とある。舶貨を細色と粗色とに分けて税率も細色十分の一(10%)と粗色十五分の一(7%)
とした。細色の方が粗色より税率が高い。細色と粗色という考え方、さらに税との関係は いつからでてきたのであろうか。この時初めてではないと考えるが、明確なことは分から ない。南宋末の『宝慶四明志』六郡志六敍賦下の市舶に、品目が国別に記されており、そ の抽分率は、細色は「五分抽一分」、粗色は「七分半抽一分」とあり、宝慶年間は税率が高 い。つまり細色が20%、粗色が13%であり、粗色の方が細色より税率が低い。粗色の ほうが細色より税率が低いことは、元代でもほぼ同じである。しかし北宋の『萍洲可談』
二によると、「細色は一分を抽し、粗色は三分を抽す」とあり、粗色が30%で、細色の1 0%より税率が高くなっている。この『萍洲可談』の例が細色、粗色の税率では一般に論 じられているので、検討の余地があると思われる。細色、粗色という考え方は、税率と相 まって舶貨を分類したのであろうか、今後の課題であり、地方志などの事例を見ていきた い。
(3) 紹興十一(1141)年の舶貨-起発と変売(細色、粗色、粗重)
紹興十一年の変売について先に述べる。変売の数が圧倒的に多くなっている。
(ア)変売
『宋会要』市舶の紹興十一(1141)年十一月には次の様にある。
戶部言:「重行裁定市舶香藥名色,仰依合起發名件,須管依限起發前來。所是本處變賣 物貨,除將自來條格內該載合充循環本錢外,其餘遵依已降指揮計置起發施行,不管違、。
合赴行在送納。可以出賣物色
「市舶の香薬の種目を再び裁定した。起発の物貨は、期間内に送れ。本処で変売する物貨 は、規定に従って本銭(資本金)に充てる以外のものは、すでに降された指揮によって、
起発(都に送るのは、資本金を除いた変売した代価)を施行せよ。違反してもよいから、
都に送納(変売した代価)すべし。物貨を出売(変売)してもよい物品は、細色、粗色、
粗重の三種類に分けて、物品を記している。
資料に記すように、起発については、期間内に送れというだけで、なにも記されてない。
専ら変売についてである。変売した物貨の売上げ額は、規定に従って本銭(資本金)に使 用するものは除いて、残りの売上げ額はすべて都に送納せよ。出売(変売)の物品は、細 色、粗色、粗重の三種で、これらは 抽解の税率上、分類したことがわかった。税率は細 色が10%、粗色が7%、粗重(記載なし)多分7%以下であったのであろう。以下に物 品を記す。
細色
112
呵子、中箋香、沒藥、破故紙、丁香、木香、茴香、茯苓、玳瑁、鵬砂、蒔蘿、紫礦、瑪瑙、
水銀、天竺黃、末硃砂、人參、鼊皮、銀子、下箋香、芹(文庫本は芥)子、銅器、銀朱(原 文は珠、補編、文庫本は朱、銀朱と銀珠とは意味が異なる)、熟速香、帶梗(原文は根、
補編、文庫本は梗、これに依る)丁香、桔梗、澤瀉、茯神、金箔(箔は原文無し、補編、
文庫本は箔)、舶上茴香、中熟速香、玉乳香、麝香、夾雜金、夾雜銀、沉香、上箋香、次 箋香、鹿茸、珊瑚、蘇合油、牛黃、血蠍、膃肭臍、龍涎香、蓽澄茄、安息香、琥珀、雄黃、
鍾乳石、薔薇水、蘆薈、阿魏、黑篤耨、鱉甲篤耨香、皮篤耨香、沒石子、雌黃、鷄舌香、
香螺奄、葫蘆芭、翡翠、金顏香、畫黃、白荳蔻、龍腦。有九等:熟腦、梅花腦、米腦、白 蒼腦、油腦、赤蒼腦、腦泥、鹿速腦、木扎腦。
粗色
胡椒、檀香、夾箋香、黃蠟、黃熟香、吉貝布、襪面布、香米、縮砂、乾薑、蓬莪朮、生香、
斷白香、藿香、蓽撥、益智、木鼈子、降真香、桂皮、木綿、史君子、肉荳蔻、檳榔、青橘 皮、小布、大布、白錫、甘草、荊三稜、碎箋香、防風、蒟醬、次黃熟香、烏里香、茯苓香
(原文になく欄外に追加として苓上香とある。補編、文庫本に茯苓香とある。これに依る)
中黃熟香、冒頭香、三賴子、青苧布、下生香、丁香、海桐皮、蕃青班布、蕃班布(蕃班布、
原文に無し。補編、文庫本により追加する)下等冒頭香、下等烏(烏は原文には五とある。
補編、文庫本には烏とあるのでこれに依る)里香、苓牙簟(簟は、補編、文庫本に箋とあ る)、修割香、中生香、白附子、白熟布、白細布、山桂皮、暫香、帶枝檀香、鉛土、茴香、
烏香、牛齒香、半夏、芎袴布、石碌、紫藤香、官桂、桂花、花藤、粗香、紅荳、高良薑、
藤黃、黃熟香頭、釵藤、黃熟香、片螺頭、斬(斬は補編、文庫抄本本に前途ある)剉香、
生香、片水藤皮、蒼朮、紅花、片藤、瑠琉水盤頭、赤魚鰾、香纏、小片水盤頭、杏仁、紅 橘皮、二香、大片香、糖霜、天南星、松子、粗小布、大片水盤香、中水盤香、獐腦、青桂 香、斧口香、白苧布、鞋面布、丁香皮、草菓、生苧布、土檀香、青花蕃布、蓯蓉、螺犀、
隨風子、紬丁、海母、龜同、亞濕香、菩提子、鹿角、蛤蚧、洗銀珠、花梨木、瑠璃珠、椰 心簟、犀蹄、蕃糖、師子綏、枝實。
粗重
窊木、大蘇木、小蘇木、硫磺、白藤棒、修截香、青桂頭香、蕃蘇木、次下(次下は原文に 無し。補編、文庫本にて補う)蘇木、海南蘇木(南海蘇木、原文に無し、補編、文庫本に て補う)、鑊鐵、白藤、粗鐵、水藤坯子、大腹子、薑黃、麝香、木跳子、鷄骨香、大腹、
檀香皮、把麻、倭板、倭枋板頭、薄板、板掘、短枝(枝は原文は板、補編、文庫本は枝、
この項の末尾に短板肩がある)肩、椰子長薄板合簟、火丹子、蛙蛄、乾倭合山、枝子、白 檀木、黃丹、麝檀木、苧麻、蘇木、稍靸、相思子、倭梨木、榼藤子、滑皮、松香、螺殼、
連皮、大腹、吉貝花布、吉貝紗、瓊枝菜、砂黃、粗生香、硫(前に同じ。原文は琉)黄、
泥黃、木柱、短小零板杉(杉は文庫本は松、補編は杉)枋、厚板松枋、海松板木枋、厚板
113
令赤藤厚枋、海松枋、長小零板板頭、松花小螺殼、粗黑小布、杉板狹小枋,令團合雜木柱、
枝條蘇木、水藤篾、三抄香團、鐵腳珠、蘇木腳、生羊梗、黃絲火杴煎盤、黑附子、油腦、
藥犀、青木香、白朮、蕃小花狹簟、海南白布單、青蕃碁盤小布、白蕪荑、山茱萸、茅朮、
五苓脂、黃耆、毛施布、生熟香、石斛、大風油、秦皮、草荳蔻、烏藥香、白芷、木蘭茸、
蕤仁、遠志、海螺皮、生薑、黃芩、龍骨草、枕頭土、琥珀、冷缾、密木、白眼香、臠香、
鑯熨斗、土鍋、荳蔻花、砂魚皮、拍還腦、香栢皮、黃漆、滑石、蔓荊子、金毛狗脊、五加 皮、榆甘子、菖蒲、土牛膝、甲香、加路香、石花菜、粗絲蠒頭、大價香、五倍子(子は原 文に無し。補編、文庫本にて補う)、細辛、韶腦、舊香、御碌香、大風子、檀香皮、纏香 皮、纏末、大食芎崙梅、薰陸香、召亭枝、龜頭犀香、荳根、白腦香、生香片、舶上蘇木、
水盤頭幽香、蕃頭布、海南碁盤布、海南青花布被(被は原文では皮、補編、文庫本で補う)
單、長木、長倭條、短倭條(短倭條は原文に無し。補編、文庫本で補う)短板肩。
とある。
* 文字の校訂は、補編は『宋会要補編』、文庫本は東洋文庫蔵の藤田豊八氏の『宋会要』
食貨38市舶のものである。この藤田豊八の書写については、筆者が写本をもとに、活字 にした。その際に、藤田本と補編と職官44市舶との文字の異同などを調べた。
舶貨の統計をとると次のようである。
1)細色(小さいもので高級品)龍脳、瑪瑙 75品 22% 内 28品が新品目 2)粗色(粗雑で大きいもの)布、胡椒 121品 35% 内 72 品が新品目 3)粗重 (粗くて重いもの)材木、蘇木 149点 43% 内107が新品目 変売の合計は345品目(品目名の切り方で、数が異なる)。三種類の割合を見ると細色が 約20%で、粗色、粗重で80%をしめている。もう少し詳しく見ると、細色が 75 品目で 22%、そのうち、27品目が紹興三年には入ってない新しい品目である。粗色が 121 品 目で全体の35%、その中で 72 品目が新しい品目である。 粗重が 149 品目で43%、こ の内、107 品目が新しい品目である。全体の合計が 345 品目に対して、新しく加わった品 目は、206 品目にも上り、全体の60%を占める。新しい品目は表2「南海交易品」中、
紹興 11 年の細色の項目を見ると、北宋、紹興 3 年にも入ってない項目を取り出すと、それ が、新しい品目である。以下、粗色、粗重も同じで北宋、紹興三年に入ってない項目をと りだしたものである。今、細色、粗色、粗重の各々に、新しく入った品目を以下に記す。
粗色と粗重の大部分は、新しい品目である。どのような性質のものかは、表2の備考参照。
細色 新しい品目 28品目(75中)
呵子、中箋香、末硃砂、銀子、芹(文庫本は芥)子、味が異なる)、熟速香、帶梗(原文 は根、補編、文庫本は梗、これに依る)丁香、桔梗、澤瀉、茯神、金箔(箔は原文無し、
補編、文庫本は箔)、夾雜金、上箋香、次箋香、血蠍、鱉甲篤耨香、皮篤耨香、沒石子、
雌黃、鷄舌香、香螺奄、翡翠、金顏香、熟腦、梅花腦、白蒼腦、赤蒼腦、鹿速腦、