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鹿児島県初記録のヨウジウオ科ウミヤッコ Halicampus grayi

ドキュメント内 Nature of Kagoshima Vol.36 (ページ 59-63)

太田竜平

1

・伊東正英

2

・本村浩之

3

1

890–0065 鹿児島市郡元 1–21–30 鹿児島大学総合研究博物館(水産学部)

2

879–1301 鹿児島県南さつま市笠沙町片浦 718

3

890–0065 鹿児島市郡元 1–21–30 鹿児島大学総合研究博物館

 はじめに

ヨウジウオ科(Gasterosteiformes: Syngnathidae)

は世界で

51

属約

196

種が知られており(Nelson,

2006),日本近海には 21

54

種が分布する(瀬能,

2000;鈴木ほか,2002, 2003;高田ほか,2008).

ウミヤッコ属

Halicampus

はインド・太平洋域で

12

種が有効種として認められており(Dawson,

1985),そのうち,日本からはホソウミヤッコ H.

bootthae (Whitley, 1964),ヒメホソウミヤッコ H.

dunckeri (Chabanaud, 1929),トラフウミヤッコ H.

nitidus (Günther, 1901), ノ コ ギ リ ウ ミ ヤ ッ コ H.

brocki (Herald, 1953), ウ ミ ヤ ッ コ H. grayi Kaup, 1856,ホシヨウジ H. punctatus (Kamohara, 1952),

およびタツウミヤッコ

H. macrorhynchus Bamber, 1940

7

種が知られている(瀬能,2000).ウミ ヤッコはインド・西部太平洋域に分布し,国内か らはこれまでに駿河湾,長崎県および琉球列島か ら 報 告 さ れ て い る( 吉 野 ほ か,1975; 瀬 能,

2000;多紀ほか,2005).

2007

3

17

日に鹿児島県南さつま市笠沙町 貝浜で,ウミヤッコと同定される標本が

1

個体採 集された.この標本は鹿児島県における本種の初 記録となるため,ここに報告する.

 材料と方法

計数・計測方法は

Dawson (1985)

に従った.標 準体長は体長と表記した.計測はデジタルノギス

を用いて

0.1 mm

単位まで行った.ウミヤッコの

生鮮時の体色の記載は,固定前に撮影されたカ ラー写真に基づく.本報告に用いた標本は,鹿児 島大学総合研究博物館(KAUM: Kagoshima

Uni-versity Museum)に保管されており,そのカラー

写真は同館の画像データベースに登録されてい る.

 結果と考察

Halicampus grayi

Kaup, 1856

ウミヤッコ(図

1)

標 本 KAUM–I. 3244, 体 長

67.4 mm( 全 長 69.7 mm),鹿児島県南さつま市笠沙町貝浜(31°

24′37″N, 130°11′32″E), 水 深 0.5 m,2007

3

17

日,タモ網,伊東正英.

記載 背鰭軟条数

19;胸鰭軟条数 18;臀鰭軟

条数

5;尾鰭軟条数 10;体輪数 18 + 35 = 53;背

鰭基底下の体輪数

2.5 + 1 = 3.5.体長に対する各

部位の相対比(%)を以下に示す.全長

103.4%,

頭長

11.4%,吻長 5.6%,吻高 1.2%,躯幹高 2.4%.

体は細長く,吻は短い.躯幹部と尾部の上隆 起線・下隆起線はともに不連続.躯幹部上隆起線 は背鰭基底下の体輪上で隆起する.躯幹部の下隆 起線は最終躯幹輪で上方へ曲がる.躯幹部中央隆 起線は最終躯幹輪の1つ前より下方へ曲がる.各 隆起線は強い鋸歯状.鰓蓋中央よりやや上方を鰓

   

Ohta, R., M. Ito and H. Motomura. 2010. First record of Hali-campus grayi (Perciformes: Syngnathidae) from Kago-shima Prefecture, southern Japan. Nature of KagoKago-shima 36: 57–59.

HM: Kagoshima University Museum, 1–21–30 Korimoto, Kagoshima 890–0065, Japan (e-mail: motomura@kaum.

kagoshima-u.ac.jp).

蓋下縁に平行して強い

1

隆起線が走り,その隆起 線から

10

本の弱い隆起線が放射状に等間隔で鰓 蓋下縁に向かって伸びる.

生鮮時の色彩(図

1)—

体に茶褐色と白色の 横帯が多数あり,各横帯は体を環状に囲むが,1 本目の白色横帯は体上方から体側中央までであ る.白色横帯は,躯幹部に

4

本,尾部に

10

本の 合計

14

本.1本目の白色横帯と鰓蓋の間の体側 上方には白色斑がある.背鰭と臀鰭は透明.胸鰭 は茶褐色がかった透明.尾鰭は黄色がかった褐色.

吻は暗褐色で,先端が白色.背鰭基底部前方は白 色で,躯幹部

4

本目の白色横帯と連続する.

固定後の色彩

吻の先端,体側の横帯,体前 方の斑紋は淡黄色.その他は生鮮時と同様.

分布 アフリカのアデン湾,スリランカ沿岸,

タイ,オーストラリアから日本にかけてのインド・

西部太平洋の広域に分布する(Dawson, 1985).

国内では駿河湾(瀬能,2000),長崎県(塩垣・

道津,1973;

Shinohara et al., 1998),琉球列島(吉

野ほか,1975;多紀ほか,2005)および鹿児島県 本土に分布する(本研究).

備考 本標本は尾鰭と臀鰭があること,尾鰭 が大きくないこと,胸鰭が半円形であること,躯 幹部と尾部の上下隆起線がともに不連続であるこ と,背鰭基底下の体輪が盛り上がること,尾鰭を 除く尾部が躯幹部よりも長いこと,吻が眼の後縁 と胸鰭基底中央間の距離より短いこと,吻背面の 中央隆起線が凹状でないこと,尾鰭が

10

軟条で あること,躯幹輪数が

18

であることなどの特徴 から,Dawson (1985)や瀬能(2000)の記載に一 致し,ウミヤッコ

H. grayi

と同定された.

日本国内でウミヤッコはこれまでに駿河湾,長 崎県,琉球列島からのみ報告されていた(吉野ほ か,1975;瀬能,2000;多紀ほか,2005).

駿河湾からの報告は水中写真のみに基づいた

ものであり(瀬能,2000),駿河湾における本種 および本種と考えられる個体の水中写真が,神奈 川県立生命の星・地球博物館の魚類写真資料デー タベース(KPM-NR)に登録されている(KPM-NR

26790, 40659–40660, 40676, 60777).これらの画像

のうち,KPM-NR 40659–40660(静岡県沼津市西 浦大瀬,1999年

10

25

日,内山博之氏撮影)

は背鰭基底下の体輪が盛り上がること,吻が眼の 後縁と胸鰭基底中央間の距離より短いこと,頭部 後方の鰓蓋上方が盛り上がることなどの特徴がよ く確認でき,本研究でもウミヤッコ

H. grayi

と同 定された.

Bleeker (1858)

は,長崎県から採集された

2

標 本に基づき

Syngnathus koilomatodon

を新種として 記載し(Eschmeyer, 1998),松原(1955)や塩垣・

道津(1973)はウミヤッコを

H. koilomatodon

と して報告したが,現在

S. koilomatodon

H. grayi

の新参シノニムとされている(Dawson, 1985).

吉野ほか(1975)は琉球列島から本種を報告 したが,標本番号や標準体長など標本の詳細は記 載されておらず,吉野ほか(1975)により琉球列 島から報告された標本の所在は不明である.

現在,Bleeker (1858)により報告された長崎県 産の本種の標本はロンドン自然史博物館(BMNH

1867.11.28.353)とライデン自然史博物館(RMNH 7226)に保管されている.しかし,本研究ではこ

れら

2

標本以外の日本産ウミヤッコ標本の所在を 確認することが出来なかった.したがって,鹿児 島県産の標本(KAUM–I. 3244)は長崎県から採 集された

2

標本に次ぐ,日本で

3

個体目の標本で ある可能性が高い.

 謝辞

本報告を取りまとめるにあたり,標本の作製 や登録などを手伝って下さった鹿児島大学総合研

1.鹿児島県から採集されたウミヤッコHalicampus grayiの生鮮標本写真.KAUM–I. 3244,標準体長67.4 mm,南さつま市笠

沙町貝浜.

究博物館ボランティアの原口百合子女史と高山真 由美女史に厚くお礼申し上げる.本原稿に対し適 切な助言を下さった鹿児島大学総合研究博物館魚 類分類学研究室の松沼瑞樹氏,荻原豪太氏,目黒 昌利氏,山下真弘氏,吉田朋弘氏に心より感謝す る.本研究は,鹿児島大学総合研究博物館の「鹿 児島県産魚類の多様性調査プロジェクト」と国立 科学博物館の「黒潮プロジェクト(浅海性生物の 時空間分布と巨大海流の関係を探る)」の一環と して行われた.

 引用文献

Dawson, C. E. 1985. Indo-Pacific pipefishes (Red Sea to the Americas). The Gulf Coast Res. Lab., Ocean Springs. 230 pp.

Eschmeyer, W. N., ed. 1998. Catalog of fishes. Vol. 1. Introductory materials, species of fishes A–L. Calif. Acad. Sci., San Fran-cisco. 958 pp.

松原喜代松.1955.魚類の形態と検索I–III.石崎書店,東京.

xi + v + 1605 pp., 135 pls.

Nelson, J. S. 2006. Fishes of the world. 4th ed. John Wiley &

Sons, Inc., New Jersey. xix + 601 pp.

瀬能 宏.2000.ヨウジウオ科.中坊徹次(編),pp. 520–

536,1509–1515.日本魚類検索.全種の同定.第2版.

東海大学出版会,東京.

Shinohara, G., K. Matsuura and S. Shirai. 1998. Fishes of Tachi-bana Bay, Nagasaki, Japan. Mem. Natn. Sci. Mus., Tokyo, (30): 105–138.

塩垣 優・道津喜衛.1973.長崎県野母崎町沿岸の魚類.

長崎大学水産学部研究報告書,(35): 11–39.

鈴木寿之・瀬能 宏・細川正富.2002.西表島で採集され た日本初記録のカブトヨウジ(新称).I. O. P. Diving News, 13 (10): 4–6.

鈴木寿之・矢野維幾・瀬能 宏・吉野哲夫.2003.西表島 から採集された日本初記録のヨウジウオ科の稀種チン ヨウジウオ.I. O. P. Diving News, 14 (1): 2–5.

高田陽子・渋川浩一・篠原現人.2008.ヨウジウオ科カス ミオイランヨウジ(新称)Dunckerocampus naiaの日本 からの記録.魚類学雑誌,55 (2): 135–138.

多紀保彦・河野 博・坂本一男・細谷和海.2005.新訂原 色魚類大圖鑑(圖鑑編).北隆館,東京.46 + 971 pp.

吉野哲夫・西島信昇・篠原士郎.1975.琉球列島産魚類目録.

琉球大学理工学部紀要(理学部編),(20): 61–118.

 はじめに

ベニアミゴロモ

Dictyurus purpurascens Bory de Saint-Vincent(紅色植物門,イギス目ダジア科)

はインド南東部

Tamil Nadu

州の

Cape Comorin

で 採集された標本に基づいて原記載された(Bory,

1834; Silva et al., 1996;

吉田

, 1998).本種はイン

ドやスリランカ,タンザニアなどのインド洋熱帯 域に広く分布すると共に,ミクロネシアやフィ ジー,ニュージーランド,中国(南沙諸島,西沙 諸島)などの太平洋西部からも報告されている

(Børgesen, 1945; Chang and Xia, 1978; Lewis, 1984;

Silva et al., 1996; Phillips, 1997, 2002; Zheng, et al., 2001; Oliveira et al., 2005; Coppejans et al., 2009).

日本では,Tanaka (1963)が鹿児島県大島郡龍 郷町(奄美大島)の水深

40 m

で採集された標本 を日本新産種として報告した.しかし,日本産種 に関するその後の報告はなく,国立科学博物館

(TNS)や北海道大学総合研究博物館(SAP),九 州大学農学部海藻標本庫などの国内主要海藻標本 庫にも標本は収蔵されていなかった.

筆者らのグループは,九州南部および南西諸 島の海藻相調査を

2001

年以降実施しており,ホ ソカバノリ

Gracilaria yamamotoi Zhang et Xia

やヒ メ ク ビ レ オ ゴ ノ リ

Gracilaria articulata Chang et Xia

などの日本新産種を報告すると共に,原記載・

初記録以降に報告のない実体不明種の生育を確認 してきた(Terada and Ueno, 2004; Terada and

Shi-mada, 2005).今回,徳之島でベニアミゴロモを 2008

12

月に採取し,本邦における生育を

48

年ぶりに確認したことから,ここに報告する.

 材料および方法

調査は,2008年

12

13

日に鹿児島県大島郡 天城町(徳之島)与名間で実施した.採集は

SCUBA

でおこない,与名間漁港(27°53.110′N,

128°53.055′E)の沖合約 300 m

の水深

10 m

前後に おいて,他の海藻類と共に採集した.材料は冷凍 保存の上で鹿児島大学水産学部水産植物学研究室 に持ち帰り,観察をおこなった.なお,観察標本 は同研究室標本庫に収蔵した.

 結果および考察

Dictyurus purpurascens Bory de Saint-Vincent in

Bélanger and Bory de Saint-Vincent, 1834: 170–

171, pl. 15: fig. 2.

ベニアミゴロモ(Figs. 1–3)

Tanaka, 1963; Chang and Xia, 1978; Zheng, et al., 2001; Coppejans et al., 2009.

Specimen examined: Yonama, Amagi Town

(Toku-noshima Island), Kagoshima Prefecture, Japan, Dec.

13, 2008 (Terada 4577).

体は直立して叢生し,高さ約

3 cm

までになる.

主軸は円柱状で,互生または不規則に分岐し,側 生の枝と末端枝を規則的な列に生じる.末端枝は

1

列の細胞列で,それぞれが連絡して網状の構造 を形成する.主軸は中軸細胞と

4

個の周心細胞か らなり,皮層で覆われる.

ドキュメント内 Nature of Kagoshima Vol.36 (ページ 59-63)