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(1)ABAとは

 ABA(応用行動分析、AppliedBehaviorAnalysis)は、アメリカのB.F.スキナーらが動物を対 象とした研究から導き出した学習理論を人問の行動に応用したもので、発達障害児の治療教育に大 きな成果を上げています。他にもいろんな分野に応用されています。行動療法とか行動介入とも呼

ばれます。

 AB Aの特徴は、行動の結果を 作することによって、その行動を変えていく、ということです。

例えば伸ばしたい行動は、プロンプトと呼ばれる手助けをして引き出し、その直後にほうびを与え ます。そうすると、そのほうびのカで、その行動が増えていきます。

 逆に抑えたい行動には一切、ほうびを与えないようにします。そうするとその行動は減っていき ます。それでも抑えられない場合は、やむを得ず、行動の直後に不快な刺激、つまり罰を与えるこ

ともあります。しかし罰の使用は、後で述べるように慎重にしなければいけません。

(2)早期集中行動介入(E I B I)とは

 E I B I(早期集中行動介入、Early Intensive Behavioral Intervention)は、AB Aを自閉症 児の治療教育法として、早期に集中的に行おう、というものです。いわば早期集中型のAB Aと言 ってよいでしょう。UC LAのロヴァース博士らによって開発されました。

 何を持って早期集中と呼ぶか、正式な定義はありませんが、一般には、2〜4ないし5歳から始 めて、週20〜40時間の1対1のABAを、1年以上継続するものをE I B Iと呼んでいるようです。

 87年に公表されたロヴァース博士らの実験的研究では、およそ3歳半以下の19人の自閉症児

(IQ37以上)に対して、平均週40時間の1対1のABAを2年以上継続して施したところ、そのうち 9人(約47%)が知的に正常な水準に達し、小学校1年生の普通クラスに付き添いなしで入学が認 められた、とのことです。さらにそのうち8人は、成人になった現在、自閉症の痕跡は全く認めら れず、正常な社会生活を営んでいるそうです。

      <E I B Iの特徴>

①2〜4歳からスタート

②週20〜40時間の1対1のAB Aを

③1年以上継続する

④主に子どもの家庭で治療を行う

⑤親を治療の重要な担い手とする

 なおロヴァース博士は、E I B Iを子どもの家庭で行うことが、特に治療初期では重要だと考え ています。それは、自閉症児はある環境で学んだことを他の場面に応用(「般化」といいます)する ことがとても苦手だからです。そのために病院や専門の教室などで治療を受けても、それを日頃の 生活の場である家庭で十分に生かすことができません。でも最初から家庭で治療を行えば、般化が

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 またロヴァース博士は、親が治療の重要な一員として参加するように、と勧めています。なんと いっても、子供と一番多くの時間を過ごすのは親だからです。親が治療の方法を習得し、進展状況 を把握しておけば、子どもが起きている四六時中、いろんな機会をとらえて子どもに必要なことを 教えることが出来ます。そうすることで、ABAの治療効果を最大限にすることができるのです。

2.ABAの基本原理

 AB Aの基本原理は、簡単に言うと次の三つです。

(1〉ある行動に対してほうび(利益)が うと 以 その行動は 加する(強化)

行 動

ほうび

行動の増加

      (強化子)

〈強化と強化子>

 ある行動に対して何らかのほうび(利益)が伴うと、その行動は増加していきます。あるいは少 なくともその行動は維持されます。ある行動にほうびが伴うことによってその行動が増加したとき、

その行動が「強化」されたと言います。またほうびのことを「強化子」と言います。

 例えば、子どもが絵を描いてお母さんに見せたら、すごくほめてくれたとしましょう。そうする と、子どもはまた絵を描いて、お母さんに見せようとするでしょう。このとき、子どもの「絵を描 いてお母さんに見せる」という行動は、お母さんがほめたことによって強化されたのです。

 そして強化子、つまりほうびは、お母さんがほめるときの優しい声や表情、ということになりま

す。

絵を描く 十 お母さんがほめる

よく絵をかくようになる   (子どもの行動)     (ほうび)        (行動の増加)

 強化の原理は、人間のほとんどありとあらゆる行動に及んでいます。私たちがご飯を食べるのは、

空腹が癒されたり、おいしいと感じることによって強化されているからです。また私たちがかゆい ところを掻くのは、かゆみが和らぐという経験によって強化されているからです。

<本人が意識している必要はない>

 強化は本人が気づかないうちに起こっていることもあります。例えばいつもポケットに手を入れ て歩く癖のある人は、ポケットの中で手が温まって心地よい、という経験によってその行動が強化

されていることに、全く気づいていないかもしれません。

 ですからABAでは、「その人はいつもポケットに手を入れるのは、そうすると手が温まることを 知っているからだ」と言う言い方をしません。そうではなくて、「その人がポケットに手を入れるの

は、ポケットに手を入れる、という行動に伴って、手が心地よく温まる、という快体験が過去に何 度か起こったために、その行動が強化されたのだ」という言い方をします。ある人のある行動が強 化されるためには、強化されたことをその本入が気づいている必要はないのです。

<連続強化と間欠強化〉

 また、ある行動が強化によって維持されるためには、その行動が毎回強化される必要はありませ

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ん。例えばパチンコ好きな人がパチンコに行くのは、毎回勝つからではありません。週に1回、あ るいは月に1回でも大勝すれば、それが強化子になって、毎日のように通ってしまうものです。

 このようにある行動を毎回ではなく、飛び飛びに強化することを「閲欠強化」と言います。それ に対して、毎回強化することを「連続強化」と言います。

 何かの行動を新しく教えるときは、連続強化します。つまりその行動を行うたびに強化します。

それに対して、既に獲得した行動を維持しようという場合には、間欠強化でも十分です。

<快を与えるほうびと不快を取り去るほうび〉

 強化の原因となるほうびには、二種類あります。快を与えるほうびと、不快を取り去るほうびで

す。

 私たちが普通に考えるほうびは、快を与えるほうびです。例えばほめたり、お菓子を与えたり、

お小遣いを与えたり、というのがこれに当たります。ある行動に快を与えることによってその行動 を強化することを「正の強化」と言います。またその快刺激のことを「正の強化子」または「好子」

(こうし)と呼びます。

 それに対して、子どもが算数の問題を解いたらお勉強机から解放するというほうびはどうでしょ う。椅子に長時間座っているのは苦痛なものです。ですから席を立たせる、という行為は、長時間 席に座ることによる不快を取り去る、一種のほうびと考えることができます。不快を取り去るほう びによって、その行動が増加したとき、これを「負の強化」と呼びます。そして取り去った不快刺 激のことを「負の強化子」または「嫌子』(けんし)と呼びます。

算数を解く 十

(行動)

席から解放される

→ おとなしく算数の問題を

解くことが増える

(ほうび) (行動の増加)

(2)ある行動に対して、ほうびが半わないと 以後その行動は1少する(消去)

行 動 ほうびなし

→ 行動の減少

 子どもが絵を描いてお母さんに見せに行っても、お母さんが電話のおしゃべりやテレビドラマに 夢中で、ちっともほめてくれないどころか、絵を見てもくれない、としましょう。するとこの子ど

もは、たとえ絵を描いても、だんだんお母さんには見せに行かなくなると思います。

 このように、ある行動に、一切ほうびが伴わないと、その行動はだんだん起こりにくくなります。

この現象をr消去」と呼んでいます。

絵を描いてお母さん

  に見せる 十 お母さんが見てくれ

   ない

あまり見せなくなる

 子どもの問題行動を減らそうとするときは、まずこの消去を試します。例えば自閉症児が、何か

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は子どもが奇声を上げると、ドキッとして子どもの方を見たり、子供の要求をかなえてやったりし ていました。実はこのお母さんの視線や、要求をかなえる行動によって、子どもの奇声は強化され ていたのです。

奇声を上げる

お母さんが見る

ますます奇声を上げる

 そこで、奇声を減らすためには、一切強化しなければいいことになります。つまり消去するので す。子どもが奇声を上げても、一切子どもの方を見ず、要求もかなえません。それを辛抱強く続け れば、だんだん子どもは奇声を上げなくなります。奇声を上げても、まったくほうびが与えられな いからです。ついには、子どもは奇声を上げることをやめてしまうでしょう。

奇声を上げる

お母さんが見てくれ

ない

だんだん奇声をあげなくなる

 しかし消去が中途半端で、ときどきは視線を向けたり、要求をかなえてやったりしたのでは、奇 声は収まりません。行動を維持するためには、間欠強化で十分だからです。間欠強化に打ち勝つた めには、時には何ヶ月も消去を辛抱強く続けなければならないこともあります。

 また、ある行動を消去しようとすると、一時的にその行動が増えたり、激しさを増すことがあり ます。これを「消去バースト」と呼んでいます。例えばお母さんが奇声を無視しようとすると、子 どもはもっと大声を上げたり、さらにはひっくり返って暴れたりするかもしれません。しかしそこ で無視をやめてしまっては、その激しい行動を強化することになってしまいます。消去をするとき は、消去バーストが起こることを予期して、それでも消去を続ける覚悟を固めていなければなりま

せん。

(3) ある行動に対して罰が与えられると、以後その行動は減少する(罰〉

行  動

行動の減少

 ある行動に伴って不快な出来事が起こると、以後その行動は減少していきます。この現象を「罰」

と呼んでいます。

 例えば、子どもがコンロにかけられているやかんをさわってやけどしてしまいました。このよう な体験を何度か繰り返すと、子どもは湯気の立っているやかんをさわらなくなるでしょう。このと き、「やけど」という不快な体験によって、「やかんをさわる」という行動が罰せられた、と考える

のです。

やかんにさわる 十 やけどする

さわらなくなる

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