と相関性があることがわかってきました。
つまり HLA というものは、様々な病気と の関連性を示す遺伝標識としても、病気の 診断のための材料になり得る訳です。事実、
その相関性の高いものは、それぞれの疾病 の確定診断のための重要な検査となってい ます。たとえば若年性(Ⅰ型)糖尿病では DR4、ベーチェッ卜病では B51、ある種 の甲状腺炎では B35 や B67、神経難病の 多発硬化症では DR2、関節リウマチでは DR4 などが相関性が高いとされています。
ナルコレプシー(睡眠・脱力発作を生じる 神経疾患で DR2 を持つ)とともに、その 相関が非常に高いことで有名な疾患と型が AS と B27 なのです。
一人の人間は、この一つの遺伝子型グルー プ(A、B、C、D、DR、DQ、DP など)ご とに、2 つずつ HLA 型(遺伝子多型とも 呼ばれる)を持っています。ある人は、B の 27 と 31 といったように。つまり両親か ら一つずつもらっているということです。
従って両親のいずれかが HLA−B27 を持っ ていると、その子供たちに 50%の確率で 遺伝することになります。となるとこれと 相関の高い AS(の発生)に遺伝的要素の 関与があるのは当然ということになりま す。また、人種によっても HLA−B27 の頻 度は異なり、HLA−B27 を持っている人の 率が高い白人では(7 ~ 14%)、AS の有 病率もやはり高いようです(0.1 ~ 0.2%)。
一般の日本人で HLA−B27 を持つ人は、
骨髄バンクの統計によると約 0.3%だそう ですが、それに対し、AS 患者では 85 ~
90%(欧米白人の場合)と異常に高い相関 を示します。HLA 型と相関する疾病の中 では、その相関の高さすなわち頻度に関し て言えば、AS は群を抜いていると言って 良いでしょう。この意味で、HLA 検査は、
AS の確定診断においては重要な意義をも つ検査ということになります。因みに、こ の一般人口における B27 の陽性率(B27 を持つ人)は民族によって著しく異なりま す。たとえば、エスキモーやラップ人には B27 を持つ人が全人口の 25 ~ 40%もいま すし、欧米白人は 8%前後、アフリカ系ア メリカ人で 4%前後、逆に少ないところで は日本の 0.3%よりもさらに上がいて、ポ リネシアのマオリ族とかオーストラリア 原住民(アボリジニ)は 0%という報告が あります。そして、B27 と高い相関を示す AS の有病率も当然のことながらこれらの 数値に平行する訳ですから、北国では AS 患者が多く、アフリカや南の国では少ない こともわかっています。正式な統計がない のでわかりませんが、マオリ族やアボリジ ニの人達には AS 患者がほとんどいないの かもしれません。さらに、興味あることに は、日本人のルーツと一般に言われる中国、
韓国では B27 の陽性率は欧米白人に近く、
事実、AS 患者の数も日本よりはかなり多 いようです。
ただ、ここで注意しなくてはならないこ と、大切なことがあります。それは HLA
−B27 が陽性だからといって、その人が 皆 AS になる訳ではないということです。
HLA−B27 を持つ人のうちで数%~ 10%、
すなわち約 10 人~ 15 人に 1 人の割合で AS が発症するに過ぎません。実際に諸外 国の患者調査でもそのような統計が出てい ます。さらにその中でも、bamboo spine になってしまうほどの典型的かつ重症の AS になる人は、日本の患者会(しかも比 較的重症例)の調査では 1 / 3 程度です。
一方、AS 患者のうち 85 ~ 90%に B27 が 陽性ということは、AS 患者の 10 ~ 15%
は B27 を持っていないということであり、
従って、B27 が陰性だからといって AS に ならないから心配無用とも言えない訳で す。因みに、B27 が陰性の AS 患者の中に は B39 の陽性率が高いと言われています。
以上述べてきたように、確かに、HLA 検査(B27 の有無)は、AS の確定診断に 向けての有力な検査と言えるものの決定的 な検査とは言えない、言い換えれば、医師 は診断に際して、この HLA の検査(タイ ピングともいいます)の結果を過信した り、振り回されてはいけないということで す。たまたま B27 陽性だったからと言って、
将来必ず AS を発症する訳ではないので、
過剰な心配は無用ということです。逆に、
陰性なので AS にはならないから大丈夫と 太鼓判を押す訳にもいきません。それに、
B27 が陽性であろうが陰性であろうが、基 本的に AS の治療内容に変わりはありませ んし……。
この点、一般の医師でも思い違いをして いる人がいて、そのような医師から、いず れ必ず AS になる(酷い場合には、脊椎が 必ず棒のように固まるとも)といったよう なニュアンスで説明され(脅かされ?)、
不安にかられている人も時に見かけます。
あるいはまた、まだ何の気配もないのに心 配だからといって、小さなお子さんに健康 保険で認可されていないため高額な(1 万 数千円)HLA 検査をしてくれと連れて来 る AS 患者の親御さんもいますが、勧めら れることではありません。ただし、これに ついては両親の人生観もあるので、無駄で す!と一方的に拒否することもできないの でしょうが……。結果が陽性に出たとして も必ずしも AS になる訳ではなく(むしろ ならない人の方が圧倒的に多い)、逆に陰 性だったからと言って、絶対 AS にはなら ないと安心する訳にも行きません。勿論、
両親が AS しかも B27 が陽性、そしてそ の子供も B27 ということであれば、子供 に AS が出る確率はそれなりに高くなるこ とは否めません。
病気の予後(今後どうなるのか)につい ての相談とともに多いのが子供への遺伝に 関するものです。子供に病気が出ると可哀 相なので結婚しない、あるいは結婚しても 子供は作らないと考えている患者さんも少 なからずいるようです。確かに家族内発生 が多いこと、Q.16 で述べたように親から 子へ 50%の確率で遺伝する HLA−B27 型 と強い相関を示すことから、AS の発症に は遺伝の関与があることは否定できませ ん。欧米諸国では、これらの観点から様々 な調査がなされていますが、日本では患者 数が少ないこともあって、詳しい調査は未 だ行われていません。一般には、どちらか いずれかが AS である両親から AS の子供 が生まれる確率はおよそ1/ 6 程度とされ ています。つまりいずれか一方の親が AS に罹っている場合、6 人子供ができたらそ のうち 1 人が AS を発症する可能性がある ことになります(あくまでも可能性)。そ して、たまたまそのうちの一人になってし まって AS が発症したとしても、それなり の努力や工夫をすればその 60 ~ 80%以上 が通常の生活や就労が可能であるという日 本の患者会も含めた各国の調査報告が示す ように、通常の生活が送れないほどに重症 で重度の障害を生じるのは、そのまたごく 一部ということになります。
このように、両親のいずれかが AS の場 合、確かに一般の両親から生まれる子供に 比べて AS になる確率は若干高いと言うこ
とは否めませんが、万一 AS が発症したと しても、直接生命を脅かすような病気では なく、重症例になるのはごく一部に限られ、
ほとんどの患者が通常の日常生活を送れる こともわかっています。さらにはこれから の時代は早期に診断がつき易くなって、発 症初期から適切な治療を受けながら(病状 改善に極めて有効な薬も開発されつつあ る)積極的に運動や社会活動をしていれば、
昔と違って重症に至るケースも減少するは ずです。これらの点を考えれば、AS だか ら結婚しない、AS だから子供を作らない と短絡的に決めつけてしまうことは決して 望ましいことではないと言えるのではない でしょうか。
また、両親のいずれかが AS で、子供が できた時、子供にはまだ何の症状も出てい ないのに HLA−B27 の検査をしたり、定期 的に血液検査やレントゲン写真を撮ってい る人がいるという話も耳にしますが、海外 の多くの AS 患者用の手引き書には、「そ のようなことは子供に無駄な不安を与える だけで精神衛生上好ましくない」と書かれ ています。また、もし HLA−B27 を持って いることがわかったとしても、病気の性質 上、症状のない頃から安静をとらせたり(運 動をさせなかったり)薬を使ったところで、
生物学的製剤の開発・普及により多少は病 勢やその進行を遅らせる可能性は示唆され つつあるものの、病気の発症を抑止するこ とはできないわけですので、全く通常の子
Q.17 AS は遺伝する病気ですか?
供と同じ生活をさせる他はないと言えま す。事実、その方が、たとえ運悪く後に発 症したとしても、その後の病状にも(体力 がなければ病気とも付き合えない)、発育 期の子供の精神衛生上も良いはずです。そ れぞれの親の考え、教育方針の違いはある と思われますが……。HLA−B27 を持って いても AS にならない方が圧倒的に多いこ とを考えれば、結果的に AS にならなかっ た場合、予防的に薬を飲ませたり、体を動 かしたい盛りあるいは体を鍛えるべき時 期(年代)に安静をとらせたりしたことが、
後々大きなマイナスになってしまう恐れが あります。ただ、家族に AS 患者がいる場 合、両親が AS の初期症状である脊椎や関 節の症状に注意をしておく必要があると は、欧米の患者会の手引き書にあります。
以上、これは大変微妙な問題であり、生 活習慣や国民性、人生観などが欧米と異 なる日本では、そのまま当てはめる訳に も行かないでしょうし、人それぞれの考 え方もあるので一概には言えないでしょ うから、医学的見地からは、これ以上の 言及は控えます。