【介入3か月後の職員評価】
食事の状況は維持している。
腰椎圧迫骨折疑いで一週間ベッド上安静の時があったが、ほぼかわらない生活に戻れた。
【介入 3 か月後基本調査】(変化のあった項目に下線、上昇・下降・維持に矢印)
日常生活機能:Barthel Index 25→(食事 0、ベッドへの移動 5、整容0、トイレ動作0↓、入 浴0、歩行 10→、階段昇降0、着替え0、排便コントロール5↑、排尿コントロール5)
認知症重症度:CDR3(記憶3、見当識3、判断力3、社会活動 2→、趣味3、身の回りの世話3)
食事摂取状況:夕食の平均摂食時間 30 分くらい→
平均食事量 おおむね9割摂取→
食事中の意識レベル しっかり覚醒している→
食事自立 全介助
初回評価からの変化
【考察】
初回評価以前は視覚障害、幻視があることで開眼状態であると混乱するため、閉眼し独語をしてい る状態であったが、調査開始の6週間前より塩酸メマンチン(商品名メマリー;第一三共)内服を開 始したことで幻視が減り、会話が成立することが増えた、という状況であった。今回の食事環境への 介入の結果に関し、塩酸メマンチンの影響があることも考慮する必要がある。今回の環境に対する介 入は、食事摂取時の声掛けや摂食介助の順番といった人的環境と、視覚障害があり食物認知が不完全 であることによる二次的な嚥下障害に配慮した食事形態への介入が中心であった。食事自立に関して は自立摂食には至らなかったが、本介入によって食事時間の短縮、食事摂取量の増加、ムセの減少に 効果があったと考えられる。
評価時
食事 体重 BMI
初回評価 全介助8割摂取
40分程度 44.8Kg
24.6
介入後評価 全介助9割摂取
30分程度 42.0Kg
23.0
介入3か月後 全介助9割摂取
30分程度 45.3Kg
24.9
≪事例 2≫
小規模多機能事業所利用認知症高齢者 B 氏 女性 91 歳 認知症原因疾患: アルツハイマー型認知症
既往歴: パーキンソン病 誤嚥性肺炎
【初回評価】
身長 150cm 初回評価時体重 30.4kg
栄養状態: BMI13.5 MNA-SF4 WBC5400 個/μl
障害高齢者の日常生活自立度 B2 、 認知症高齢者の日常生活自立度 Ⅳ
日常生活機能:Barthel Index 10(食事 5、ベッドへの移動 5、整容0、トイレ動作 0、入浴0、
歩行0、階段昇降0、着替え0、排便コントロール 0、排尿コントロール 0)
認知症重症度:CDR3(記憶2、見当識3、判断力3、社会活動2、趣味3、身の回りの世話3)
口腔機能:義歯使用 できる リンシング できる ガーグリング できない
口腔への介入の受け入れ:食事介助の拒否 全くなし 口腔ケア介助の拒否 全くなし 口腔のセルフケア できない 食事摂取状況:夕食の平均摂食時間 40 分くらい 平均食事量 おおむね7割摂取 食事中の意識レベル ぼんやり覚醒している 食事自立 部分介助
※水分摂取制限あり テルミール 3本/日
【初回食事評価】
認知機能 備考
食事行動 食事開始困難 初回時 □あり■なし □姿勢 □手の巧緻性 □手と口の協調 □食具 □食べる意欲 □
食事介助拒否 初回時 □あり■なし □食べる意欲 □
食具使用困難 初回時 □あり■なし □姿勢 □手の巧緻性 □手と口の協調 □食具 □ やわらかスプーン使用
一口量の調整困難 初回時 □あり■なし □手の巧緻性 □手と口の協調 □食具 □食形態 □ 食事ペースの
調整困難 初回時 □あり■なし □手の巧緻性 □手と口の協調 □食具 □
集中できない
・中断 初回時 ■あり□なし □姿勢 □手と口の協調 □食具 □舌運動機能 □口唇閉鎖 ■ 周囲の利用者
食べこぼし 初回時 ■あり□なし ■姿勢 □食形態 □咽頭期 □舌運動機能 ■口唇閉鎖 □
ため込み 初回時 ■あり□なし ■姿勢 □食形態 ■舌運動機能 ■口唇閉鎖 ■咽頭期 □
むせ 初回時 ■あり□なし ■姿勢 □手の巧緻性 □手と口の協調 □食べる意欲 □体の痛み・疲れ □ 後半むせあり
その他
問題点 要因 / 介入
運動機能 / 介入内容
食事途中で寝てしまう。水分摂取制限がある。
配食業者のやわらか食で食が進むので、やわらか食に加え濃厚栄養流動食を追加している。
【評価と指導(介入)内容】
食事環境について
円背のため姿勢が悪く臀部が椅子の座面の前方に位置しているため、食事中に徐々に前方に滑って しまう。 → 臀部が前方に滑らないようにクッション等の対応をすることと適宜座りなおしの支援 をしてみてはどうか。可能であればテーブルを低くするか椅子を高くする等で、無理のない姿勢でテ ーブル上の食事が見渡せるような位置関係にしてみてはどうか。
周囲の利用者に注意を奪われているときは口腔内に溜め込んでしまっている。指示による喀出・嚥 下は可能の様子だが、溜め込んだ後嚥下に至る協調運動が出づらい。摂食を促されると、嚥下してい なくても口に詰め込んでしまう。 → 周囲の利用者に注意力が分散してしまい、食事に注意がいか ないこと、さらに周囲に注意を奪われている間に疲労してしまうことについて、周囲の刺激を調整し、
疲労する前に食事摂取を少しでも進めるようにしてみてはどうか。
食形態について
食事の後半に咽頭に貯留してくる様子。 → 声掛けで喀出をうながすこと、水分にはとろみをつ けてみてはどうか。やわらか食は適切な食形態である様子。口腔咽頭筋について、パーキンソン病の 影響がある可能性がある。
【介入後施設での実施と結果】
実施:ほかの利用者の食事しているフロアではなく、個室で一人にして食事を提供した。
結果:(職員の観察より)指導後個室対応で食事を提供したところ、21 分程度で完食されている。途 中食事が止まることなく、しっかりと覚醒したまま摂取できている。口の中にためないので、時間も 早く、ペースも良い。
【介入後基本調査】(変化のあった項目に下線、上昇・下降に矢印)
日常生活機能:Barthel Index 20↑(食事5、ベッドへの移動 5、整容0、トイレ動作 0、入浴 0、歩行 0、階段昇降 5↑、着替え0、排便コントロール 5↑、排尿コントロール 0)
認知症重症度:CDR3(記憶3、見当識3、判断力3、社会活動3、趣味3、身の回りの世話3)
食事摂取状況:夕食の平均摂食時間 30 分くらい↑
平均食事量 おおむね 10 割摂取↑
食事中の意識レベル しっかり覚醒している↑
食事自立 自立↑
【介入後食事評価】(初回評価、環境介入から 1 か月後)
【介入後再評価・指導内容】
食事環境について
食事について関心があり食欲がある様子も見られるが、周囲の利用者に注意が向いてしまい、口の 動きも手も止まってしまって食が進まない。→ 周囲に人、物が無い状態での食事を推奨。
座位を保つ工夫、座り直しの支援は適切と思われる。
舌圧の低下、口腔咽頭筋の協調運動の低下により口腔内での移送の力が弱い(パーキンソン病の進 行の影響の可能性)。また水分摂取制限があるが、周囲に注意が向いていて摂食が進まない間(食事の 前半)にテルミールを飲みつくしてしまうと、食事の後半に水分が不足してしまう。 → 移送力不 足についてはおかずとテルミールの交互嚥下であれば送り込みしやすいと思われる。食事の後半に口 腔咽頭筋の協調運動が低下した段階では、嚥下促通手技を使うと舌運動と嚥下反射が出やすいと思わ れる。
食形態について
やわらか食、水分とろみ付きで維持する方向へ。
【介入3か月後の職員評価】
前回の調査、介入後すぐに個室対応にした結果、20 分くらいで自力摂取が可能な状態に改善した。
その後最近ではまた時間がかかるようになっている。自立摂食時スプーンに少量の食物しかとらない ので、特に食事の後半は介助が必要となってきた。
【介入 3 か月後基本調査】(変化のあった項目に下線、上昇・下降・維持に矢印)
日常生活機能:Barthel Index 20→(食事5、ベッドへの移動 5、整容0、トイレ動作5↑、入 浴0、歩行 0、階段昇降 0↓、着替え0、排便コントロール 5↑、排尿コントロール 0)
認知症重症度:CDR3(記憶2↑、見当識3、判断力3、社会活動2↑、趣味3、身の回りの世話3)
認知機能 備考 初回時 □あり■なし □姿勢 □手の巧緻性 □手と口の協調 □食具 □食べる意欲 □
介入内容 □姿勢の補正 □手の誘導 □食具の変更 □配膳の工夫
2回目 ■あり□なし □姿勢 □手の巧緻性 □手と口の協調 □食具 □食べる意欲 □
初回時 □あり■なし □食べる意欲 □
介入内容
2回目 □あり■なし □食べる意欲 □
初回時 □あり■なし □姿勢 □手の巧緻性 □手と口の協調 □食具 □ やわらかスプーン使用
介入内容 □姿勢の補正 □手の誘導 □食具の変更
2回目 □あり■なし □姿勢 □手の巧緻性 □手と口の協調 □食具 □
初回時 □あり■なし □手の巧緻性 □手と口の協調 □食具 □食形態 □
介入内容 □手の誘導 □食具の変更 □食形態の変更 □姿勢の補正 □図示
2回目 □あり■なし □手の巧緻性 □手と口の協調 □食具 □食形態 □
初回時 □あり■なし □手の巧緻性 □手と口の協調 □食具 □
介入内容 □手の誘導 □食具の変更 □声かけ □音楽 □図示
2回目 □あり■なし □手の巧緻性 □手と口の協調 □食具 □
初回時 ■あり□なし □姿勢 □手と口の協調 □食具 □舌運動機能 □口唇閉鎖 ■ 周囲の利用者
介入内容 □姿勢の補正 □手の誘導 □食具の変更 □食形態の変更 □口唇介助
2回目 ■あり□なし □姿勢 □手と口の協調 □食具 □舌運動機能 □口唇閉鎖 ■ 周囲の利用者
初回時 ■あり□なし ■姿勢 □食形態 □咽頭期 □舌運動機能 ■口唇閉鎖 □
介入内容 ■姿勢の補正 □食形態の変更 □一口量の調整 □食形態の変更 □口唇介助 □顎介助
2回目 ■あり□なし □姿勢 □食形態 □咽頭期 □舌運動機能 ■口唇閉鎖 □
初回時 ■あり□なし ■姿勢 □食形態 ■舌運動機能 ■口唇閉鎖 ■咽頭期 □
介入内容 ■姿勢の補正 □食形態の変更 □スプーン刺激 □口唇介助 □一口量の調整 □顎介助
2回目 ■あり□なし ■姿勢 □食形態 ■舌運動機能 ■口唇閉鎖 ■咽頭期 □
初回時 ■あり□なし ■姿勢 □手の巧緻性 □手と口の協調 □食べる意欲 □体の痛み・疲れ □ 後半むせあり
介入内容 □姿勢の補正 □手の誘導 □椅子の配置 □音楽 とろみ追加
2回目 □あり■なし □姿勢 □手の巧緻性 □手と口の協調 □食べる意欲 □体の痛み・疲れ □
問題点 要因 / 介入
運動機能 / 介入内容
食事行動
食事開始困難
食事介助拒否
食具使用困難
一口量の調整困難
食事ペースの 調整困難
集中できない
・中断
食べこぼし
ため込み
むせ
その他
水分摂取制限がある。食事に向かう気持ちはあるが周囲に気が散る。
配食業者のやわらか食で食が進むので、やわらか食に加え濃厚栄養流動食を追加している。
口腔内で送り込みをする力が弱い。