39
被告による主張の概要:
Christof Augenstein
被告に対する訴訟は却下すべきである。
1. 差止め救済処置
a. ドイツ特許法(PatG)139条で、第三者による侵害行為があった場合に差止め救済処置 を規定しているのは、正しい。しかし、法廷が差し止め命令を認めるかどうかを決定する 時に、その自由裁量権を行使することを、PatG 139条が除外しているというのは正しくな い。PatG 139条は、本来、固定されてはいないし、固定されてもならない。EU施行令の
3(2)条は 12 条と併せて、下記の内容を明瞭にしている。即ち、(ⅰ)取られる手段の全
ては、正当でなければならない、(ⅱ)差止め救済処置が不当と思われる場合には、別の手 段(特別な金銭補償)を法廷は命じても良い。EU法は国際法に優先するので、ドイツ国際 法は EU施行令と調和していなければならない。こうして、その他の解釈では EU 法を侵 害するであろう、差し止め命令が不当であり得る訴訟には、法廷は差し止め命令を認めな いことがあると、PatG 139条を解釈すべきである。
ドイツ民事訴訟法(ZPO)の審決の執行猶予に関する規定は、正当な決定を可能とする のに充分ではない。差し止め命令が執行されると、この規定は、被告が支払い不能となる リスクを多少とも強いるためである。この前提条件は、例外的な状況をカバーするに過ぎ ないし、特許の侵害が認められた訴訟での市場の状況には充分に合致してはいない。
PatG 139条の表現によれば差し止め命令を認めさせないと法廷が考える訴訟については、
法廷はヨーロッパ最高裁判所(ECJ)に対して、PatG 139条が現行のEU法と調和してい るかどうかを問い合わせるべきである。
b. 原告の唯一の関心がライセンス料を得ることにあるため、差止め救済処置は、明らかに 不当である。当事者間で本当に異議申し立てすべきは、FRANDライセンスである。この異 議申し立ては、既にこの訴訟で係争されている。原告は、差し止め命令を必要としない。
差し止め命令の裁定の唯一の目的は、被告のビジネスに損害を与えることである。このよ うに、差し止め命令の裁定は、後述する独占禁止法とは別に、一般原則の下で、法的立場 を悪用することになる。
c.更に、被告は独占禁止法の防衛を提出することもできる。SEP(標準必須特許)は、原告 に市場優占位置を認めていて、そのため、原告が差止め救済処置を要求することで市場優
8 - 3
40
越的地位を濫用している。原告は標準化団体にFRAND 宣言を提出したが、FRAND ライ センスを提案しなかった。真逆にも、被告はそれを行い、更に、被告が原告の提案がFRAND ライセンスにあたるかどうかを決定できるために、原告に第三者にライセンス事項を開示 するよう求めた。従って、被告から合意に至るように期待される全てのことを、正当に被 告は行った。
ドイツ連邦最高裁判所による「Orange Book」判決文は、原告のアプローチを支持はし ていない。第一に、基本的事実が同等ではない。「Orange Book」は、事実上の標準に関わ るが、今回の訴訟のように、法律上の標準には関わらない。このため、原告は誰にでも技 術をライセンスすると申告しているので、判定を個別に適用することはできない。第二に、
MotorolaとSamsungに関するEU委員会は、Huawei 対 ZTE.訴訟でのEU法務官の見 解同様、異なったアプローチを取り、原告に FRAND ライセンスを提案し、その提案が
FRANDライセンスかどうかを被告が決定できるように、第三者にライセンスに関する事項
を開示するべく要求している。被告はこのEU委員会の情報を要求し、FRANDライセンス を受取る意思があることを論証した。
SEP(標準必須特許)の保有者は自動的に市場優越的地位を取れることにはならないと 仮定しても、それに対しての反駁は推定できる。原告が開示した特許全部の0.4%は優越的 地位ではないという、原告の議論は確定的ではない。標準的な技術が、この 2 件の特許が 無ければ、全く使えないという事実から、優越的地位は導かれる。特許はオプションに関 連するのではなく、必須技術に関連している。係争特許のライセンスがなければ、タブレ ット・コンピューターに対する市場は、完全に閉じられてしまう。更に、特許技術に関係 した、こうした特徴は、この製品の消費者に重く請求される。このように、原告は市場を 完全に支配できるので、その市場優越的地位は明白である。従って、原告はこの推論に反 駁することはできない。
このことは、原告は、被告を原告による提案がFRAND ライセンスかどうかを決定でき る立場に置かなかったために、原告には差止め救済処置を認めるべきでないことを意味す る。
d. 更なる見解。原告はその特許を標準化訴訟に導入して、FRAND 宣言を受け入れること で、その特許の保護範囲を自発的に制限した。この FRAND 宣言は第三者全てのためにあ る。従って、差止め救済処置を要求しないことは原告の契約義務であると被告は考えてい る。この理由で、原告の要求は承認し難い。
e. 最後に、特許Xに関する、如何なる相違点があってはならない。特許Xに関して原告が
41
特許Xに関するFRAND宣言を受け入れなかった事実は、きっと評価に影響する。FRAND
条件の基でライセンスの約束は、対物的な権利である。最近、最高裁判所は、単純なラン センスが正式に対物的な効果を持つことを承認した。従って、FRAND宣言はそのような効 果を持っているかのように見做され、単なる特許保有者と標準化機構との間の義務とは見 做されないことは、よるあり得ることである。更に、特許が譲渡された場合にライセンス はその影響を受けないと規定するPatG 15(3)条に従い、約束は継承の保護を受けなけれ ばならない。そうでないと、ライセンスの約束は、第三者に特許を譲渡することで取り除 かれることがあり得る。こうなると、対応している標準の応用や有用性が危うくなる。
f. ここで残されていることは、原告は差止め救済処置を利用できないということである。
2. 損害賠償額
損害額に対する要求には正当な理由がない。
a.原告はFRANDライセンスに相当する損害額に限られる。FRAND宣言とは、「特許の使
用者は、少なくもなく多くもない金額をFRAND ライセンス料として特許使用のために支 払わなければならないという原告の約束を持った第三者全てに対する好意的な保証」であ る。原告は、原告自身またはBambiが受け入れた、このFRAND宣言に拘束されている。
確かに、被告は特許を使用した。従って、原告の損害額は、FRANDライセンス料を受取っ ていないことだけである。如何なるリスクの移動もない。原告の主張が正しいとすれば、
原告は要求したライセンス料を得て、被告は訴訟費用を負わなければならなくなる。もし 原告の主張が正しくないなら、結果は真逆である。支払い額に異議があるどの訴訟にも、
訴訟全てにも相違点はない。損害額の追加を認める理由はないのである。どのSEPに対し ても特許使用料は他の特許に対するより、かなり高額である。特許は標準の一部であるの で、多くの使用者がこの技術を必要とするため、他の特許に対するよりもかなり高額のラ イセンス料収入となる。かなりの数の使用者は、特許権保有者のどの該当業績にも関連し ていないで、該特許が標準に含まれているという事実だけに関係している。従って、SEP 特許保有者が、正当な以上の特許使用料を受取るならば、保有者は過剰に補償されたと言 える。
b. 5%という特許使用料率の要求は、正当ではない。原告自体は、2%のライセンス料を提案
した。この提案は、原告の立場から2%の特許使用料率は妥当であることを明らかに示して いるだけでなく、妥当と認められている。被告がこの料率に異議申し立てをしている事実 は、原告による自身の評価に影響を及ぼさない。ライセンス契約を早い段階で結ばずに告 訴されねばならない当事者からは、より高額の特許使用料を原告は要求しても良いという、