、 田
D. デ ンソー
最後 にティア Ⅰの立場 としてデ ンソーのケースを取 り上げてお こう (注28)。同社 の場合、ネ ッ トワー ク取引 は受発注 を含めて現在340社 に達 しでお り、多回線 ・多端末状態 に苦 しんでいる最 も典型的な企業の一つであ る。従 ってJNX導入 に対 しては最 も積極的なス タンスで臨んでいるもの と想定 される。図表 Ⅱ‑3‑19‑【11は同社 のネッ トワークの現状 とJNX導入後に想定される姿 を比較 した ものである。同図表か らも明 らかなように、同 社 はJNX導入によって先ず多回線状態の解消 を狙 っていることが解 る。 こうした狙いをよ り確実 に実現す る ために同社 は、 まずL3‑Switchを使 ってインターネ ッ トとJNX使用環境 を振 り分 けるとともに、 さらにア ドレ ス変換 (NAT)を使 ってア ドレスをJNX側 ア ドレスに変換す ることによって、ルーティング制御可能 な シス テムを構築 している (図表Ⅱ ‑3‑19一【2】参照)0
その結果、同社 は、まず技術的に切 り替えが容易 なTCP/IPベースのアプ リケー ション (例えばCADデー タ 交換 システムなど) を中心に、 これまで15システムをJNXに切 り替えることによって既 に9本の回線 を削 除す ることに成功 した。その結果、JNX導入に伴 う初期投資の回収 を既 に終え、 フローベースでのJNX効果 を享受 し得 る段 階に早 くも移行 している。
だが同社の場合にも、ネッ トワーク自体の運用 よ りも業務アプ リケーシ ョンの違いによるシステム運用 の負 荷 の方が大 きい とい う点で上記の成果は共通ネ ッ トワークの範囲に止 まっている。従 って同社の場合 もまた、
業務アプ リケーションシステム共通化の未達成 とい う制約 を如何 に打 開す るかが、今後のJNX運用 におけ る最 大の課題であるとしている。
③ JNX展開の新たな可能性
ところで、上述 した商用型 「標準 ネッ トワークシステム
」
と 「共通 ネッ トワー クシステム」併用利用方式 は、‑ 43‑
図表 Ⅱ‑3‑16 自動車メーカー (日本 自動車工業会の会員企業)のJNX移行計画
メー カー名 いすず 自動車
川崎重工業
スズキ
ダイハ ツ工業
トヨタ自動車
日産 自動車
日産 デ ィーゼル工業
日野 自動車工業
富士重工業
ホ ンダ
マ ツダ
三菱 自動車工業
ヤマハ発動機
ア プ リケー ション名
CADデータ交換 システム
新IDCOM(納入指示 システム含 む) Web&MAIL
CADデータ交換 システム 図面配布 システム
EDl(バ ッチ)
Web系アプ リケー ション
CADデータ交換 システム
EDlデータ授受 仕入 れ先VAN
CADデ ータ交換 システム
CADデータ交換 システム
EDl汎用 (新TNS)
Web系 アプ リケー ション
(EDl系)
(cAD系)
αCDX(UNIX版 )
電子仕様提示 システム、PlLOT、試作EDl CADデータ交換 システム
部品受発注 システム 購 買管理 システム Web情報共有 受発注 システム
CADデータ授受 システム
Webア プ リケーション (コミュニケーション系業務)
CADデータ交換 システム
EDlバ ッチ 受発注 システム 電子見積 もりシステム 品質情報 システム
CADデータ交換 システム
EDlバ ッチ
CADデータ交換 システム
WEBアプ リケー ション (設計変更情報 リリース他) 購 買ホームページ
CADデータ交換 システム 購買取 引先 ネ ッ トワークシステム 受発注 システム
試作発注 システム
CADデータ交換 システム
利用可能時期 2001年2月 2001年4月 2001年4月 稼動済み 2001年2月 2001年4月 2002年4月 2001年3月 2001年3月 稼動済み 2001年4月 稼動済み 稼動済 み 稼動済み 2001年3月
2001年3月 2001年4月以降 2001年3月 2001年3月 2001年3月 2001年3月 2001年4月 2001年4月 稼動済み 稼動済み 2001年9月 2001年4月 2001年4月 2001年4月 2001年4月 稼動済み 稼動済み 稼動済み 稼動済み 稼動済み 稼動済み 稼動済み 2001年2月 稼動済み (出所)中山 力 「サプライヤにとって rJNXJは損 か得 か」 (NIKKEIDEGITALENGJNEERJNG [2001.3])p.97より。
図表Ⅱ‑3‑17 トヨタの情 報 ネットワークシステム
【1] システム構 成
.
. '・ J I;
[2] トヨタのJNX上アプリケーション EDl系蓄積 部品 内示 デ ー タ
交換 システム 補 給部晶 かん ぽん
*新TNS (TypeA) 見積 り情朝 等 CAD系蓄積 設 計参考用 CADデ ー タ
交換 システム 号 口 .試作 出図情 報
*新TNS くTypeB) 設 変情 報 等
Web系ア プ リケー シ ョン 原価 企画 フ ォロー表 調 達 ホ ームペ ー ジ 技 術 .生産技 術標 準模 索 工 事通 知書 システム 紹介 キ ャンペ ー ン 等
(出所)久保 田幸夫rJNXへのアプリケーション移行時の留意点/TPの取 り組み事例 (2) ・トヨタ自動車)」 (【社】
日本 自動車工業界 rJAMAGAZINE l2001年8月号】」 【特集/業界共通 ネ ッ トワー ク 「JNX」】)URLl/4 メ‑3/4よ り。
図表Ⅰ‑3‑18 Honda新ネットワーク
ヽ■■■■■■■■●●■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■●■■■■■■■暮■■■●■■■■■1暮■■■■■■■■■■■■■■■∫
(出所)野 口貴史 「JNXとWebの統合ポータルサイ トを構築/TPの取 り組み事例く3)・本田技研 工業」 (【杜】 日本 自動車工業界 rJAMAGAZINE l2001年8月号】J 【特集/業界共通ネ ッ トワーク rJNX」】)URLl/1より。
‑ 45‑
図表‡‑3‑19 デンソーの情報ネットワークシステム
[1] J
NX
導入後の董本構想[2] デンソーの
J NX
接続構成クライア ン ト群 stubファイルのダウンロー ド〜登録
(cspよりshe日を提供)
授受サーバ ー群
(出所)牧野成憲 「JNXはサプライチ ェーンの業界共通インフラ/TPの取 り組み事例 (1) ・デ ンソー」 ([社] 日本 自動車工業界 rJAMAGA2
【2001年8月号]J 【特集/業界共通ネ ッ トワーク「JNX」])URL川より。
図表Ⅰ‑3‑20 JNX展開の新たな可能性とcsp
図 ‑ 日本の自動車業界の共通ネッ トワ‑ク基盤 「JMX」の概要oJNXの認定プロバイダ (CSP)は4社 あり、いずれか のネッ トワークに専用線 、ダイアルア ップで接続することで、他のCSPに接続 しているメーカーとも通信可能 となる。
(出所)中山 力 r自動車メーカーIT化の現状 と今後」 (rNIKKEIDIGLTALENGJNEERING 【2002年10月号]))P.103よりO
「共通 ネ ッ トワー クシステム」 としてのJNXの今後の展 開に重要 な意味 を持つ可能性がある。JNXは既 に4つ の CSP(認証 プロバ イダー) を採用 してい る。 す なわち トヨタ ・デ ジタル ・クルーズ、 日本情 報通信、パ ワー ネ ッツ、 テ レコムサー ビスの4社 である。そ して4つの CSP間は中継局 を通 じて接続 しているために、 いず れの CSPを通 じてであれJNXの 「共通 ネ ッ トワー クシステム」 にアクセス可能になっている (図表Ⅱ‑3‑20参照)0
注 目すべ きは、上記4つのCSPが前述 したVPNの標準 ネッ トワー クシステム化 と何 らかの "関連性 " を持 つ 場合 には、JNX上 において 「標準 ネ ッ トワークシステム」 と 「共通 ネ ッ トワー クシステム」 との融合が可 能 に なるとい う点である。この ことは、「共通 ネ ッ トワー クシステム」が 「商用 ネ ッ トワー クの集合体」(注29)とい う性格 を新 たに付与 され ることによって、JNXの展 開可能性が飛躍 的に広が る とい うことを意味 している。
ところで、そ うした可能性 を提供 しようとしているCSPが実際 に存在す る とい うことにわれわれは注 目 しな ければな らない。例 えばCSP第‑号であ る トヨタ系 プロバ イ ダーであ る 「トヨタ ・デ ジタル ・クルー ズ」社 (注30)がそれである。す なわち同社 の 「D.e‑Net」 (「デイ ・イーネ ッ ト」)は、「KDDIのⅠp‑VPNを利用 した ネ ッ
トワー クイ ンフラで、 自動車業界標準 ネ ッ トワー クであるJNXや各社 のLAN‑ の接続 な ど多用 なサー ビス を 一つのア クセス回線で提供す ることがで きる高度な企業間通信 ネ ッ トワー ク」 であ る とされ る (注31)。そ して
「D.e‑Net」の特徴 は、 (イ)一本のア クセス回線 でイ ン トラネ ッ ト、 イ ンターネ ッ ト、JNXの利用が可能 であ る、 (ロ)WDM(WavelengthDivisionMultiplexing;光波長多重化技術) によ り通信量 の大容量化 に成功 して い る、 (ハ)MPLS(MultiProtocoILabelSwitching;ラベ ルス イ ッチ ング技術) によるハ イセキュ リティ ー を
‑ 47‑
保証 している、 (ニ)全国均一料金による通信 コス トの大幅低減 を可能にしている‑ことなどであるとされる
(注32)0
「D.e‑Net」の以上の性格及び特徴 をみると、CSPのネッ トワー クシステム統合機能 (ilE33)によって、「共通 ネ ッ トワー クシステム」 としてのJNXは、「商用 ネッ トワー クの集合体」 としての性格 を新たに付与 されるこ
とにな り、 さらに飛躍的に発展す る可能性 を獲得 し得 るとい うことが明 らか となる。
(5)新経営戦略支援システム としてのJNX
では、JNXは自動車産業の企業経営戦略にとって どのような意味を持 っているのか。最後にこの点に触れて お こう。
① 情報 ネッ トワークシステム と自動車産業の企業経営戦略
この間題 を考 えるに当たってはまず、そ もそ も情報 ネッ トワークシステム自体が 自動車産業の企業経営戦略 に とって如何 なる意味を持 っているのかを明確 にしておかなければな らない。 ところで自動車産業 における情 報 ネ ッ トワークシステム導入はこれまで 自動車 メーカーすなわちアセ ンブラー主導で選択 されて きた。何故な らば、情報 ネ ッ トワークシステムの選択は部品特性及 び取引方式 に左右 されるか らである。そのメカニズムは 以下の通 りである。 まず取引関係 は部品の技術特性 に依っている。 すなわち、部品特性が (イ)特注部品なの か、 (ロ)それ とも汎用部品なのか 一 によって、取引関係 もまた (イ)特定のパーツサプライヤーへ発注する のか (この場合 の取引はいわゆる 「系列取引
」
が中心 をなす ことになる)、 (ロ)それ とも市場 を通 じて購入す るのか (この場合の取引は全 て 「系列外取引」 となる)‑ が決定 される。次いで情報ネ ッ トワークシステム は取引方式に応 じて選択 される。すなわち取引方式が (イ)特注 なのか、 (ロ)それ とも購入 なのか 一 によっ て、情報 ネッ トワークシステムもまた (イ)VPNなのか、 (ロ)それ ともEC (ElectronicCommerce)なのか‑ が選択 され ることになる。 この ようにアセ ンブラーにとっては、如何 なる情報 ネッ トワー クシステムを選 択す るのか とい う問題は、技術的条件 に基づ く選択であると同時に、パーツサプライヤー とどの ような関係 を 結ぶのか とい う意味で‑ つ ま り系列取引関係 を結ぶのかそれ とも系列外取引を選ぶのか という意味で 一 企業 経営上の選択で もあるのだ。逆に云 うと、情報ネ ッ トワークシステムの選択における一つの選択肢にす ぎない VPNが系列取引 を前提 に している限 り、パーツサプライヤーがアセ ンブラーのVPN導入 を求め られ る とい う ことは、当該パーツサプライヤーにとっては当該アセ ンブラーとの系列取引を余儀 な くされるということと同 義なのである。
しか しなが ら既 に述べ たように、「専用 ネ ッ トワー クシステム」‑ その典型がVPNであるが ‑ は多 回線 ・ 多端末間題の深刻化 を通 じてアセ ンブラー ・パーツサ プライヤー間においてこれまで支配的であった取 引関係 すなわち系列取引の維持 を技術的な面か ら次第に困難 にし始めている。 しか も自動車産業の世界的再編成の中 では、 アセ ンブラー とパーツサプライヤーの取引関係 は、「ネッ トワーク ・マニュファクチュアリング
」
の進 展に伴 う部品生産のモジュール化 とも相 まって、企業経営的な面か らも垂直取引か ら水平取引へ と次第 に移行 し始めている (注34)。従って技術 ・経営の両面で従来型取引関係であるアセ ンブラー主導の垂直的取引 関係 は 転換 を迫 られているのである。 云 うまで もな くそのことは、アセ ンブラー主導の情報ネッ トワークシステムの 選択が次第に困難化 し始めているとい うことを意味 している。逆 に云えばパーツサプライヤーにとって は情報 ネッ トワークシステムの選択如何 によっては系列外取 引の可能性が大幅に増大す るということである。 か くし て、パーツサプライヤーにとっては新情報ネッ トワー クシステムの選択 は企業経営上の戦略課題にも繋 が りか ねない重要問題なのである。そればか りではない。情報ネッ トワークシステムの選択が企業経営戦略 に も関わる重要性 を伴っているのはアセ ンブラーにとって も同様である。つ ま りそれ は、アセ ンブラーに とって も従来 の経営基盤 をも揺 り動か しかねない大問題であるのだ。
にもかかわ らず、上述 した情報 ネ ッ トワー クシステムの選択 における技術 的制約 ‑ す なわちそれが部品特 性及び取引方式 との関連性抜 きには選択 し難い とい う制約 ‑ を も無視出来 ない とすれば、VPNをECに置 き換
えるだけでは問題の解決 にならないとい うこともまた明白である (往35)0
① 企業経営戦略 にお けるJNXの意義
企業経営面か ら観れば、JNXは実は両者つ ま りVPNとECの間隙 を縫 って登場 して きたのである。JNXがそ のベーシック ・アーキテ クチ ャーを何故 「共通 ネッ トワー クシステム」 に求めたのか。それが、上記の技術 的 制約の下でVPNをは じめ とす る 「専用 ネ ッ トワー クシステム」 の限界 を克服 し得 る唯一の情報 ネ ッ トワー ク
システムす なわち 「エ クス トラネッ ト
Ⅲ」
に他 ならないか らである。か くしてJNXは、 (イ)パーツサプライヤーの新経営戦略展開 ‑ す なわち系列外取引の拡大 に伴 う新経営戦 略 (注 36)の展 開‑ を支援す るとともに、 (ロ)他方ではアセ ンブラーの経営戦略転換 ‑す なわ ち取引関係多様 化 の下での経営戟略の多様 な展 開‑ を促進す る とい う可能性 を秘めているのである.
しか しなが らJNXが こうした新経営戦略展 開及び経営戦略転換 に貢献す るためには、JNXが掲 げるアプ リケ ー ション共通化 を巡 る諸課題す なわち (イ)業務 アプリケー シ ョンの共通化、 (ロ)LCAクロスオーバー型業 務処理アプ リケーシ ョンシステムの共同開発 (後述)、 (ハ) さらにはクロスイ ンダス トリー型業務 アプ リケー シ ョンの展 開‑ な どを解決す ることもまた必要 なのである。JNXの企業経営戦略上 の意義 と課題 は正 に この 点 にあると云えよう。
なかんづ くJNXに よるLCAクロスオーバー型 アプ リケー シ ョンの共 同開発 は、 自動車産業 の企業経営 にお ける環境負荷軽減問題の重要性 に鑑み、今や経営戦略上死活的な課題である とさえ云 えよう。 この点 は次節で さ らに検討す ることにしよう。
(注 1)村石治夫 「自動車業界 におけるEDI取 り組み状況について」
[URL;httl)://www.ecom.or.il)/iedic/newslet/n26/n26.html]URLl/3参照。
(注2)加 藤 贋 「デ ジ タル プ ロセ ス 実 現 の た め の 業 界 共 通 ネ ッ トワー ク
」
([社 ]日本 自動 車 工 業 界 rJAMAGAZINE [2000年3月号]』 [特集/ J NX<
自動車業界標準 ネッ トワー ク>])[URL;htt。://www.llama.or.1'1)/lib/1'amagazine/200003/index.html]URLl/3‑3/3・1/5‑5/5参照 。 (注3)例 えば 「エ ンジンルーム レイアウ ト」においてはソリッ ドデー タを通 じて500点以上の部品か ら構 成 さ
れ、200種類以上のア ッセ ンブリバ リエー シ ョンが可能 になる 「レイアウ ト設計」が実現 した とされ る (加藤 贋 「同上」URLl/5参照)0
(注4)「所要量計算」 とは、商品開発部門か ら生産部門に伝 えられる量産 に必要 な情報 に基づ いて、生産部 門がバ リエー ションごとの生産台数や個 々の部品の必要 な個数 を決 め ることを指 している (加藤 贋
「同上」URL2/5参照)0
(注5)(社)日本 自動車部品工業会加盟の会社数 は2002年7月現在で433社 であ り、加盟会社の 自動車部品総 出荷額は2000年度で13兆6,863億 円であ った とされ る (日本経済新 聞2002年7月19日よ り)。 内訳 は、
車体部品、駆動 ・電動及 び操縦装置部 品、エ ンジン部品、電装 品 ・電子部 品及 び計器類 な どのい わゆ る 「部品」が12兆2,147億 円と全体の9割 を占め、 カー ラジオ及 びカーステ レオ、冷房装置及 び暖房装
‑49‑