本章では、アンケート調査とインタビュ ー調査の結果を踏まえ、養護学校に期待さ れるサービスについての考察を行う。
自由記述とインタビューの内容の分析方 法は、野外科学的な方法を用いて行う(川 喜田,1967)。本研究では、養護学校のセン ター化に向けての新たな提案を目指してお
り、記述された文章やインタビューの内容 の中から、養護学校のセンター化に向けて の新たな発想が生まれることが期待される。
そのために、収集データから、それらを構 造あるものに組み立てるために、提案に足 る意味を見出して行く過程で、野外科学の 方法である発想法の手法を用いた。
(4)教師サポートのための人材派遣
(5)参加しやすい研修の機会の提供
(6)訓練できる環境の提供
(7)情報の提供
(8)保護者の考え方や意識に対するアプ ローチ
(9)特殊学級担当者会の開催
(10)子どもの発達に合わせた継続的な支 援システム
(11)相談員の専門性
(12)専門機関との連携
以上、12項目について、アンケート結果 とインタビューの分析から考察する。
4.1普通学校の教師へのサービス
アンケート調査における選択肢の設問に 対する回答と、自由記述の設問の具体的な 記述の内容、さらにインタビュー調査の結 果から、普通学校の教師は、どのようなサ ービスを期待しているのかについて考察を
行う。
養護学校から普通学校の教師へのサービ スとして、次のようなサービスが求められ ていることが判明した。
(1)身近な相談窓口の設置
(2)子どもの実態を正しく理解するため の支援
(3)個々のニーズに応じた指導のための 支援
4.1.1身近な相談窓口の設置
普通法の教師からの相談の要望は大きい が、その相談先は、半数が同じ教師仲間へ
となっており、他の専門機関への相談件数 は少ないという結果が出ている。教師仲間 への相談は、身近で話しやすい、話が通じ やすい、時間をとらない、必要な時に相談 できる等の利点が考えられる。専門機関へ の相談については、遠いところへは行きに くい、「○○相談センター」というような肩 書きのある専門機関は気軽に行けない、忙
しい中で書類を書く手続きが面倒である、
数週間前からの予約が必要であり、実際に 相談したい時に相談できないことがある等 が挙げられている。
このような現場の状況から、相談機関と しては、「身近であること」「気軽に相談で きること」「必要な時に相談できること」の
3点が必要ではないかと考える。現在、養護 学校への相談は、個人的に養護学校内の親 しい先生に相談するとか、学校に無理にお 願いして相談している状況がある。そのた
め、公に「相談の窓口」が設置されると相 談しやすいという意見が述べられている。
市内の身近な専門機関として、養護学校が
「相談の窓口」となることが求められてい ると考える。
で問題を抱え込まないで何でも相談できる 機関があるということが必要であると考え る。特に、普通学校の特殊学級の担任にお いては、学校内では一人という場合が多く、
他の教師に話しても分かってもらえないと いう悩みを抱えた教師が多い。そのような 立場の教師にとっては、気軽に悩みを相談 できる場が必要であると考える。
(2)指導に対する自信や意欲の喚起 相談窓口として、具体的には、以下の3
つのサービスの提供が求められていること が明らかになった。
○指導の方向性を示し、相談者の自信や意 欲につなげる。
(1)相談者の精神面へのサポート
(2)相談内容に応じた適切な対応
(3)普通校に専門の相談員を派遣
以上の3つのサービスついて、以下に考 察していく。
4.1.1.1相談者の精神面へのサポート
自分自身の指導に自信が持てずに、どの ようにしてよいか分からなかったことが、
相談することによって、指導の方向に対す る自信や、今後の指導への意欲が持てたと いうことが述べられている。相談すること で、アドバイスをもらい、指導の方向性が 分かり、自信や意欲へとつながっていくと 考えられる。
(1)精神的な負担の軽減 4.1.1.2相談内容に応じた適切な対応
○相談員は、相談者の訴えや悩みを傾聴し、
受容的な態度で対応する。
相談して、良かったと思う点の1つに、
相談することによって、心の負担が少しは 軽くなる、気持ちが軽くなる、焦らなくて もよいという安心感が得られるなど、相談 者の気持ちが楽になることが挙げられてい
る。
子どもの指導上、どのようにしてよいか 分からないことや、困ったことなど、一人
(1)専門的な知識に基づいた指導方法
○専門的な知識とともに、それに基づいた 指導方法を提示する。
専門的な知識がない指導は、子どもにマ イナスである、専門的な知識があると、そ の子に合った指導ができるという意見が述 べられている。例えば、自閉症の子どもを 例にとると、自閉症の特徴として、「視覚優 位」であることが挙げられる。その指導方 法としては、教師の声かけによる指示より
も、視覚に訴える方法をとる方が有効であ るということである。このように、専門的 な知識の裏づけに基づいた指導方法の提示 が必要である。また、必要に応じて事例の 紹介や参考図書の紹介、ビデオの紹介等も 考えられる。
(2)実際に活用できる指導方法
○毎日の学校生活や授業の中で、実際に活 用できる指導方法を提供する。
教師の多くは、担任している子どもにつ いて、どのように指導すればよいか悩んで いるケースが多い。相談の結果、「構音指導 について、実際的な指導方法を教わり、参 考になった」「具体的な指導方法や接し方を 教えてもらい参考になった」「訓練の仕方に ついてよく分かり、活用できてよかった」
という意見が述べられている。
(3)指導方法の具体的な提示
○相談内容によっては書聖のみで対応する のではなく、より具体的な形で回答を提 示する。
「訓練の方法も、具体的にその場で2、
3していただき、活用できてよかった」と いう意見がみられた。具体的な指導方法と、
その指導に必要な教具や教材についても紹 介し、それに関連する情報についても知ら せるなどのサービスをおこなうことが考え
られる。
4.1.1.3普通校に専門の相談員を派遣
(1)子どもの実態に合ったアドバイス
0相談員が、学校での子どもの活動の様子 を観察し、その実態に基づいてアドバイ スを提供する。
子どもの実態に合った適切な指導方法や 支援のアドバイスがほしいという意見が多
く見られた。ここでは、「子どもの実態に合 った」ということが大変重要であり、子ど もの実態を正しく把握することは、たとえ 専門家でも難しいのではないかと述べられ ている。障害のある子どもの様子は、その 程度や種類も多様であり、また同じ障害名 がついていても、その実態は、一人一人異 なっている。教師が子どもとともに相談に 出向いても、子どもが実際の普段の様子と は違った様子を示すこともあり、少しの時 間の観察では、子どもの実態を把握するこ とは難しいのではないかという意見があっ
た。
一方、教師のみが相談に出向く場合には、
子どもの様子を口頭で説明しても、相談員 に教師の意図しているとおりの様子が伝わ ったかどうか疑問である。相談員によって は、子どもの様子をビデオに撮って持って くるようにという指示があったが、普段の 様子をビデオに撮るということが難しく、
撮ることができなかったという例も挙げら れている。また、発達検査を実施しても実 際の行動の様子までは分からないのではな いかということが挙げられている。このよ うに、一人一人の子どもの実態を正しく相 談員に理解してもらうことは難しく、従っ て、相談員の専門的な視点から、実際の子 どもの様子を観察してほしいという要望が
強く出されている。
(2)必要に応じて相談に応じる体制
○学校内において、教師の要請に応じて、
子どもの様子を観察したりアドバイスを
行う。
○改めて相談の機会が必要であると判断す る子どもについては、相談日を設定する。
0教師の要請に応じ、柔軟に相談日の決定、
相談の受け入れを行う。
インタビューからは、次のような意見が 得られた。
いと思った時に相談することができないと いうことが複数述べられている。このよう に、相談日が決まっていると、「突然、こん な困ったことがおきてしまったから相談し たい」と思っても、教師の要望によって相 談日の変更ができない現状がある。相談し たいというニーズがある時に相談を受け入 れてこそ、相談機関としての存在の意味が あると考える。度々の日程の変更や飛び入 りの相談は無理があるにしても、融通を持 たせた受け入れ体制を整えておく必要があ ると考える。尚、相談日の決定については、
教師の希望も聞き、相談機関側との同意に よって決定するのが望ましいと考える。
現場の教師は、手一杯の状況である。相談 に出向くためには、学校に残している子ども のことも考えなければならない。子どもを専 門機関に連れて行くためには、保護者の了解 を得なければならない。現場に相談員がいる と、ちょっとのことでもすぐに相談できる。
以上のように、現場の教師が、該当の子 どもを連れて相談に出向くためには、周り の状況を整備する必要があり、教師の負担 が大きくなる。相談員が校内にいると、上 記のような教師の負担が減るばかりでなく、
必要に応じて実際の子どもの様子を観察し てアドバイスをもらうことができる。その 場のアドバイスや指導では不十分な子ども に関しては、改めて相談日を設定するなど、
実際の子どもの実態に応じて柔軟な対応を することができると考える。
また、専門の相談機関への相談は、数週 間前からの予約が必要であったり、相談日 が指定してあったりして、本当に相談した
(3)職員の意識の啓蒙と協力体制づくり
○相談員は、特殊学級の担任との連携を図 り、職員の意識の啓蒙と職員の連携・ 協 力体制づくりのための支援を行う。
学校現場では、「障害児の教育を学校教育 の中核に据えて」とか「障害児の教育を学 校教育の原点として」という言葉がよく使 われるが、実際の教育の場面においては、
その言葉通りの実践がされているのだろう
か。
学校現場からは、「健常児の教育に中心が おかれ、健常児の教育に手一杯で障害児の ための教育にまで手がまわらないのが現状 である」「教師の障害児に対する意識が低 い」「現状を何とかしないといけないと思い ながらも、いろいろな条件に左右されなが
ら、何とか現場の枠の中で頑張っている」
というような意見があった。担任からは、
「職員数が少ないために研修に出にくい」