3. セミトランスオーラルと音場模擬技術に基づく
3.7 音像の定位性能に関する主観評価実験
D[cm]
W[cm]
-10 -5 0 5 10
-10 -5 0 5 10 0
5 10 15 20
Head area
Error of clarity[dB]
(a) Proposed method with inverse filter and HRTF
D[cm]
W[cm]
-10
-5
0
5
10
-10 -5 0 5 10
Error of clarity[dB]
0 1 2 3 4 5 6 7 8
Head area
(b) Proposed method with computer simulation
図47 実音場と再現音場間のC値誤差(受聴者の頭部あり)
質が低下することが確認された.その反面,頭部周辺を制御する手法では, トラン スオーラル方式に基づく制御と異なり制御領域が広く首振りなどわずかな受聴者頭 部の運動では品質が保たれることが確認された.その反面,頭部後方領域の誤差増大 がいずれの結果でも確認された.音場シミュレーションにて仮想音場に定義されな かった音響装置のヘッドレストに基づく反射と考えられる.この反射波は受聴者の 両耳に直接到来する経路ではないが,受聴者が首振りを行う場合や浸透による音像定 位の前後誤りなどを引き起こしている可能性もあり,抑圧が必要であることが示さ れた.
表12 音場シミュレータにおける仮想音源の座標 Sound source White noise (0 to 24 kHz) Sound surface Plane wave (width: 0.3 m) Emitter direction 24 points in horizontal direction Emitter distance 0.3 m, 0.6 m
表13 主観評価実験における測定条件 Environment Sound-proof room Noise level(LA) 31 dB
Sampling frequency 48 kHz Quantization 16 bits
オーラル方式(Proposed method with inverse filter and HRTF)と,有限差分時間領域 法に基づくセミトランスオーラル方式(Proposed method with FDTD)を評価した.
実験ではまず表12のように各15◦ずつ水平360◦方向,各距離の仮想音源を想定し,
各手法に用いられるインパルス応答を表10の条件で合成する.次に表13の条件で 被験者に音場再現を実施し,20代の女性4名男性12名の被験者が,定位された音 像方向を回答した.なおHRTFは客観評価と同様,無響室で計測されたダミーヘッ ドのHRTFを用いた.
3.7.2 主観評価に関する実験結果
音場再現の主観評価に関する実験結果を図48,49に示す.図は横軸を定義された 正解値の音像定位方向,縦軸を回答された音像定位方向とし,被験者の総回答数を バブルサイズとして示している.各角度は正面を0◦, 右方向を90◦ としている.理 想的な結果は定義された正解値=回答値となる直線である.しかし,本実験で確認 された結果は各グラフの通りであり,0◦,180◦付近で確認される前後誤りと,90◦お よび270◦すなわち左右方向に音像定位が引き寄せられる2つの傾向が確認される.
Proposed method with inverse filter and HRTFでは,頭部から0.3 m遠方の仮想音源に おいて,平均32%の前後誤り,また頭部から0.6 m遠方の仮想音源においては,平 均23.5%の前後誤りがあった.Proposed method with FDTDでは,提案法は頭部か
ら0.3 m遠方の仮想音源において平均19.5%の前後誤り,また頭部から0.6 m遠方
の仮想音源において平均21.0%の前後誤りがあった.
3.7.3 主観評価実験結果の考察
主観評価結果では,Proposed method with FDTDがわずかに高い性能を示したが,
定位方向の分布など大局的な傾向は同一であった.従来のトランスオーラル方式に おいても,制御点となる座標に被験者の両耳があったため,理想的な音場制御が実 現し,両手法間に差がなくなったものと考えられる.
両手法で確認された大きな問題として定位方向が直線的ではなく,正面および背 面方向の音像定位方向が左右方向に歪む傾向が確認される.一般的にダミーヘッドに 基づくHRTFを用いた音像定位では,正面および背面方向の音像が完全に定位しな い事が知られている[94].しかし本実験においては定位方向の歪みが従来と異なる ほか,HRTFを用いない提案手法でも同様の歪みが観測される.このことから,本実 験で観測された定位方向の歪みはHRTFの問題だけでなく頭部近傍スピーカアレー のスピーカ配置に依存するものと考えられる.
本実験では受聴者の視界を妨害およびヘッドレストによって頭部位置を想定する 条件から,スピーカは使用者の前後方向になく左右にしかなく,またその放射面は 受聴者の両耳向くよう楕円形状に配置されている.その結果各方向から提示される 音圧強度に差が生じ,音像の定位方向が歪んだものと考えられる.この問題を解決 するためにはスピーカ配置に関する再検討および配置に応じた音圧補正が必要だと 考えられる.
30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360
0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360
Perceived angle[deg.]
Emitted angle[deg.]
0
(a) Proposed method with inverse filter and HRTF
30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360
0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360 0
Emitted angle[deg.]
Emitted angle[deg.]
Perceived angle[deg.]
Emitted angle[deg.]
(b) Proposed method with FDTD
図48 0.3 m遠方の仮想音源に対して知覚された音像方向
30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360
0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360 Emitted angle[deg.]
Perceived angle[deg.]
0
(a) Proposed method with inverse filter and HRTF
30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360
0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360
Perceived angle[deg.]
0
Emitted angle[deg.]
(b) Proposed method with FDTD
図49 0.6 m遠方の仮想音源に対して知覚された音像方向