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ARCS モデルに基づく e ラーニング教材の動機づけ設計指針の作成

3.3 初修中国語 BL のための e ラーニング教材動機づけ設計指針

3.3.3 ARCS モデルに基づく e ラーニング教材の動機づけ設計指針の作成

Kellerは,ARCSモデルを適用するに当たって,事前に学習者集団のプロフィールを把

握し,それに対応した動機づけ設計を行うことを提唱している(14)(16).そこで本研究でも,

これまでに実施したアンケート調査の結果,及び筆者の教師としての現場経験に基づき,

学習者のコンピュータを利用した復習に対する意欲と態度,及び中国語学習へのニーズ,

学習経験,学習困難点などについて確認し,さらにそのプロフィールに応じて,ARCSモ デルの4要因によりながら,動機づけの方向性を決定した(表 3.3).

次に,この方向性を前提として ARCS モデルに基づき,Keller & Suzuki が提案する ARCSモデルを応用したコンピュータ教材設計のための44の動機づけ方略リスト(16)を参 考に,eラーニング教材の動機づけ設計指針を作成した.ここで,Keller & Suzukiの方略 は,コンピュータ教材一般向けのものであるのに対し,本eラーニング教材は,完全自習 教材ではなく,初修語学学習における復習教材であるため,ARCSモデルの4要因及び12 の下位分類を枠組みとしつつ,Keller & Suzukiが提案する44の方略を個々に検討し,中 国語BL用eラーニング教材に適用可能な方略を選択した.具体的には,授業で学習した

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表 3.3 学習者のプロフィールと動機づけの方向性

学習者のプロフィール 動機づけの方向性

大多数の学習者は,PCを利用した復習 に対して積極的である

・PCのマルチメディア性を活かし,注意を喚起する

・PCのインタラクティブ性を活かし,注意を持続させる

話せるようになりたい

・話したい内容に関連づける

・話せるようになった満足感を与える

中国語学習の経験がない

・授業内容と関連づけ,親しみを感じさせる

・練習は易から難へと一歩ずつ進み,自信をつけさせる

学習方法がわからない ・学習目標や練習方法を提示し,自信を構築する

単語の音声,リスニング,文の構造が 苦手

・多様な練習で飽きさせることなく反復させ,かつ多様な方法 によって自信をつけさせる

語彙や文型を復習で定着させ,次回の授業で行う確認テストと発展学習につなげることを 念頭に,リスニングや書き取りを中心とする反復練習を行うこととし,そのための教材に 適用可能な方略を選択し,展開させる形で各動機づけ設計指針を作成した(表 3.4).

例えば,Keller & Suzukiの「A1. 知覚の喚起」のうち,1番目の方略である「Audio-visual effects(視聴覚的効果)」は選択し,これを参照して本教材の動機づけ設計指針「1.視 覚的効果:印象的なイラストを選定し,その際,特に楽しい雰囲気を醸し出すことに留意 するようにする」として定義した.これにより学習者の注意と興味を喚起することが期待 できる.ただし,本方略では視覚的効果と聴覚的効果の両者を対象としているが,本研究 で対象とする教材は大学の初修語学学習用ドリル教材として短時間で簡潔に復習に取り組 めることを目指しているため,アニメーションなどの視覚的効果による強調的な注意喚起 までは必ずしも必要ないものと判断し,これに加え,その学習内容も発音やリスニングな ど音声面の学習を中心としていることから,BGM や効果音は,その使用法によっては,

これらの音声面の学習を阻害する可能性も考えられるため,ここでは聴覚的効果を使用し ないこととした.一方,楽しい雰囲気を醸し出すイラストなどは,それを効果的に用いる ことで,復習自体を妨げることなく,単語の意味や会話の場面を提示することができ,こ

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表 3.4 Keller & Suzukiの動機づけ方略を参照した本eラーニング教材の動機づけ設計指針

(抜粋)

ARCS Keller & Suzukiの動機づけ方略 参照 eラーニング教材の動機づけ設計指針

A 1

・Audio-visual effects(視聴覚的効果)

Use animation, inverse, flash, sound and other audio and visual capabilities of the computer as attention getters.

1.視覚的効果

印象的なイラストを選定し,その際,特に 楽しい雰囲気を醸し出すことに留意する ようにする.

理由:視覚的,聴覚的に新規な,興味深い事象や楽しい雰囲気を醸し出すことで,学習者の注意と興味を 喚起することが期待できる.ただし,本教材は,大学の初修語学学習復習用ドリル教材であり,短時間で 効率よく復習できることを目指し,かつ,音声面の学習を中心としているため,アニメーション,文字の 反転,音響などによる強調的な注意喚起は必ずしも必要ではないと判断した.一方,楽しい雰囲気を醸し 出すイラストを使用することで,学習者の注意と興味を喚起することが期待できる.

(中間項目を省略)

A 3

・Interplay of instruction and response

(教授と反応の相互作用)

Intermingle information presentation screens with interactive screens.

×

理由:本教材は,完全自習教材と異なり,BL用復習ドリル教材であるため,文法解説や例示などによる情 報提供は,授業及び授業で使用する教科書で行う.一方,復習では,短時間の反復練習により単語や文型 の定着を図ることを目的とし,教材は主として練習画面から構成し,これに簡単なフィードバックを追加 するにとどめ,詳細な解説や例示は基本的に提示しない.これにより,本方略を不参照とした.

○は参照,×は不参照を表す.

れにより学習者の注意と興味を喚起することが期待できる.そこで,本復習用ドリル教材 のための指針としては,イラストなどの視覚的効果を中心として利用することとした.

また,例えば「A3. 変化性」のうち,2番目の方略である「Interplay of instruction and

response(教授と反応の相互作用)」については,参照項目として選択しないこととした.

これは,本教材が3段階学習プロセスによるBL用の復習ドリル教材であり,ここでは,

第2段階における学習活動,すなわち,ガニェ9教授事象の事象6(練習の機会を作る)

及び事象7(フィードバックを与える)に当たる学習活動を行うことによる.具体的には,

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新規の学習内容や文法事項に対し,解説や例示などによる理解を促すための情報提供は,

第1段階である授業及び授業で使用する教科書のなかで集中して行い,第2段階である復 習では,短時間の反復練習によって単語や文型の定着を図ることを目的としている.この ため,本教材は主として練習画面から構成し,これに正誤判定と称賛・励ましなどの簡単 なフィードバックのみを加えるにとどめ,解説や例示などの詳細は提示しないこととした.

なお,本教材は,練習内容やクイズのパターンに変化性をもたせることで,学習者の注意 を喚起する一方,個々の教材を簡潔にすることで,学習者の集中を持続させることを目指 している.

以上のように44の動機づけ方略を個々に検討し,そのなかから28の方略を選択・参照 して,最終的に28項目のeラーニング教材の動機づけ設計指針を作成した(表 3.5).

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表 3.5 ARCSモデルに基づく本eラーニング教材動機づけ設計指針

ARCS eラーニング教材動機づけ設計指針

A1

1.視覚的効果 印象的なイラストを選定し,その際,特に楽しい雰囲気を

醸し出すことに留意するようにする.

2.見慣れない内容や事象 題材とイラストは,ユーモラス,SF やファンタジーなど

非日常的な要素,また異文化的な要素などを用い,楽しさ のある興味深い内容とする.

3.邪魔の削除 学習者の集中を妨害するような,内容に直接かかわらない

画像あるいは過剰な装飾やシグナルなどの使用を避ける.

A2

4.能動的な反応 クイズ形式による練習を用い,その練習で誤答に対し示唆

を含んだフィードバックを与えることにより,学習者に能 動的に考えさせ,興味をひくようにする.

A3

5.短い区分 問題や指示,説明を短く簡潔にし,練習に取り組むことに

躊躇させず,また飽きがこないようにさせる.

6.フォーマットの変化 単語,リスニング,書き取り,重要文例というように多様

な練習を用意し,また各練習に応じて異なるクイズ形式を 用い,練習の内容構成と提示方法にバリエーションをもた せる.

7.機能的な統合 練習内容を示す音声,イラスト,文字を統合的に提示し,

語彙の記憶及び会話と文の理解を助ける.

R1

8.人間味ある表現 第一人称をはじめ,人称代名詞や個人名を用いたり,登場

人物をイラスト化することで,教材に親しみやすさを与え る.

9.具体性提示のイラスト イラストを使用して語彙や会話の具体的なイメージを提

示し,練習内容に親しみやすさをもたせる.

10.身近な題材 学習者にとって身近な話題や実生活に関連した事柄を取

り上げることで,学習者に学習内容との一体感を抱かせ る.

R2

11.重要性と有用性 コミュニケーション重視の観点から,自己表現やコミュニ

ケーションに必要な語彙と文例を中心にして,練習内容を 作成し,そのテーマを復習課題の目標として明示すること で,課題の重要性と有用性を示す.

R3

12.得点記録システム 達成動機を刺激するために,学習管理システムを利用して

得点や学習進捗状況が確認できるようにする.

13.非競争的なオプション 点数確認は自己確認で,他者との競争としない.