モラルジレンマ授業5『残ったおかず』
第一次
2002年6月26日
第二次
2002年7月1日
査4 Fairness Mind検査
2002年7月3日
査5 役割取得能力検査 2002年7月2日〜7月5日
査6 「健康」という言葉に対する意識調査 2002年7月4日
査7 自由記述による感想 2002年7月5日
5主題のジレンマ資料各々及び全体を通して描かれた「健康」に関す る事実をどのように児童が理解したのかを知るために、自由記述によ る感想を書かせる。
査8 モラルジレンマ授業についての感想 2002年11月5日
5実践終了後に、児童がモラルジレンマ授業の特質をどのように捉え ていたかを知るために、自由記述や二者択一の回答とその理由を書か
せる。
析の検討と考、
一51一
第3項 分析の方法
1 判断理由づけを中心とした分析
各児童が第一次と第二次の最終で「主人公はどうしたらよいだろう」
の道徳的問題に対して行った判断を比較して、判断とその理由づけがど のように変容しているかを明らかにする。また、授業中の発言を分析す ることで、児童がどのような道徳的思考を根拠として判断しているのか を明らかにする。
2 5主題10時間を通した道徳性の発達段階における縦断的な変化 5主題10時間の授業実践で得られた判断・理由づけカードに記述され
た内容を手がかりに、コールバーグの道徳性の定義に照らし、発達段階 を同定する。それに基づいて、5主題10時間を縦断的に比較し、段階変 化の様相や特徴を明らかにする。
3 道徳性発達検査による分析
5主題10時間の研究授業の実施前と実施後に、フェアネスマインド検 査(小学生用道徳性発達検査)を行い、道徳性の段階を測定する。授業前 後の道徳性を比較し、授業の効果を明らかにする。
4 役割取得能力検査による分析
5主題10時間の研究授業の実施前と実施後に、セルマンの例話の一つ である「木登り課題」を用いて、役割取得能力を測定する。授業前後の 役割取得能力を比較し、授業の効果を明らかにする。
5 感想文による分析
5主題10時間の研究授業終了後に質問紙を用いて、授業を通して、今 回用いる資料の主要テーマである「体調が不調なときの心得や対処」、
「病気の予防(歯の大切さ)」、「病気の予防(食事やおやつの取り方の 大切さ)」、「病気の予防(飲酒防止)」といった「健康」についての問 題に関して、どのような知識を得たかを自由記述された内容から分析す
る。
6 「健康」という言葉に対する意識調査の分析
児童は「健康」という言葉は知っているが、それを意識して行動して いることは少ない。また、「健康」ということについて改めて考えるこ とも少ない。そこで、5主題10時間の研究授業の実施前と実施後に「『健 康』という言葉からどんなことを思いうかべますか。」という質問を行 う。授業前後で「健康」という言葉のイメージがどのように変容したか を自由記述から分析する。
7 学習意欲と授業評価の分析
5主題10時間の研究授業終了後に質問紙を用いて、「モラルジレンマ 授業全体について」、「1主題2時間の授業について」、「オープンエン
ドの資料について」、「モラルディスカッションについて」の4点を自 由記述や二者択一の回答とその理由を求めることで、児童が本授業の特 質をどのようにとらえているかを明らかにする。
一53一
第2節 判断理由づけを中心とした分析(授業の結果と考察)
第1項 授業「さち子さんの誕生会」の分析 1 資料
たんじょうかい
「さち子さんの誕生会」
す
あゆみさんは、食べることが大好きな4年生。ついつい食べ過ぎてし いたまい、ときどきおなかが痛くなってしまい、あとでこうかいするときも とく
ありました。そして、特にあまい物が大好きで、毎日のおやつもあまい 物が多いのです。この前、お母さんに
「あゆみ、おやつを食べてはいけないということではないけど、あまり あまい物ばかりだと体によくないから食べ過ぎに気をつけてね。それに 食べ過ぎにもね。いつも、あなたはあとからこうかいするんだから。自 分の体は自分で気をつけなくっちゃね。」
と言われ、あゆみさんは、
「分かっていますよ、うるさいなあ。自分の体なんだから自分で気をつ
けますよ。」
こた たいじゅう
と、答えながら、このごろ体重がふえぎみになってきたことを自分で も気にしていたのでした。
りょう
そして、少しずつ自分でおやつの取り方や食事の量に気をつけるよ うになってきました。
もうすぐ、つゆがあけようとする7月の第一日曜日、あゆみさんは、
たんじょうかい
友だちのさち子さんの誕生会に行くことになりました。あゆみさんは、
おひるごはんをかねた誕生会によばれてとてもうれしそうでした。
あゆみさんが、さち子さんの六ついたら、ほかの友だちもきていまし あそた。みんなで、さち子さんへのプレゼントをわたしてから、楽しく遊び ました。楽しく遊んでいると時間があっという間にすぎていきました。
もう、おひるです。さち子さんのお母さんが、
ま「みんな、お待たせ、ごはんですよ。おばさん、みんなの好きなものい っぱい作ったから、えんりょしないで、どんどん食べてね。」
と言ってくれました。
りょうり
あゆみさんは、テーブルの上にある料理を見てびっくりです。おいし そうなものがいっぱいあったからです。
みんなで、楽しく食べはじめました。あゆみさんは、サンドウィッチ、
フライドチキン、ジュースなどいろいろなものを食べたりのんだりして おなかがたまってきました。みんなも、とってもおいしそうに料理を食 べました。それで、ほとんどの料理を食べ終わると、さち子さんのお母
さんが、
「うれしいなあ。みんなほとんど食べてくれて。おばさん、いっしよう さいごけんめい作ってよかったわ。さあ、最後は、デザートの手作りケーキよ。
めしあがれ。お持ち帰りとも思ったんだけど、このむしあつさで、くさ ぜんぷっちゃうとこまるから、できるだけ全部食べてくれるとありがたいんだ
けど。」
と言って、ケーキを持ってきてくれました。
さち子さんは、
「このケーキ、お母さんのじまんなの。どうぞ、みんな食べてあげてね。
お母さんって、料理を作るのが大好きで、みんなにどうしても食べても らいたいつて、はりきって作っていたの。わるいけど、食べたかんそう をいってくれるとお母さんよろこぶんだな、これが。」
と、みんなに言いました。みんなは、「おいしい、おいしい。」とそれぞ れケーキを食べはじめました。さち子さんのお母さんもうれしそうです。
あゆみさんは、料理をたくさん食べ過ぎて、おなかがいっぱいだった ので大好きなケーキが食べられるかどうかしんぱいになってきました。
ほかの友だちは、みんな食べているし、おばさんのうれしそうな顔を見 ていると、自分だけいらないとも言えなくなってしまいました。でも、
もし、と中で食べきれなくなってしまったら、さち子さんやお母さんに わるい気がします。あゆみさんは、おいしそうなケーキを食べようかど
うかまよってしまいました。
あゆみさんはケーキを食べたほうがいいでしょうか、それとも食べな いほうがいいでしょうか。
(原作:松田 義久・兵庫教育大学道徳性発達研究会)
一55一
2 学習過程 第一次
学習活動 意識の流れ 教師の支援と評価
①資料を読み、あゆ ◆お母さんの言葉を聞いたあゆみはど ※主人公のおかれた状況を みの葛藤状況を んな気持ちだっただろう。 読みとり、道徳的ジレンマ 明確につかむ。 ・うるさいなあ、自分で気をつけるよ。 に直面する。
・最近体重が増えてきたからお母さん ※読みとりの誤りを修正した の言う通り気をつけなくては。 り、道徳的価値の生起する
・分かってるけれど、ついつい食べて 状況の共通理解をすること
しまうんだよな。 により、主人公に役割取得
◆さち子の家でテーブルの上にある料 し、道徳的葛藤を明確に把 理を見たときあゆみはどう思っただろ 握する。
う。 ※おいしそうな料理を見て、
・わあ、おいしそう。 あゆみのうれしい気持ち・
・すごいごちそうだな。 早く食べたい気持ちに気づ
・早く食べたいな。 かせる。
◆料理を食べ終わったあゆみはどんな ※お腹がいっぱいなあゆみの
気持ちだっただろう。 気持ちに共感させる。
・おいしかった、おなかいっぱい。
・ついつい食べ過ぎちゃったみたい。
・おばさんって料理上手だな。
◆おばさんやさち子さんの言葉を聞いた ※おばさんやさち子さんが喜 あゆみはどう思っただろう。 んでくれてあゆみのうれし
・残さないで食べてよかったな。 い気持ちに気づかせる。
・:喜んでもらえてうれしいな。
・デザートもあるなんて、びっくりだな。
◆友達がおいしそうにケーキを食べてい ※おいしそうなケーキを自分 るのを見ているあゆみはどんな思いだ も食べたいという気持ちを
つただろう。 もっているあゆみに気づか
・みんなよく食べられるな。 せる。
・おいしそうなケーキだな。
・わたしも食べたいな。
◆友達がケーキを食べているのをうれし ※作ってくれたおばさんの そうな顔で見ているさち子さんのお母 ために食べないといけな
さんを見たあゆみはどう思っただろう。 いと思うあゆみの気持ち
・食べないと作ってくれたおばさんに に共感させる。
失礼だな。
・お腹がいっぱいでも無理して食べよ
う。
◆あゆみは何を迷っているのか。 ※葛藤の内容を押さえる。
・ケーキを食べた方がいいか、それとも ・あゆみの置かれた葛藤状