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5:北陸に停車する 4 駅と発展の方向性

ドキュメント内 g, (ページ 52-77)

 前章まででは、既設新幹線の状況とそれらを踏まえた北陸新幹線の特徴、発展への条件、観 光面への大まかな影響などについて記してきたが、本章ではそれぞれの駅とこれに付随する街 づくりについて考えてみる。前述したとおり、駅と周辺の街づくりには、それぞれの地域の歴 史や伝統、強みなどを考慮した戦略的な作り込みや関係者の協力が必要である。北陸には、富 山県に3駅と石川県に1駅が開業する。駅には様々な役割があり、利用者数や乗り入れる在来 線の種類によって異なる。それぞれの駅と街の「にぎわい」のためにどのような方向性がある かについて記したい。

5-1:駅の機能

 北陸新幹線が開業した場合の競合は飛行機となるが、実際はそれぞれ役割が異なり、共存し ていくことが一番望ましい。駅も空港も、交通機関に乗り降りするための施設だが、その機能 についてはあまり比較されていない。そこで、駅と空港の持つ施設について、小松空港と金沢 駅をイメージして比較すると以下のようになる。

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 北陸新幹線は 20〜 40km ごとに駅が配置される。北陸にとっては県庁所在地である金沢と富 山が現駅併設で新高岡と黒部宇奈月温泉が新設される。駅舎が完成した現在、これからはハー ドではなくソフトの部分を作り上げていくことになる。完成した駅のどの場所にどのような施 設が、店舗が入るのかは関係者の間では議論がなされている。長い要望期間を経て、ようやく 走る新幹線であり、遅れた整備時間を取り返すためには、これらの駅を、先進事例から学び、

戦略的かつ効率的に作り上げていくことが必要である。

 次に上記を踏まえて各駅と街の発展の方向性などを考え提言したい。

5-2:黒部宇奈月温泉(佐久平型)

 黒部宇奈月温泉駅は JR 北陸本線黒部駅から東に約 4km 離れた、富山地方鉄道本線と北陸自 動車道が交差する場所に立地している。富山県新川地区の玄関口としての機能の他、当駅に併 設予定の富山地方鉄道本線新黒部駅から富山県を代表する温泉地である宇奈月温泉までは電車 で 20 〜 30 分とアクセスしやすいことから、宇奈月温泉郷への観光窓口としても期待されてい る。鉄路から道路へといった乗り継ぎが効率的に行なえる立地にある。在来線に乗り換えるこ とも可能であり、周辺はほぼ未開発の地域である。

黒部宇奈月温泉駅周辺 Yahoo! 地図より

①宇奈月温泉、黒部といった観光への玄関口として

 黒部宇奈月温泉駅はその名が示すとおり、黒部観光や宇奈月温泉郷への玄関口となるほか、

海側では魚津方面への観光窓口の機能も有する。居住以外の活性化としては、街なかに観光客 にとって便利な施設を設置する方法がある。

黒部峡谷鉄道・宇奈月温泉 入込客数

 黒部峡谷鉄道の利用者は横ばいであるものの、近隣の宇奈月温泉を宿泊場所とする入込客は 減少している。理由はさまざまだろうが、富山中心部から日帰りで訪れる、あるいは魚津近辺 でJRを降りて黒部を楽しんでから富山中心部へ宿入りするという流れに変化してきていると 思われる。温泉旅館は全国的に業況が苦しく、宇奈月温泉の集客力が低いわけではないとしても、

やはり料金とサービスのバランスが現在の時代にはそぐわないのだろう。そうであれば、少な くとも黒部宇奈月温泉駅近辺に安価に宿泊できる施設や、にぎわいを作り、駅と街を活性化さ せる仕組みが必要になる。宿泊すれば、近隣観光スポットへの短時間での周遊や、バスやタクシー を利用した沿岸部への集客にも貢献する。

黒部市商工観光課

黒部宇奈月温泉駅/宇奈月温泉/魚津/滑川の位置関係 goolemap

 また、北陸新幹線は糸魚川で海の景色と出会うことになるが、その後は山側を走ることが多 くなる。黒部宇奈月温泉駅は山側をたどれば黒部峡谷に至るが、海側におりれば魚津までは 20 分程度、滑川まで 30 分程度で到着する。時間に余裕のある観光客にとってはこちらも魅力的 なルートになる。日本海沿いの街の風景や食を富山まで楽しむことができる。魚津水族館・ホ タルイカミュージアム・ミラージュランドなどファミリーで楽しめるスポットも多い。在来線 の活性化にも寄与する。黒部宇奈月温泉周辺は自動車のアクセスも良好であり、北陸を周遊す る観光バスの発着点としても開発が期待できる。

②新たな街づくり ―佐久平駅 ―

現在の佐久平周辺

 長野新幹線佐久平駅は在来線駅に併設という形でスタートしており、黒部宇奈月温泉駅と環 境が似ている。佐久平駅ができたため、小諸が凋落してしまったのは先述のとおりである。佐 久平駅は開業後環境が大きく変わり、東京へは 1 時間 20 分、大宮へは 50 分足らずとなり、現 在は周辺に多くの駐車場があり住宅開発も進み大型ショッピングモールもある。1 日の乗車は 2012 年に 2,770 人と本庄早稲田よりも多い。ベッドタウンとしての利便性もあるが、小諸市 の凋落などを見ると周辺からの移住者も相当多いのではないかと考えられる。

 航空写真を見ると、駅周辺には大型商業施設や駐車場があり、その東側の高台には住宅地が 広がる。対して西側は田園地帯が残っており、行政側が計画的に都市開発を行なっていること が分かる。

goolemap

 新幹線の停車駅周辺は、現在にあっても時間軸を長くとれば、周辺から居住者が集まって新 たな街が形成されることは間違いない。北陸新幹線延伸により、黒部宇奈月温泉駅からは長野 にも金沢にも 30 〜 40 分程度でアクセスできるようになる。現状、新川地区から長野へは鉄道 で約 3 時間、高速道路でも約 2 時間を要するが、新幹線延伸によって長野までが通勤・通学圏 に入ることになる。金沢へは現在でも特急で 1 時間弱、高速道路の利用でも約 1 時間で移動可 能であるが、これが 40 分程度に短縮されるため、富山市や金沢市に対しての通勤・通学手段 としての需要は大きい。駅周辺に拡がる水田地帯を「のどかな田園地帯」「田舎びた風景」と現 在では見られるかもしれないが、広がる平地は新たな街づくりを行なう際に非常に有用であり、

先述の長野新幹線佐久平駅のような発展を遂げるポテンシャルを秘めている。もっとも、北陸 と東京圏は人口密度が全く異なり、佐久平のような急速な発展は期待できないかもしれない。

ただ長い時間軸をとれば、魚津や黒部といった周辺地域から人が集まり、都市化はゆっくりで あるが進むものと考えられる。

 その際には周辺既存市街地や商店街の衰退とセットになっていることを忘れてはならない。

既存市街地への公共交通機関網を新規に整備しながら、適切なスピードで地域全体にスムーズ な移住ができるよう、行政や交通事業者には細心の配慮が求められる。特に高齢者は地域への 愛着が強い。救急医療機関や介護施設などの適正配置が必要なほか、新たにできる街に対しても、

幅広い世代で住めるような工夫、あるいはITやユビキタス設備の導入により、家族が離れて 暮らしながらも身近に感じられるような生活環境の整備も課題になる。

③ヘルスケア/シルバー/環境都市といった方向付け

 例えば、黒部宇奈月温泉という保養地をさらに発展させて、高齢者が居住しやすい「シルバー シティ」や「ヘルスケアシティ」という方向で駅周辺の新たな街づくりはできないだろうか。

都市化の様子(佐久平) 佐賀県HP「他の新幹線の整備効果」

 宇奈月温泉や黒部峡谷鉄道を前面に出した観光の街づくり駅づくりもよいが、過疎化や高齢 化を逆手に取った高齢者向けの保養地といった街づくりもひとつの方法である。駅の周辺に医 療や介護などの施設を建設し、高齢者や障害者にやさしい街として発展させる。周辺からの居 住は通常ニューファミリーが中心となり、既存周辺市街地は高齢化が進みコミュニティが崩壊 するといった弊害が多いが、高齢者から移り住むことによって緩和させようという試みである。

高齢者から移住を行うことで、駅を利用する機会に、子供や孫が親を見舞うこともできる。先 進医療と組み合わせれば海外にあるようなヘルスケアシティのように、観光客を呼び込むこと も可能になる。

 韓国政府は、済州島を北東アジアの医療ツーリズムの中心と位置付け、政府傘下の 特殊法人済州国際自由都市開発センター主導のもと、2008 年より約 800 億円を投じ て済州島に健康・医療ヘルスタウンを建設している。この街には、先進的な検診センター や美容センター、高度専門病院、リハビリ施設、医療研究開発施設が導入され、2015 年の完成が予定されている。周辺にはリゾート型滞在施設、先端科学技術団地や歴史 をテーマとした公園等の開発が進められており、観光、医療、研究開発が一体となっ た複合団地の造成が行われている。主なターゲットは済州島を訪れる外国人観光客の 半数を占める日本人のほか、在米韓国人や中国人ロシア人富裕層である。(経済産業省 中部経済産業局北陸支局資料より)

済州ヘルスケアタウン(韓国)

ドキュメント内 g, (ページ 52-77)

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