脊椎関節炎とは何ですか?
Q.25 AS に使われる薬としては、その他にはどんなものがありますか?
出ていません(AS の治療薬として記載が ない)。免疫異常が基盤にあるという点で は RA の親戚のような位置にある AS です が、この点、すなわち DMARDs はほとん ど無効であるということは RA とは異なる ところであり、治療上、大切なところで す(勿論、例外的に有効なケースもあると いう報告もあるにはありますが)。残念な ことに、日本の医師達の間でこのことが広 く知れ渡っていないようで、RA の治療方 針と全く同じにと考えられた結果、患者自 身もその有効性を感じていないままにメト トレキサートが漫然と長期間使われている ケースが後を絶ちません。
また、AS と合併することがある『潰瘍 性大腸炎』や『クローン病』の主たる治療 薬であり、RA にも有効で発症初期から使 われることが多いサラゾスルファピリジン SASP(サラゾピリン 、アザルフィジン など)が AS に有効であるという確固たる エビデンスもないようです。ただ AS の中 で、四肢の関節の炎症で初発したり、その 後、それが主体となるタイプが時にあるの ですが(末梢関節炎型)、このタイプには 有効な場合があるとされています。この薬 は NSAIDs に比べてその効果の発現が遅 く、開始後 2 ~ 3 ヶ月してから効いてくる とはいうものの、患者自身に「効いた」と いう実感がないままに、やはり RA と同じ と考えられた結果、長期にわたって漫然と 投与されているケースも少なくありませ ん。そのような場合には、一度、中止して みて、その反応をみることも勧められます
(症状が悪化すれば効いていたと考えられ るので続けて良い)。そして、この SASP にも胃腸障害、脱毛、頭痛、めまい、皮膚 障害、発熱、黄疸などの副作用があり、ま た重篤なものとしては造血機能障害(白血 球・赤血球・血小板減少、再生不良性貧血)、
『間質性肺炎』、さらには肝臓・腎臓障害な どが稀に出るとされていますので、使用に 当っては専門医(主にリウマチ医)による 注意深い観察が必要です。
また、NSAIDs では抑えきれない頑固で 強い疼痛に対し、とにかく痛みを抑えると いう目的で、麻薬類似物質(トラマール 、ト ラマドール 、ワントラム 、ノルスパンテー プ など)が、近年、急速に普及しつつあ りますが、これらが AS の痛みにも有効な ことがあります。ちなみに、原因を特定で きないものの広範囲に頑固な疼痛を訴える いわゆる『慢性疼痛』と呼ばれる疾患・病 態群があります。これらに対しては、古典 的な抗うつ剤(ノリトレン 、トフラニール 、 トリプタノール など)、あるいは近年続々 と開発され頻用されるようになったノルア ドレナリン再取り込み阻害剤 SNRI(サイ ンバルタ 、トレドミン など)、セロトニ ン再取り込み阻害剤 SSRI(デプロメール 、 ルボックス 、パキシル 、ジェイゾロフト など)なども使われます。この中で特定の 診断基準を満たしたものに『線維筋痛症』
がありますが、本疾患については末梢神経 障害性疼痛用剤(リリカ 、ガバペン など)、
さらには糖尿病性末梢神経障害用剤(キネ ダック )やある種の抗不整脈剤(メキシ
チール など)、そして古い薬ですが慢性疼 痛に対する効果が近年見直されてきたワク シニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液剤
(ノイロトロピン .内服・局所注射・静脈注射)
などの有効性が判明し、AS に限らず頑固な 痛みを訴えるケースに頻繁に使われるよう になりました。
これらは、AS による炎症を本質的に抑 えるものではありませんが、とにかく痛み
を軽減し身体活動を楽にさせ(運動により 痛みが軽減するのが AS の特徴でもありま すし)、患者の QOL を高めるため、使用 経験が豊富なリウマチ医、あるいはまた疼 痛の専門家である麻酔科医(ペインクリ ニック)、場合により心療内科医によって 適切に使われれば、その効果は十分期待で きるものです。
生物学的製剤は、RA においては、もし かすると完治に導ける薬、少なくとも早期 に使用を開始すれば骨関節の破壊が抑止 できる画期的な薬として、欧米で 1998 年 から使われ始め、我が国でも 2003 年から RA に、そして欧米に数年の遅れをとった ものの 2010 年には AS にも健康保険での 効能・適応が承認されました。RA に続き AS の治療においても画期的変化をもたら した“良く効く薬”です(“夢の薬”とま で行かなかった理由は後述)。
発生過程・機序が RA や AS と似ていて
『脊椎関節炎』を合併することがある病気、
すなわち皮膚の疾患である『乾癬』、ある いは『クローン病』や『潰瘍性大腸炎』な どの炎症性腸疾患、さらには眼の『ぶどう 膜炎』などにも有効であることが次々と判 明し、これらに対しても使用されるように なりました。英語では Biologics、医師達 は略してバイオと呼んでいます。
化学的に合成した薬ではなく、生物から 産生される物質(蛋白質)を利用して遺伝 子工学(バイオテクノロジー)の技術によ り作られた薬ということから生物学的製剤 と呼ばれます。体内の細胞から放出されて 細胞の分化・増殖・機能発現を誘導して免 疫作用、抗腫瘍作用、抗ウイルス作用など を調整する蛋白質(腫瘍壊死因子 TNFα、
インターロイキン IL、インターフェロン IFN、エリスロポイエチン EPO、顆粒球
コロニー刺激因子 GSF など)を総称して サイトカインと呼びますが、この中に、免 疫系の細胞に作用して炎症を起こすものが あります。RA や AS の患者の体内、特に 関節内や靱帯付着部には、TNFα、IL−6、
IL−17 などが増加していることがわかり、
その他にも次々と見つかってきています。
生物学的製剤は、過剰に産生された有害作 用を持つこれらのサイトカインと直接結合 して中和したり、すでに結合してしまった ものを引き剥がしたり、あるいはまたこれ らを作り出している細胞を傷害して炎症の 発生を抑える薬です。NSAIDs に比べて、
炎症過程のより前の段階に作用する薬と言 えます。
現在、我が国で AS の患者に使われてい るものは、このサイトカインのうち TNFαの 産生や機能を抑制する抗 TNFα剤または TNFα阻害剤と呼ばれるもので、治験を経 て 2010 年に続けて 2 つ、インフリキシマ ブ(レミケード )とアダリムマブ(ヒュ ミラ )の適応が承認されました。
レミケード は当初は 2 週、4 週と間隔 を開けて投与して、問題なければ、以後 は 6 ~ 8 週毎に一度の点滴により連続投与 します。点滴なので、その都度病院に行く 必要があります。一方、ヒュミラ は 2 週 間に一度の皮下注射で、指導を受ければ患 者自身でも注射することができ、忙しくて なかなか病院に行けない人に好まれていま