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領域別フィルタの導入

第2章第4節で高分解能化への要求について記述した.

本章では,領域別フィルタを導入し高分解能化するまでのアルゴリズムについて記載する.

5-1 要求分解能と高分解能化の手法

第2章4 節でも記載したが,筋の計測,そして腱,癌などの計測を行っていくために必要 であろう分解能をFig.5-1-1に示す.

Fig.5-1-1要求分解能

現在のC-SWEの分解能は約5[mm]程度であり,現在本研究室で開発中のリハビリテーシ

ョンなどで使用できる小型のタブレットエコーの分解能は約8mmから10mm程度である.

Fig.5-1-1より,

アキレス腱などの腱の硬さ測定の要求分解能は約3-5mm,

痛み治療に使われるファシアハイドロリリースなどにおける要求分解能は1-2mm 針灸などによるエコーガイドでは,0.2-0.4mmの分解能が求められている.

現在の測定法での分解能では測定が難しいため,C-SWEの適用範囲の拡大するには高分解 能化が必要である.

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高分解能にするためには,せん断波の周波数(加振周波数)を今の周波数よりも高い周波数 にすることが最も簡単な手法である.しかし,せん断波の周波数を高くすると,せん断波の 減衰が大きくなってしまい侵入深さが制限されてしまう.

高周波伝播の例として,半腱様筋で加振周波数を245.8[Hz]と73.6[Hz]に設定し計測した例 をFig.-5-1-2に示す.

Fig.5-1-2 加振周波数でのせん断波伝播の違い

Fig.5-1-2より,加振周波数245.8[Hz]よりも 73.6[Hz]の低い周波数のせん断波を伝播させ

るほうがせん断波の伝播の減衰を抑えることができ,侵入深さを確保することができるこ とが確認できる.

このことから,高分解能化にするためにせん断波の周波数を上げることは良い方法ではな いことがわかる.

そこで,私は領域別フィルタを使った高分解能化への手法を提案する.

領域別フィルタを用いた提案手法は,「Bモード画像」「せん断波伝播位相図」「せん断波伝 播方向図」等の先験的に得られる情報を使用して,臓器境界を算出.そのあと領域毎に個別 のフィルタを適用し伝播速度推定を行うことで,高分解能を実現する.

先験的情報としてなぜそれらが使えるのかを以下に記述する.

・Bモード

筋膜で区切られた別々の領域に分割が可能である.

・せん断波伝播位相図,せん断波伝播方向図

せん断波の伝播特性の変化を利用し別々の領域に分割が可能である.

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5-2 領域別フィルタのアルゴリズム

前節で,領域別フィルタを使用した高分解能化への手法を提案した.

本節では,領域別フィルタのアルゴリズムについて記述する.

まず,領域別フィルタを用いた高分解能化への手法をFig.5-2-1に示す.

Fig.5-2-1 領域分割フィルタを用いた高分解能化への手法

Fig.5-2-1に示したように提案手法は,2つのステップに分かれている.

まず,ステップ1として,解析したいデータに対して,領域別フィルタにより境界を算出し 複数領域に分割を行う.ステップ2として,領域分割を行った後,分割領域毎に波数ベクト ル上で適応的ウィナーフィルタを演算し,全領域にごく弱い低域通過フィルタをかけること により領域間の不連続性を取り除く処理を行う.

次に,領域別フィルタのアルゴリズムを記述する.

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5-2-1 全体フロー

領域別フィルタのフローチャートをFig.5-2-1-1に示す.

Fig.5-2-1-1 領域別フィルタフローチャート

43 ここからはフローチャートに沿って説明していく.

まず,先験的情報の選択から連結領域へのラベリングの部分について記述する.

解析したいデータに対して,先験的情報別に処理が異なる.

Bモード使用時にはグレースケール化,背景減算を行い,位相図・方向図の場合は上下ピクセルの 差分を取ることで変化量を算出する.

次に,傾き抽出フィルタをかけることで,ノイズの低減と筋膜の強調を行う.傾き抽出フィ ルタの細かい概要については後述する.

次に適応的二値化を行う.適応的二値化は画像ごとに適応的に閾値を算出し二値化を行う.

これによって,画像ごとに適した閾値で筋膜の描出を行うことができる.適応敵二値化につ いても細かい概要については後述する.

次に,連結領域へのラベリングを行い,抽出した筋膜に対してラベリングすることによって 区別する.連結領域へのラベリングについても後述する.

フローに応じた画像をFig.5-2-1-2に示す.

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Fig.5-2-1-2 フローに応じた画像

次に,連結領域の検出の後から固定閾値二値化までの部分について記述する.

連結領域へのラベリングの後に,ラベルの長さの計算を行い,算出したラベルの長さをもと に,細かい筋繊維の削除や描出の補足を行う.

Fig.5-2-1-2 の連結領域へのラベリング画像を見てわかるように,二値化して描出した筋膜

には,細かい筋繊維などの雑音や描出できなかった筋膜が混在している.

これにたいして,ラベル毎の長さを算出するために,筋膜がどうかの判断を行う.

45 閾値としてROIの横幅の長さを設定し,

ラベルの長さが閾値と同じ、つまり筋膜である場合はなにも行わない.

閾値の半分以上,つまりROIの半分の長さ以上のものは,筋膜とみなし直線で補足.

閾値の半分未満は,細かい筋繊維とみなして削除.の処理を行う.

Fig.5-2-1-3に計算処理を行った後の画像を記載する.

Fig.5-2-1-3 ラベルの長さによる筋膜の判別結果

続いて,固定閾値による二値化から,連結領域へのラベリングについて記述する.

固定閾値による二値化を行い,筋膜で分割された筋を描出する.そして,その描出した筋に 対して,連結領域へのラベリングを行い,筋をラベルによって区別する.

固定閾値による二値化,連結領域へのラベリングを行ったあとの画像をFig.5-2-1-4に示す.

Fig.5-2-1-4 固定閾値による二値化,連結領域へのラベリング結果

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Fig.5-2-1-4 はラベル毎に色分けして表示した図で,筋を筋膜で分割された領域毎にラベル

付けできていることがわかる.これによって,ラベル付けを行った領域別にフィルタをかけ ることが可能となる.

ここまでが前節で示したstep1の処理となる.

つぎに,step2の処理である,分割された領域に対してのフィルタの部分について記述する.

Fig.5-2-1-1のフローの「ラベル毎にフィルタ」「全領域にフィルタ」の部分に該当する.

ラベル毎のフィルタでは,連結領域へのラベリングによりラベル付けを行った筋に対して,

個別に方向性フィルタやウィナーフィルタをかることで,クラッタノイズの除去,反射波成 分の除去,進行波成分の抽出を行う.

ラベル毎のフィルタ(分割領域への個別のフィルタ)をかけるとこで,伝播図において領域 間に不連続性が生じてしまうため,これを取り除くために全領域に対してごく弱い低域通 過フィルタをかける.

ラベル毎のフィルタ処理,全領域へのフィルタをかけた際の伝播図を Fig.5-2-1-5 に示す.

Fig.5-2-1-5 ラベル毎のフィルタ,全領域へのフィルタでの伝播図

以上のフローチャートに沿って,領域分割を行い,筋膜を介した複数領域に分割を行うこと で,領域別フィルタによる高分解能化を図る.

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5-2-2 各フィルタの概要

ここでは,前節で紹介した「傾き抽出フィルタ」,「二値化」,「連結領域へのラベリング」の 3つについて記述していく.

まず,傾き抽出フィルタについて記述する.

傾き抽出フィルタは,二次元波数ベクトル上で特定の範囲の傾きを持つ線分を抽出する フィルタである.今回は,-5°から 15°の線分を強調するように設定しているため,Fig.5-2-2-1のようなフィルタとなる.

Fig.5-2-2-1 -5°から15°を通過域とするフィルタ

これにより,細かい筋繊維の細分化や筋膜を残しながらノイズの低減を行うことが出来る.

以下に例を示す.

傾き抽出フィルタなしでBモードを二値化した結果についてFig.5-2-2-2に示す.

Fig.5-2-2-2 傾き抽出フィルタなしで二値化した場合

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Fig.5-2-2-2 のように,B モード上で筋膜の輝度値が低く,明瞭に確認できない筋膜がある

場合,筋膜の一部が描出できない場合がある.

次に,傾き抽出フィルタを使用した場合の二値化結果をFig.5-2-2-3に示す.

Fig.5-2-2-3 傾き抽出フィルタを使用し二値化した場合

Fig.5-2-2-3 より,傾き抽出フィルタを使用することによって,筋膜部分が強調されて,輝

度値が低くて描出できなかった筋膜を描出できていることがわかる.

次に,二値化の手法について記述する.

二値化には,閾値を画像ごとに適応的に決定する「適応的二値化」を使用している.

例として,閾値を固定(閾値𝑡 = 75.0)で二値化したものをFig.5-2-2-4に示す。

Fig.5-2-2-4 閾値固定(𝑡 = 75.0)で二値化

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画像3は閾値が低いため,筋膜下部の細かい筋繊維を検出してしまう.一方で、画像4は閾 値が高いため,検出したい筋膜が途切れて検出してしまう.

このように,すべての画像に対して同じ閾値で二値化してしまうと,検出できる筋膜にば らつきが生じてしまい,検出したいものが検出できなかったり,検出したくないものが検出 できなかったりしてしまう.

よって,Fig.5-2-2-5に示すようなアルゴリズムで画像ごとに閾値を決定する適応的二値 化を行っている.

Fig.5-2-2-5 二値化決定フローチャート

Fig.5-2-2-5 のアルゴリズムにより決めた閾値を使って二値化(適応的二値化)を行った

画像をFig.5-2-2-6に示す.

Fig.5-2-2-6 適応的二値化

Fig.5-2-3-6 のように,検出したくないノイズ成分は検出せず,検出したい筋膜を検出で

きていることがわかる.これにより,幅広い B モード画像で有効的に二値化を行うことが

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