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6 生物圏環境科学科

ドキュメント内 第5章 理学部の発展 その3 (ページ 45-52)

多方面にわたる基礎科学の知識と、深い洞察力が必 要であり、そのような教育・研究は理学部でこそ可 能であるとの考えの基に本学科は設立された。本学 科においては、化学と生物学を基盤として、(1)環 境中の物質の分析・定量、(2)大気・海洋・岩石そ して生物を巡る物質循環の機構、(3)環境と生物の 相互作用についての理解を深めさせ、自然界はいろ いろなもののバランスの上に成り立っていることを 実感として理解させるべく、カリキュラムを編成し た。このような教育を通して、広い視野と問題解決 能力を身につけさせ、環境問題や環境教育に直接携 わったり、環境について配慮しつつ、製造・行政な どを行うことのできる人材の育成を目指すことにな った。本学科は、環境化学計測講座と生物圏機能講 座の2(大)講座で出発した。前者は、大学改革前 の制度で言えば、化学科の分析化学講座と地球科学 科の陸水学講座、後者は生物学科の環境生物学講座 と生理学講座、さらに教養部の環境科学の教員が結 集して構成された。

生物圏環境科学科最初の入学生と教官 1993年4月

大学院理学研究科生物圏環境科学科専攻の最初の修士論文発表会

(平成11年2月)

環境化学計測講座第1研究グループ

新学科発足当時の環境化学計測講座第1研究グ ループは、後藤克己教授、田口茂助教授、波多宣子 助手のスタッフでスタートした。平成6(1994)年 にそれまで廃液処理施設の助手であった笠原一世が 当講座の助教授に着任した。平成7(1995)年に、

生物圏環境科学科の発足に尽力し、初代学科長を務 めた後藤克己が退官し、名誉教授になった。現在、

田口教授、笠原助教授、波多助手の共同体制で研究 指導と教育に当たっている。スタッフは旧学科(化 学科)に所属のときから、一貫して 水 に関連し た研究を続けている。分子レベルから海洋まで、研 究対象として水は昔から研究者を魅了し続けている が、我々も水の面白さの虜になっている。田口と笠 原はイオン対の水相と有機相、あるいは水相と固相 間の分配現象や水相での化学反応の平衡論に関する 基礎的な研究を行っている。これはイオンや分子を 相手とするミクロな世界が舞台である。これまでの 成果の一つとしてイオン対の水相/有機溶媒相間の分 配挙動を「固有抽出定数」の概念で集約することが できた。これはいろいろな陽イオンと陰イオンと溶 媒の組み合わせの系について、実験することなく抽 出の大きさを予測できる有用な経験則である。現在、

イオン対の水相/固相間の分配挙動についてこの概念 を拡張することを試みている。これらの基礎研究を 基に我々はさらにイオンや分子の化学的あるいは物 理的な性質を物質情報として取り出す化学計測法の 開発を行っている。新しい計測法の開発はそれまで に見えなかった環境汚染の実体を明らかする。開発 した計測法を環境水へ応用することにより、我々は 化学物質による水汚染の新しい情報を得ている。田 口と波多は溶媒可溶性膜による微量有害成分(重金 属、ヒ素など)や環境汚染の指標となる成分(亜硝 酸、界面活性剤類など)の高性能簡易分析法の開発 を行っている。また、笠原は環境水中の界面活性剤 の分析のためのイオン対抽出用置換不活性錯イオン および微量金属の状態別分析のためのキレート系吸 着剤の開発を行っている。それらの一部は商品化さ れ市販されている。排水の処理に関する基礎研究も 我々の重要なテーマである。金属キレートを含む排 水のオゾンによる酸化処理および有機塩素化合物を 含む排水の光分解処理の基礎的な研究を行っている。

新学科の卒論生や修論生を迎えてからは、学生の 環境への興味に応えるべく、研究内容はよりマクロ な視点にシフトしつつある。

【卒論生・修論生、卒論テーマなど】

スタッフは卒論、修論の学生に多くのことを学ん で欲しいという気持ちを強く持っており、それが学 科の中では非常に厳しい研究室という噂を生んで、

卒論配属希望者の少ない研究室の一つとなってい る。今年度は4年生への進級者が多かったために例 年より多く卒論生8名を指導している。その他に修 論生2名、外国人研究者1名と社会人入学の博士後 期課程生1名を指導している。

平成8(1997)年3月卒業

「金属EDTA錯体を含む廃液のオゾン処理に関する 基礎的研究」

「8―キノリノール結合型シリカゲルの合成と環境水 中の微量バナジウムの前濃縮-定量への応用」

「可溶性フィルター濃縮/黒鉛炉原子吸光法による ヒ素の定量」

「可溶性フィルター濃縮/吸光光度法によるイオン 性界面活性剤の定量」

「[(陽イオン界面活性剤)+・(陰イオン色素)−]イ オン対のフィルターへの分配挙動」

平成9(1998)年3月卒業

「金属―EDTAキレートを含む廃水のオゾン酸化に よる処理」

「環境水中にイオン会合体として存在する陽イオン 界面活性剤の濃縮/定量法の開発」

「膜捕集を利用するアルミニウム−オキシン錯体と 溶存有機溶媒の相互作用に関する研究」

「環境水中の含硫黄有機化合物の膜捕集/蛍光X線定 量」

「キサンツレン酸結合型シリカゲルを用いる環境水 中の微量金属の前濃縮/ICP―AES定量」

【地域・社会における活動】

*夢大学 in TOYAMA

平成7年「色で調べる水中の環境汚染物質」

平成8年「身近な水を化学の目で調べてみよう!」

*夢・化学-21 化学への招待 富山大学一日体験 化学教室 平成9)年「身のまわりのものいろ色チ ェック」

環境化学計測講座第2研究グループ

生物圏環境科学科が発足した平成5(1993)年4 月当時の、環境化学計測第2研究グループを構成す る教官は、水谷義彦、佐竹洋、吉田尚弘の3名であ った。この研究グループでは地球の表層における水 素、酸素、炭素、窒素、硫黄などを含む種々の物質 の挙動や循環を、環境中に存在するいろいろな化学 成分や同位体を指標として研究している。

このような研究を行うため、この研究室ではガス 組成や水の化学組成を調べるための設備としてガス クロマトグラフ、イオンクロマトグラフを発足当時 から所有している。また、安定同位体比の測定用に ダブルコレクター型の安定同位体比測定用質量分析 計も保有していたが、平成9年3月に、微量の環境 試料でも精度良く同位体比の測定が可能である、マ ルチコレクター型の質量分析計が新たに導入され た。また、同位体比測定用試料の調製に用いられる、

ガラス製真空装置を多数使用している。さらに、自 然環境中に存在する、放射性水素同位体であるトリ チウムの測定は、水循環などの研究に欠かすことが できないので、水素同位体機能研究センターのトリ チウム電気分解濃縮装置、低バックグラウンド型液 体シンチレーションカウンターを使用している。

これらの装置を利用して、水谷は火山・地熱地帯 等から放出されている熱水およびガスについて、そ の起源や地下における挙動を研究し、これに関連し て温泉の泉質やその起源についても研究した。また、

砺波平野や常願寺川扇状地など県内各地の地下水の かん養源や流動状況および溶存化学成分の挙動・起 源についても研究を行い、県内の地下水の現状につ いて多くの知見をもたらした。水谷は平成10(1998) 年3月に停年により退職した。

佐竹は、温泉や断層破砕帯等のような地下深部か らのチャネルを通じて、地下から地表に向かってど のような水やガスが輸送・放出されているのか、そ してそれらの水やガスは地下深部でどのようにして 形成されたのか、についての研究を行っている。ま たこの研究と同時に、平野部の降水や立山の積雪な どについて、硫酸イオンなどの化学成分やその同位 体比を調べて、各化学成分の起源を知ると共に、そ れぞれの地域の現在の環境状態を知る研究を行って いる。

吉田はメタンや亜酸化窒素など、地球温暖化ガス の起源や循環について知るため、国内外の対流圏・

成層圏大気、海水・陸水中のそれらの物質の存在量 や同位体比を知る研究を行った。またこれと並行し て、地球圏 ― 生物圏の接点として重要な水に着目 し、生物化石に残された同位体の記録を解析して、

過去の環境水の同位体比を復元し、それによって当 時の環境状態を解析する研究を行った。吉田は平成 6年1月に、名古屋大学大気水圏科学研究所に転出 した。

平成6年4月、吉田の後任として名古屋大学理学 部から同位体地球化学を専門とする清棲が助教授と して着任した。清棲は基礎物理化学や環境化学実験 を担当すると共に、名古屋大学での火山や地熱地域 の揮発性炭素・硫黄化合物に関する研究の経験を生 かして、河口域における硫黄化合物の挙動、街路樹 の葉の同位体比による大気環境動態解析、湿原にお ける軽質炭化水素の挙動に関する研究を行ってい る。平成9年に教授に昇格し、現在はさらに堆積物 の地球化学的手法による古環境解析や熱水系におけ る生命素材の生成に関する実験的研究に取り組み始 めた。現在の担当授業科目は環境化学、地球化学、

陸水化学である。

平成10年3月に退官した水谷の後任として、東京 大学大学院を修了し、科技庁の科学技術特別研究員 として放医研に勤務していた張が4月に着任した。

張は地球表層、特に海洋における希土類元素を主に 金属元素の地球化学的挙動を研究している。現在も 研究を継続するために、東京大学海洋研究所や放医 研との共同体制を維持している。

平成8年度卒業論文

「弥陀ヶ原湿原の軽質炭化水素とそのフラックス」

「呉羽丘陵の地下水の水質形成」

「能登半島の降水の化学組成と同位体比」

「庄川扇状地浅層地下水の水質と流動状況」

「石炭のF、N、S含有量および硫黄同位体比」

「富山市市街域における植物の同位体比と大気環境」

「山岳地域(立山)の降水の化学組成と同位体比」

「河口域(富岩運河)の堆積物とその間隙水の硫黄 化合物」

ドキュメント内 第5章 理学部の発展 その3 (ページ 45-52)

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