• 検索結果がありません。

5 地球科学科

ドキュメント内 第5章 理学部の発展 その3 (ページ 40-45)

水学講座が新学科に転出し、教養部の地学の教官で あった小林武彦教授と竹内章助教授の2名が地球科 学科に加わったのを機会に、従来の小講座を統合し て2大講座にする組織改革を行った。すなわち、地 殻構造学講座と雪氷学講座が合わさって地球圏物理 学大講座となり、地殻進化学講座に教養部教官が加 わって地球進化学大講座となった。また、3年次編 入学実施に伴って、平成7(1995)年に地球ダイナ ミクス大講座が新設され、3大講座制となった。

地球圏物理学大講座 地殻構造学分野

地球圏物理学大講座の地殻構造学分野では、従来 から行ってきた古地磁気学、考古地磁気学、物理探 査学に加えて、岩石磁気学的手法を用いた遺構・遺 物の熱履歴や雷電流の帯磁現象の解明にも視野を広 げてきた。

広岡は、宮城県北部の前期旧石器時代の石器が出 土する地層の古地磁気層序学的測定を行い、検出さ れた幾つかの地磁気エクスカーションに基づいて、

石器出土層の年代を推定し、高森遺跡や上高森遺跡 は50万年以上前の中期更新世前期の地層であること を明らかにした。これによって、日本列島における 人類の起源は一挙に原人時代まで遡ることになっ た。

これと併行して、東海・北陸地方を中心に日本各 地に分布する古代から近世にかけての多数の焼土遺 構について考古地磁気測定を行い、それらの考古地 磁気年代を推定した。その結果、地球磁場方位の地 域による差異が予想したよりも大きいものであるこ とが判明し、時代によっては、地域毎の永年変化曲 線を確定しなければ、精度の高い年代推定を行うこ とができない場合が生ずることが明らかになった。

また、北陸に分布し、恐竜の化石やその足跡化石 が数多く発見されている手取層群、さらには第三紀 火山岩の古地磁気測定によって、中生代および第三 紀の中部地方の構造変動やその発達史を古地磁気学 的に明らかにしつつある。

酒井は、大桑層やバイカル湖底堆積物など第四紀 堆積物について古地磁気層序学的研究を行って年代 を決めるとともに、含有磁性鉱物の磁気分析を行い、

帯磁率などの環境変動の指標となると考えられる磁

気特性がミランコビッチ・サイクルを示しているこ とを明らかにした。

これと併行して、芦峅寺室堂遺跡、珠洲大畠窯、

珠洲寺家クロバタケ窯跡、象鼻山1号前方後方墳、

江馬氏城館跡、英国スウェヴジー遺跡など多数の遺 跡で、発掘調査を行う前に埋蔵されている遺構の確 認のために電磁気探査を行い、遺跡探査に関して大 きな成果を上げている。さらに、断層や火山付近の 電位差観測、雷に起因する電界変化の観測や地中に おける雷電流の流れ方の検証、岩石磁気学的測定に よる火砕流の振る舞いの解明など地球電磁気現象を 捉えて多彩な研究を展開している。

広岡と酒井は、インドの国際学術調査から得た古 地磁気データと地球年代学の成果によって、ゴンド ワナ大陸の復元を試みた。

主な測定機器としては、米国カンタムデザイン社製 の磁気ヒステリシス測定装置、ドイツFIT社製の残 留磁化測定装置(HFD SQUID)、夏原技研製 の交流消磁装置、米国2G社製の超伝導湖底堆積物 磁力計(平成8年購入)、米国GISCO社製の湖底 堆積物帯磁率測定システム(平成9年購入)がある。

雪氷学分野

平成5(1993)年以降、雪氷学講座は地球圏物理 学大講座に統合されて、雪氷研究グループを構成す ることになる。平成5年に第35次南極越冬隊員とし て参加の決まった庄子助教授に北見工業大学教授の 要請があり、10月に転出したのに伴い、川田助手が 後任助教授に昇進した。この人事異動によって助手 不在の状態となり、大講座化は雪氷分野の教育と研

北西太平洋に敷設直前の「海底電磁気観測所」と 準備に当たる富山大院生      と

究推進にとってはマイナスであった。

積雪物理学と氷河学を川田、X線結晶学を酒井、

氷物理学を対馬が担当した。この時期になると一夜 漬けのような準備に追われることはなくなったが、

新しく始まった教養共通教育を全員が分担すること になり「地球の環境」、「地球科学概論」が講義科目 に加わった。

この時期、環境問題がクローズアップされてきた のに伴い、酸性雪、奇形雪、雪溪に含まれる微粒子 の問題が研究や教育に反映された。

平成9年度には雪氷学は大学院理工学研究科博士 課程の生命環境科学専攻地球環境科学大講座防災科 学の研究分野に組み込まれた。

専門教育は平成9(1997)年の地球科学科新カリ キュラムによって大幅に縮小し、「雪氷学概論」、

「雪氷物理学」、「雲物理学」、「雪氷学実験」の4科 目となった。平成10(1998)年は新・旧入り乱れた 過渡期にあたっている。

平成3(1991)〜5年は県の委託研究「酸性雪の 調査研究」の最終年に当たり、木戸が精力的に支援 した。

平成4(1992)年には新谷和幸君が配位数による 積雪組織の研究、棚部一晃君が水に浸った雪の圧密 実験を行った。

平成5年には木戸瑞佳君が大気環境問題との関連 で「富山における降水の酸性度」、越川博之君(信 州大物理学科から進学)が融雪期の鉄砲水災害の基 礎となる「水圧を受ける積雪の変形および破壊」、

宮本淳君が「グリーンランド氷床コアの力学的性質」

を研究した。木戸と宮本は平成7年にそれぞれ名大、

北大の博士課程に進学した。

平成6年には大橋隆行君が雪崩災害の基礎研究と して「障害物があるときの斜面積雪の挙動」の研究 を始めた。

平成7年には川田が第37次南極観測に2度目の隊 員として選ばれた。副隊長の要職を得たことから地 元のマスコミに大きく取り上げられ、賛辞が送られ た。この7年小林直哉君は積雪学体系化の基礎とな る「粉体系としての積雪の組織の研究」を推進し、

積雪の密度と配位数の関係を見い出した。

平成8年度には藤野丈志君が高性能の熱赤外画像 装置を用いた「雪結晶の成長機構の熱収支的研究」

を推進し、古戸昌子君は降雪の酸性度調査を行いな がら「V型やT型、角錐型などの奇形雪の発見」と いう輝かしい成果を上げた。

この間、當間君、加藤君が修士課程を退学するこ とになったのは残念である。

平成9年度から科学技術庁地域先導研究(科学振 興調整費)による「富山県域の雪の特性解明と利雪 に関する高度利用研究」が始まり山岳地の積雪調査 を川田が、降雪粒子と氷点コントロール技術を対馬 が分担して進んでいる。全体では平成9〜11年の3 年で3億円というビッグプロジェクトであるが、研 究費のほとんどは日本気象協会北陸センターのレー ダー設置と気象データなどの解析に当てられる。そ れ に し て も 、 山 岳 地 の 無 人 積 雪 観 測 シ ス テ ム に 2,000万円程度、降雪粒子研究に1,600万円、氷点コ ントロールに400万円程度と雪氷研究グループにと っては大きな研究費である。この研究に関連して空 間分解能25μm、温度分解能0.01度の高性能赤外画 像措置AVIO8000、超純水製造装置、プログラム 冷凍恒温箱、イオンクロマトグラフなどが設置され た。熱赤外画像装置を用いた雪結晶の成長機構の研 究が藤野により始められた。

同じ9年度には長野冬季オリンピック大会が開催 されたが、スピードスケートリンクの高速化を目指 した氷結晶のコントロールが対馬らにより目指され た。天然の氷筍が巨大単結晶に成長することに注目 して、単結晶氷筍の大量育成(4,800本)が行われ、

氷筍から切り出された氷の(0001)面をリンクに張 り付けての摩擦試験も試みられた。従来スケートが 良く滑るのは解け水による潤滑に原因があると考え られてきた。しかし、解け水発生の原因が摩擦熱で あり、摩擦が小さくなって水が発生できない時の滑 りの矛盾を突き止め、凝着説確立への大きな足掛か りを得た。氷筍リンクは凝着説立証の壮大な実験で あり、注目を集めた。この研究は10年度に引きつが れオリンピック記念アリーナ エムウェーブ での 試みに発展している。

地球ダイナミクス大講座

平成9年4月、地球ダイナミクス講座は、最近高 まりつつある「防災科学」への期待にも答えながら、

「地震」、「海」、「最新の観測テクノロジー」を視

座の中心に、現在地球上で進行している大規模な自 然現象の研究と教育を目的にスタートした。

地球圏物理講座から川崎が、地球進化講座から竹 内が参加し、海底地震観測で世界を駆け回ってきた 塩原が北海道大学理学部から参加した気象学や、大 気・海洋相互作用の専門家、川村隆一が筑波の防災 科学技術研究所から加わった。

我々研究グループは、閉塞状況にあるように見え る地球変動の研究を大きく発展させたいと願ってい る。当面、我々が目指しているのは次の3つであ る。

(1)海域での実際の地球科学的観測に基づく未開拓 領域の解明

(2)固体地球と流体地球の相互作用、生物圏と地球 圏の相互作用

(3)670キロ不連続面、コア・マントル境界(深さ 約2,900キロ)などの地球深部境界層ダイナミ クス

具体的には、川崎は、地震計では観測されない

「時」「日」「月」の周期帯の、地震現象そのものよ りはるかに長周期の、飛騨山脈からコアに至る地球 ダイナミクスに狙いを定めている。過去、富山大学 の修士論文から、1992年7月三陸沖超スロー・アー スクェイク(地震としてはM6.9だが、スロー・アース クェイクとしてその10倍以上の歪エネルギーを解放 した)、1989年12月東京湾サイレント・アースクェ イク(M6相当)などが発見され、プレート境界ダ イナミクス理解の新しい扉を開けた。

地球変動のひずみは境界層に集中しがちである。

マントル最下部境界層(深さ約2,890キロ)は、著 しく構造が乱れ、未知の破壊現象が起こっていると 予想される。地震がない日の地球の固有振動の研究 から、地球深部における未知の現象を検出すること も狙いとしている。

竹内は、若いプレート境界の地質構造と現在進行 形の地殻変動について、現場でじかに調査する研究

(ネオ・テクトニクス)に従事している。暗黒の深 海底では現実にどんな構造運動が行われているの か、ほとんど未知の世界といってもよい。深海調査 船による潜航調査は20回を超え、例えば、中央海嶺 系やトランスフォーム帯の活構造、海溝型地震の海 底地震断層、津波地震震源域での地盤変状、深海冷

湧水系化学合成生物群集など、数々の重要な観察や 発見を報告している。近年の国際海嶺研究プロジェ クトからは、超低速の拡大軸には海底火山活動がな く、マントルが直接海底に露出する証拠が集まって きた。定説をひるがえすような特異なダイナミクス があるらしいことから、1998年は、大西洋中央海嶺

(7月)と、南西インド洋海嶺(10月)の潜航調査 に参加し、現場検証の研究に取り組んでいる。

日本だけでなく世界でも数少ない海底地震観測の 専門家である塩原は、1995年、1996年に2回の海底 地震計観測を富山湾で、当時所属していた北海道大 学と富山大学と共同で実施している。その結果、定 常的な陸上観測からでは地震活動が目立たない富山 湾内でも、富山深海長谷から糸魚川 ― 静岡構造線 にかけて微小地震が多数発生していることが明らか になった。また、その境界の東西では活動に明確な 違い(発生数・深さ)があり、地下構造に明確な違 いがあることが予想される。富山大学に着任した 1997年には、オーストラリアとの共同で、ラバウル 火山周辺の海陸共同の地震観測を実施した。これは、

自然地震を多く捉えて火山体の地下構造を「透視」

することを狙ったものである。1998年には、5月4 日に石垣島で発生した海洋プレート内での珍しい地 震(M7)の海底地震計による余震観測を行ってい る。

1999年4月から塩原は東京大学地震研究所に転出 し、代わりに、長年、東京大学海洋研究所で、海域 での地球電磁気観測を行ってきた藤が、塩原の後を 引き継ぐ予定である。

川村は、エルニーニョ現象に代表されるような熱 帯域の大気ー海洋相互作用、エルニーニョとアジア モンスーンの相互作用を中心とした大気・海洋ダイ ナミクスの解明を目指している。アジア大陸東岸に 位置する日本も、このような全球規模の気候システ ム変動の影響を受けている。例として、日本では最 近極端な冷夏・猛暑が起こっているが、大気大循環 モデルの気候実験から、西太平洋の海水温偏差の東 西傾度がフィリピン付近の対流活動を変化させ、ロ スビー波のエネルギー伝播を通して、日本の夏季循 環場に影響を与えていることが明らかになった。東 西の温度勾配が生じるためには、エルニーニョとモ ンスーンとのカップリングが重要である。これらの

ドキュメント内 第5章 理学部の発展 その3 (ページ 40-45)

関連したドキュメント