波長可変炭酸ガスレーザー装置(1993年)
和47年4月〜平成6年4月);高安紀(平成3年4 月〜平成6年4月);大澤力(平成7年9月〜)、
助手:宮崎隆文(平成7年10月〜)
平成5(1993)年、化学工業原料の転換が不飽和 炭化水素から飽和炭化水素へ進んでいるとの考えか ら、アンモ酸化の研究対象をプロピレンからプロパ ンに転換した。また、二酸化炭素の地球温暖化問題 と石油から天然ガスへのエネルギー源の転換の両観 点から、メタンの二酸化炭素改質触媒による合成ガ ス製造の研究が続けられた。
プロパンのアンモ酸化触媒としては、プロピレン のアンモ酸化触媒として知られているビスマス―モ リブデン酸化物と、プロパンの脱水素能を持つと考 えられるルイス酸触媒とを組み合わせた二元系触媒 の開発、および、アルカンからの脱水素能を持つと 考えられる金属リン酸塩一元系触媒の検討を行っ た。二元系触媒としては、強酸性を持つ酸化ニオブ を担持した触媒とプロピレンのアンモ酸化触媒であ るビスマス―モリブデン複合酸化物とを混合すると プロパン酸化機能触媒となることを見いだした。一 元系触媒としては正方晶系構造をとるリン酸塩をあ げることができた。
メタンの二酸化炭素改質触媒として、ニッケルア セチルアセトナトから調製された結晶性酸化マグネ シウム担持ニッケル触媒や、析出炭素抑制触媒とし てのニッケル担持アルミナ触媒を生み出した。一方、
メタンと二酸化炭素の混合ガスによる改質では水素 と一酸化炭素の混合ガスしか得られないが、これを 別々に製造する方法を考案し、この方法を交互流に よる個別製造法と呼んだ。すなわち、触媒にメタン だけを流し、メタン分解によって水素を製造する。
炭素は触媒上に蓄積される。つぎにこのメタンに代 えて二酸化炭素を流す。二酸化炭素は触媒表面の析 出炭素と反応して、一酸化炭素に変わる。さらに、
この交互流による析出炭素はナノチューブ状の純炭 素であるのに対し、混合流におけるメタンからの析 出炭素中間体は炭化水素中間体であることを明らか にした。また、律速段階は、混合流・交互流ともに 析出炭素と二酸化炭素との反応ステップであること を明らかにできた。しかし、混合流による方が交互 流によるよりも100倍ほど二酸化炭素の処理能力は 高い。これらの過程で、固定床流通型反応装置の反
応ガス出口組成から、全反応を構成する各反応の化 学親和力を計算すれば、律速段階を推定できること を示した。この場合、化学平衡に近い反応が律速と なる。
FR法による研究の次の目標は、FR法で実測さ れる複素速度定数の虚数項が何を意味しているかを 解明することであった。その結果、それが反応中の 自由エネルギーの減少速度を示すものであることが わかってきた。「反応は自由エネルギーが減少する 方向にしか進まない」と言うのは熱力学の大原則で ありながら、それを実測する方法がないため、その 減少速度がこれまで正面から取り上げられたことは なかった。
平成7(1995)年、理学部の改組に伴い、物理化 学講座は反応物性化学講座第一研究室となり、新し いスタッフとして、鳥取大学から大澤力氏と分子科 学研究所から宮崎隆文氏が参加し、研究の幅が大き く広がった。エナンチオ面区別水素化反応に対する 不斉修飾金属触媒に関する研究および酸化物触媒の 表面酸素種とアルカンやアルケンの選択酸化能に関 する研究がそれである。
平成8(1996)年ウインドウズ95が発売になり、
DOS/Ⅴコンピュータの使用環境は飛躍的に便利 になり、価格も学生の手の届く範囲に入った。この ころから学生のコンピュータ使用が急激に増え、自 らのコンピュータを研究室に持ち込む学生が増え た。グラフや表などはすべてデルタグラフやエクセ ルで描かれるようになった。平成10年現在、中間発 表の資料もすべてワープロ仕上げになっている。電 子メールも日常的になっている。
平成10年和歌山における砒素化合物入りカレー殺 人事件や新潟におけるアジ化ナトリウム入りお茶殺 人未遂事件などがきっかけで、理学部で一括しての 不用薬品の業者委託処分がなされた。また、薬品の 管理などがきびしくなった。
安田助教授のFR法による研究の目標は、当初か ら触媒反応の速度論であった。1989年に見いだされ た「複素速度定数」の素性を調べるために、プロピ レンの水素化反応を、プロトン伝導膜を隔膜とした 気体電池型の反応器を用いて厳密に行ったところ、
虚数項の存在が確認されると共にその符号が水素と プ ロ ピ レ ン に つ い て 異 な る こ と を 見 い だ し た 。
J.Phys.Chem.99,17852(1995). さらに、圧力を変え た実験を重ねるなどして、虚数項が反応中の自由エ ネルギーの減少速度を示すものであることが判って きた。J.Phys.Chem.B.103,3916(1999). 「反応中、
自由エネルギーは減少し続けている」と言うのは熱 力学の大原則でありながらそれを実測する方法がな いため、これまでその減少速度が正面から取り上げ られたことは無かったので、FR法の将来の発展が 期待される。最近、Advances in Catalysis Vol.44, 330
(1999)の中で C.O.Bennett が Frequency Response Methods という節を設けて紹介している。FR法も ようやく市民権を得たといえる。
本研究室の学部卒業生数:平成5年度/6人、6/
9、7/8、8/12、9/10
本研究室の大学院理学研究科修士課程修了生 平成5年度/3人、6/3、7/0、8/2、9/
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反応物性化学第2研究室(旧構造化学)
反応物性第2研究室には金坂績教授、金森寛助教 授、石岡努助手が所属した。平成5年より新教育課 程になり、化学科は2大講座制となったが、その際 定員増2名が認められた。その後助教授ポジション に空きができ、平成6(1994)年6月石岡努助手は 助教授に昇任した。平成9年度より別項にあるよう に理学部において3年次編入が始まったが、そのと き付いた教授ポジションが化学科に割り振られ、平 成9年6月金森寛助教授が教授に昇任した。後任の 助教授には九州大学理学部の鈴木炎助手がなり、平 成10年4月着任した。平成10年度より反応物性第2 研究室は金坂教授・石岡助教授が担当、物性分野の 新しい第3研究室をもうけ金森教授・鈴木助教授が 無機・分析分野の教育・研究にあたることとなっ た。以下研究活動を示す
金坂教授は水素結合系に興味をもち、強水素結合 系2極小ポテンシャルなどの解析(1978年)をして いたが、T2O氷(1990年)などとの関連で氷に興味 を持った。氷は水素位置がdisorderでその振動スペ クトルの解析は容易でないが、氷についてはRiceら の報告(1978年)があったので、2次元氷をもつ化 合物に注目した。SnCl2・2H2O, Cu(HCO2)2・4H2O, ピナコール・6H2O,ピペラジン・6H2Oなどは2次元
的な水のネットワークを持ち、O-H(D)伸縮域の赤 外・偏光ラマンスペクトルを測定・解析した。その さいピペラジン6D2O系でN-D伸縮の分裂を見いだし 一本をポーラロン(一種の孤立波)とした。2次元 氷およびポーラロン関連での報文は9編である。
1990年前後になると、J. Mol. Structureに投稿した 格子振動解析の仕事がことわられた。その理由は格 子振動解析の研究はその雑誌に載せないと言うもの であった。他の雑誌への投稿も考えたが、ラマン強 度解析を併用することとした。しかし従来の方法で はパラメータが多く学会での評価も厳しいものがあ った。そこで種々文献を検討し、誘起双極子ー双極 子相互作用による方法を参考にβ-Ba(OH)2・H2O に適用し偏光ラマンスペクトルの強度を説明した。
用いたパラメーターは原子の分極率で3コのみであ る。この方法を2対近似とし、その後多体モデル、
修正多体モデルと展開した。関連した報告は10編で ある。
振動スペクトルによる相転移の研究は物理・化学 両面でさかんに研究されている。複雑なスペクトル のわずかな変化を調べるのは物理系の人は苦手だ が、金坂教授はロッシェル塩等の化合物についても 新しい知見をえた。特に、酒石酸リチウムアンモニ ウムで赤外強度の大きな変化を見いだし、これを反 作用場と振動子間の相関に基づき説明した。この考 えはそれ以後の研究にも役立っている。なおこの分 野の論文が1997年刊行のAsian J. Spectrosco.のVol.1 の1ページより掲載されている(左記雑誌のSenior
Editorをしている)。またこの分野の報文は11編であ
る。
前節で書いたように、金森は生体内におけるバナ ジウムの機能の解明を目標において、バナジウムの 錯体化学を新たに展開し始めた。最初の成果はホヤ の血球細胞ホモジェネート(いわゆるHenzeの溶液)
中に存在する濃褐色の化学種が、オキソ架橋二核バ ナジウム種であることを、酸素同位体置換法を駆使 したラマンスペクトルからあきらかにしたことであ る。オキソ架橋構造は、ポピュラーな生体内金属で ある鉄やマンガンの存在状態として、しばしば見ら れる構造であり、3価バナジウムがこれらの金属と 同様の構造をとることは、バナジウムの生理・生化 学を理解するうえで、有用な情報になると思われる。