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ANX と 「 共通ネットワークシステム」

う。

第 Ⅱ 部 「自動車産業 における環境規制 と

1. ANX と 「 共通ネットワークシステム」

( 1 )

.ANXの展開

① ANXとは何 か

ANXの特質は、「共通 ネッ トワークシステム」 と "パー トナーシップ とにあると云えようANXは、米 自動車業界の 「サプライ ・チェー ン (SupplyChain)」が抱 える様 々な問題 を解決するために、米 自動車業界 の非営利団体であるAIAG (TheAutomotivelndustryActionGroup)が1998年 に稼働を開始 した 「標準ネッ トワー ク」(注 1)であるとされる確かに、それは一般的には米 自動車業界における "標準 ネッ トワー ク''で あ る と理解 されてい る。 しか しなが ら、 この "標準 ネ ッ トワー ク" なる言葉 は甚だ唆味であ る。現 に当の AIAG自体がそ うした言葉 を使っている訳ではない。例えばAIAGのURLを念のために覗いてみる と、"標準 ネ

ッ トワー ク"なる言葉 は一向に見当た らず、 自動車産業 にお ける 「共通 ルール (CommonRules)」とい う言 葉 が使 わ れ て い るだ け で あ る そ して 「共 通 ル ー ル」 とは、 (イ)CAD、CAM (ComputerAided Manufacturing)、 CAE (Computer Aided Engineering)、 PIM/PDM(Product lnformation Management/ProductDataManagemnt)な どの ような生産 デー タ技術、 (ロ)STEP (Standardforthe ExchangeofProductmodeldata)の ような "標準" ソフ トー な どの共 同利用のための 自動車産業 における 共通)レールだ とされ る (托 2)。従 ってANXとは、正確 には、 こうした "共通 ルール" を形成す るために米 自動 車産業が創設 した 「共通 ネッ トワークシステム」であると理解 されるべ きであろ う。

もう一つの特質は、ANXがANX参加企業の取引関係 に関 して "パ丁 トナー シップ" を重視 しているとい う 点である。 アセ ンブラー とパー ツサプライヤーの取引関係 は両者の力関係 を反映 し往 々に して "系列取引" に 陥 りが ちであるが、ANXは、パーツサ プライヤー間の取引 は無論の こと、 アセ ンブ ラー とパ ーツサ プライヤ ー間の取 引です ら "パ ー トナー シップ"に基づ く関係 を前提 に しているANXが参加企業 をTP (Trading Partner)と定義 しているのはそのためであろう

こうした趣 旨に沿 ってANXは、 プロ トコル として はイ ンター ネ ッ トのTCP/IP (TransmissionControl Protocol/internetProtocol) を採用 しかつそれ を加入者の共通 ネッ トワー ク上で使用す るためにエ クス トラネ

ッ ト仕様のネッ トワークを創 り上げたのである

② ANXの実体

ANXの加入者 (TradingPartner;TP)数は、稼働が開始 された1998年末 には14社 にす ぎなかったが、そ の後大幅 に増加 し2000年2月末 には325社 に2001年2月末には600社 となった。 さらに2003年12月31日現在 で は 843社 を数えるに至 っている (注3)0

前述 した ようにANXは当初 は非営利 団体であるAIAGによって創設 されたのであ るが、その後1999年 9月 にはその運営が民間企業であるSAIC社 に移管 された。ANX加入者の増加 に伴 い、人材及び資金面で制約 のあ るAIAGだけでは不十分であ り、多 くのエ ンジニアを擁 Lかつ投資資金 も豊富 な米国最大規模 のエ ンジニ ア リ ング会社 の協力が不可欠 となったのである (注4)0

さらにまたANXは、登録 さえすればネ ッ トワークを自由に利用で きるTP方式 を採用す ることに よって、 ク ロスイ ンダス トリーな展 開を志 向 している す なわち、鉄鋼業界、ヘルスケア産業、電機業界、金融業界、輸 送 ・物流業界 さらにはゴム ・プラスティック業界な どとのネ ッ トワーキ ングを試みているとされる (注5)0

(2)ANX

GNXアプローチ

ANXは創設当初か ら、 クロスインダス トリーな展 開 とともにグローバ ルな展 開を も志 向 して きたが、後者 のグローバル ・ネ ッ トワーキ ングに関 して も、ANX/SAICのイニ シアティブの下で現在積極 的に進め られて いる す なわちANX/SAICとENX、JNX、KNX (KoreaNetworkexchange)そ してAANX (Australian AutomotiveNetworkexchange)i.の間でGNX創設に向けての話 し合いが精力 的に行 われてお り、そ こでは・

(イ) グローバル接続ニーズの具体化 ・詳細化、 (ロ) グローバル接続のための ビジネスモデル ・テクニ カルモ デルの決定一などが課題 とされているいるとされる (維 6)0

(注1)若林忠彦 「海外 (米国ANX中心)の 自動車業界標準 ネ ッ トワー クの最新状況」 ([社]日本 自動 車 工業

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界 『JAMAGAZINE [2000年3月号]』 [特 集/JNX<自動 車業界標 準 ネ ッ トワー ク>])[URL;

httD://www.llama.or.iD/lib/iamagazine/200003/07html]URLl/3‑2/3より

(注2)AIAG [URL;httD://www.aiag.ore/]「CollaborativeEngineering&ProductDevelopmentJ URLl/1参照。

(注3)1998年末及 び2000年2月末については若林忠彦 「同上」URLl/6‑2/6よ り。2001年2月末 については 中山 力 「サプライヤーに とって 『JNX』は損か得か」(NIKKEIDIGITALENGINEERING [2001.3]) p.97よ り。 また2003年12月31日現在に関 しては、ANXeBusinessCommunity

[URL;httt)://www.anxglobal.com/Communitv/network‑subscribers.htmllよ り

(注4)若林忠彦 「同上」URL2/6‑3/6参照。

(注5)同上URL5/6参照。 なおANXが、 クロスイ ンダス トリー ・アプローチだけではな く、LCAコンセプ ト に も関心 を持 っている とい うことには注意 を払 ってお く必要があろ う す なわち、ANXは、"ビッグ ス リー"っ ま りダイムラー クライス ラー、フォー ド、GMが新 たな調達条件 としてパーツサプライヤー に対 してISO14001の遵守 を課 した際 に、AIAGとしてパー ツサ プライヤーに対す るフォー ローア ップ を行 いパ ー ツサ プ ライヤ ー支援 に乗 り出 してい る とい う点 は興 味深 い事 実 で あ る。何 故 な らば、

ISO14001を調達条件 にす る とい うことは、いわゆる 「グリー ン調達」 を意味 してお り、それ 自体 は環 境規制 の一環 として必要 なことではあるが、「グリー ン調達」が同時 に、その条件 を充たせ ない企業 と

くにパ ー ツサプ ライヤー を切 り捨 てる とい う結果になるな らば、それは "グリー ン ・デバ イ tf"に他 な らないか らであるAIAGが "デジ タル ・デバ イ ド"や "グ リー ン ・デバ イ ド" を回避す るために パー トナー シップを発揮す るとい うのであれば、それ は決 して見逃すべ きではない点であろう

(AIAG 「ISO140dlEnvironmental Certification」[URL;httl)://www.aiag.orど/whatsnew.ast)]を参 照 の こと。)

(注6)同上URL4/6‑5/6参照C

2.ENXと 「 共通ネ ッ トワークシステム 」

(1)ENXの展開

① ENXとは何か

ENXは、欧州 デー タ交換標準化検討組織 であ るODETTE (OrganizationforDataExchangebyTele TransmissioninEurope)に よって運営 されている。ODETTEは1999年10月、OEMの12社 (Audi/Fiat/ BMW/DaimlerChrysler/FORD/OPEL/PSA/Renault/Saab/Scania/Volvo/VW)、 サ プ ライ ヤー4

(Aceralia/Siemens/Bosch/Michelin)及 び4つ の標 準化組織 (独、仏、英 、スペ イ ンの4組織) か らなる ETC (EuropeanSteeringCommitee)を組織 しヨー ロ ッパ 自動車産業全体 のネ ッ トワー ク化 に着 手 した。

ENXもまた ヨー ロ ッパ 自動車業界 における "標準 ネ ッ トワー ク"だ とされるが、当のENX自体 は自 らを 「ア プ リケー シ ョン ・プラッ トフォーム (ApplicationPlatfわrm)」と名乗 っている (注 1)。そ してこの場 合 のアプ リケー シ ョンとは、エ ンジニア リング、サプライチェー ンそ してセールスチ ェー ンとい う全 ビジネス プロセス における生産的な活用 に資す るアプリケーシ ョンであ るとしている (lii:・2)o要す るに "共通 アプ リケー ション"

を重視 している とはいえ、それ も "標準 ネヅ トワー ク" とい うよ りもやは り 「共通 ネ ッ トワー クシステム」 と

理解 されるべ きであろ う

ENXもまた こうした 目的を遂行す るためにイ ンターネッ ト接続技術TCP/IPをイ ン トラネ ッ ト仕様で採用 し ている

② テス ト段階のENX

ENXのTPは2003年12月31日現在で約200社 であ り (注3)、ANXや後述す るJNXの場合程 ではないに して も、

その数 自体 は一応順調 に増加 していると云えるしか しなが らヨーロッパ 自動車産業のネッ トワーク化 とい う 意味では、未だテス ト段 階であ り、その意味で実体 は各国別展開の域 を出ていない ようだ。最 も進んでいる ド イツの場合 です ら、1999年3月 にようや く稼働 したのであるが、ENXに接続 してい るTPは35社 (1999年11月 現在) に過 ぎない とされる (注4)。次いでフランスであるが、 ようや くパ イロ ッ ト実験 を終 えて現在稼働 に向 けて準備 中 とのことである (注5)。 なお、 ドイツとフランスは1999年7月か ら相互接続テス トを開始 している と される (注6)。最後にスペイ ンとイギ リスは共 にパ イロッ ト実験 ない しそれ以前の段 階にある とされ る (注7)0

(2)ENX

GNXアプローチ

以上の ようにENXは現在の ところ全体 としてテス ト段階の域 を出ている とは云 えず、従 って、 (イ) まず域 内での接続 を実現すること、 (ロ)管理 ・運営組織 を必要 としていること、 (ハ)ス ウェーデ ンや イタリアな ど の 自動車産業へのENXプロモー シ ョンが必要 なこと‑な ど域 内 自体 で取 り組 むべ き課題が多 く残 されてい る ようだ (注8)。 だが逆 に云 えば、 こうした課題が解 決 され るか ない しはそ の見通 しがつ くにつ れ て、ANX、 JNX等 との接続の条件 も整 う‑ しか も目下の ところ概念 としては世界で唯一の リー ジ ョナルな共通 ネ ッ トワー

クシステム として整 うー とい うことであ り、その意味でENXのGNXアプローチ も今後注 目を要 しよう。 その 際、ENXが共通 アプリケー シ ョンとい う側面 を重視 しているとい うことが大 きな意味 を持つ とい うこ ともま た指摘 しておかなければならないであろ う

(注 1)ENX [URL;httt)://www.enxo.com/]「WelecometoEuropeanNetworkeXchangeJURLl/1参照。

(注2)ENX 「ENXApplicationsJURLl/1参照。

(注3)ENX 「TradingPartnersJURLl/1よ り。

(注4)若林忠彦 「海外 (米国ANX中心)の 自動車業界標準 ネッ トワー クの最新状 況」 ([社] 日本 自動車工業 界

r

JAMAGAZINE [2000年3月号]』 [特集/JNX< 自動車業界標準 ネッ トワー ク>])URL2/7参照。

(注 5)同上URL2/7‑3/7参照。

(注

6 )

同上参照。

(注7)同上URL3/7参照。

(注8)同上URL3/7‑4/7参照。

3.JNX

と 「 共通ネットワークシステム」

以上か ら明 らかなように、ANXは "共通 ネ ッ トワーク" としてまたENXは "共通 アプリケー シ ョン" とし

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てそれぞれGNXにアプローチ しているのであるが、 ここで強調 しておか なければな らないのは、両者 ともそ もそ もグローバル仕様であるとい うことだ。すなわち、共にインターネッ ト技術のエ クス トラネ ット仕様であ るが、エ クス トラネ ッ ト仕様 とはいえ、イ ンターネッ ト ・プロ トコロ

TCP / I P

を採用 しているという意味では 技術的にはグローバル仕様 なのである従ってこうしたグローバ ル仕様の ネッ トワークに対 して如何に対応す るのか とい うことが 日本の 自動車産業 にとって も重要な課題 となるのは当然である。そ こでこうした問題意識 の下で 「共通 ネッ トワークシステム」 としてのJNXの意味 を次 に考 えてみ よう以下では、 (イ)JNX登場の 背景、 (ロ) 「専用 ネッ トワー クシステム」の問題点、 (ハ)JNXの構造、 (ニ)JNXの課題 ‑ な どの諸点 を通

じて この間題 に迫ってみ よう。

(1)JNX登場の背景

(∋ 日本の 自動車産業 における情報ネッ トワークの整備

日本の 自動車産業 とくにアセ ンブラーサイ ドでの情報 ネッ トワークシステムの整備は以下のように進展 して きた (注1)0

(イ)社 内オンライ ンシステムの整備

1970年代末迄には社 内オ ンライ ンシステムの整備がほぼ完了 した。その結果、保守部品の在庫管理などがオ ンライ ンで行 われるようになったが、社外取引に関 しては主要取引先 とは主 として磁気テープを通 じてデータ 交換 を行 っていた。

(ロ) ア ッセ ンブラ一 ・ディー ラー間オンラインシステムの整備

1980年代中頃迄にはディー ラー との間でのオンラインシステムが整備完了 した。その結果、事柄受注、納期 回答 などがオ ンライ ンで可能 となった。

(ハ) ア ッセ ンブラ一 ・パーツサプライヤー間オンラインシステムの整備

1980年代末迄にはパーツサプライヤー との間でのオンラインシステムの整備が進展す る。その結果、部品の 内示、発注、納入指示などがオ ンラインで行 われるようになった。

(ニ) シーム レス ・オ ンライ ンシステムの整備

1990年代初頭 には、パーツサプライヤーか らデイラーに至 るまでの シームレスなオンラインシステムが整備 され る その結果、調達か ら販売 までの リアルタイム ・ビジネス ・プロセスが可能になった。

② 日産 自動車のケース

こうした自動車産業における歩みをより詳細 に観 るために、 日産 自動車のケースを取 り上げてみ よう (注2)0 (イ)CADデー タ交換

同社 の情報 ネッ トワー クシステムの整備 はCADシステムの導入か ら始 まった。1990年代初頭 までには設計 業務の100%CAD化が実現 し‑ つ ま りCAD端末は1人につ き1台装備 され るに至 り (図表 Ⅱ‑3‑1参照 )‑ 、 さ らにその後

CAD/ CAM

一元化が可能 になるとともに (図表 Ⅱ‑3‑2参照)、 ソリッ ドデータ (3次元CADデー タ) の交換 による企業間連携 を通 じて 「レイアウ ト設計」 (往 3)が登場 して きた。その結果、アッセ ンブラーであ る日産 自動車 とパーツサプライヤー間のCADデー タ流通量は急増 した (図表 Ⅱ‑3‑3)0

(ロ)調達のEDI化

生産手配 システムについては、「所要量計算」(注 4)後にパーツサ プライヤーに対 して納入指示が出 され、そ れは通例数 日前の確定発注 となるが、 こうした "ジャス トイ ンタイム''の納入指示に対応するためには、 オン

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