本章では、前章での調査結果と考察に基 づき、特別な教育的ニーズに対応する養護 学校の役割と、個人のライフステージを見 通した長期的な教育方針に立った高度の専 門性と多様な機能を持った養護学校のセン ター化を提案する。
5.1養護学校の将来像とその役割
5.1.1養護学校内の組織の再編ここでは、現在の養護学校を、個人の発 達を生涯にわたって支援するセンターとし て位置付け、その名称を「総合発達支援セ ンター」とする構想を提案したい。総合発 達支援センターの中には、次のような機能 を持った部門及び各部の設置が必要になる
と考えられる。
(1)教育部門
教育部門については、主に重度・重複障 害児を対象とした教育を担当する学校教育 部、保護者や教師への相談に応じる教育相 談部、情報提供や教材開発・提供、教員研 修などの業務を行う教育支援部、小・中学 校などへ教師等の専門家を派遣する巡回指 導部の各3部を置く。特に教育相談部には、
養護学校の教師の他に、臨床心理士の資格 を持ったスクールカウンセラー、特殊教育 に詳しい専門家、養護教諭等を配置する。
部、企業、作業所等の情報を提供したり、
それらの機関と連絡、連携を図ったりする 進路情報部、新しい就労場所や活動の場を 開拓する進路開拓部、将来の目標に向けて 職業訓練をしたり、卒業後のフォローアッ プを図る職業訓練部の4つの部を置く。進 路開拓部については、保護者や保護者のグ ループ等と連携し、子どもの新しい受け皿 や活動の場を開拓していくことも考えられ る。子ども一人一人について、その適性や 本人や保護者の希望、地域の受け入れ状況 等、総合的に判断し、最も適切な進路決定 を行うことが望まれるため、それぞれ4つ の部が集まってケース会議を開き、意見交 換することが大切である。
(3)医療部門
看護婦、作業療法士、言語療法士、理学 療法士等を配置する。必要に応じて、相談、
鑑別、検査、訓練等をおこなう。また、外 部の医療機関との連携を図り、子どもの状 態に応じて専門の医療機関の紹介をする。
(4)福祉部門
ケースマネージャー、ケアマネージャー、
コーディネーター、社会福祉士等、福祉に 関する専門家を配置する。この部門は、福 祉に関する相談や福祉サービスに関する情 報提供、生活支援等をおこなう。また、外 部の福祉機関との連絡、連携をとり、適切 な支援が受けられるようにする。
(2)職業進路部門 (1)(2)の教育部門、職業進路部門に
主に進路に関する相談に応じる進路相談 ついては、養護学校の教員組織の中から公
務分掌の再編などをおこない、各部門に人 材を割り当てる他、外部からの専門性を有 した職員の配置も考慮する。また、医療部 門、福祉部門については、養護学校の管轄 外であるため、外部からそれぞれの専門職 員の配置も検討する。
な指導や支援を受けることができるように するとともに、それらの情報を各関係機関 が共有することによって、専門家どうしが 効率的に情報交換したり、意見交換できる ようにすることが必要である。
5.1.3その他の施設 5.1.2継続的な相談コーディネーター
による支援
各部門には、「相談コーディネーター」を 置く。このコーディネーターの役割という のは、医療、教育、福祉の立場の関係者が 連携して、本人と家族のニーズを理解し、
これらのニーズに見合うサービスの提供を コーディネートすることである。野口
(2001)は、「このコーディネーターは、継 続的に本人に関わり、コーディネーターを 中心とした個別の指導計画や個別援助プラ ンの定期的な作成と見直しができるような システムが必要である」と述べている。
現在の状況では、各専門機関の横のつなが りが希薄なため、保護者は医療、教育、福 祉の各専門機関を訪ね、それぞれに子ども や家族の実態に合ったサービスを探すとい
う労力を強いられている。
今後は、コーディネーターが中心になり、
子どもがアセスメントをうける手はずを整 えたり、必要な療育の場や教育の場を探し たり、子どもに関わる専門機関の連携のた めの話し合いの機会を設定し、個別の指導 計画や個別援助プランを作成したり、適宜 それの見直しをおこなうなど、生涯を通じ て適切な支援をしていくことが望まれてい る。また、個人が生涯にわたり、個別の指 導計画や個別援助プランを軸にした継続的
総合発達支援センターには、職業訓練学 校を併設する。ここでは、主に就労するた めの職業訓練を行う。中学校や高等学校、
発達支援学校(養護学校の仮称)の高等部 から、職業訓練学校に入る場合や、一度就 職したが途中で止めてしまった場合などに、
再び訓練を受けるために職業訓練学校に入 る場合があることを想定する。
同センターには、生涯学習支援室を設置 する。ここでは、様々な生涯学習の機会を 提供する。様々な趣味の会やスポーツなど、
地域の住民の中から指導員等を募集し教室 を開く。指導にあたるボランティアや指導 補助員の確保が中心的な任務となる。
5.2養護学校が提供できるサービス 実現の可能性
教師や保護者が必要としているサービス について、養護学校として提供できるサー
ビスの実現の可能性から、以下のようなサ ービスに分類した。
5.2.1現在、提供できるサービス
(1)研修の機会の提供
・養護学校の校内研修への参加の呼び
かけ
・普通学校のニーズに応える研修内容 の検討
・放課後、長期休業日を利用した研修 会の開催
(2)特殊学級担当者会の開催
・養護学校を担当者会の会場として提 供
(3)指導資料の提供
・養護学校の実践に基づいた指導資料 の提供
(4)養護学校の情報発信 ・学校案内のパンフレット ・学校便りの配布
・Web上での情報発信
・地域の人々の学校行事への参加、児 童生徒の地域での活動
(5)検査の実施
・知能検査、発達検査の実施と学校心 理士の活用
(6)地域社会への理解啓発
(7)ボランティアの積極的な受け入れ
5.2.2今後、実現可能なサービス
(1)相談窓口の設置
・校内の校務分掌に教育相談担当部を つくり、校内で相談体制のシステム 化を図る。
・専門性のある職員の配置が必要 ・養護学校職員の更なる研修により、
専門性を高めることが必要
(2)普通学校へ出向いての相談活動 ・専門性のある相談員の配置が必要
(3)教師サポートのための人材派遣 ・人材の配置が必要。特に、教職経験 のある人、障害児に関わった経験の ある人、障害児の教育に理解のある 人が望ましい。
(4)養護学校の施設、設備の開放 ・管理上の問題の解決
(5)専門的な訓練の提供 ・訓練の指導者が必要
・養護学校職員の専門性を高めること が必要
(6)趣味などを学ぶ教室 ・指導員の確保
・ボランティアの確保
(7)個別教育計画の作成
・研修、研究と話し合いが必要
(8)実態評価のための基準表作成 ・研究が必要
(9)教材・教具の貸し出し
・管理システムの整備(ネットワーク 上で、見ることができるように整備)
・種類や個数の確保
(10)専門機関等の情報提供 ・専門機関についての調査
・パンフレットの作成、Web上での公開
(11)個人情報の共有システムをつくる ・学校と専門機関、教育委員会とのイ ントラネットの構築
5.2.3他機関に求められるサービス
(1)地域の施設・設備
・健常者との交流ができる施設、親子 が憩えるような施設
(2)社会の受け一皿の整備 ・職場、作業所、施設など
(3)職業訓練センターの設置
(4)自立生活のための拠点
・グループホーム、福祉ホーム、通勤 寮など
(5)福祉サービス
視しつつも、近年のインテグレーション、
インクルージョン等の国際的な動向や保護 者の通常教育への志向を視野に入れて、障 害のない子どもと共に学ぶことの総合性と 生活の拠点のあるコミュニティに根ざした 地域性を重視した教育である。と同時に普 通学校の抱える教育問題の解決とも深く関 連したものである」と述べている。普通学 校の普通学級には、特別な教育的ニーズを 必要としている児童生徒が約6%在籍して いることが推定されており、それらの児童 生徒を対象にした特別支援教室(仮称)な どを設置し、学校全体で支援していくこと が提案されている(日本教育新聞,2002)。
養護学校は、自校の子どものための教育ば かりでなく、一般の小・中学校において障 害児や特別なニーズを持つ子どもに関わっ ている教員や保護者を支援するセンター的 な役割を担うことが、今後、益々期待され
ている。
5.3おわりに
普通学校の教師は、専門的な指導方法や 内容について教えてほしいという要望など、
教師自身の力量を高めたり教師自身のサポ ートのためのニーズが極めて高いことが判 明した。それに対して、保護者は、子ども 自身の障害の改善や克服に向けてのサポー トや地域で普通に暮らしていくためのサポ ート、生涯を通じた一貫した支援体制の整 備等、子どものライフステージを見通した サポート体制を望んでいることが分かった。
柳本(2001)は、「特別なニーズ教育は、
特別な教育的ニーズに即応した専門性を重
しかし、養護学校の現状は、教師や保護 者のニーズを満たす十分なサービスが提供 できる状況が整っていない。十分なサービ スを提供するには、養護学校内の組織編成 の見直しと専門性を有する職員の配置、さ らに養護学校内の職員の意識改革等が必要 であると考える。また、養護学校から一般 の小・中学校や保護者への支援、サービス の内容をより専門性のある質の高いものに するためには、養護学校の職員自身の専門 性を高めるための研修が必要である。上位 の教育機関より養護学校への研修の機会が 提供されることが望まれる。養護学校には、
職員自身の専門性の向上と、加えて専門性 を有した人材の配置が求められる。