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高圧ブリュアン散乱

ト1 はじめに

ブリュアン(Brillouin)散乱測定は、非接触で試料の音速を決定できるため ダイアモンド・アンビル・セル(DAC)に封入した分子性結晶に対して最も理想 的な測定手段の一つである。本研究では、DACを用いて作製したメタンハイド レート sI型(MH‑SI)単結晶に対して高圧ブリュアン散乱[1‑2]測定法をおこ ない、解析して得られたMH‑SI相の室温における弾性的性質と、その特徴を 明らかにする。

ト2 ブリュアン散乱

透明な物質に単一周波数γfの光を入射すると、その散乱光には入射光と同じ 周波数γfのレイリー散乱光と、周波数変調を受けた周波数γf±』γの散乱光

が含まれる。この周波数変調を受けた散乱のうち、光であるフォトンと光学フ ォノンの相互作用による散乱をラマン散乱、フォトンと音響フォノンの相互作 用による散乱をブリュアン散乱という。

ブリュアン散乱は、入射光と音響フォノンの非弾性散乱であり、エネルギー 保存則と運動量保存則が成り立つ。(Fig.1.2.1およびFig.1.2.3参照)

力γf=力γ∫ 土方』γ (1‑2‑1)

カムf=カムぷ 士カq (1‑2‑2)

ここで、ゐはプランク定数、γ∫、γ∫は入射光と散乱光の周波数、』γは音響フ ォノンの周波数、木、もは入射光と散乱光の波数ベクトル、qは音響フォノンの 波数ベクトルを表している。また式中の±の記号は、+がストークス散乱、‑

がアンチストークス散乱に対応している。ブリュアン散乱で観測しているフォ ノンは分散関係のr点近傍とみなせるので(Fig.1.2.2参照)、q→0の長波長 近似がおこなえ、物質中の音速を打とすると、

』γ=rl曾l

の関係式が成り立っ。また物質の屈折率〃に異方性がない場合

γ=包坐=堆l

スノ〃

(1‑2‑3)

(1‑2‑4) の式が成り立っ。ここで、C。は真空中での光速、C=C。/〝は物質中の光速、

l鳥̀l=〃/んは物質中での入射光の波数である。(1‑2‑1)式に(l‑2‑3)、(1‑2‑4)式を

l岨屯」±ヱId

(1‑2‑5)

を得る。また、音速は光速に比べて十分′j、さい(V<<c)ため、(1‑2‑5)式は

】鳥′l彩l廠∫l

と近似できる。また、(1‑2‑2)式は

鳥j=鳥5±q

となる。この式を表したFig.1ユ3のベクトル図から

l曾l=l鳥∫一員̀l=2t頼inβ=2ヱsinβ

A一

(1‑2‑6)

(1‑2‑7)

(ト2‑8) の関係式が得られ、この式と(1‑2‑3)式より、ブリュアン周波数シフトは

」l・=

と表される。

2J7㌢sin♂

l・→

Samp[e

l′tJl・

l′十dv

Fig.1.2.1ブリュアン散乱

Fig.1.2.2 分散関係

(l‑2‑9)

Fig.1.2.3 ベクトル図

ト3 DAC中のブリュアン散乱

前節では一般的なブリュアン散乱について述べた。この節ではDACを用い たブリュアン散乱について考える。

Fig.1.3.1は見かけ上の散乱角が2♂0度である等角散乱配置の様子を示したも のである。2♂。度散乱では、レーザー光がダイヤモンドのベース面に対して♂0 で入射、屈折し、最終的に試料室に♂で入射する。この屈折をスネルの式で数 式化すると、

Sin ♂。̲〝d

Sin ♂d 〃。

Sin ♂d

̲

Sin ♂ 〃d

(ト3‑1)

(1‑3‑2) となる。ここで、〝仇〃d、〝は、それぞれ、大気、ダイヤモンド、試料の屈折率

である。大気の屈折率が真空の屈折率と等しく1であると仮定し、(1‑3‑1)、

(ト3‑2)式をまとめると

sin ♂

の式が得られる。この式を(ト2‑9)式に代入すると、

』γ = 2Fsin 免

(1‑3‑3)

(1‑3‑4) で表されるDAC中でのブリュアン散乱周波数シフトと音速の関係式が得られ

る。この関係式には試料の屈折率〝が含まれておらず、ブリュアン周波数シフ トは直ちに音速に変換できる。これは2♂。度等角散乱配置の利点である。また、

この時観測しているフォノンの伝播方向はダイヤモンドのキュレット面に平行 である。

典型的な等角散乱配置として、♂0=450 の900散乱と∂0=300 の600散乱 の関係式を示すと、900 散乱では

』γ900

J汀,。0

となり、600 散乱では、

』γ600

(1‑3‑5)

(1‑3‑6)

である。

次にFig.1.3.2に示すような1800散乱配置について考える。(l‑2‑9)式に28

=1800 っまり∂=900 を代入して

』y1800=

2〝r1800

(1‑3‑7)

の関係式を得る。この関係式から分かるように1800 散乱ではブリュアン周波

数シフトが屈折率と音速の積の関数となる。また、この時観測しているフォノ ンの方向はダイヤモンドのキュレット面に垂直である。

Fig.1.3.1等角散乱配置 Fig.1.3.21800 散乱配置

ト4 立方晶結晶のブリュアン散乱解析法

立方晶結晶に対する弾性方程式はEveryによって導かれており、次 式のようにまとめられる。

βVf=碩,いC,2,C仰昏∫,∂y,∂z)

(1‑4‑1)

ノ=0」,2

この式では弾性方程式が弾性定数Cll、C12、C44と音響フォノンの方 向余弦の6つの変数で表されている。ここで、ノは音響フォノンの3 つのモード(LA、TAl、TA2)を示す[1]。我々はこの式を基にDAC内

で成長した単結晶の結晶軸方位と弾性定数を同時に決定する。

測定系に固定された座標(ズ,アZ)とDACの座標(ズ',ア',Z')を設定 する。ここでZ軸とZ'軸は一致している(Fig.1.4.1)。観測する音響フォ ノンの波数ベクトル曾はズ軸方向に常に固定されている。従ってDAC をZ軸に対して回転させれば、∬■y■平面上のすべての方位のフォノン を観測することができる。

次に測定軸と単結晶の結晶軸方位(∫,γ,Z)との関係について考える。

この関係を表現する為にFig.l.4.2のオイラー角(♂,¢,ズ)を用いる と、ズア平面上のフォノンベクトルを角度♂の関数として表すことがで きる。また、試料室内で成長した単結晶はDACに固定されているので、

この座標(ガ',ア',Z')に対しオイラー角(♂,β,ズ)で関係付けること ができる。このβとDACの∫'軸と測定系のズ軸の狭角αを用いると、

♂=α+β (1‑4‑2)

の関係があるので、♂をαの関数として測定を行う(Fig.1.4.1参照)。

Fig.1.4.1DACの座標系と測定系の座標

実際には、このαを変化させて(DACを回転して)フォノンの音速の 方位依存性測定を行うので、(ト4」)式をオイラー角で表される形に変 換する必要がある。その変換された式は、

り=勘(Cll/β,C12/β,C44/β,β,♂,ズ)

である。さらに、(1‑4‑2)式の関係より、

り=&(C11/β,C12/β,C44/β,♂,α+β,ズ)

(1‑4‑3)

(1‑4‑4)

と表される。従って、音速は3つの弾性定数と密度の比と3つのオイ ラー角の関数で表すことができる。角度αを変化させることによって 得られるブリエアン周波数シフトは直ちに(ト3‑4)式を用いて音速に 変換される。そこで、この音速の方位依存性のデータ(り(♂f))と(ト4‑4) 式の計算値(み(♂f))の間の二乗誤差をJとし、Jが最小になるように 6つのパラメータを決定する。

J=∑bノ(頑卜唖貯

(l‑4‑5)

さらに、決定した弾性定数と密度の比と結晶方位の情報を用いて1800 散乱配置より観測されるフォノンの音速を計算することができる。こ れと1帥0 散乱測定結果を(ト3‑7)式に代入して、屈折率〃を得ることも できる。

ズYZ ズ'Y■Z

ズγヱ・■

標 座 定

標標

座座面のの定

"軸測β晶.・

㌧結面

、\\\\

J

/

Fig.1.4.2 結晶軸の座標と測定系の座標

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