第 2 章 聴覚とデジタルオーディオ
2.3 デジタルオーディオ
2.3.2 A/D , D/A 変換方式
代表的なA/D,D/A変換器の構成図を図 14 に,そのスペクトル分布を図 15 に示す。DATや衛星放送で使われている48 kHz標本化,16 bit量子化系を例 に説明すると,(a)は基本的な方法で,アナログフィルタで帯域制限をしたう え,サンプルホールド回路で48 kHzで標本化し,16 bitのA/D変換器で量子 化する。復調時には48 kHz,16 bitでD/A変換して,アナログゲート等でパル ス列を作り,アナログローパスフィルタで補間を行う。折り返し雑音の影響を 避ける為に,非常に急峻な遮断特性をもつアナログフィルタが要求され,一般 に10次以上のチェビシェフ型ローパスフィルタが使われる。
(b)は,2.3.1.4節で説明したオーバサンプリングを利用した方式である。こ
の方式では,帯域制限がデジタルフィルタにより正確に処理されるので,アナ ログフィルタは低次の緩やかな遮断特性で充分である。また,2.3.1.5節で述べ た原理で,標本化周波数に応じて量子化器のビット数を減らすことができる。
逆に,所定の精度の量子化器を用いた場合には,標本化周波数に応じた分だけ 量子化精度が向上する。CDプレーヤ等に標本化周波数の2~16倍としたこの方 式が広く用いられた。
(c)は現在広く使われている∑⊿変調と呼ばれる変換方式で,量子化器を帰 還ループの中に設けることにより,量子化雑音に高域上がりの特性を与えてい る。この動作をノイズシェーピング(noise shaping)と呼ぶ。標本化周波数を 高く設定することにより,少ないビット数で広いダイナミックレンジが得られ る。(b)と同様に帯域制限,補間はデジタルフィルタで行われるが,一般的に 標本化周波数は(b)の方式より高く設定されるので,アナログフィルタの負担 はさらに軽くなる。多くの場合,A/D 変換前のアナログフィルタやサンプルホ ールド回路は省略できる。(a)や(b)の変換には,逐次比較型や積分型のA/D 変換器,ラダー抵抗型や積分型の D/A 変換器が使われることが多く,これらの 変換精度は,抵抗やコンデンサの充放電精度に頼っているのに対し,∑⊿変調 方式では,時間軸の精度を利用したビット数の少ない量子化器が使われること が多い。
(d)は高速標本化1 bit変換方式で,1 bitの出力をそのままデジタル信号と して扱う処理系である。
29
図 14. 各種のA/D,D/A変換方式 [7]。
図 15. 変換方式と周波数スペクトル [7]。