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第2章 今年度の活動

9 活動マネジメント 20

2.3.2 AI 白書

IPA独立行政法人情報処理推進機構から「AI白書 2017~人工知能がもたらす技術の革新と社会の変貌

~」が発刊された。

URL: https://www.ipa.go.jp/about/report/ai/201707.html

※以下、点線枠はAI白書を参考にしている。

本書冒頭に「刊行にあたって」としてIPA理事長富田 達夫氏の挨拶文が記載されているが、正に当委員会の目 指すべきところと一致していると思われる。

本書は技術書ではありません。・・・ 正しい技術理解を踏まえて、歴史的な 推移を含めた技術動向の今と未来、人工知能の利用動向、人工知能によってどん な素晴らしいことが可能になるのかの実例紹介、人工知能に関わる制度的基盤や 国内海外の政策動向といった、人工知能をとりまく全体像を理解して頂くことを 目的としています。本書により、一人でも多くの方が人工知能というものについ ての正しい理解をされ、人工知能を正しく利用される方が増えていくことで、産 業が活性化し、日本初の、社会にイノベーションを起こすようなビジネスが多く 生まれていくことを期待しています。

AI白書では、大きく以下4章に分けて記載されている。AIを正しく理解する という点においては、4つの観点はAI教育カリキュラムとして重要視すべきポ イントでもあると考えられる。

 第1章 技術動向

ディープラーニングの進展で人間を上回る音声・画像認識等が達成されたこと は、AIに、生物が目の獲得によりカンブリア爆発を起こしたのと同じインパクト をもたらしつつある。それを受けて、我が国が強みを持つ機械学習用ハードウェ アやロボティクス等の分野の研究開発が活発化している。

 第2章 利用動向

利用においては、インターネット空間を中心に米国や中国の企業が先行して来 たが、今後、ディープラーニングによる AI の非連続的革新により主戦場が自動

第2章 今年度の活動

運転や医療・介護などリアル空間に移る中、品質・安全性の追求やソフトウェア とハードウェアをすり合わせるノウハウなど日本の強みを活かして競争優位を 築く戦略が求められる。

 第3章 制度的課題への対応動向

AI の倫理的課題等の議論が欧米中心に進展するとともに、「AI 著作物」「学 習用データセット」「学習済みモデル」の知財面での議論も進行している。「自 動運転」「ドローン」「医療・健康・介護」などの利用領域では新たなルール形 成が取り組まれている。

 第4章 政策動向

AIの研究開発の発展と産業への適用を促進し、国際的な産業競争力の強化を図 るためには、政府においても研究開発、社会実装や制度的整備に取り組むことが 重要であり、我が国、海外のいずれにおいても関連政策が次々と打ち出されてい る。

AI白書では、「AIの技術的理解、動向を踏まえた産業における立ち位置把握」、

「産業界のAI活用事例を知る必要性」、「AIの倫理的課題、知財、新たなルー ルの必要性」、「日本および世界の政策的動向」が述べられており、AI教育カリ キュラムに取り込むべき点と考えられる。

AIの技術的概念・本質的理解をした上で、利用動向や事例を知り、実社会での 発展的展開として制度的課題や政策動向の必要性に至るものと思われる。

AI技術動向

利用動向・事例

制度的課題 政策動向

第2章 今年度の活動

(1) 技術動向

AIをビジネスで活用するには、数式的なAI技術理解ではなく概念的にAIとは 何かを知っている必要がある。AIの技術的変遷も含め技術概論としての理解は必 須であろう。

3種類の学習(教師あり/なし学習・強化学習)

表現学習がカギ

※四角内の数字はAI白書の章番号を指す

さらに、ディープラーニング実現技術はどのような応用分野があるかを知る必 要もある。AI白書では、次のように記載されている。

 パターン認識として「画像認識・音声認識」に応用されており、自動運転、

画像診断、防犯画像、スマートフォン、コールセンターでの利用がある。

 また「芸術分野」への研究例が増えており、絵画、音楽、小説の生成も目指 されている。

1.2.2 機械学習

1.2.6 表現学習

1.2.3 ディープラー

ニング

1.2.4 畳み込みニューラル

ネットワーク

1.2.4 リカレントニューラ

ルネットワーク 空間的構造の表現の取り扱い

時間的構造の表現の取り扱い 深い構造での学習を

可能とした技術

第2章 今年度の活動

AI白書にて機械学習における三つの枠組みを人間の脳に例えて説明している が、数学的理解でなくても比喩によって「AIの本質を理解」することが可能と思 われる。

三つの学習とは、「教師あり学習」、「教師なし学習」、そして「強化学習」

である(図5)。これらは、脳の部位としてそれぞれ小脳、大脳皮質、そして大 脳基底核と深く関連がある。

■図5 三つの学習の枠組み

文科省委託事業で当委員会が目指す「ビジネスにAIを活用できるようになる ための教育」にとって、技術的・数学的理解が必要かという点については次年度 に検討すべきではあるが、上記の理解の仕方はカリキュラム・教材のあり方とし て一つの方向性を示していると思われる。

その他、「第1章技術動向」では多様な側面からの記述があり、AI教育に大い に参考になると思われる。

 身体性と知能の発達

 自然言語を中心とする記号処理

 ビックデータ時代の知識処理

 社会とコミュニティ

 計算インフラを構成するハードウェア

 グランドチャレンジによる研究開発の推進

 各国の研究開発の現状

第2章 今年度の活動

(2) 利用動向

第2章の利用動向では、AIビジネスの将来的動向を企業間競争の点も交えて説 明しており、今までのITとは異なるAIの特性「学習用データ、AIアルゴリズム、

学習済みモデルが流用しやすい」という点が企業競争の要(データの独占、オー プン化)として説明されている。

① 事例

続いて海外、国内の産業応用例として、画像認識では「自動走行、医療」、音 声認識では「Amazon Echo」、「Microsoft WindowsのCortana」、「Google翻訳」

など、また産業別の利用動向では以下の分野での事例が上げられている。

 ものづくり

 モビリティ

 インフラ

 農業

 健康・医療・介護

 防犯・防災

 エネルギー

 金融

 物流

 その他

AI白書の利用動向の事例は、やや大企業中心に述べられており、中堅・中小の 事例は少ない。この点において、文科省委託事業の委員である「メタデータ株式 会社」、「コンピュータソフトウェア協会」、「ITコーディネータ協会」では 中堅・中小の具体的事例があると思われ、期待するところは大きい。

文科省委託事業で目指すべきAI教育が、ビジネス活用を主眼とするならば、

マーケティングと同じ実践学の範疇と捉えることもできる。例えば「マーケティ ングは1日あれば学ぶことはできるが、使いこなすには一生かかっても足りない」

とするなら、AI教育も多様な事例に触れることは非常に重要である。

このような事例をカリキュラムに取り入れる場合、「ケーススタディ」として ストーリー立ててまとめる上げることができれば、非常に役立つものになると思 われる。

第2章 今年度の活動

② 人材

AI白書では、人工知能(AI)の利用を支える基盤整備の1つに人材を上げ現在 の状況について述べている。(その他は、計算資源、標準化、オープンソースソ フトウェア、共有データセット・共有モデル)

 人材獲得競争の現状

AI人材は不足しがちな傾向があり、通常の IT系人材よりも高めの給与水準で となっている。海外ではM&Aや採用、外部企業・大学等の人材活用を進めてい る一方で、国内では社内人材の教育・研修が中心となっている。国内でも一部の 大企業では海外からの人材採用を進める企業もある。

 人材の供給状況

経済産業省による推計では、先端IT人材(ビックデータ、IoT、AI)の人材は 2016 年9.7万人で不足数は1.5 万人規模としている。不足数は、2020 年には4.8 万人規模に達すると推計している。

 人材の育成に関わる動向

産業界での AI 人材育成の高まりから、企業と大学が連携して人材育成を図る 取組が実施されている。

AI白書で述べられている人材は、大企業や大学・大学院の状況でありサイエン ティスト、エンジニアを想定したものである。ただし、AI白書の安宅和人氏の寄 稿文には、基本的な(ある意味ビジネスに寄った)人材の重要性について述べら れており参考になると思われる。

人の力作業を解放した産業革命以来、人の情報処理作業を解き放つ大変革の時 代を迎え、人は本来的に人間らしい価値を提供することが役割となる。

・総合的に見立てる

・方向を定める

・問を立てる

・組織を率いる

・人間を奮い立たせる

今後の教育では、データと の力を解き放てる力を身につける一方で、人間

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