1)堆肥品質管理
(1)堆肥の生産管理
・ユーザのニーズに応えられる、良質で微生物学的に安定した製品堆肥を生産するには、生産過程 におけるすべての作業が、予め定められた生産管理基準等に従って、適正かつ確実に執行されな ければならない。
・製品品質管理の適正かつ確実な執行は、生産管理における工程管理及び環境保全機能管理が適切 に執行されることによってのみ可能となる。
【解説】
ユーザのニーズに応えられる、良質で安全かつ衛生的な製品堆肥の生産は、堆肥化施設の現場にお いて、原料の発生状況の把握に始まり、前処理工程、発酵工程、製品化工程を経て、商品価値を持つ 適格品としてユーザに引き渡すまでの間の、工程管理及びそれと併行する品質管理が適正かつ確実に 行われてはじめて達成される。
有機性廃棄物の堆肥化は廃棄物を原材料とするから、その発生状況や収集状況を把握し、発酵不適 物を排除した原料を、円滑に発酵工程に乗せる前処理工程についての工程管理が、まず、品質管理に 大きく関係してくる。発酵不適物には、ビニールなど高分子系のものから金属類、ガラス片、砂礫な どがある。これらは、発生現場で混入したり、収集や搬送過程で使用されたりして混入する。これら 発酵不適物が堆肥施設に搬入される前や搬入時点で分別・分離し、また、適切に前処理することによ り最終の製品堆肥の品質を確保することが必要である。
原料には有害な重金属その他の物質が含有されていたり、病原菌を保持している恐れもあり、これ に対する前処理も必要である。発酵工程での工程管理が、製品堆肥の品質管理に深く関わりあうこと は当然として、製品化工程では、製品堆肥として商品化するためのふるい分け分別、造粒、袋詰めな どから保管、貯蔵まで、製品堆肥の商品価値を左右する作業があり、ユーザとの交流を深め、製品に 対する評価や要望を聴取することも品質管理業務の一環である。また、取扱う材料は廃棄物であり、
作業場では湿気や腐食性ガス、粉じんなどが発生する。劣悪な生産環境からは適正な品質の製品生産 は期待できないことに留意し、環境管理の万全を期す必要がある。
(2)製品堆肥の成分特性
・堆肥は、土壌に継続して施用されることにより、肥料効果と土壌改良効果が期待される。
・2種類以上の原料を使用し、適切に管理された融合堆肥は、廃棄物資源化の効率性と施用効果の 両面で、単一のものに比べ有利である。
・製品堆肥の含有成分は、原材料の違いによって異なる特性を持っている。これらの特性を把握し ておくことは、ユーザのニーズに応える堆肥生産に有効である。
【解説】
堆肥は、土壌に継続して施用されることにより、肥料効果と土壌改良効果が期待される。製品堆肥 の評価対象成分は、肥効成分としての窒素、リン酸、カリウムをはじめ、炭素、
カルシウム、マグネシウムなど及び熟成度にかかわる有機成分形態である。
しかし、製品堆肥の含有成分は、原材料の違いによって異なる特性を持っている(表6−1)。堆 肥生産管理者は、これらの特性を把握しておくことがユーザのニーズに応える堆肥生産に有効である。
表6−1 各 種 有 機 物 の 施 用 特 性
施 用 効 果 有機物の種類 原 材 料
肥料的 化学性改良 物理性改良
施用上の注意
堆肥 イナワラ、ムギワラ及び野菜
クズなど
中
小
中
きゅう肥 (牛ふん尿) (豚ふん尿) (鶏 糞)
牛ふん尿と敷料 豚ふん尿と敷料 鶏糞とワラなど
中 大 大
中 大 大
中 小 小
肥 料 効 果 を 考 え て 施 用 量 を 決 定 する
木質混合堆肥 (牛ふん尿) (豚ふん尿) (鶏 糞)
牛ふん尿とオガクズ 豚ふん尿とオガクズ 鶏糞とオガクズ
中 中 中
中 中 中
大 大 大
未 熟 木 質 が あ る と 虫 害 が 発 生 し 易い
バーク堆肥
バークやオガクズを主体にし たもの
小
小
大
未 熟 木 質 が あ る と 虫 害 が 発 生 し 易い
モミガラ堆肥
モミガラを主体としたもの 小
小
大
物 理 性 の 改 良 効 果 を 中 心 に 考 え る
都市ごみ堆肥 家庭の厨芥類など 中
中
中
ガ ラ ス な ど 異 物 の 混 入 に 注 意 す る
下水汚泥堆肥 下水汚泥及び水分調整材 大
大
大
石 灰 の 量 に 注 意 する
食品産業廃棄物
食品産業廃棄物及び水分調整 材
大
中
小
肥 料 効 果 を 考 え て 施 用 量 を 決 定 する
出典:「有機物をどう使いこなすか」(西尾ら)・農文協
しかし、有機性廃棄物が原材料であるために、原材料の性状、発酵期間の違いによって、製品堆肥 の含有成分の質・量的比率に違いができる。特に肥料効果成分である窒素の肥料効果発現については、
C/N比による影響が大きく、その数値は熟成度によって変化する。このC/N比は、施用において 重要な品質判断基準となり、植物体の生育に関わる基本的成分であるため販売・流通に当たっては表 示されなければならない。
リン酸、カリウムについては、原材料となる有機性廃棄物の種類によって含有量・比率に違いがあ
133
堆肥の原材料となる有機性廃棄物は堆肥化の進行に従い、易分解性成分は一次発酵の期間に分解さ れる。二次発酵過程においては、セルロースやリグニンなど高分子系、多環系の可分解性の有機物が 分解を受ける。しかし、堆肥の中には残留有機物があり、また発酵過程で再合成される有機物もある。
これらの有機物は土壌改良に益するとともに、施用後、土壌中で経時的に分解を受け、堆肥中の無機 系の肥料効果成分ともども植物に利用されることになる。
堆肥は、含有される有機物の土壌中での分解を通じて窒素、リン酸、カリウムなどが生成され、遅 効性肥料としての効果を持つとともに、施用時に堆肥に含有される無機系のイオン化された窒素、リ ン酸、カリウムなどは無機系肥料同様に、比較的早い段階で吸収利用され即効性も一部あり、即効性 と遅効性の両面を持ち、土壌改良面と共に地力の増進に有効な素材となる。
現在流通している代表的な堆肥の成分特性について報告がある(図6−1)。以下に、若干の説明 を記す。
牛ふんに関しては、カルシウム分以外は非常にバランスがとれている。豚ふんや鶏ふんは、肥効成 分は十分含まれている。C/N比は 20 を下回っていて、良好な肥料としての成分組成になっている。
畜ふんは、発生時は水分が高く、そのままでは嫌気性化し易く、堆肥化には水分調整が必要である。
前処理での調整材の混合状態によって肥効成分など含有成分率に変化が出てくる。
注:図の円は T-N 2%、T-C 30%、C/N 20、Ash 35%、P2O5 2%、MgO 1%、
CaO 5%、K2O 2%を基準として描いている
図6−1 堆肥、きゅう肥の種類別成分特性 出典:有機物をどう使いこなすか(西尾ら)・農文協