以上のように, もろみ中のグリセリンはそれ自身は留出されないが, その存 在量が酢酸ß-フェネチル, ß-フェネチルアルコールおよ び脂肪酸エチルなど の留出に影響し, これが焼酎原酒の香味に影響を与えることが示唆された。
b. もろみのグリセリン濃度が異なる焼酎原酒の官能検査
麹歩合33%もろみにグリセリンを添加し, 減圧蒸留した焼酎原酒の官能検査 を行い, その結果をTablel-3に示す。 もろみ中のグリセリン濃度が8� 18g/1で、
エステル香が高く フルーティー 香味バランスが良いなど好ましい評価を受 けた。しかし, もろみ 中のグリセリン濃度で、20g/1を越えると香りが重たくなる 傾向にあった。
1-3-3 香気成分の気液平衡に及ぼす影響
もろみ中のグリセリン濃度は蒸留原酒中の香気成分に影響を与えることが明 らかとなったが これはもろみ中の香気成分の留出挙動にグリセリン濃度が影 響しているため と考えられる。 しかしながら これまでグリセリンが混在した 水ーエタノール系で微量成分の気液平衡比を測定した報告はない。
Fig.1-3に酢酸ß-フェネチル, ß-フェネチルアルコール, パルミチン酸エチ ルおよびリノール酸エチルの水-エタノール系の気液平衡に対するグリセリンの 影響を示す。 グリセリン濃度増加に伴い, 酢酸ß-フェネチルの気液平衡比は上
Table 1-3. Sensory test of shochu distilled from mash in which was added glycerol.
Glycerol Glycerol added co�centra
.tIon in mash
g/l g/l
Control 6.0
2.0 8.0
4.0 10.0
7.0 13.0
12.0 18.0
14.0 20.0
17.0 23.0
24.0 30.0
44.0 50.0
Odor and taste of shochu
light
well-balanced, slightly heavy, fruity, estery well-balanced, slightly heavy, fruity, estery well-balanced, slightly heavy, fruity, mellow
well-balanced, slightly heavy, mellow well-balanced, heavy, mellow
full-body, smooth, mellow full-body, smooth, mel10w
smooth
25
101
10・1
10・2 0 100
2芯』Eコ一」。=一コσω万一コσ='」O己の〉
60
Glycerol concentration (g/I)
40 20
Fig.l由3. Effect of glycerol concentration on the vapor-liquid equilibrium ratio.
Symbols: 0, ß-phenylethyl acetate;ロ, ß-phenylethyl alcohol;
ム, ethyl palmitate;・, ethyl linoleate
昇したが, ß-フェネチルアルコールは減少し, グリセリン濃度増加に対し, 反 対の挙動を示した。 また, 酢酸ß-フェネチル以外の成分の気液平衡比は100以 下で留出しにくい成分であるが, グリセリン添加によってその傾向はさらに強
くなり, 特に, リノール酸エチルはグリセリン添加によって, 全く気相中に検 出されなかった。
1-3-4 クエン酸溶液中の香気成分の留出に及ぼす影響
リノール酸エチルは焼酎に含まれるにもかかわらず, 前項の気液平衡実験で はグリセリン存在下で気相中に検出されなかった。 これは実際の焼酎もろみが クエン酸を含む酸性溶液であることによるためではないかと考えられた。 そこ で, クエン酸緩衝液を用いたモデル焼酎もろみを調製し, バッチ式減圧蒸留で の各成分に対するグリセリン濃度の影響を比較した。
150/0 (wjw)のエタノールを含む0.2Mクエン酸緩衝液(pH3.0, 4.0, 5.0) 1 e
にß-フェネチルアルコール, 酢酸ß-フェネチルまたは脂肪酸エチルを混合し,
減圧蒸留を行い 留出液400mlを得た。 留出液100mlを3倍量の脱イオン水で、希 釈後, 内標準としてethyl nonate (1.0gjl-エタノール)を1ml入れ, エーテル抽出
を行った。 抽出液は減圧濃縮後, 窒素ガスで、約lmlまで濃縮し GC分析に供し た。
27
a. ß-フェネチルアルコールと酢酸(3-フェネチルへの影響
Fig.1-4にpH4.0のモデル焼酎もろみにおける(3-フェネチルアルコールと酢酸 ß-フェネチルの留出に及ぼすグリセリンの影響を示す。 留出液中のß-フェネ チルアルコールはグリセリン20g/1で、約30/0, 50g/1 で約100/0それぞれコントロール (グリセリンOg/l)と比較して減少したO また, 酢酸ß-フェネチルはグリセリ ンの増加によって5%程度増加した。 その結果, 酢酸ß-フェネチルとß-フェネ チルアルコールとの比はグリセリン0, 20, 50g/1にお いて, それ ぞれ3.28,
3.52, 3.74と増加した。 また, これらの成分の留出量およびグリセリンの影響 はpHに影響されなかった。
b. 脂肪酸エステルへの影響
Fig.1-5 にpH4.0のクエン酸緩衝液中での蒸留時の脂肪酸エチルの留出に及ぼ すグリセリンの影響について測定した結果を示す。 脂肪酸エステルの留出量は グリセリン濃度の増加とともに大きく減少し アルキル基が長くなるほどグリ
セリンの影響 は大きい傾向にあった。 特に, 焼酎もろみに多く含まれている,
パルミチン酸エチルはグリセリン20g/1で、コントロールの60%, 50g/1で、300/0 まで 低下し, さらにリノール酸エチルはそれぞれ60%. 100/0まで低下した。
次に, 脂肪酸エチルの留出に及ぼす溶液pHの影響をFig.1-6に示すO 脂肪酸エ チルの留出液中の濃度は溶液pHの上昇に伴って減少し, 前述した酢酸ß-フエ 不チルおよびß-フェネチルアルコールとは異なる挙動を示した。 アルキル基が
、‘,,,,hU
120
a)
100
ωHC一一一日ω一万C一
co定一」HCωωcoυF0(JF)ozc庄
80
20 50
Glycerol concentration (g/I)
50 。
。 20
Fig.
1-4.Effect of glycerol concentration on the distillation of
ß-phenylethyl acetate (a) and ß-phenylethyl alcohol (b).
29
C18:2Eta C18:oEt
aC16:oEt
aC14:oEt
aC12:oEt
a100
50
ω一←ω一一一Hω一万C一
COZE
HCωocooFO(ポ)O
一芯庄
。
50Fig. 1-5. Effect of glycerol concentration on the distillation of fatty acid ethyl esters.
a Abbreviatio ns: C12:oEt, ethyllaurate� C14:oEt, ethyl my ristate; C16:oEt, ethyl palmitate;
CI8:oEt, ethyl stearate; CI8:2Et, ethyllinoleate.
20
。 50
Glycerol concentration (g/I)
20
。 50 20
。 20 50 20 50 。
。
150
100
50
ωHMW一一一日ω一万
C一co
一芯」HCωOC00』0(ポ)ozc江
。 5
pH of the solution 4
3
Fig. 1-6. Effect of pH of the solution on the distillation of fatty acid ethy 1 esters.
Sy mbols:口, ethyllaurate;く) , ethyl my ristate; 0 , ethyl palmitate;
ム, ethyl stearate and ethyllinoleate.