ところで、ITO憲章の提案と並んで1947年、ジュネーブで関税交渉が 行われたが、その結果を条約にまとめたのがガットである。ガットは1948 年1月、ITO憲章より-足先に出来あがったが、ITO憲章の不成立にとも ない憲章に代わるレジームの役割をはたすことになった。そのため、ガットは 1947年署名の「ガットの暫定的適用に関する議定書」として発効し、今日 に至るまで暫定的適用のままで推移してきたことになる。
ガットはその前文で、生活水準の向上、完全雇用、資源の完全利用を目標と し、そのために貿易障害の軽減と貿易における差別を廃止するため、相互的・
互恵的な取決めを結ぶことをうたっている。その目標達成のため、最恵国待遇
と内国民待遇を原則として、貿易における数量制限撤廃と関税引下げをめざし て貿易交渉を行ってきた。(第3-3図表)第3-3図表ガットにおける多角的貿易交渉の歴史
筑紫勝麿編著『ウルグアイ・ラウンド』4頁
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時期 交渉名
参加国数
交渉成果1947年 1949年 1950年~51年 1956年 1961年~62年 1964年~67年
ウルグアイ・ラウンドを含めて過去8回貿易交渉が行われたことになる。そ の結果、ガット設立当初、主要国の鉱工業の平均関税率は40%であったが、
東京ラウンド後には47%まで低下した。
このような関税の低下等の成果により、世界貿易の拡大.経済成長が促進さ れた。しかし、第2章で検討したように、各国の成長は不均等であるから、各 国間収支のインバランス、国内の産業構造の調整等に係る多くの問題が続出す るようになった。また日米経済摩擦問題の解決交渉にみられるように、本来多
第3-4図表WTO設立協定の概要
第1条WTOの波立 第2条WTOの所準 第3条WTOの任務.
第4条WTOの桐成 第5条他の機関との関係 第6条事務局 第7条予算及び分担金 第8条WTOの地位
蕊蕊騨霧灘蕊震Ⅵ/TOの組織露譲蕊M騒騒露驚
第9条意思決定 第10条改正 蕊11条原加盟国 繭12条加入
蕊13条稗定加盟国間の不適用 第14条受階,効力発生及び寄託 第15条脱退
第16条繼則 WTO汲立協定
ガット1994 度鴬に関する協定 横疫・lW生に1mするtll定 繊維に111Iする協定
スタンダード協定 TRIM協定 アン+・ダンピング協定 関税押価協定 船綱み、i検査協定 原服地剛111二1mする協定 ライセンシング協定 補助金・相殺措置協定 セーフガード協定
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筑紫勝磨編著『ウルグアイ・ラウンド』236ページ注11
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モノの貿易に
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関する理国会 サービス貿易に
間する理廟会 貿易関通知的 所有梱理事会 貿易政閑検肘磯関
国間主義に基づき最恵国待遇に終るべき結果を、例えば日本の対米自動車輸出 のみに限って自主規制する、といった差別的な2国間主義が多発するようにな った。またECやNAFTAのようなリージョナリズムも、メンバ外の国々に 差別的となる政策をとる可能性がある。
以上のように、GATT発足後50年の間に世界経済は変貌したので、それ に対応する拡大機構を備えた衣がえの結果が、WTOに発展した、と考えられ る。第3-4図表は、WTO設立協定とそれに対応するWTO組織図を示した ものである。WTOを設立する「マラケシュ協定」の本文は、16ケ条の簡単 な協定で、機構に関する規定と意志決定加入に限っている。ガット協定やこれ までのラウンドで策定された協定、ウルグアイ・ラウンドの結果等は付属書1
-4に含まれることになる。
なお、本稿では時間的制約で、歴史的推移のみしか取りあげることができな かったので、WTOの内容については他曰あらためて検討したい。
第4章終 章
これまで、GATTからWTOに変った貿易レジームの背景を理解するため に、多くの角度から説明を試みてきた。これまでの議論を第4-1表にまとめ てみた。20世紀の第3四半世紀はアメリカの覇権の成熟期に当り、そのリー ダーシップの下にGATTが設立された。設立当初は第2次大戦終了期であり、
貿易の再開と発展しか創設者達の頭になく、国境の水際措置で物の貿易に対応 できる、というのがGATTの中心ルールとなっていた。
第4-1図表WTOの位置づけ
第3四半世紀 20世紀 第4四半世紀
20世紀21世紀
大空位時代 21世紀 アメリカ覇権 安定期
の成熟期
アメリカ覇権の衰退期 新しい覇権国 覇権の交替期 の成熟期
貿易レジームGATTGATT→WTOWTO?
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年代 20世紀 第3四半世紀 20世紀
第4四半世紀 大空,
21世紀
立時代 21世紀 安定期 覇権 アメリカ覇権 の成熟期 アメリカ覇権
の衰退期 覇権の交替期 新しい覇権国 の成熟期 相互依存
モノ・カネの自由化
モノ・カネ
投資・企業 の自由化
モノ・カネ
投資・企業
ヒトの自由化
貿易レジーム
GATT GATT→WTO WTO ?。しかしその後の世界経済の発展はめざましく、相互依存の関係はモノの取引 きをはるかに越え、企業と直接投資が経済交流の中心的なファクターとなって きた。また、相互依存の進展の結果として貿易摩擦も曰常化することになった。
特にアジアの国々が工業化に成功し、雁行的形態で先進国の工業を追跡し、多 くの工業分野で先進国に追いつき追い越す競争を展開するようになった。
GATTのセーフガード条項やアンチダンピング措置は、一時的な対策には なりうるが、今日世界経済におこっている構造変化とそれに伴う構造調整には 対応できない。問題を複雑にしているのは、アジア諸国の追跡のみではない。
戦後のリーダーであるアメリカの地位がゆらぎ、その国際収支の赤字が続いて いることから、アメリカ政府の政策が自由貿易主義をすて結果主義に変わって いる。
周知のように、マクロ・バランスによると、
X(輸出)注'2 M(輸入)
S(貯蓄)
9(財政赤字)
XMJ
+|M
gX|++XIgく+++CIgllll+MCI
+’一一YYSとなる。貿易赤字(X-M)ということは、アメリカの貯蓄(S)が少なく、
投資(1)と財政赤字(9)が大きいことを示している。したがって、国際収 支の赤字を減らすには貯蓄を増やし財政赤字と投資を減らす内部努力が必要で ある。アメリカの政治家は国民からの不人気を恐れ、曰本やアジア諸国たたき で、国民の目をそらしている。こうしてアメリカ覇権の衰退は続いており、
21世紀初頭に世界は覇権の空位期をむかえることになる。WTOが役割を担 うのはそのような時代である。WTOの成功は大空位期の混乱を柔げることに つながろう。
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