第 3 章 超高域成分の主観弁別実験
3.3 実験 1:多種音源・多数の被験者による評価
3.3.5 実験結果
音源毎の正答率を図 30 に,被験者毎の正答率を図 31 に示す。この実験で は,20種の音源を32人の被験者が1回評価し,4人の被験者(被験者No. 1~ 4)が 2 回評価した。よって,図 30 の各音源の評価は,40 回繰り返されたこ とになる。また,図 31 の被験者は,No. 1~4 は 40 試行,これ以外の被験者 は20試行の評価を行ったことになる。
被験者は各々の評価で,AかBの2者択一で,聞こえがRと同じと感じられ 方を選択しなければならい。もし,被験者にとってAとBに聞こえの差がなけ れば,各々の試行は,チャンスレベル0.5のベルヌーイの試行と考えられ,正答 率は 2項分布に従う。正答率の確率密度関数は,次のうように 2 項分布から与 えられる[36]。
pxx
px
N xx N x x N
P
1
!
!
! (18)
ここで,xは正答数,N は試行数,pxは正答となる確率(=0.5)である。もし,
超高域の有無が聞こえに対して影響を与えなければ,すなわち,A とB の聞こ えの差がなければ,正答率は0.5に収斂する。そこで,帰無仮説H0:正答率 =
0.5,対立仮説H1:正答率 ≠0.5として,2項検定を行う。2項検定の危険率(P 値)は,次のように求められる。
N x n
N N x
n
N
x n
P
x x n
P p
2 2
0 2
) ( 2 1
) ( 2
(19)
音源毎の正答率(図 30)のP値を見ると,特に有意な音源はないが,No. 1, 10,15の正答率は高い。一方,No. 2,3,13は,ほぼチャンスレベルである。
これらの音源について,聴取位置での帯域毎の音圧レベルと,代表的な周波数 スペクトルを計算により求めた結果を図 32 に示す。この分析には,図 28 に 示した実験装置の総合周波数特性が加味されている。音圧レベルは50 ms区間 毎の実効値を算出し,聴取位置での音圧に換算した。周波数スペクトルは,500 ms の区間を 4096 サンプル(21.3 ms)のブラックマン窓(表 1)を用いて分 割し,得られたスペクトル群を平均化して示した。
音源13は,音源3の超広域をホワイトノイズに置き換えて作成した音源で,
超高域の音圧が70 dBSPLもあるにもかかわらず,弁別されなかった。正答率が 比較的高かった音源は,超高域のレベルが高く,かつ,超高域成分が非定常と いう特徴がみられる。
被験者毎の正答率(図 31)から,被験者No. 30(17歳女性)は,正答率0.75 を達成し,危険率p=0.0417は,有意水準5%の検定で有意となる値である。そ こで,より信頼性の高い結論を得るため,この被験者に対して追試を行った。
図 30. 実験1の音源毎の実験結果。音源毎の正答率とP値を示す。
Stimulus Correct response rate p
number
1 0.0807
2 0.8746
3 1.0000
4 0.6358
5 0.8746
6 0.6358
7 0.8746
8 0.2682
9 0.4296
10 0.1539
11 0.6358
12 0.8746
13 0.6358
14 0.6358
15 0.0807
16 0.8746
17 0.6358
18 0.8746
19 0.8746
20 1.0000
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
Subject Correct response rate p No.
1 0.6358
2 0.6358
3 0.8746
4 0.0807
5 0.8238
6 0.5034
7 0.8238
8 0.8238
9 1.0000
10 0.8238
11 1.0000
12 0.8238
13 0.2632
14 0.5034
15 0.8238
16 0.1153
17 0.8238
18 0.8238
19 0.5034
20 0.5034
21 0.5034
22 0.2632
23 0.2632
24 0.5034
25 0.8238
26 0.8238
27 0.2632
28 1.0000
29 1.0000
30 0.0414
31 0.8238
32 1.0000
33 0.5034
34 0.8238
35 0.5034
36 0.2632
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
図 31. 実験1の被験者毎の実験結果。被験者毎の正答率とP値を示している。.
0 60 120 180 20
40 60 80 100
Time (s) Level (dBSPL)
0.1 1 10 100
-100-80-60-40-200
Frequency (kHz)
Level (dB)
Sound stimulus below 21 kHz
Sound stimulus above 21 kHz FFT
図 32 (a) No. 1 (Satsuma-Biwa)
0 60 120
20 40 60 80 100
Time (s) Level (dBSPL)
0.1 1 10 100
-100-80-60-40-200
Frequency (kHz)
Level (dB)
Sound stimulus below 21 kHz
Sound stimulus above 21 kHz FFT
図 32 (b) No. 10 (Sax,Pf,Perc)
0 60 120 180 20
40 60 80 100
Time (s) Level (dBSPL)
0.1 1 10 100
-100-80-60-40-200
Frequency (kHz)
Level (dB)
Sound stimulus below 21 kHz
Sound stimulus above 21 kHz FFT
図 32 (c) No. 15 (Full orchestra)
0 60 120 180 240 300
20 40 60 80 100
Time (s) Level (dBSPL)
0.1 1 10 100
-100-80-60-40-200
Frequency (kHz)
Level (dB)
Sound stimulus below 21 kHz
Sound stimulus above 21 kHz FFT
図 32 (d) No. 2 (Jazz piano trio)
0 60 120 180 20
40 60 80 100
Time (s) Level (dBSPL)
0.1 1 10 100
-100-80-60-40-200
Frequency (kHz)
Level (dB)
Sound stimulus above 21 kHz FFT
Sound stimulus below 21 kHz
図 32 (e) No. 3 (Vn,Pf)
0 60 120 180
20 40 60 80 100
Time (s) Level (dBSPL)
0.1 1 10 100
-100-80-60-40-200
Frequency (kHz)
Level (dB)
Sound stimulus above 21 kHz
Sound stimulus below 21 kHz
FFT
図 32 (f) No.13 (Vn,Pf,High frequency band consists of only white noise)
図 32. 実験1で用いた音源の分析結果。各音源の上のグラフは,可聴域(21 kHz
以下)と超高域(21 kHz以上)の音圧レベルの時間変化を示す。下のグラフは,
上のグラフの方形で囲んだ部分のスペクトルを示す。
3.3.6 実験1の追試