I . 緒 日
ラット大動脈平滑筋は通常,非刺激下において完全に弛緩した状態の静止筋であ るが,高血圧自然発症ラット大動脈平滑筋は自発性筋緊張(収縮)を示す民19,21一民的.
この筋緊張は細胞外 Ca2+依存性で Ca2+桔抗薬によって抑制されることから,高血圧 自然発症ラット大動脈平滑筋では電位依存性 Ca2+チャネルの開口元進があり, この チャネルを介して流入するCa2+が自発性筋緊張を引き起こすと考えられている 19,21 ‑24
叫.さらに,この白発性筋緊張はラットの高血圧の程度が進むと大きくなること,ま た細胞内 Ca2+レベルの上昇を伴い,この上昇も血圧との間に相関があることは前章 にも述べたとおりである.
血管内皮は種々の因子を遊離して血管平滑筋の収縮を調節している 8,29, 31, 53, 89)ー こ れら内皮由来因子の一つである内皮由来弛緩因子 (endothelium‑derivedrelaxing f山 tor, EDRF)は一酸化窒素 (nitricoxide, NO)であることが知られているが 90,91) これは 血管平滑筋の収縮を抑制的に調節する.EDRF (NO)は自発的にも遊離され 50,92‑9斗
血管平滑筋の自発性筋緊張を抑制している可能性が考えられる.この他にも内皮は 内皮由来の収縮因子 (endothelium ‑derれ 吋 contractingfactor, EDCF) 40,95,附や過分極 因子 (endothelium‑derivedhyperpolarizing factor, EDHF) 97 ‑酬を遊離して,血管平 滑筋の緊張をそれぞれ促進的,抑制的に調節していると考えられる.
高血圧自然発症ラットの大動脈でみられる自発性筋緊張も内皮によって抑制され ていることが知られており, EDRF (NO) との関係が検討されている 30,31,均.高血 圧ラットの血管では内皮依存性弛緩の障害があることも知られており 32,34,他山 こ
の障害が高血圧の程度と関係があることも報告されている拘.著者らは高血圧自然 発症ラットの大動脈平滑筋における筋緊張が高血圧の程度と相関することを前章で 述べたが,内皮の障害があるならば,内皮による自発性筋緊張の調節,特に抑制の 具常も考えられる.さらに,高血圧自然発症ラットの血管における内皮依存性弛緩 の障害には EDRF (NO)の遊離減少の他に, EDCFの遊離増加刊一42)や EDHFの遊
‑33‑
離減少 8,38,39)の可能性も報告されている.
本実験では,血圧の異なる種々の系統の高血圧自然発症ラットにおける細胞外 Ca2+ 依存性の自発性筋緊張に対する内皮の影響について EDRF (NO) を中心に検討を加 えた.
II . 実 験 方 法
1.実験動物
実験には高血圧ラットとして SHR,SHRSPおよび M‑SHRSPを用い,対照正常血 圧ラットとして WKYを用いた.これらラットの詳細は第 1章および第 2章で述べ た通りである.
2.血圧測定
第 1章と同様の方法で行った.
3.標 本
ラットはエーテル麻酔下,頚動脈から脱血死させ,胸部大動脈を摘出した.胸部 大動脈は冷却した modifiedTyrode液中で結合組織および脂肪を除去した.幅 1mm の輪状標本を作製し,標本の→部は内腔をコムで擦過することで内皮を除去した.
4 .
生 理 学 的 塩 類 溶 液第 1章と同様のものを使用した.
5.張 力 測 定
張力測定は第
2
章と同様の方法で行った.発生張力は実際の収縮力( m N )
,ある いは2回目のK50収縮を 100%として表した.EDRFは N Oであるとされ, 内皮におけるその合成は L‑幽 白 也 引 幽‑乱妊aa訂.乱妊r
♂
gmm即1犯eのアナログ (ωN凡G‑ nitro‑L‑幽 引 .が知られているので同一則,本実験ではこれら試薬を用いて EDRF (NO)産生を抑 制した.EDCF,特に高血圧自然発症ラットの血管において内皮依存性弛緩の障害に 関与する EDCFはアラキドン酸の cyclooxy genaseを介する経路の代謝産物で,この 代 謝 は indomethacinで 阻 害 さ れ る こ と が 知 ら れ て い る の で 40,95, 玖 本 実 験 で も indomethacinを用いて EDCFを抑制した.また, EDHFによる血管平滑筋の過分極は apammとcharybdotoxinを併用することによって抑制されると報告されているので 8)
本実験ではその方法に従った.
D‑および L‑arginine,または indomethacinの効果はこれら試薬を加える前の発生張 力を 100%として表した.実験終了時に 10‑5M verapamilと10‑4M papaverineを作用 させるか,細胞外 Ca2+を除去することで標本を完全に弛緩させ,張力変化はすべて
このレベルから測定した.
第 1章,第 2章と同様に非刺激下において細胞外 Ca2+除去により生じる弛緩反応 を自発性筋緊張として測定した.
6.試 薬
実験に用いた試薬は以下の通りである.NG‑monomethyl‑L‑arginine (L‑NMMA, Sigma, St. Louis, M OヲU.S.A.),NG・nitro‑L‑arginine(L‑NNA, Sigma), L‑arginine (Sigma), D‑arginine (Sigma), indomethacin (Sigma), nifedipine hydrochloride (和光 y 大阪)ヲ verapamil hydrochloride (エーザイ,東京), papaverine hydrochloride (和光)•
7.統 計 処 理
得られた値はmeans::!:: s.e.meanで表し, one‑way analysis of varianceで解析した.有 意差検定は Student'st検定,あるいはNewman‑Keul's検定を用いて行い, p値が0.05 未満を有意差有りとした.
‑35‑
III . 実 験 結 果
1.ラットの血圧
本実験で用いた WKY,SHR, SHRSPの 16週齢での収縮期圧はそれぞれ 133土 2.6 mmHg (n
=
22), 196:t 4.4 mmHg (n=
21), 250:t 2.7 mmHg (n=
14)であった.M‑SHRSPは 16週齢までに高頻度で脳卒中を発症し,血圧が低下する場合や死亡する 場合があるため, 12週齢で実験に用いたが,この週齢における収縮期圧は 262:t 7.0 mmHg (n = 11)であった.これらラットの血圧には系統間で有意差がみられた.
2.細 胞 外 Ca2+濃度上昇に伴う自発性筋緊張上昇に対する内皮の抑制効果
Fig. 21はSHRSPの内皮正常,内皮除去大動脈標本における細胞外Ca2+除去と Ca2+
の再投与に対する反応を示している.細胞外 Ca2+除去により内皮除去標本では著明 な弛緩反応がみられたが,内皮正常標本ではほとんど弛緩しないか,わずかな弛緩 反応がみられただけであった.実験方法にも述べたように細胞外 Ca2+除去によって 生じる弛緩反応を自発性筋緊張として測定した.
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Figure 21 Effects of remova1 of extracellular Ca2+姐dcumulative readministration of Ca2+ on the active tone of endothelium‑removed (E(ー),upper trace)岨 d‑Intact (E(+), lower trace) prep訂ationsfrom SIllミSPaortae. Ca2+ concentration was Increased at each arrow to 3 X 10‑5 M, 10‑4 M, 3 X 10‑4 M, 10‑3 M, 3 X 103 M and 10‑2 M (from the left to血eright).
内皮除去標本の細胞外 Ca2+感受性自発性筋緊張は WKYく SHRく SHRSP< M‑
この自発性筋緊張はどの系統の標本において SHRSPの順で強くみられた (Fig.22).
この標本の筋緊張も内皮除去標本の場合と同
E
コ
E(・}E盟 E(+)
D‑
a M
RH MH CU
M ロE
CM RH UH CM
同 日 以
m
‑V E
T ‑ ‑ w m も内皮正常標本で著明に減少したが,
じ順で強くみられた (Figs.21 and 22) .
1.0
言
0.80 E
.9 0.6 o 〉
E
04.~ 由
:E c S 0.2
o
Figure 22 The amplitude of the active tone in the endotheliu皿 intact(E (+))姐d‑removed (E (‑)) aortic preparations from WKY阻d血reestrains of hypertensive rats. Asterisks indicate signific姐 t differences from endothelium‑removed prep訂ationsfrom the same strain of rats (Pく 0.01). Daggers indicate significant differences among other endothelium‑removed preparations (P < 0.05). Means土
s.e.mean of 8 to 23 preparations.
Ca2+濃度依存性の収縮反応が観 細胞外 Ca2+を除去した標本に Ca2+を再投与すると
Fig. 23はこの収縮反応と細胞外Ca2+濃度の関係を示したもので 察された(Fig.21).
M‑SHRSPの内皮除去標本は細胞外 Ca
応を示したが (Fig.23a) ,内皮正常標本ではこの収縮反応は著明に減弱した (Fig.23b)
‑37‑ SHRSP,
SH R, ある.
a b
4・ ・
z o
一 白E
トO
3
.M‑SHRSP OSHRSP ASHR
AWKY
円4 4 E
{Z E) E0 3z
↑
e.M‑SHRSP oSHRSP ASHR AWKY
3x10‑5 10" 10‑3 10‑2
Ca concentration (M)
ーで~ヰ
3x10右 10'" 10‑3 10‑2Ca concentration (M)
Figure 23 The relationship be何leen ex回cellular Ca2+ concen仕ation and the active tone in endothelium‑removed (a)岨 d‑intact (b) preparations from different strai出 ofrats ‘ Mean~ :t s.e.me組
of 9 to 23 preparations.
3 .
内皮による自発性筋緊張調節における一酸化窒素の関与WKYとM‑SHRSPの内皮正常標本に対するー酸化窒素合成酵素 (NOS) 阻害薬,
NG ‑monomethyi‑L‑arginine (L‑NMMA)の効果を検討した̲Fig. 24に示したように,
L‑NMMA (10‑4 M)は M‑SHRSP標本を収縮させたが, WKY標本に対しては効果を 示さなかった̲ SHRSPの内皮正常標本も L‑NMMAに対して同様な収縮反応を示し たが, SHR標本では弱い収縮反応のみが観察された.M‑SHRSP標本の L‑NMMAに よる収縮の時間的経過は Fig̲ 24に示したように標本によって様々であった.この収 縮反応は細胞外Ca2+除去や, verapamil ( 10‑5 M) あるいはnifedipine
c 1 ゲ
M)によっ て消失した.他の NOS阻害薬である NG‑ni tro‑L‑arginine (L‑NNA) もL‑NMMAと同様に SHRSP の内皮正常標本をゆっくりと収縮させた (Fig.25). この収縮反応は非常に遅く,最 大収縮に達するまでに 3時間から 5時間を要した.高血圧自然発症ラットの内皮除 去標本は自発性筋緊張を示すが,この状態に L‑NMMAまたはしNNAを作用させて も内皮正常標本でみられたような収縮反応は観察されなかった.
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WKY 哩F官官宅菅雫""宮『・噌'tK田 Iw tL‑NMMA tCa‑fr,伺
M‑SHRSP
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