• 検索結果がありません。

研究報告 「岳等教育ユニバーサル段階の入試多様化」

はじめに

1.席等教育の構造と規模 2.大学入試の概要

(l)入試の変遷

(2)現行の入試の仕組み

(3)2008年度入試改単二 3.入試の多様化・個性化

(l)入試多様化の背景と目指す方向

(2)「総合学牛生活記録簿」と大学修学能力試験

(ニi)個別大学における入試の多様化 4.1高校における進路指導・受験指導

5.高大連携

6.韓国の大学入試を巡る問題と今後の方l句(多様化の成果と課題)

実地調査記録1(2005年)

実地調査記録2(2007年)

はじめに

韓国の高等教育は1錮0年代以降の経済成長とともに急速な拡大発展をみせ,いまや我 が国を上回るような規模を持ち,■自i校卒業者の80%を超える若者が高等教育機関に進む というr如、進学率を達成し,マーチン・トロウのいうユニバーサル段階に達している。そ うした中で,大学入試もかつての筆記試験■†1心の選抜から高校調査書や面接試験などを含 めた多様な方式へと改隼されてきている。

韓国でも我が国や中国などと同様,長い軌 大学入試をめぐる激しい競争が繰り広げら れてききており,その対策が教育政策の重要課題として様々に採用された。1980年代に 受験のための学習塾や家庭教師を禁止したり,入学者を定員より多くとって卒業まで淘汰 する「卒業定員制」を導入したりと,いわば奇策までとられたところに問題の深刻さがう かがわれよう。

そのような奇策を含みながら入試改革は頻繁に行われ,1990年代の半ばからの改単に より現在の多様化入試が形作られた。以下では,現在韓国で繰り広げられているそのよう な大学入試について,政府の政策や大学の実態を調査研究し,その成果や課題・問題点な どを分析した。

多様化という大きな方向では我が国や他の国・地域との共通件があるが,子細にみてい くと韓国の特徴や課題がまた浮かび上がってこよう。

−103 −

1,高等教育の構造と規模

1980年代以降,韓国の高等教育の発展ぶりは目覚ましい。大学のほかに多様な高等教 育機関が整備され,学生の数が急増して規模が大きく拡大された。学生数の推移を見ると,

1975年の30万人から1985年の138万人,1995年の223万人,2004年の327万人と,30 年の間に10倍以上に増えている(すべての高等教育機関含む)。

現在,高等教育機関は在学者全体の5割強を占める大学と5割弱を占める短期の専門大 学が中心となっているが,高等教育法(1997年制定)によれば,次の7種類の高等教育 機関が定められている。()は2004年機関数,在学者及び在学者構成比率である。

1)大学 (171校184万人56.0%)

2)産業大学 (18校19万人5.8%)

3)教育大学 (11校 2.3力▲人0,7%)

4)専門大学 (158校 90万人27.4%)

5)放送・通信大学 (1校 29万人8.9%)

6)技術入学 (1校196人0.0%)

7)各種学校 (5校1,153人0.0%)

このほかにも教育人的資源部の教育統計にはインターネット大学である「サイバー入学」

17校,学生数39,450人が載っており,学生数は1.2%をrlィめる規模になっているLl■。

産業大学は,在職の成人を対象にした大学と同等の専門課程を提供する機関で,かつて

「開放入学」と称したが,1997年に改称した。教育大学は2年制であったものが,1981年 に4年制に昇格した,すべて国立の教員養成機関である。

専門大学は,従束からあった短期大学,専門学校,看護学校等を改組して1979年に創 設された。2年又は3年制で卒業者には「専門学−i二」の「学位」を授与する。我が国の短 期大学と異なり,職業と結びついた実践的な専門教育を行っており,就職も順調なことか

ら志願者が増えている。

技術入学は産業人学と同じく,在職者に専門技術を習得させることを目的とする機関で,

専門学士と学士課程(ともに2年)を置くが,1校と存在が危うい。

各種学校も,高等教育法には大学や専門大学などに準じる教育を提供するとなっている が,5校と規模は小さい。【コノ

こうした多様な高等教育への進学者は1980年代から増え,我が国を上回るようなl島い 進学率を達成している。高校卒業者の高等教育進学率の変遷をみると,高校進学率との関 連もあるので厳密には比較できないが,高校進学率が75%であった1975年の高等教育進 学率は25,8%であった。高校進学率が90.7%の1985年は高等教育進学率36.4%,さら

に高校進学率が100%に近づいた(98.5%)1995年は51.4%,そして2004年は81.3−%

と,最近10年で一段と急速な拡人を遂げている。

OECD(経済協力開発機構)の統計によると,2003年度の韓国の高等教育進学率は短大 タイプの課程が51%,大学タイプの課程が50%と極めて高く,合計すると,計算上100

%を超える。我が国の進学率はそれぞれ31%,42%であり,OECD加盟国平均は16%,53

%となっているl=〜 。

一104一

韓国の学校系統図

学年 年齢

26

25

24

23

22

21

20

19

17

16

15

14

13

12

11

10

9

8

7

6

5

4

3

義教tJヽ一

(出典)文部科学省『教育指標の国際比較』平成19年版 95頁。一部変更。

−105 −

就学前教育

このような大きな人口を抱えるようになった韓国高等教育は,その結兄として学生の学 ノ」,志望動機などにおいても多様性が大きく広がっているであろうことは容易に考えられ る。そしてまた,その多様性が大学入試の在り方にも当然影響をもたらすことになろう。

2.大学入試の概要

韓国の高等教育機関は,現在,大学を始めとして,おおむね高校の成績や活動の記録で ある「学生総合生活記録簿」と共通テストである「大学修学能力試験」の成績をもとに入 学者を選抜している。しかし,その利用(及び反映)の方法は各機関ごとに違っており,

また一部には面接や小論文,実技テストを課すところもある。その選抜の在り方は,多様 化・個性化にl占」かっているといえるであろう。以卜では,大学の入学者選抜を中心に制度 の什組みを概観する。

(1)入試の変遷

韓国の大学入試は,1945年の人韓民国成立後,めまぐるしい改革の変遷をたどってき た。その農本的な改革のかたちは,大学の独自試験を実施するか,これに代わる共通試験 を実施するか,あるいはこれら両者を併用するか,といったもので,このいずれかのパタ ーンが数年おきに繰り返されている。

本格的な全国共通学力試験が導入されたのは,それ以前5年間(1964〜68年)入学別 独白の試験が実施された後の1969年であった。しかし,1965年の統計によれば,この年,

小学校から中学校への進学率は54%,中学校から高校へは69%,高校から高等教育機関 へは32%という進学状況であり,ざっと大まかな計算でも高等教育進学率は同世代の1 割程度であるが,韓国でも1970〜80年代の高度成長を前に大学進学熱が高まってきてお り,とくにその規模拡大の主力であった私立人草の水増し人乍に対して乍力の質確保の意 味合いがあったとされる■」・■。

その予備考査導入から現在までもいくつかの改単二が行われたが,共通試験はかたちを変 えながら続いている。予備考査以後,入学者選抜の実施方法の変遷を整理すると次のよう

になる:■うJrJ

①大学入学ナ備考査と入学別本考査との並行(1969〜1980年)

72年までは予備考杏によって大学本考査への出願資格を付与。75年から80年までは予 備考査の成績も判定資料として30%反映させた。.高校の内叫成績も反映させるLT

②大学入学予備考査と高校トノ、川り戊積との並行(1981〜1985年)

入学別の本考杏を廃l上。予備考査の成績を50%以卜反映,高校内申書を20%反映させ る選抜を実施。多くの大学では70%,30%の配分率で実施した。

③大学入学学力考査と高校内中書との並行(1986〜1993年)

予備試験を「学ノ」考杏」と改称,内容はl司じ高校9科目受験。1986・87年は論述試験 を実施(10%以内反映),1988年廃止1−ノ■計較内申書の成績反映率30%以上を義務化した。

なお,それまで共通試験実施後出願していたものを,試験前の出願に変更1つ

④大学修学能力試験,大学別学力考査及び高校内申書との並行(1994〜1996年)

高校の科Hベースの試験であった大学入学学力考査を領域別の試験に巾編。同時に入学 別の学力考査(韓国語,数学,英語が中心)の実施容認。修学能力試験と大学別学力考査 の採用,反映率は大学の判断に。また,内申書成績の反映率40%,以仁を義務化。更に,

一106

特定の受験者を対象にした特別選考を開始。

⑤大学修学能力試験と総合学生生清記録簿との並行(1997年〜現在)

学習成禎申し、であった高校内申書を教科外活動を含めた「総合学生生活記録簿」に改変,

学習成績以外の活動も選抜資料に。大学別学力試験は国公立が1997年に,私立も2002年 に全面禁【卜,面接や論述試験など学科試験以外の考査に限定されるようになった。また,

2002年まで国公立大学に義務化されていた総合生活記録簿の採用は任意となり,すべて の選抜資料の選定,反映率は大学の裁量に委ねられた(私立大学は1997年から全面自由)。

なれ1980年代,受験競争の緩和,受験学習負担の軽減を狙って「学習塾,家庭教師 の全面禁lh と「卒業定員制の導入」の措置がとられた。卒業定員制は卒業定員の130%

を入学させ,卒業までに30%を淘汰するものであったが,教育環境の劣悪化,学生淘汰 の困難さによって4年後に形骸化され,名目的にも1988年入試に入学定員制に戻ったし一㌔

′了 習塾・家庭教附こついても,政治の民主化の進展とともに1990年前後から,政府は 規制を緩和し,入学生による家庭教師,長期休暇中の学習塾(1989年),さらに学期中の 学習塾(Ⅰ991年)を認めるようになった。実質的には1980年代10年間の禁止に終わり,

現在塾,家庭教師は昔日のごとく盛んになっている:7■(

(2)現行の入試の仕組み

現行の大学人学者選抜は各人学がそれぞれの権限として大学長が行うことになっている

(高等教育法第34条第1項)。選抜の資料は,高校の総合生活記録簿,入学修学能ノ」試験 及び大学の個別検査などで,大学がその利用する資料の選択及びその反映率(配点)をそ れぞれ決定することができる。また募集対象(一般選考と特別選考),募集時期(定時鼻 集と随時募集)によって,いくつかの区分がなされている。

したがって,入学者選抜は各大学が選考方法・農準を決定できることに加えて,募集対 象,募集時期のl天分によって非常に多様で複雑な仕組みに変わってきているしっ 大学の規模 拡人とともに学生の多様化が進んでいる中で,大学が独自の教育理念や目標に照らして求

める学′トを多様なルートを通じて選抜する仕組みを形作りつつあることの現れとみること ができる.二 また,これが大学の自主的な運常を保証し,多様な発展を期す大学改革の一一面 を示してらいる.こ、

しかし,長年来の過熱する受験競争への対策も一方ではあり,受験偏重に陥らない高校,

中学の教育正常化を凶るための多様化政策でもある。知識偏重ではない,生徒の個性や能 力を伸ばす教育の確保のために,筆記試験のみの選抜から脱皮しようという試みでもあるし_.

それは各大学の2次試験(個別試験)で,筆記学力試験を固く禁じている措置からも伺え る。入学が入試方法・選抜基準を決定できる権限を拡大する反面,このような国の統一的 な原則もなお厳しく定められている。

なお 現行大学入試制度においては,この筆記試験を含め,凶が大学に禁じている3つ の行為がある。それは,

▽入学にあたって寄付金を徴収する

▽高校を等級付けする

▽学科筆記試験を行う

というものである。これらについては,教古人的資源部がむ示した2008年からの入試改

−107 −

関連したドキュメント