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本願商標

86.出願された商標と、使用に係る商標とが相違するとして、商標法第3条第2項の適用が認められな

かった事例(昭和60年4月25日 東京高昭和59年(行ケ)第97号)

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本願商標は、下記に表示したとおりの構成よりなり、第19類「陶磁器製日用品、陶磁器製台所用 品」を指定商品とするものである。

原告は、「吉向」の銘を印した陶磁器製品が、原告の製造にかかるものとして既に多量に販売されて いるから、本願商標を使用した陶磁器が原告の製作にかかる作品であることは、陶磁器の取扱業者、需 要者に認識されるに至っており、本願商標は出所表示機能を備えている旨主張する。

しかし、「吉向」の銘を印した陶磁器製品が、原告の製造にかかるものとして、陶磁器の取扱業者、

需要者に認識されているかどうかはともかくとして、本願商標は「吉向焼」の標章からなる商標である から、「吉向」の標章についていえることが、「吉向焼」の標章について妥当することにはならず、こ の点において原告の主張は理由がない。

本願商標

87.出願された商標について、一部地域で原告商標として知られているとしても、他の地域で原告以外 の多数の使用により商標法第3条第2項が認められなかった事例(平成10年11月26日 東京高平成 10年(行ケ)第74号)

本願商標は、下記表示のとおり、「やぶ」(旧仮名)の文字を横書きしてなり、第42類「そば及び 丼物を主とする飲食物の提供」を指定役務とするものである。

本願商標「やぶ」は、蕎麦屋の一系統を指す「やぶそば」の略称として、ほとんど普通名称となって いること、「やぶそば」は、甘皮の色を入れた淡緑色の蕎麦であって、「さらしなそば」と共に東京蕎 麦を代表するものであること、原告会社以外にも、「藪」、「やぶ」(旧仮名)、「やぶ」の文字を含 む屋号の蕎麦屋が多数存在することが認められる。

そうすると、本願商標をその指定役務に使用しても、名古屋市を中心とする一部の地域以外の蕎麦の 需要者は、それが何人かの業務に係る役務であることを認識することができないというべきである。

したがって、本願商標は、商標法3条2項に規定する要件を具備するものといえない。

本願商標

88.出願された商標は、原告以外にも多数使用されているとして、使用による識別力の取得が否定され た事例(平成12年4月13日 東京高平成11年(行ケ)第101号)

本件商標は、「いかしゅうまい」の文字よりなり、第32類「いか入りしゅうまい」を指定商品とす るものである。

本件商標構成中の「しゅうまい」との平仮名の表記については、原告自身が、本件商標登録出願にお

いて指定商品を「いか入りしゅうまい」に訂正した経緯があることも併せ考えると、平仮名表記をもっ

て普通に用いられる方法に当たらないと認めることはできない。代表的な国語辞典では「シューマイ」

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と表記されているが、これらの辞書は外国語の表記に即して書き表しているものと認められるのであ り、一般取引者、需要者において、辞書編集者の意図する表記方法にとらわれずに、表音どおりに平仮 名表記する事例のあることを否定することはできない。

また、「いか」も「しゅうまい」も共にごくありふれた食材ないし加工食品の普通名称であり、調理 加工に特殊技法が必要であるとしても、用語自体としてみて、この二つの組み合わせに独創性があると は到底認めることができない。

さらに、本件商標の「いかしゅうまい」の字体をもって、顕著に一般の書体と異なって識別されるも のと認めることはできず、他に本件商標の字体に特別顕著性を認めるべきことを裏付ける証拠はない。

証拠及び弁論の全趣旨によれば、遅くとも平成9年9月当時までには、佐賀県下のみならず全国各地 に、「いかしゅうまい」、「いかシュウマイ」、「いかシューマイ」の表示の下に商品「いか入りしゅ うまい」を製造、販売してきた業者は、原告以外にも多数(少なくとも20社)存在しており、飲食店 やレストランにおいても、料理「いか入りしゅうまい」に「いかしゅうまい」の名称を使用している業 者が多数存在していることが認められる。

したがって、「いかしゅうまい」の商品名から原告を思い付く者が、佐賀県や特に九州の中心である 福岡市に比較的多く存在するであろうということは推認されるが、福岡市においてすら、「いかシュウ マイ」の商品名から原告以外の業者を思い付く者が少なからず存在することも否定できない。まして や、九州以外の地方において「いかしゅうまい」の商標を原告と結びつけて認識する者がどの程度存在 するのかは、かなり疑問である。

以上のことからすると、本訴の口頭弁論終結時においてさえも、本件商標が、商品「いか入りしゅう まい」に使用された結果、需要者が原告の業務に係る商品であると認識することができるようになって いたものとは認められない。したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当し、同3条2項に該 当するに至っていない。

本件商標

89.商品の形状のみからなる立体商標について、その使用により自他商品の識別力を獲得するに至って いるとは認め難いとされた事例(平成12年6月19日 平成10年審判第16591号)

本願商標は、下記に表示したとおりの構成からなり、第21類「家事用手袋」を指定商品とするもの である。

請求人は、本願商標は使用によって自他商品の識別力を獲得するに至っている旨主張し、証拠を提出 している。

しかしながら、商品の形状のみからなる商標について、使用により自他商品の識別力を認めるには、当

該形状に係る商標が、単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種

の商品又は役務と明らかに識別されていると認識することができるに至っていることが必要と解すべき

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である。さもないと他の知的財産制度と整合が図れないばかりでなく、当該商品自体について、全国的に 効力が及び、かつ、存続期間の更新可能な独占権を付与することになってしまうからである。

本願のような商品の形状と認められる商標について、使用により自他商品の識別力を認めるには、長 期間に亘って、全国的な範囲で独占的に使用されている状態が継続し、その結果、例えば、その商標に 係る形状から取引者、需要者の間から自然発生的に一定の称呼、観念が生ずるほどにそれらの者の間に おいて、識別標識として通用していることが必要というべきである。

これを証拠についてみれば、(イ)使用開始時期が平成5年であること、(ロ)見本市出品について は同5年から同10年まで6年間において、東京が中心(およそ年2回)であって、その他は幕張2 回、大阪、名古屋、松本、仙台、札幌、福岡、富山は各1回のみの出品であること(証拠略)、(ハ)

雑誌、新聞の広告にあっては、家事用手袋としての特徴と共にその形状が掲載され、また、別途識別標 識が掲載されているため同形状が識別標識として認識されるとは認められないこと(証拠略)、(ニ)

請求人主張の売り上げ金額、枚数を認めるとしても本願商標に係る商品のように使い捨てであって、極 めて安価なものは、食品工場や食堂、学校等の厨房において日常的に大量に使用されるものと推認され ることからして、金額等において決して驚異的なものとはいえないこと(証拠略)、(ホ)実際の取引 者、需要者とみられる証明者の所在は全国都道府県中半数程度の都道府県各一社ないし数社であり、そ れらも東日本に遍在していることが認められる(証拠略)。

以上の事実に加えて、請求人は本願に係る「家事用手袋」について「五本絞り」の商標をもって自他 商品の識別に供していること及び本願商標に係る商品のように使い捨てであって、極めて安価な商品に 払う需要者の注意力を考慮すると、本願商標が指定商品について自他商品の識別力を取得して商標法3 条2項の適用を受けられるに至っているとは認め難いというべきである。

本願商標

90.立体的形状のみが独立して自他商品の識別力を有しているものということはできないとして、商標 法第3条第2項の適用が認められなかった事例(平成12年12月21日 東京高平成11年(行ケ)第406 号)

本願商標は、下記の構成よりなり、第16類「鉛筆、ボールペン、その他の筆記用具」を指定商品と するものである。

原告により製造販売された本願商標に係る形状の鉛筆には、表に「OKAYA」「Pegcil」裏 に「JAPAN」「pegcil」との表示が付され、ボールペンには表に「OKAYA」「Pegc il」裏に「JAPAN」と表示されていることが認められる。しかし、原告が本願商標を付して製造 販売した鉛筆やボールペンで、「OKAYA」「Pegcil」の文字商標が付されていないもの、す なわち、本願商標のみが付された筆記具が製造販売されたことを認めるべき証拠はなく、また、これら の文字標章が識別標章として格別の機能を有するものではないとすべき理由は見いだし難い。

本願商標の立体形状が、指定商品である筆記用具としての物の形状の範囲を出ないものであることを