• 検索結果がありません。

高等学校情報教育の重要性

第2章 情報教育における段階的な問題解決能力育成

2.3 高等学校情報教育の重要性

今後の高度情報社会を支える人材の裾野を広げていくことの重要性が,各種政府方針等によ り指摘されている。しかし,日本の学校教育において単独の教科として「情報」を設置してい るのは高等学校のみである。高等学校の教科「情報」は,小・中・高等学校の各教科等の指導 を通して行われる情報教育の集大成として位置付けられている。高等学校は,生徒たちに社会 で生きていくために必要となる問題解決の力を身に付けさせ,自立に向けた準備期間を提供す ることのできる重要な教育機関である。特に,高等学校情報教育には高度情報社会を生き抜く ための問題解決能力育成という重要な使命が課せられている。

高等学校を中心として生徒の能力育成を考慮した場合,高等学校入学前の中学校,卒業後の 社会との連携は欠かすことのできない視点となる。本研究では,生徒の問題解決能力育成を目 的とした高等学校情報教育の授業を開発する。授業を開発するにあたり,高等学校に求められ る視点を,

1.中学校から高等学校への視点,

2.高等学校内の視点,

3.高等学校から社会への視点

の3つに整理する。この時,柔軟な専門教育を展開しており,今後の学習指導要領の変化に も対応することができる高等学校「総合学科」について検討する。以下に,高等学校に求めら れる3つの視点から見た情報教育の重要性について考察する。

(1) 中学校から高等学校への視点

小学校で育まれた問題解決の基本的な力は,中学校において発展的に育成されている。さら に,中学校技術・家庭は問題解決能力そのものである「工夫し創造する能力」を育成しており,

2018 年改訂高等学校学習指導要領解説情報編に「プログラミングに関しては,中学校技術・家 庭科技術分野においても充実を図っており,それらの学習内容との適切な接続が求められる。」

40

と示されている。このように小学校から中学校を通して育まれた問題解決能力を,高等学校に おいて発展的に育成していく必要がある。高等学校では,特に教科「情報」において問題解決 能力育成に重点が置かれており,普通教科情報では様々な授業研究が行われている118)~120) 。し かし,専門教科情報についての事例は少ないのが現状である。2009 年改訂高等学校学習指導要 領情報科目の中で,問題の発見・解決の過程や手法そのものを学ぶ科目が「情報と問題解決」

である。2010 年学習指導要領解説には科目の狙いの一つとして「実際に情報や情報手段を活用 して,適切に問題の発見や解決を行うことができる能力と態度を育成する」と示されている。

このように,「情報と問題解決」は,問題解決能力を発展的に育成するのに適した科目である。

2017 年改訂の高等学校学習指導要領では,「情報と問題解決」の内容は情報に関する各学科に おいて原則として全ての生徒に履修させる原則履修科目の「情報産業と社会」に整理統合され た。「情報と問題解決」の内容が,情報に関する各学科の全ての生徒が学ぶべき内容に位置付け られたことからも,問題解決能力育成がより重視されたことが分かる。小・中・高等学校の全 教科的に問題解決能力の育成が求められている中で,今後は中学校技術・家庭(技術分野)と 高等学校情報の存在意義が益々高まっていくと考える。そのような状況のもと,これからの高 等学校情報には中学校技術・家庭(技術分野)との連携を図りながら中学校技術・家庭(技術 分野)教育で育まれた問題解決能力を継続的・発展的に育てることが求められていく。

一方,「情報教育」の観点から見ても中学校技術・家庭(技術分野)と高等学校情報は関係が 深く,これまでも各々の学習内容の接続を意識した指導が求められてきた86) 。2017 年改訂の 学習指導要領解説には,「共通教科情報科の学習内容は,中学校技術・家庭科技術分野の内容

「D情報に関する技術」の学習との系統性を重視している。今回の改訂では,『D情報に関する 技術』について,小学校におけるプログラミング教育の成果を生かして発展させるという視点 から,従前からの計測・制御に加えて,ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツの プログラミングについても取り上げるなどの内容の改善が図られている。高等学校情報の指導 を行うためには,これらの中学校技術・家庭科技術分野の改善内容を十分踏まえることが重要 である。」110) と示されている。学習指導要領解説に示されているように,今後の高等学校での 情報教育は,今まで以上に中学校との接続が求められることとなる。

しかし,学習指導要領を通して系統的な情報教育の充実が示される中で,相互の連携が求め られる中学校と高等学校では情報教育の接続を意識した指導が必ずしも十分に成されている とは言えない121)~126) 。特に,高等学校教員は中学校教員との情報交換の機会が少なく127) ,中 学校との連携が十分に図られていない現状がある。そこで,本研究では中学校技術・家庭(技

41

術分野)と高等学校教科情報との接続を意図した授業の開発を行う。授業開発は,問題解決能 力育成を目標とする専門教科情報「情報と問題解決」について行う。第 3 章において,中学校 で育まれた問題解決能力の発展的な向上について考察する。

(2) 高等学校内の視点

高等学校の全教科の中でも,とりわけ問題解決的な学習を重視してきた教科が「情報」であ る。教科「情報」は,「小・中学校段階からの問題発見・解決や情報活用の経験の上に,情報や 情報技術を問題の発見と解決に活用するための科学的な理解や思考力等を育み,ひいては,生 涯にわたって情報技術を活用し現実の問題を発見し解決していくことができる力を育む教科」

と位置付けられている106) 。図 2-5に示すように,教科「情報」の科目の中で,総合的科目と して位置付けられているのが「課題研究」である。「課題研究」の目標は,「情報に関する課題 を設定し,その課題の解決を図る学習を通して,専門的な知識と技術の深化,総合化を図ると ともに,問題解決の能力や自発的,創造的な学習態度を育てる。」92) と示されており,問題解決 能力育成に関わる総合的な科目となっている。さらに,図 2-6 に示す 2017 年改訂の科目構成 においても総合的な科目として設置されている。目標は「情報に関する科学的な見方・考え方 を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通して,社会を支え情報産業の発展を 担う職業人として必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。(1) 情報の各分野に ついて体系的・系統的に理解するとともに,相互に関連付けられた技術を身に付けるようにす る。(2) 情報産業に関する課題を発見し,情報産業に携わる者として解決策を探究し,科学的

情報システム実習

情報と問題解決 情報テクノロジー システムの設計・管理分野 総合的科目

情報の表現と管理

図 2-5 専門教科情報の科目構成128)

課 題 研究

情報コンテンツ実習

情報コンテンツの制作・発信分野

情報産業と社会 基礎的科目(各分野に共通)

42

な根拠に基づいて創造的に解決する力を養う。(3) 情報産業に関する課題を解決する力の向上 を目指して自ら学び,情報産業の創造と発展に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。」17) と 示されており,問題解決能力育成に重点を置いた科目であることが分かる。

高等学校専門学科や総合学科においては「課題研究」が中核的な科目である 129) 。総合学科 は「中学卒業段階で明確な将来の展望を描けずにいる生徒を入学させて,総合学科の様々な仕 掛けの中で生徒に自らを見つめさせ,社会を考えさせ,自らの学びを構築させ,将来への展望 を持たせようとする」教育内容 130) を含んでおり,課題の解決を図る学習を通して,主体的に 問題を解決する力を養うことができる「課題研究」の推進が強く求められている。「課題研究」

についての考察は専門学科等については行われている 131)~135) が,総合学科ではほとんど見当

たらない 136) 。そこで,本研究では高等学校総合学科における専門教科情報「課題研究」の授

業開発を行う。第 4 章において高等学校での問題解決能力育成について考察する。

(3) 高等学校から社会への視点

高等学校は,国家及び社会の形成者として必要な資質等を養うことを目標としている 137) 。 現行の高等学校は,中学生の約 99%が進学する教育機関となっている137) 。高等学校は,義務 教育を終えた生徒一人ひとりに変化の激しい今後の社会を生き抜くために必要な問題解決能 力を育む場である。

課 題 研 究

情 報 実 習

情報セキュリティ 情報テクノロジー コンテンツ分野 情報システム分野

総合的科目

総合的科目

共通的分野 情報の表現と管理

情報産業と社会

図 2-6 改訂後の専門教科情報の科目構成111)