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7.薬物療法以外の治療法

ドキュメント内 2 (ページ 54-57)

精神療法

精神療法は、薬物療法とともにうつ病治療において有効性が認められている。軽症〜中 等症のうつ病に対しては、短期精神療法は単独で薬物療法と同等の効果を示しており、慢 性化していない例に対しては、むしろ抗うつ薬より推奨されている1)。再発防止効果は薬物 療法に優り、抑うつ症状が残存している部分寛解例には特に有効とされている2)

精神療法とは、「精神医学的治療の1つで、言語的、非言語的な対人交流を通して精神的 な問題を解決し悩みを軽減することを目的とした精神医学的および心理学的治療法である」

と定義することができる3)。精神療法と心理療法は同じものであり、Psychotherapyの日本 語訳として精神科医は精神療法、心理領域では心理療法という用語を用いることを慣用と している。

主な精神療法を挙げる。

■ 支持的精神療法

■ 認知行動療法

■ 対人関係療法

■ 精神力動的精神療法

■ その他の精神療法

家族療法/夫婦療法、自律訓練法、バイオフィードバック法、森田療法、集団精神 療法、生活(社会)技能訓練、など

身体療法

身体療法として次のような方法がある。

■ 電気けいれん療法(electroconvulsive therapy : ECT)

■ 経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation : TMS)

■ 光療法

■ 断眠療法

支持的精神療法

うつ病患者に対する精神療法の基本は、「安心感、安定感」を提供することである。患者 は「将来を悲観し、自らに対する評価も定まらず、ひどく落ち込んだり、少し浮き上がっ たり」といったことを繰り返す。したがって、まず患者の苦痛に耳を傾け、患者の気持ち や考えなどに共感することが大切である。その後に現在の状態は病気であり治療の対象で あることをはっきりと告げることが必要である。これによって、患者は一人きりで状況に 対処するというのでなく、治療者や周囲の人の援助が受けられるということを保証される。

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また「気のゆるみや怠けなどではない」ということをはっきりさせることで、自責の気持 ちを和らげることも大事である。

次に「うつ病は回復する病気であること」、できれば「治療の見込み期間」を知らせてお く。患者は悲観的になりがちで今の状況がずっと続くのではないか、もっと悪くなるので はないかと感じており、これに対して治療期間の見通しなどを伝えておくことで「治療に 対する意欲」をもってもらうことが望まれる。「治療期間」としては初発の比較的軽症のう つ病であれば、約3〜6ヶ月と伝えておくのがよい。一般に病気の治癒期間をあらかじめ伝 えることには困難がともなう。うつ病の場合でも一定の割合で遷延するケースがあり、必 ずしも見込み通りに行かないこともあるが、それでもまず見込み期間を伝えることの意味 は、大きいと思われる。「自殺を防ぎ、治療への意欲を保つために、治癒を保証する」こと は有効である。

見立てを伝え、治癒の見込みを伝えた上で、「自殺などの自己破壊的な行動をしないこと を約束」してもらう。必ず治るのだからということを繰り返しながら、それまでに思い切 ったことをしないようにということを、繰り返し約束していく。

うつ病患者の話は時に回りくどく、同じ話を繰り返すことにもなりがちである。それに 対してあれこれと手をかえるのでなく、やや愚直なくらいに「同じ態度で、同じ内容を繰 り返す」ことで、揺れ動く患者に対して定点を提供するのがよい。

認知行動療法

「認知療法」は、うつ病に対する代表的な精神療法であり、認知とは「ものの考え方」や

「受け取り方」を意味する。うつ病患者では、自分に対する認知、自分を取り巻く世界に対 する認知、将来に対する認知に歪みがあると言われている。うつ病患者に見られる認知の 歪みとして、以下のようなものがあげられている。

□ 過度の一般化(一回の悪い出来事から、それがいつも起こるだろうなどと考えてし まう)

□ 破局的思考(ちょっとした困難を大変な災難のように考える)

□ 恣意的な推論(証拠がないにもかかわらず、独断的に判断してしまう)

□ 「〜すべし」という思考(「〜すべき」と考えるために自分を追い込んでしまう)

□ 誇張と矮小化(自分に取って良くないことを過大に考え、良いことを過小評価して しまう)

□ 全か無かの思考(90%のでき具合でも、100%でないのでまるでダメと考えてしまう)

□ 個人化(自分に関係ないことも、自分に関連づけてしまう)

□ 選択的抽出(自分の考えを支持するような、数個の論拠だけを選び出し、他の証拠 を無視してしまう)

こうした認知の歪みがうつ病患者には多くみられ、そのために患者自身を苦しめ、うつ病か

らの回復を遅らせる。そのことを指摘し、是正しようというのが認知療法である。患者の考 えが正しいのかどうか、証拠を探しながら検討したり、推論が飛躍していないか考えたり、

他の考え方がないか探してみたりする。場合によっては患者自身に、思考の記録をつけて もらうこともある。これらを繰り返すことで、患者に自分の陥りやすいものの見方、考え 方のパターンに気づいてもらい、それを是正していく方法を身につけてもらうことになる。

うつ病患者の行動の変容を目的とするのが「行動療法」である。さまざまな場面でどの ように振る舞えばよいかを考え、患者自身が適応的な行動を身につけられるよう援助して いく。具体的には患者に日常の活動記録をつける、症状に応じて段階的な行動の課題を割 り当て実行する、ロールプレイ等を通していろいろな場面での適切な対応を学ぶ、などの 技法を通じて行動の変容をはかることになる。場合によってはリラクゼーション、呼吸法 の訓練等を行うこともある。

プライマリ・ケアでもできる認知行動療法

このような認知行動療法を、プライマリ・ケアの中で実行するには、まず回復期にある 患者に認知の歪みのチェックリストを渡して書いてもらい、どのような歪みがあるかをチ ェックする。歪みがあれば、その考えの歪みが病気の回復を遅らせていることを伝え、患 者向けの認知療法の本を読んでもらう。以後の外来では、日常の思考や行動について日誌 に書いてもらい、それを基に話し合いながら考えや行動の歪みの是正法に気づいてもらう。

こうすることによって治療遷延例の回復や、回復した例の再発防止に役立つ。

参考までに、医師向け、患者向けの簡易な認知療法参考書を提示した。

〔プライマリ・ケア医、患者が利用できる参考書〕

医師向け

○ うつと不安の認知療法(創元社) デニス グリーンバーガー、クリスティン・A.・

パデスキー

○ 「うつ」を生かす うつ病の認知療法 (金剛出版)大野 裕 ほか

患者向け

○ うつからの脱出 プチ認知療法で「自信回復作戦」(日本評論社) 下園壮太

○ こころが晴れるノート うつと不安の認知療法自習帳(創元社) 大野 裕 ほか

1)American  Psychiatric  Association  :  Practice  Guideline  for  the  Treatment  of  Patients  with  Major  Depressive Disorder, 2nd ed. 2000.

2)Fava  GA,  Grandi  S,  Zielenzny  M  et  al  :  Cognitive  behavioral  treatment  of  residual  symptoms  in  primary  major depressive disorder. Am J Psychiatry 151 : 1295-1229, 1994.

3)野村総一郎、樋口輝彦: 標準精神医学 第2版、136-147、医学書院

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