Loop1
Loop2
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
0 50 100 150 200 250 300
N-terminal Loop1
Loop2
Fig. 21. The rmsd between complex and Acyl.
Acylでは、ComplexのようなLoop2 の変化が構造の比較から見られなかった
(Fig. 19)。しかし、Complexと違い、酢酸イオン(ACY1)のZn(II)に配位してない酸 素原子は活性中心近傍にあるLoop2上のAsn233(190)のNδ2原子と水素結合(2.6 Å) していることがわかった。これらのことより、Gly232(189) 、Asn233(190)は complexの時と同様に柔軟に動くことがわかった。
そこで、AcylとComplexの構造を重ね合わせて比較した。AcylとComplex の Cα間で0.45 Åのrmsdが得られ、Cα間で1 Å以上動いたアミノ酸残基を調べる と、以下の通りであった(Fig. 21):Glu36(18) (rmsd: 1.2 Å), Pro38(20) (1.3 Å), Val39(21) (1.8 Å), Gly40(22) (1.1 Å), Gly63(44) (1.2 Å), Ala64(45) (1.4 Å), Val66(46) (1.2 Å), Gly232(189) (2.2 Å), Asn233(190) (1.6 Å)。ここで、興味深いことにLoop2 のGly232(189) (2.2 Å), Asn233(190) (1.6 Å)の変化が見られた。
ToneyらはIMP-1 と阻害剤Succinic acid誘導体(2,3-dissubstituted succinic acid deriratives)との複合体のX線結晶構造を報告した。その構造において、Succinic
acid誘導体の1つのカルボキシル基では、一方の酸素原子はZn1とZn2に架橋し
て配位していたが、もう一方の酸素原子はAsn233(167)と水素結合していた55)。 subclass B1 のMBLでは、BcII、CcrA、IMP-1 およびVIM-2 において、233 位は Asnである。基質加水分解過程において、テトラヒドラル中間体が生じるように、
水素結合すると提案されている。しかし、BcIIとIMP-1 のAsn233(BCIIでは 180, IMP-1では167)変異酵素の活性測定実験において、速度論的パラメータ(Km、kcat) の値がWild type IMP-1 に比べてあまり変化がなかったことから、Asn233(180 for BCII and 167 for IMP-1)の役割が詳細に理解されていなかった70, 71)。
本研究において、Nativeと 2 つの複合体(complex, Acyl)の構造の比較から
Asn233は阻害剤の活性部位への取り込みに伴って隣接のGly232(189)の回転によ
り阻害剤を覆いかぶさるように可動することを明らかにした。この結果から
Asn233は活性中心部位における基質結合の安定化に寄与していると考えられる。
第3項 活性中心の比較
Native、Complex、NativeおよびAcylの活性中心の比較を行った。2つのZn(II) 間の距離はComplexでは3.8 Å、Acylでは3.5 Å、Nativeでは4.2 Åであり、Native はComplexおよびAcylにくらべ0.4~0.7 Å長くなっていることがわかった。Class B1に属するMBLの1つCcrAのX線結晶構造から、2つのZn(II)に架橋した水 分子の存在が確認されており、2つZn(II)間の距離は3.5 Åであった。このZn(II) 間の距離は先のComplexならびにAcylのそれらと一致することがわかった。
第4節 小括
本章では、VIM2-PhenylC3SH および Acyl-VIM-2 複合体の X 線結晶構造解析 を行った。以下に、X線結晶構造解析によって得られた結果を要約する。
(1) ComplexおよびAcylの全体構造は共にMBLで見られるαβ / βαのサンドイ ッチ構造をとっていることが明らかとなった。
(2) ComplexのX線結晶構造解析より、PhenylC3SHがVIM-2のloop1とloop2 で構成される溝にはまっていることがわかった。PhenylC3SHのチオール基 は二つのZn(II)へ架橋して結合し、フェニル環はTyr67(31)とface-to-face π-π stacking、メチレン鎖はloop1にある Phe61(25)とCH- π相互作用し複合体の 構造の安定化に寄与していることが明らかとなった。しかしながら、VIM-2、
PhenylC3SHのカルボキシル基は、VIM-2のどの残基とも相互作用していな
いことがわかった。
(3) Native, ComplexおよびAcylのX線結晶構造の比較により、VIM-2のloop2
上の Asn233(190)および Arg228(185)は基質ならびに阻害剤認識に重要な働
きを担っていることがわかった。即ち、基質ならびに阻害剤を活性忠人部 位に取り込み、固定する蓋としての機能をもっていることを明らかにした。
以上のことより、これからの PhenylC3SH と VIM-2 との結合様式ならびにこ の阻害剤のIMP-1とVIM-2に対する阻害効果の違いを分子レベルで推定できた。
第4章 Cd置換VIM-2のX線結晶構造解析
第1節 序論
総論で述べたように、Zn酵素はZn(II)の性質上、分光学的研究を行うことがで きない。そのため、Co(II)やCd(II)に置換することで、UV-Vis分光学滴定やγ線摂 動角相関法(PAC)などの分光学的な研究がよく行われている。特にBcIIではCd置 換酵素の結晶構造と分光学的な研究を行うことで、溶液中における金属イオン の機能などを推測している65-68)。Cd置換酵素のX線結晶構造解析もよく研究され ており、MBLでは1997年ConchaらはCd置換CcrAのX線結晶構造について詳細な 報告した72)。
本研究は、高濃度(50 mM Cadmiumu Sulfate hydrate)のCd(II)存在中で結晶化さ れたVIM-2のX線結晶構造解析を行い、Cd(II)置換によって本来のZn(II)-VIM-2 の複核金属構造がどのように変化するか、特に金属結合部位周辺にどのような 影響を与えるかを調べることが目的である。
第2節 結果
Cd(II)置換VIM-2の結晶構造(以下はCd-VIM-2と称す)は分解能2.3 Å、空間群 P21212 で結晶格子に 1 個の独立した構造が存在していた。モデル構造の妥当性 を表すRは0.190で、Rfreeは0.247であった。理想的な結合角、結合距離からのrmsd は そ れ ぞ れ 1.3 º、0.005 Åで あ っ た 。Cd-VIM-2 の 構 造 で はGlu30(12)か ら
His293(239)までのアミノ酸残基が解析できた。活性中心のZn1サイト、Zn2サイ
トに位置するところに 2 個の大きな球の電子密度が観察できた。最初は 2 つと もZn(II)であると想定して解析を行ったところ、温度因子がそれぞれ16.7 Å2、1.00 Å2であった。Cd-VIM-2のモデルに含まれている原子に対する温度因子の平均が
18.1 Å2であったこと、2.5σのFo-FcマップにおいてZn2サイトに余剰の電子密度
があったことから、Zn2 サイトはZn(II)ではなく、Cd(II)と判断した。そこでZn2 サイトをCd(II)にして解析を行ったところ、平均温度因子が16.4 Å2に対し、温度 因子はそれぞれ6.83 Å2(Zn1サイト)、13.2 Å2(Zn2サイト)となった。さらに 複核金属イオンの周りに水分子を配置させることで、最終的に2.5σのFo-Fcマッ プにおいて余剰の電子密度がなくなり、それぞれの温度因子は8.60 Å2、13.2 Å2と なった。このことから、Zn2サイトの球の電子密度はZn(II)でなくCd(II)であると した。これら以外にも3個のZn(II)、4個のCd(II)、3個のNa(I)が結合していた。
Cd-VIM-2の基質結合部位を上にして横から見た全体構造をFig. 22に示した。
IMP-1やNative (VIM-2)の3次元構造と同じαβ/βαの構造であった。またVIM-2
の表面にZn(II)、Cd(II)、Na(I)が大量存在していることが見られた。
Cd-VIM-2の活性中心をFig. 23に示した。
Na507 Na508
Na506 Zn510
Zn505
Cd501 Cd509
Zn504 Zn1
Cd502 Cd2
Cd503 Na507
Na508
Na506 Zn510
Zn505
Cd501 Cd509
Zn504 Zn1
Cd502 Cd2
Cd503
===
Fig. 22. The overall structure of Cd-VIM-2. α-Helices, β-strands, and loops are shown in red, green, and yellow, respectively.
Zn(II), Cd(II), and Na(I) atoms are shown as orange, pink, and blue spheres, respectively.
Fig. 23. The structure of the active site of Cd-VIM-2. The electron density map (red) of Zn(II) and Cd(II) is shown contoured at the 1.0σ level in 2Fo-Fc map. Zn(II) and Cd(II) atoms are shown as orenge and pink spheres, respectively. His116(94), His118(96), His196(159), His263(220), Asp120(98), and Cys221(178) residues and acetate ion are represented as sticks. Carbon atoms in His116(94), His118(96), His196(159), His263(220), Asp120(98), and Cys221(178) residues are shown in gray (nitrogen, blue; oxygen, red; and sulfur, light green).
活性中心にはそれぞれZn(II)(Zn1)とCd(II)(Cd2)が1つずつ存在していた。Zn1 にはHis116(94)、His118(96)、His196(159)の3つのHis、1つのH2O分子(wat1)が配 位した4配位構造を形成していた。さらに、このH2O分子はCd2との距離が2.2Å であることから、2つ金属イオンを架橋して配位していると考えられる。Cd2に はAsp120(98)、Cys221(178)、His263(220)の3つの残基と1つのH2O分子(Wat1)が 架橋して配位し、またもう1つのH2O分子(Wat2)とが配位した5配位構造であっ た。Tables 7、8にCd-VIM-2の活性中心のZn1とCd2周りの配位原子の結合距離 と結合角を示した。結合角から、Zn1 の配位環境は 4 配位四面体構造、一方、
Cd2の配位環境ではCys221(178)、His263(220)、架橋H2O分子(Wat1)がトリゴナル 平面を構成し、Asp120(98)とH2O分子(Wat2)が軸を構成した 5配位三角両錘型構 造であることがわかった。
Cd-VIM-2 では、活性中心の Zn1、Cd2 以外に、表面に 3 個の Zn(II)、4 個の Cd(II)、3個のNa(I)の金属イオン(以後Zn504, 510, 511; Cd501, 502, 503, 509; Na506, 507, 508と称す)が観察することができた。それぞれのZn(ΙΙ)、Cd(II)、Na(I)の配 位環境を調べた。Tables. 9a1,a2,b1およびb2で示した。
Table 7. Distances (Å) for the active site of Cd-VIM-2.
Table 7. Distances (Å) for the active site of Cd-VIM-2.
ZnCd
-Zn-Cd - VIM-2 Atom VIM-2 Atom Distance (Å) Distance (Å) Zn1
-Zn1 - His116 NE 2 His116 NE 2 2.2 2.2 His118 ND 1
His118 ND 1 2.1 2.1 His196 NE 2
His196 NE 2 2.2 2.2 Wat1
Wat1 1.9 1.9
Cd2
-Cd2 - Asp120 OD 1 Asp120 OD 1 2.5 2.5 Cys221 SG
Cys221 SG 2.5 2.5 His263 NE 2
His263 NE 2 2.5 2.5 Wat1
Wat1 2.2 2.2
Wat2
Wat2 2.3 2.3
Zn1
-Zn1 - Cd2 Cd2 3.7 3.7 Table 8. Angles (º) for the active site of Cd - VIM-2.
Table 8. Angles (º) for the active site of Cd - VIM-2.
Ligand-
Ligand- metalmetal -Ligand -Ligand Angle Angle (º)(º)
His116 NE 2 -
His116 NE 2 - Zn1 Zn1 - His118 ND 1 - His118 ND 1 105 105 Zn1 Zn1 - His196 NE 2 - His196 NE 2 109 109 Zn1 Zn1 - - Wat1 Wat1 116 116
His118 ND 1 -
His118 ND 1 - Zn1 Zn1 - His196 NE 2 - His196 NE 2 104 104 Zn1 Zn1 - - Wat1 Wat1 112 112
His196 NE 2 -
His196 NE 2 - Zn1 Zn1 - Wat1 - Wat1 110 110 Asp120 OD 1 -
Asp120 OD 1 - Cd2 Cd2 - Cys221 SG - Cys221 SG 89 89 Cd2 Cd2 - His263 NE 2 - His263 NE 2 84 84 Cd2 Cd2 - - Wat1 Wat1 82 82
Cd2 Cd2 - - Wat2 Wat2 164 164 Cys221 SG -
Cys221 SG - Cd2 Cd2 - His263 NE 2 - His263 NE 2 108 108 Cd2 Cd2 - - Wat1 Wat1 108 108
Cd2 Cd2 - - Wat2 Wat2 105 105 His263 NE 2 -
His263 NE 2 - Cd2 Cd2 - Wat166 - Wat166 142 142 Cd2 Cd2 - - Wat2 Wat2 86 86
Wat1 -
Wat1 - Cd2 Cd2 - - Wat2 Wat2 99 99
Table 9a1. Distances (Å) for the amino acids and Wats to Cd501~Zn511.
Cd501~Zn511 Atom Distance (Å)
Cd501 - His133 NE 2 2.4
Acy402 OA 2.3
Cd502 - Ser140 OD 1 2.6
(Square Ser140 OG 2.5
Pyramidal) Asp143 OD 2 2.5
Wat69 2.5
Wat93 2.8
Cd503 - Acy401 OA 2.9
(Square His209 NE 2 3.0 Pyramidal) Glu151 OE1 2.5
Glu151 OE2 2.6
Wat157 2.4
Zn504 - Asp97 OD 2 2.4 (Square Asn128 OD 1 2.4
Pyramidal) Wat31 3.0
Wat104 2.4
Wat105 2.8
Zn505 - Gln28 OE 1 2.4
Wat82 2.6
Na506 - Thr93 OG 1 2.7 (Pyramidal) His94 D 1 2.8
Wat29 2.8
Table 9a2. Distances (Å) for the amino acids and Wats to Cd501~Zn511.
Cd501~Zn511 Atom Distance (Å)
Na507 - Ile180 2.7
(Pyramidal) Wat137 2.9
Wat138 3.0
Na508 - Leu222 O 2.8
(Tetrahedral) Leu183 N 2.9
Wat6 2.9
Wat16 2.9
Cd509 - Glu198 OE 1 2.5 (Pyramidal) Glu198 OD 2 2.9
Asp195 OD 2 2.9
Zn510 - Glu18 OE 1 2.4
Glu18 OE 2 2.8
Table 9b1. Angles (º) for the amino acids and Wats to Cd501~Zn511.
Ligand- metal -Ligand Angle (º)
His133 NE 2 - Cd501 - Acy402 OA 94
Asp120 OD 1 - Cd502 - Asp120 OD 2 52
Cd502 - Ser140 OG 96
Cd502 - Wat69 134
Cd502 - Wat93 110
Asp120 OD 2 - Cd502 - Ser140 OG 84
Cd502 - Wat69 83
Cd502 - Wat93 160
Ser140 OG - Cd502 - Wat69 84
Cd502 - Wat93 89
Wat69 - Cd502 - Wat93 116
His263 NE 2 - Cd503 - Glu151 OE 1 85 Cd503 - Glu151 OE 2 94
Cd503 - Wat10 155
Cd503 - Acy401 OA 57
Glu151 OE 1 - Cd503 - Glu151 OE 2 51
Cd503 - Wat10 111
Cd503 - Acy401 OA 111
Glu151 OE 2 - Cd503 - Wat10 83
Cd503 - Acy401 OA 74
Wat10 - Cd503 - Acy401 OA 98
Asn128 ND2 - Zn504 - Asp97 OD 2 109
Zn504 - Wat105 72
Zn504 - Wat104 72
Zn504 - Wat31 86
Asp97 OD 2 - Zn504 - Wat105 166
Zn504 - Wat104 95
Zn504 - Wat31 70
Wat105 - Zn504 - Wat104 73
Table 9b2. Angles (º) for the amino acids and Wats to Cd501~Zn511.
Ligand- metal -Ligand Angle (º)
Gln280 OE 1 - Zn505 - Wat82 82
Thr93 OG 1 - Na506 - His94 D1 91
Na506 - Wat29 112
His94 D1 - Na506 - Wat29 124
Ile180 O - Na507 - Wat137 110
Na507 - Wat138 97
Wat137 - Na507 - Wat138 113
Leu222 O - Na508 - Leu222 N 128
Na508 - Wat6 106
Na508 - Wat16 93
Leu222 N - Na508 - Wat6 73
Na508 - Wat16 136
Wat6 - Na508 - Wat16 117
Asp195 OD 2 - Cd509 - Glu151 OE 2 95 Cd509 - Glu151 OE 1 78 Glu151 OE 2 - Cd509 - Glu151 OE 1 47
Glu18 OE 1 - Zn510 - Glu18 OE 1 50
第3節 考察
Cd-VIM-2 の結晶は高濃度のCd(II)(50 mM Cadmium Sulfate hydrate、0.1 M HEPES pH 7.5、1.0 M Sodium Acetate trihydrate)の条件下で得られた。Conchaらが 報告したCd(II)置換CcrAの結晶は、あらかじめnativeのCcrA(活性中心にZn(II))
の結晶に10 µM CdCl2をsoakingすることで得られたと報告している72)。またPDB に登録していたCd置換BcIIの結晶(結晶構造:PDB code 1MQO)は1 mM CdSO4, 13%PEG 8K, 10 mM sodium citrate, 100 µM DTT, 100 mM MES buffer (pH 4.9)の条 件下で得られ、その活性中心は複核Cd(II)構造であると報告されている(PDB code 1MQO)。これらのCd(II)置換MBLの結晶化条件を比較すると、Cd(II)置換CcrAや Cd(II)置換BcIIに対して、Cd-VIM-2では高濃度のCd(II)(50 mM Cadmium Sulfate
hydrate)を用いることで、活性中心のZn2サイトがCd(II)に置換されたことがわか
った。他のグループのCd置換MBLの結晶構造では、どのようにCd(II)と同定した か記載されていないが、本研究では、2.5σにおけるFo-Fcマップの余剰な電子密 度 を 消 失 さ せ る よ う に モ デ ル を 組 ん だ こ と で 、Cd-VIM-2 の 活 性 中 心 は Zn(II)-Cd(II)混合複核構造であるとした。
本研究により、高濃度の金属イオンを結晶化条件に加えておくことで、比較 的親和性が高い活性中心の活性発現に必要な金属イオンを置換することができ ることがわかった。Zn2は置換されており、Zn1は置換されてないことから、Zn2
サイトのZn(II)との親和性はZn1のサイトのそれより低いとわかった。
Cd-VIM-2 では構造表面に 9 個の金属イオンが存在したが、Cd(II)置換 CcrA、
Cd(II)置換BcIIではこのような金属イオンは存在しなかった。これは結晶化中の
Zn(II)、Cd(II)、Na(I)の濃度に関係があると考えられる。Cd(II)に関しては、Cd(II)
えた。
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
0 50 100 150 200 250 300
N-terminal Loop1
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
0 50 100 150 200 250 300
N-terminal Loop1
Fig. 24. The rsmd between the native VIM-2(PDB code: 1KO3) and Cd-VIM-2.
Loop1
Tyr67(47)
Arg228(185)
Phe61(42)
Asn233(190)
Cd2
Zn1 Wat1 Loop2
Loop1
Loop2
Tyr67(47)
Arg228(185)
Phe61(42)
Asn233(190)
Cd2
Zn1 Wat1
Fig. 25. Superposition of the native VIM-2(PDB code:
1KO3)(purple) and Cd-VIM-2(grey)(Zn1, grey; Cd2, yellow)
次に、Cd-VIM-2の構造を詳細検討ため、NativeとCd-VIM2の構造を重ね合わ せて比較した(Fig. 24)。Cd-VIM-2 の全体構造は、大量金属イオンがその表面に 結合しているにも関わらず、Cd-VIM-2 は Native の全体構造と N 末端領域と
Loop1領域を除いてあまり変化がなかった。
NativeとCd-VIM2とのCα間でrmsd は0.48 Åが得られ、1 Å以上動いたアミ ノ酸残基は以下の通りであり、また Fig. 24 で示した: Val34(16)(1.8 Å), Ser35(17)(2.2 Å), Glu36(18)(2.0 Å), Ile37(19)(1.0 Å), Pro38(20)(1.3 Å), Phe61(42)(1.5 Å), Asp62(43)(2.0 Å), Gly63(44)(1.9 Å), Ala64(45)(1.3 Å)。Loop1は
Complex、Acyl においても基質・阻害剤結合に重要な部分と考えられ、Flexible
であることがわかっていたが、Cd-VIM-2においても同様な結果を得ることがで きた。
活性中心において、Zn1は3つのHis残基と配位し、Cd2はAsp、Cys、Hisの3 つのアミノ酸残基と配位していることがわかった。nativeとくらべ、Cd2はZn(II) を置換したでも関わらず、リガントの距離や角度はほぼ同じであることがわか った。Nativeではこの架橋H2O分子、またZn2 に軸を構成しているH2O分子は観 察できなかった。ここで、Zn1とCd2の間は1つH2O分子が存在し、このH2O分 子はZn1、Cd2 との距離はそれぞれ 1.9Å 、2.0Åであり、2 つ金属イオンを架橋 して配位していた。また、Cd2 に軸を構成しているH2O分子は観察でき、native なCcrAの結晶構造の結果と一致した。
Cd2は3つのHis残基と2つのH2O分子(Wat1, Wat2)と配位結合していることが わかった。ここで興味深いことは、水分子Wat3 はZn1 とCd2 に配位している水 分子Wat1と水素結合して、またLoop2に存在するAsn233(190)と水素結合を形成 していることがわかった。ComplexやAcylでは、Loop2のAsn233(190)は、基質ま
造から、Asn233(190)は1つ水分子(Wat3)を介して、Zn1とCd2に配位したH2O分 子に結合することがわかった。このことから、Asn233(190)はZn1 とCd2 に配位 しているH2O分子を基質へ求核攻撃できるように方向付けする役割をもつかも しれない(Fig. 26)。
第4節 小括
本章では、Cd- VIM-2の結晶をでき、X線結晶構造解析を行った。以下に、X 線結晶構造解析によって得られた結果を要約する。
(1)高濃度Cd(II)存在下Cd置換VIM-2の結晶を得られた。これは高濃度の金属イ
オンを結晶化条件に加えておくことで、金属イオンの結合性が低い Zn2 サイ
トがCd(II)に置換されることが分かった。
(2) Cd-VIM-2 の全体構造はMBLsでよく見られるαβ/βαの構造同じであった。ま
たVIM-2の表面にZn(II)、Cd(II)、Na(I)が大量に存在していることが見られた。
金属結合活性中心では、活性中心では1つZn(II)(Zn1)、1つCd(II)(Cd2)が存在 し、アミノ酸残基との配位環境もnative VIM-2と同じであった。また、Zn1と Cd2の間は1つH2O分子が架橋し、Cd2には軸を構成しているH2O分子が配位 ていることが観察された。Asn233(190)は1つ水分子(Wat3)を介して、Cd1に配 位したH2O分子に水素結合することで、Cd1に配位しているH2O分子を基質へ 求核攻撃できるように方向付けする役割をもつかもしれない
以上のことから、Cd2-VIM-2について、活性中心のCd(II)の配位環境を解明 した。
第5章 ダンシル基とチオール基を有する蛍光プローブによるMBLの検出
第1節 序論
感染菌のMBL (IMP-1) 産生の有無を確認することは初期段階での有効な化学 療法において極めて重要である。現在知られているMBLの検出方法として耐性 遺伝子の塩基配列を利用するPCR法73)があるが、高度な技術と特殊試薬を必要と し臨床検査で日常的に行うのは困難である。2000年にGoto、Arakawaらは、メル カプト酢酸ナトリウムディスク (SMA) とセフタジジム (CAZ) のディスクと を並置するダブルディスク法74)を報告した。これは、NCCLS法75)に従いミュー ラーヒントン培地にMacFarland 0.5の菌液を綿棒で塗布し、MBLに対して阻害作 用を示すSMAディスクとセフェム系抗菌剤であるCAZのディスクを並置して一 晩置き、ディスク周辺の発育阻止帯の変化からMBLの産生の有無を識別する方 法である。この方法は、臨床検査で比較的簡単に使用することが可能だが長時 間を要する。そこで、臨床で簡便にかつ短時間で検査できる蛍光プローブ法を 用いることを考えた。これは、微量な酵素濃度で定性的及び定量的な測定が可 能であると考えられる。
蛍光プローブ法は感度や操作性等の面から最も取り扱いやすい手段として知 られている。現在、生細胞内のZnの蛍光プローブはじめ、細胞内あるいは生体 組織中の生理活性物質を可視化して、リアルタイムで生体内情報を得ようとい う試みが盛んに行われている。
蛍光プローブ法を用いてMBL (IMP-1) を検出する際に使用する蛍光剤の開 発にあたって、以前から研究が行われているMBL (IMP-1) の阻害剤に着目した。
そこで、蛍光発色団としてダンシル基を有しかつチオール基をもつ化合物は
MBL(IMP-1) の有効な蛍光剤になるのではないかと考えた。最近、Kurosakiらは