調 整
1. 対象者の特徴
1)基本属性
調査対象者の平均年齢は、83.7±8.2(標準偏差)歳で、男性で 78.5±9.9 歳、女性で 85.4±
6.8 歳であり、男性に比べ女性の年齢が有意に高かった(p<0.001)。
調査実施場所別の対象者の分布を表に示す。
2)全身疾患等
①既往歴
対象者の既往歴については、脳血管障害が 179 名で最 も多く、次いで認知症(217 名)、循環器疾患(152 名)の順 であった。腫瘍性疾患の内訳では、消化器系腫瘍(n=20)
で最も多かった。
過去 6 ヶ月間に誤嚥性肺炎を疑う症状が、「1 回あった」
と回答したのが 19 名(4.5%)、「複数回あった」と回答し たのが 22 名(5.2%)であった。
過去 6 カ月間、37.5 度以上の発熱が 2 日以上続いたこ
とが、「1~2 回あった」と回答したのが 53 名(12.5%)、「数回あった」と回答したのが 72 名
(16.9%)であった。過去 3 ヶ月間に入院した者は、93 名(21.9%)で、そのうち、誤嚥性肺 炎が 22 名と最も多く、脳血管障害、尿路感染、消化器症状がそれぞれ 10 名であった。
実施場所別にみた対象者の分布
n %
市立大森病院 障害者病棟 37 8.7 市立大森病院 療養病棟 52 12.2
老人保健施設 90 21.2
特別養護老人ホーム 111 26.1
グループホーム 51 12.0
通所介護事業所 52 12.2
在宅 32 7.5
全体 425 100.0
22
10 10 10 8
6 4
0 23
0 10 20 30
誤 嚥 性 肺 炎
脳 血 管 障 害
尿 路 感 染
( 嘔 吐
、 下 痢 な ど
) 消 化 器 症 状
食 欲 不 振
転 倒
・ 骨 折
循 環 器 障 害
予 定 手 術
そ の 他 人
179 174 152
39 38 36 32 24 6
217
13 6 0
50 100 150 200 250
脳 血 管 障 害
認 知 症
循 環 器 疾 患
呼 吸 器 疾 患
腫 瘍 性 疾 患
誤 嚥 性 肺 炎
う つ 等
パ ー キ ン ソ ン 病
( パ ー キ ン ソ ン 病 以 外
) 神 経 疾 患
そ の 他
な し 無
回 答 人
既往歴の内訳(複数回答) 入院の理由(n=93)(複数回答)
②服用薬剤
服用薬剤について、出血傾向を惹起する 薬剤を服用している者は、98 名(23.1%)、
ビスフォスフォネート製剤を服用している 者は、16 名(3.8%)、免疫抑制を生じ させる薬剤を服用している者は、13 名
(3.1%)であった。
服用薬剤
3)生活状況
①同居家族
入所前もしくは現在の同居家族については、子供と同居 していると回答した者 242 名(56.9%)と最も多く、独居 は 52 名(12.2%)であった。また、平均独居期間は、
12.1±11.1 年であった。
②介護保険の認定状況
介護認定状況別の分布を図に示す。要介護 5 が 102 名
(24.0%)で最も多く、ついで要介護 4 が 8 9 名(20.9%)であった。
③日常生活自立度
障害高齢者の日常生活自立度の分類では、C2 ランクが 130 名(30.6%)と最も多く、ついで、
C1ランクが、45 名(10.6%)で、1 日中ベッド上で過ごし,排泄,食事,着替えにおいて介助を 要する C ランクが全体の 4 割以上を占めていた。
また、認知症高齢者の日常生活自立度については、Ⅳランク(日常生活に支障をきたすような症状・
行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする)が 131 名(30.8%)で最も多か った。
98
16 13
303
385 389
24
24 23 0% 20% 40% 60% 80% 100%
出血傾向を惹起する薬剤
ビスフォスフォネート製剤 ステロイドなど免疫抑制
を生じさせる薬剤
使用している 使用していない 無回答
52 113
242
111 85
24 0
100 200 300
独居 夫婦 子供 孫 その他 無回答 人
同居家族(複数回答)
なし
0.5% 要支援 1 0.5%
要支援 2 3.8% 要介護
1 8.0% 要介護
2 16.2 要介護 %
3 17.6
% 要介護
4 20.9
% 要介護
5 24.0
% 不明 5.2% 無回答
3.3%
A1 17.4
% A2 14.6
%
B1 10.8
% B2
14.8
% C1
10.6
% C2 30.6
% 無回答 1.2%
Ⅱa 11.1
% Ⅱb 16.0
%
Ⅲa 17.9
%
Ⅲb 7.3%
Ⅳ 30.8
% M 5.6%
無回答 11.3
%
介護保険の認定状況 障害高齢者の日常生活自立度 認知症高齢者の日常生活自立度
Barthel Index の平均点数は、33.3±33.7 点であった。点数別の人数の分布を図に示す。0 点が 123 名で最も多く、対象者全体の 28.9%を占めた。
4)意識レベル(JCS)
意識レベルは、清明な者が 48.9%(208 名)と、半数近くを占めていた。
5)上肢の麻痺・拘縮
また、上肢の麻痺・拘縮について は、右側・左側ともに、「なし」が 6 割以上を占めた。
Barthel Index の人数の分布
清明 48.9%
ほぼ意識清明 だが、今ひと つはっきりし
ない 8.7%
見当識(時・
場所・人の認 識)に障害が
ある 7.5%
自分の名前や 生年月日が言 えない 12.9%
普通の呼びか けで目を開け る。「右手を 握れ」などの 指示に応じ、
言葉も話せる が間違いが多
い。
19.5%
無回答 2.4%
312 293
83 100
22 25
8 7
0% 20% 40% 60% 80% 100%
右側 左側
なし あり 不明 無回答
意識レベル
上肢の麻痺・拘縮の有無
人
6) CDR(臨床的認知症尺度:Clinical Dementia Rating)
重度の3の者が、166 名(39.1%)を占め、次いで2の中等度が 106 名(24.9%)であった。
7) 日常生活介助の受容状況
すべての項目について、拒否が全くないとの回答が 7 割以上を占めていた。
0:なし 10.4%
0.5:疑わしい 10.1%
1:軽度 13.4%
2:中等度 24.9%
3:重度 39.1%
無回答 2.1%
CDR の内訳
323
329
334
314
47
50
37
49 18
18
10
21 14
13
4
19 15
6
24
12 8
9
16
10
0% 20% 40% 60% 80% 100%
洗身介助の拒否
排泄介助の拒否
食事介助の拒否
口腔ケア介助の拒否
全くなし 時々ある しばしばある 常時ある 不明 無回答
日常生活介助の受容状況
8)口腔ケアの状況
口腔ケアが自立していたのは、139 名(36.5%)であり、6 割以上の対象者が何らかの介助を 必要としていた。口腔ケアに要する時間としては、5 分未満が 188 名(44.2%)、1 分未満が 187 名(44.0%)であった。義歯清掃および義歯着脱が自立している者は、それぞれ 91 名(21.4%)
と 139 名(32.7%)であった。義歯を使用している者のうち、日常から義歯を使用している者や、
食事時に義歯を使用している者がともに半数以上を占めていた。また、義歯のしまいこみについては、
「常時ある」、「しばしばある」、「時々ある」を合わせても、義歯を使用しているもののうちの 10.6%
(22 名)であった。
うがいについては、リンシング(ぶくぶくうがい)ができる者は、237 名(55.8%)であった一 方、ガーグリング(ガラガラうがい)ができる者は、151 名(35.5%)であった。
できる 21%
一部介 助 7%
できな い 20%
不明 1%
義歯不 使用 48.9%
無回答 2%
義歯清掃の自立
1分未 満 44.0%
5分未 満 44.2%
5分以 上 2.6%
してい ない 2.1% 無回答
7.1%
口腔ケアの時間
自立 36.5%
介助 63.5%
口腔ケアの自立
できる 32.7%
一部介 助 5.2%
できな い 11.1%
不明 0.5%
義歯不 使用 49.6%
無回答 0.9%
義歯着脱の自立
いつも 使用 43.1%
大抵使 用 0.9%
時々使 用 0.2%
不明 0.5%
義歯不 使用 52.9%
無回答 2.4%
食事時の義歯の使用状況
できる 55.8%
できな い 35.3%
不明 7.8%
無回答 1.2%
リンシング
全くな し 41.4%
時々あ る 3.8%
しばし ばある
0.7%
常時あ る 0.7%
不明 2.1%
義歯不 使用 48.5%
無回答 2.8%
義歯のしまいこみ
できる 35.5%
できな い 48.5%
不明 12.5%
無回答 3.5%
ガーグリング いつも
使用 36.2%
大抵使 用 5.4%
時々使 用 2.1%
不明 0.9%
義歯不 使用 52.9%
無回答 2.4%
日常の義歯の使用状況
9)栄養状態
①栄養評価
MNA、BMI(Body Mass Index),血清アルブミン、
血清総タンパク、ヘモグ ロビンの結果を表に示す。
②栄養摂取状況
食事の摂取状況については、経口摂取をしている者が、333 名で最も多く、次いで、胃瘻が 63 名 であった。食形態では、常食を摂取している者が 142 名(39.7%)、刻み食を摂取している者が 125 名(34.9%)であった。
食事量については、ちょうど良いと回答する者が 8 割以上を占め、摂食率も平均して 9 割であった。
333
18 63
16 0 8 0
50 100 150 200 250 300 350
経口 経管 胃瘻 点滴 その他 無回答 人
食事はどのようにされていますか
(複数回答)
合計
MNA(点)
BMI
(kg/m2)
血清アルブミン
(g/dl)
血清総タンパク
(g/dl)
ヘモグロビン
(g/dl)
平均 8.72 20.55 3.62 6.34 11.44
標準偏差 2.93 4.54 0.54 0.73 1.53
最大値 14 36.18 6.20 8.90 16.80
最小値 1 11.11 2.20 2.90 7.50
栄養状態の評価
常食 39.7%
刻み食 34.9%
ソフト 食 4.7%
ミキ サー 10.9%
その他 9.8%
食形態
0~20 分 47.1%
20~
40分 44.0%
40~
60分 3.9%
60分以 上 5.0%
食事時間は平均してどのくらいですか
多い 4.6%
丁度良 い 83.6%
少ない 8.0%
その他 3.7%
食事の食べる量は足りています か
なし 56.5%
たまに 21.2%
しばし ば 5.4%
無回答 16.9%
食事中や食後のむせ
③ 自宅での食事の様子および会話の様子について(在宅・通所サービス利用者のみ)
一人で食事を食べることがあるかどうかの質問に対して、「ない」と回答した者の割合が半数以上 を占め、また、会話の頻度についても、「ほぼ毎日会話する」と回答した者が 6 割以上を占めていた。
10)口腔関連質問項目
①咀嚼能力
咀嚼が可能な食品について、下記 4 群について回答を求めたところ、食品の形状が硬くなるにつれ て、「不可能」と回答する割合が増加する傾向が見られた。
ない 52.4%
時々 16.7%
週5日以上 1.2%
いつも 4.8%
不明 4.8%
無回答 20.2%
ご自宅でのお食事を一人で摂られることがあります か (n=84)
全く会話す る機会がな
い 1.2%
週のうち1~
2日程度 1.2%
ほぼ毎日会 話する 66.7%
不明 10.7%
無回答 20.2%
1週間で会話をする機会の頻度はどの程度ですか (n=84)
302
193
146
111
93
26
62
51
42
30
4
76
133
178
207
1
2
3
2
3 豆腐・バナナ
リンゴ・ご飯
酢ダコ・白菜つけもの
にんじん・セロリ
さきいか・たくあん
可能 困難だが可能 不可能 無回答
②基本チェックリスト口腔関連 3 項目
質問項目の中で、「お茶や汁物等でむせることがある」で、「はい」と回答する者の割合が、164 名
(39.6%)で最も高い割合を示していた。
③かかりつけ歯科医院の受診状況
かかりつけ歯科医院が、「ない」と回答した者は、179 名(42.1%)、過去 1 年間に歯科の受診経 験のない者は、327 名(76.9%)であった。
140
164
96
245
231
307
40
30
22 0% 20% 40% 60% 80% 100%
半年前に比べて固いものが食べにくくなりました か
お茶や汁物等でむせることがありますか
口の渇きが気になりますか
はい いいえ 無回答
なし 42.1%
あり 33.2%
不明 22.6%
無回答 2.1%
かかりつけ歯科医院が今ありますか
なし 76.9%
あり 11.5%
不明 8.0%
無回答 3.5%
過去1年間の間に歯科受診はありましたか
11)調査員実測項目
①歯数の状況
残存歯数、機能歯数(残存歯数と補綴歯数の和)、要治療残根歯数、動揺歯数の分布を表に示す。
残存歯数は、0 本の無歯顎の者が最も多く 243 名であった。機能歯数については、15 本以上の 者が 210 名であった。要治療残根歯、動揺歯数については、ともに 0 本の者が最も多い結果を 示した。
残存歯数 機能歯数 要治療
残根歯数 動揺歯数 0 本 243 119 301 391
1~5 本 72 38 77 16
6~10 本 38 27 23 1
11~15 本 15 23 3 0
15 本以上 44 210 5 0
②歯周疾患の状況
歯周治療の必要性があると認められた者は、141 名(35.2%)であった。また、歯周疾患に関連 する口腔内所見として最も多かったのが歯石沈着(92 名)で、次いで、歯肉炎症(82 名)であった。
③口腔粘膜疾患
扁平苔癬や褥瘡性潰瘍(Dul)等の粘膜疾患が認められた者は、31 名(7.3%)であった。
あり 35.2%
なし 64.8%
歯周治療の必要性 あり なし
92
82
8
23
8 1
0 50 100
歯石 歯肉炎 出血 腫脹 排膿 その他
人
歯周疾患に関する口腔内所見
(複数回答)