100/18 100/6 97/88 94/17 100/6 92/84 94/17 83/5 94/86 89/16 66/4 91/83 77/14 100/6 81/74 72/13 50/3 77/70 66/12 83/5 60/55 61/11 83/5 50/46 33/6 33/2 43/39 28/5 33/2 39/36
小学生23人の うち19人がもつとも基本 的な色彩語 としてmurasakiを あげた とい う。これは23人全員があげたakaと
ao,22人
のshiroとmidori, kuro
の21人
に次いで多 く,お
な じ19人のki■oと並んでいる.cha‐ iroは 15人し か基本的な色彩語 としてあげられていないわけだから,小
学生にとつてはcha■oよ りもmurasakiの ほ うが基本的な色彩語 と考えられているのだろう
.と
ころが,年齢層があがると
, murasakiの
評価 はかな り極端な凋落傾向をしめ している。中学生や高校生では
9人
中5人
だか ら半数近 くに落ち込み,大
学生お よび25歳 以下 (35人 中6人 )に
なるとmurasakiを
基本的な色彩語 としてみな している ひ とは6人
にひ とり程度に落ち込んでい る.そ
れがさらに年齢があが り,26歳
か ら45歳の年齢層では
,18人
中11人だか らまたかな り回復 している.46歳
以 上のひ とは6人
中5人
だか ら,ふ
たたびmurasakiは基本的な色彩語 として認識 されていることになっている。パーセ ン トで追 うと,小
学生か ら46歳以上まで,83%‑55%‑17%‑61%‑83%と
なっている。46歳以上に低 く評価 されて いる midOriと 大学生か ら25歳以下の年齢層 に評価 が高いpinkuとな らんで顕 著な結果 となっているよ うに思われ る.小学生か ら大学生にかけてのこのよ うな評価の違いは何によるものなのだろ うか。紫色が小学生に とって基本色彩語であるのはなん らかの教育的効果によ るものかもしれないが
,小
学生が紫色 を好んで使 うとい う事実はない らしい.それ どころか
,ク
レヨンで絵 を描 くよ うな場合,紫
色はあま り使われていない らしい。「小学生の低学年用 に使われているクレヨンは6色 ,12色 ,24色 ,36
色 と各種の色相が選ばれて
,大
体標準色系に準 じた色種である.そ
れ に灰,黒
,金
,銀
な どの中性色が加 え られている。 ところが紫系統の色はす くない.標
準 色か ら紫 を省 くとい うことは,ク
レヨン画な どに紫系統 をあま り使わないか ら だそ うだ」(宮下 1952,178)。 参考にアメ リカの ミル トンーブラ ドレーの24色クレヨンの例があげ られているが
,紫
系統の色 として赤紫(Red Violet),紫
(Ⅵolet),青紫 (Blue Violet)の
3色
があ り,24色
の 日本のクレヨン (花王 クレパス,あ
おい とリクレヨン,ぺ
んてる)が
紫1色であるの と比較 して紫系 統の色が多 くなっている。6口 締 め くくるに あた って
「青」か 「紫」かはっき りしない状況で 日本語では 「紫」をえらぶ傾向があ るよ うに思 う。 この傾向は
,黒
つぱい茶色の醤油のことを 「む らさき」 と言つ た り,緑
色で濃淡があ り,全
体的に黒 つぽい海苔や海苔の佃煮 に 「む らさき」が使われた りす るのもこの傾向が関係 していそ うだ。一方 ドイツ語には紫の色 相 を表わす語彙は外来語 しかな く
,
日常の言語使用では,「紫」はあま り使われ ず,そ
の分 「青」が今 日でも頻繁に使われ,お
そ らく多 くの ドイツ語のネイティ ブス ピーカに とっては 「青」の一部である 「青紫」だけでな く,場
合 によって はかな り赤に近い赤紫の色相 にも 「青」が使われ ることがあるよ うだ。同じも のに対 して紫 といった り,赤
と分類 した りとい うのは 日本語ではわ りと見 られ る.「赤玉ねぎ」 と「紫玉ねぎ」,「ムラサキツメクサ」 と「アカツメクサ」など がある.食
材関係の専門語のようであるが,ア
カジソの若芽を「紫芽 (むらめ)」と言 つた り「赤芽」 と言つた りもす る (『日本食材百科』
).こ
の 「赤」 と「紫」でゆれ る現象 はかな り古 くか らあるよ うで,『邦訳 日葡辞書』(岩波
,1980)に
もMurasaqidaiconと
Acadaiconが
見出 し語 として採 られていて,「
Murasaqidaiconと 言 う方がまさる」 とあるか ら
,同
一の野菜が紫や赤になったことは間 違いない6)。 ドィッ語ではrOt(赤 )と blau(青 )の
あいだに同 じよ うな関係 がある。 日本語でやは り「紫キャベ ツ」 と言われた り,「赤キャベツ」 と言われ た りする野菜があるが,
ドイツ語ではふつ うにはRotkohlと 「赤」が使われて いるが,南
ドイツやオース トリアではBlaukrautと 「青」が使われ るとされて いる (LGDaF 2)7)。 ァ̲テ
ィチ ョー クが ドイ ツ語で 「青」 とされ る場合がある のも同様のケースだろう.巨
大な花を咲かせるアーティチョーク (Cynara scoしmuS,
和名はチ ョウセ ンアザ ミ)は ,ヨ
ー ロッパでは古代ギ リシア・ ローマ時代か ら 栽培 されていたよ うだが,栽
培種 しかな く,野
生のアーテ ィチ ョー クは存在 し ない。イ タ リアや フランスな どではアーティチ ョークのつばみを好んで食べる。アーティチ ョー クの花は巨大だが
,花
の色は普通のアザ ミの色 と変わ りがない よ うに見える。この花の色だが,
日本の図鑑やガイ ドブ ックでは紫や赤紫 と記 述 されている。「赤紫色」(『ハーブ』),「紫 ピンク」(『ポケ ッ トガーデニ ング』,小学館文庫,1998),「紫」(『ハーブ 新来の香草たち』
,朝
日新聞社,1987),「紫 色」(『マイペディア』,平
凡社,「チ ョーセ ンアザ ミ」)。 ところが,こ
のアーティ チ ョー クの花 の色 を 「青」 とす る ドイ ツ語 の園芸書があった。見出 しとして Artischocken― das blaue Wunder(「 アーティチ ョークー 青い驚き」)と
され,写真のキャプションに「大きなつぼみを咲かせると
,素
晴 らしい青い花に驚か され ることになる (Wer die gr03en Knospen aufbltihen hsst,erlebt ein blaues Bntenwunder。 )」 (Brigitte Stein:Dekorat市 e Kuchengarten。 ).ただ,不
思 議なのは,他
にも,ア
ーティチ ョー クの絵で花の色 を青に したものが存在す る ことだ。 しかも,紫
みのない青なのである。ハーブな どを扱 つた本で青い花 を 咲かせ る写真はないよ うであるし,ア
ーティチ ョークに青花のものがあるとい う記述 もないようである。青いアーテ ィチ ョー クの図譜は『ハーブ 新来の香草 たち』に出ているものであるが,こ
の よ うな色のアーティチ ョークがあるとは 思 えないので,紫
色に青み を感 じるひ とが記憶で描いて,こ
うなったのではな いか と想像 した くなる.W.ウ
ッ ドヴィルの『メディカル・ボタニー』 とい う明 治薬科大学資料館 にある本か らの図譜である。色彩語の意味については
,外
国の言語文化 の影響 も今 日では強力 である.た
とえばバ ラの品種名にもブルーはわ りとあるが
,本
当に青いバ ラは今の ところ出来ていない らしく
,ど
れ も紫系統の花である。 しかも,バ
ラの本 を覗いたこ とのあるひ とな らバ ラの品種 にはブルーが付いたものがかな りあることを知 っ ているだろ う。ドイツで作出されたバ ラにも多い。Blue Moon,Blue River,
Blue Bttou,Veichenblau(以
上4品
種は ドイツで作出), Blue Ribbon(ア メリカ
)な
どがバ ラ関係の本 に出て くる。実は,こ
れ らはblueや blauが出て`く るが,「青」ではなく「紫」のバラである。『すてきなバラ作 り』(主婦の友,1997) によると, Bhe Moonと
Blue Bttouの花の色は紫で, Blue Riverの花の色は 赤紫になっている。ドイ ツ語では 日本語で 「紫」の花が 「青」に分類 され るこ とがあるのを本稿では花の色の記述 を比較す ることで見たわけだが
,今
日,園
芸の世界は国際化 されていて
,バ
ラの場合はフランス,イ
ギ リス,
ドイ ツ,ア
メ リカ といった国々で作出されたバ ラが接木や芽接 ぎされ
,輸
出 されている。日本でもこういつた外国産のバラが栽培 されているわけだが,「紫」なのにブルー とい う名前で呼ばれているバ ラの存在は 日本語の外来語のブルーの意味
,ま
た,ブルー と同義語 と考え られている 「青」の意味を少 しずつ変えてい くことにな りそ うである。事実
,バ
ラに親 しむひ とはも う専門語 として青バ ラとい う言葉 を使い,紫
色のBhe Moonは
「青バラの名花」(『すてきなバ ラ作 り』)と
い う 言い方 も使 っている。さらに
,他
の園芸植物の世界 を観察す ると,園
芸草花では青 くないブルーの 花が多いのに気づかされ る。「紫色の花が美 しいブルーマ ロウ」は『ハーブ図鑑』(日本文芸社
,1998)に
あった表現そのものなのだが,「美 しい紫色の花がた く さん咲 くブルーマ ロウ」 とも書かれている。「花が紫色のブルーサル ビア」(『花 屋』)と
い うのもある。「サル ビアはスカー レッ トのほか,紫
色,桃
色や 自色の 花 も改良されているが,黄
色 はまだない。」(湯浅浩史 :『花の履歴書』,講
談社 学術文庫,1995, p.169)と
あるか ら,
日本語では青い とはまった く考えられて いないようなのである.ア
ガパ ンサスのことを英語ではBlue Ahcan Liyと
も 言 うらしい。品種名としてもBlue Moonと
いうのもある (Larousse Pocket Guide Garden Plantso London,1995)。 この本ではアガパ ンサスの園芸種の花の色 も blueかwhiteに
なっている.こ
れが 日本語の世界では,や
は り,「青」が消え,「紫」が出てきて,「紫色
,ま
たは自の小花が多数集 まって咲き」 となる (『花 屋』).じつは
,
日本語について外来語の色彩語 と在来の色彩語で意味がずれている ことをStanlaw(19971250‑251)が
すでに述べている。 日本語の在来色彩語の「青」 と外来語の 「ブルー」では
50%レ
ヴェルで (詳細は不明だが被験者の50%
まで一致 した範囲 とい う意味だろ うか
)ブ
ルーのほ うが色相が紫寄 りにずれて いる。「青」がBP2.5〜
BP 7.5なのが,「ブルー」ではB10〜 P2.5に
なって いる助。 これは園芸植物の状況な どを考えると偶然ではない と思われ る.日本語の
4大
基本色彩語はアカ,ア
オ,シ
ロ,ク
ロであ り,こ
の四つだけが 上代か らその色名 としての存在が確認 されていると佐竹 (1955)は述べている。今 日でも単独での使用頻度
,複
合語の一部 としての使用頻度が他 の色彩語 とく らべて高い。細かい色彩語の区別 はせず にこの4大
色彩語です ませて しま うと い うことはよくあることで,安
藤 (1986)は 「日本人が 日常生活で身辺の事物 の色彩に言及す るとき,使
用 され る色名は『シロ・ クロ・ アカ・アオ』の4色
を出ることはまずない」 と述べ,「白目/黒
目」,「白ネズ ミ/黒
ネズ ミ」,「赤 ジ ソ/青
ジソ」,「黒松/赤
松」,「白土/黒
土/赤
土」,「白犬/黒
大/赤
犬」,「白 カ ビ/黒
カ ビ/赤
カビ/青
カ ビ」,「白イ顔/黒
イ顔/赤
イ顔/青
イ顔」な どの 例 をあげてい る。そんな4大
基本色彩語の一角を占めるアオやアカに対 してム ラサキはよく健闘 している。ムラサキをアオ と言 う現象 は見当た らない。アカ について もかな り赤いもの しかアカにはな らないよ うだ.オ
レンジ色の蜜柑や 柿の色が今 日でもアカ と表現 され ることがあることを考 えると,紫
はよく健闘してレヽる.
しか し
,
日本語の紫色 をめ ぐる状況は,伝
統的な紫色の多用 と特別視か ら開 放 されて,現
在 では とくに頻繁に使用 され る色彩ではな く,紫
色 の工業製品は まれで,女
性 の衣類 の流行 に しても,か
つて女性の着物の流行が紫色 を中心に 動いていた ことと比較できるよ うな状況 にはない。ガヽ学生が 「紫」を 日本語の 基本的な色彩語 として とらえているのは,か
つての 日本文化に果た していた紫 色の重要性 の名残 りなのかもしれない。紫色 を取 り巻 く状況は 日本文化のなか ですでにかな り変わつてお り,
日本語の中でのこの語の意味 と用法 も,今
後,変化す るこ ともあ りうるよ うに思われ る。